2020.04.20
歯科治療には様々な手法があるが、歯の代わりに顎骨に人工の歯根を埋入するインプラントは高い技術力と優れた検査機器が必要だ。患部によっては詰め物や被せ物などの金属の影響で従来のレントゲンでは状況が把握しづらいケースも多い。そんな中、画期的なCT装置を開発し、より鮮明なレントゲン画像を実現した企業がある。そこではHPワークステーションが活躍しているという。詳細を伺ってきたので紹介しよう。
写真左から
営業部 サービスエンジニア リーダー 原田将史氏
営業部 広報担当 山下達也氏
株式会社アイキャットは、大阪大学歯学部の研究成果をベースとして、2003年に設立された大学発ベンチャー企業だ。設立当初はインプラントのためのシミュレーションソフトや手術支援器具から事業をスタートし、2010年にはシミュレーションのためのデータ取得に必要な歯科用CT装置の販売を開始。「CT装置から専任の歯科技工士によるインプラント手術に必要なサージカルガイドの製造まで、トータルソリューションを手掛けています」と語るのは山下達也氏(以降、山下氏)だ。
同社が2012年に販売を開始した歯科用CT装置「RevoluX」では、360度の方向から撮影した画像データを次世代CT再構成ソフトウェア「GIDORA」を用いて高精度な3Dグラフィックスとして表示することができる。
「一般的な歯科用CT装置の場合、口腔内にX線を通しにくい金属製の詰め物などがあると、そのノイズによって、歯や骨を正確に表現できないことがありました。しかしGIDORAなら、ソフトウェア処理を用いたノイズの低減効果によって、これまで表現できなかった部分まで鮮明に表示できます」と語る原田将史氏(以降、原田氏)。
RevoluXは、CT装置自体の制御に加えて、GIDORAによるデータの再構成を行うため、ワークステーションが必要です。このワークステーションには従来、別ベンダーの製品を使っていたが、Windows 7からWindows 10へ移行するタイミングで、産業機器のOSバージョンを固定できる「Windows 10 IoT Enterprise」の導入を考えていたのだという。
「以前採用していたワークステーションは、このOSを搭載した状態での販売が行われていなかったことから、OSの購入先として医療機関でも数多くの実績を誇る菱洋エレクトロ株式会社(以降、菱洋エレクトロ)様に相談したのです。そこでご紹介いただいたのが、ワンストップで使えるHPのワークステーションでした」と語る山下氏。
HP採用の背景について語る山下氏
CT装置全体の制御をつかさどるワークステーションベンダーの変更は、アイキャットにとっても極めて重要な決断となるが、その理由はOS対応以外にもあったのだという。「たとえば、従来ベンダーは内勤営業のみの対応で、WSロードマップや業界に即した提案がなかった点が挙げられます。また、モデルチェンジの際にも後継モデルへスムーズに移行できない印象でした。一方で菱洋エレクトロ様とHPは、業界に即したWSロードマップ情報発信や在庫運用に加えて、顔が見える営業スタイルで信頼感と安心感が大幅に向上。加えて、HPが提供している『HP Care Pack プライオリティアカウントサービス』も大きな魅力でした」と語る原田氏。
ハードウェア障害が発生した際、サービスメニュー「シルバー」ではシステムプロファイル管理や専用コール窓口による迅速な対応が約束されているほか、「ゴールド」なら専任担当者が障害管理や対応を行う。医療機器の場合、もしトラブルが発生すると診療が止まってしまう可能性があるため、迅速に対応してくれるサポートは重要となるのだ。
実際にワークステーションを選定するにあたり、RevoluXが必要とする要件はどのようなものなのだろう。「3Dへの再構成処理を行う上で優れたグラフィックス性能が必要になるのはもちろん、CPUとメモリに関しても高いパフォーマンスが求められます。そこで注目したのが、HP Z2 Tower G4 Workstationでした」と山下氏。
HP Z2 Tower G4 Workstation
HP Z2 Tower G4 Workstationは、グラフィックスはNVIDIA Quadroが搭載できるうえに、CPUについても最新のインテル Xeonプロセッサーが選択可能。メモリは最大64GBまで増設できるなど、十分な基本スペックと拡張性を備えているモデルだ。「これだけのパフォーマンスがあれば、RevoluXでの採用に申し分ありません。コストと性能のバランスを考えた結果、最終的にグラフィックスはNVIDIA Quadro P4000、CPUはインテル Xeonプロセッサーを選択しました。ストレージに関しては、撮影した画像や再構成後のDICOMデータを保存する役割を担うため、2TBのHDDでRAID構成を組んであります」と原田氏は語る。
同モデルを選択した理由としてもう一つ重要だったのが、コンパクトな筐体だったのだという。「日本の歯科医院は、一般的な病院と比べて狭いところが多く、限られたスペースに設置する必要があります。その点、HP Z2 Tower G4 Workstationならハイパワーでありながら、従来のワークステーションよりもスリムなので、歯科医院への提案もしやすくなるわけです」と語る山下氏。
スペック的な要件はもちろん、設置要件にも最適だったのがHP Z2 Tower G4 Workstationだったというわけだ。
ワークステーションの要件について語る原田氏
高性能でありながら省スペースな点も導入の決め手になった
「HP Z2 Tower G4 Workstationは従来のワークステーションと比べて処理が非常に高速で、3Dの表示速度が約1/3にまで短縮されました」と導入の手応えを語る原田氏。インプラントの診断ならCT検査の後、シミュレーションを行ってから次回の診察で方向性を決めることもあるそうだが、一般的な治療であれば歯根など患部の状態をその場で確認する必要がある。つまり処理速度が上がるほど、歯科医師にとっても時間的な余裕ができ、より丁寧な診察・治療や多くの患者への対応が可能になるというわけだ。「患者さんにとっても、待ち時間が少ない方が嬉しいですよね」と原田氏は笑顔で語る。
詳細にそして高速にCT画像をシミュレーション表示する
「弊社は歯科医師が立ち上げた企業なので、その製品開発にも『実際の現場ではどうしたら使いやすくなるか』『どのような機能を求めているのか』といった歯科医師目線の発想が活かされています。そして歯科医師の使いやすさは、そのまま患者さんの安心感や信頼感につながっていくものです。このような観点からも、HP Z2 Tower G4 Workstationの採用は、歯科医師と患者さんの双方に大きなメリットをもたらす進化といえます。弊社では今後も皆さんに美しい歯と笑顔をもたらす、新たな歯科用CT装置やソフトウェアの開発に邁進していきます」と最後に語ってくれた山下氏。
アイキャットの優れた製品により、歯科医療の業務効率化はこれからも加速していくだろう。HPは今後も同社を支えるべく、精一杯のサポートを続けていく。