2024.08.20
HP Future Ready AI Conference 2024 with HP Partner Communication
2024年7月11日、日本HPが主催するAI活用イベント、「HP Future Ready AI Conference 2024 with HP Partner Communication」が開催された。2023年に大きな話題となった生成AI「ChatGPT」を始め、生成AIによる業務効率化、生産性向上を実現する企業が急増している。今や、待ったなしといわれるほど、DXに欠かせない存在となった生成AIをどのように取り込んでいけばいいのか、本イベントでは各界の著名人やAI時代をリードするベンダーが一同に会し、AI活用の現在、そして将来を語った。ここからは生成AI活用において、欠かせないテクノロジーパートナーによるセッションとなる。大規模LLMを始め、AI黎明期から時代を盛り上げてきたシリコンベンダーといえば NVIDIA だ。功績の大きい同社が、生成AIについてどのような取り組みをしているか現状を語った。それでは内容をご覧いただこう。
エヌビディア合同会社
ソリューションアーキテクチャ & エンジニアリング
シニア ソリューション アーキテクト
佐々木 邦暢 氏
一般的にはグラフィックボードのメーカーとして有名な NVIDIA。しかし、ここ数年で開発、販売しているハードウェアは拡大し、コンピューティングプラットフォームメーカーとして事業の幅を増やしている。「すでにGPUの企業ではなく、ネットワーク機器もありますし、CPUも製造しています。あまり聞きなれないものでは、DPUの提供も始めています」と NVIDIA の事業を説明する佐々木氏。
また、ハードウェアのみならず、ソフトウェアについても積極的に作っている NVIDIA だが、改めて取り組みを振り返ると、2006年に発表された「CUDA」の存在があってこそだという。「現在では CUDA のような、ハードウェアに近いレイヤーのプラットフォームだけではなく、開発者の方に便利に使っていただける、さまざまなライブラリーも提供しています。また、ここ数年の動きに関していえば、さらに上のレイヤーで動作するさまざまなアプリケーション用のフレームワークなどについても、NVIDIA が提供しています」と佐々木氏は語る。
つまり、ローカル、エッジからクラウドまで、どのような場所においても最適な製品があり、CUDA という統一されたアーキテクチャを持つことが NVIDIA の特長となっているのだ。
「我々のプラットフォームが現在どこに注力しているのかといえば、やはり生成AIや大規模言語モデルの活用ということになります。みなさんの生活も、これらによって大きく変わろうとしているのではないかと思います。よく言われることですが、現在の生成AIに関する進化やワクワク感というのは、かつてインターネット革命が起きて一挙に普及したときのような雰囲気を感じます」と佐々木氏。
そして紹介されたのは、2024年に発表されたばかりの、GPUアーキテクチャ「NVIDIA Blackwell」だ。「一般のPCでAIを活用する場合、その前段階として必ずAIモデルのトレーニングということがあります。多くの時間を費やしてトレーニングする場合もあれば、ある程度できあがった状態の「半完成品」のようなものに追加で学習するなど、やり方はいろいろとあります。そのなかでも、イチから大きなモデルをトレーニングするといったような、非常に強力な計算力が必要なワークロードに向けているのが、この Blackwell というアーキテクチャです」と佐々木氏。Blackwell 自体はサイズが大きく、コンシューマ向けPCの筐体に収まるような設計にはなっていないが、今後は様々なGPUが登場する予定だという。
例えばデータセンター向けの「GB200 スーパーチップ」があり、規模がより大きくなっているAI処理に合わせ、ビット数をこれまで主流だった32ビットから、16ビット、8ビットとすることで精度を保ちつつパフォーマンスを大幅に上げてきている。「『NVIDIA GB200 NVL72』というサーバ製品では、ラック1台の中に、GPUを搭載したサーバが18枚入っていて、全部で72個のGPUが NVLink で繋がっている構成になっています。ここまでの規模のサーバはどこにでもあるわけではありませんが、最先端のAIを作り上げるためには、このくらいの演算能力が必要なのです」と佐々木氏は語る。
そしてPCやワークステーション向けとしては「NVIDIA Ada Lovelace アーキテクチャ」が用意されているという。「発表の時期としては Blackwell よりも古いのですが、どちらが優れているとかいう問題ではなく、それぞれ得意技が違うということになります。このため、『Blackwell』と『Ada Lovelace』の両方をあわせて、NVIDIA の最新GPUのラインアップを構成しています」と佐々木氏。
この「Ada Lovelace」のGPUが活躍するのが、PCやワークステーションに搭載される「NVIDIA RTX」という製品となる。これはレイトレーシングなどに関する優れた機能を持ち、ワークステーションなどに組み込まれることで、小さなAIモデルであれば、十分にトレーニングできるくらいの性能がある。それだけではなく、AIに関して問い合わせを行って推論をさせることや、生成させた画像を綺麗に可視化するためのグラフィックス能力も持っているのが NVIDIA RTX ということになる。
「いままさにAI PCのように、PCが新しい段階に進化しようとしているところだと思います。そうした場面でも、NVIDIA RTX のGPUが活躍することは多いと思います」と佐々木氏は語る。
先ほども NVIDIA がソフトウェア開発にも力を入れていることについて少し触れたが、現時点で非常に多くの製品があるため個別に紹介することが難しい。そこで佐々木氏は、特に紹介したい製品として「NVIDIA NIM」をピックアップした。
「できあがっているAIのモデルに対して、プロンプトを投げて推論を行うための仕組みです。ただし、推論を行うためには、モデルをサービングするためのなんらかのサーバーソフトウェアがあって、クライアントからの要求を受け取ったらそれを効率よく処理して結果を返す仕組みのようなものが、推論をスムーズに行うために必要になります。NVIDIA NIM には、これらの機能がまとめて入っているので、コンテナにすべて収納されているようなイメージでお使いいただくことができます」と解説する佐々木氏。
この NVIDIA NIM はローカルPC上でも、データセンターでも実行することができ、使用用途も多岐に渡るという。「例えば社内に蓄積されている膨大な文書を元に、大規模言語モデルによって簡単に検索や問い合わせなどが行えるアプリケーションの開発も簡単に行えます」と佐々木氏は語る。
こうした機能は実際に試すことができる「ai.nvidia.com」というWebサイトを用意しているという佐々木氏。このサイトでなら、AI PCでない古いPCでも最新のAIがどのように動作するのか確認することができるのだという。「自分のワークステーションなりPCなりにインストールする前に、さまざまなAIモデルをWebベースで簡単に開いて使ってみることができるため、自然言語処理だけではなく画像処理なども試してみることができます。リアルタイムの推論なども試すことができるので、なかなか便利でオススメのサイトです」と佐々木氏。
この他にも、ローカルPCにインストールすることで NVIDIA NIM のコンテナが動かせる「AI Workbench」、コンシューマ向けの機能以外の、先進的な研究結果の膨大な資料が確認できる「NVIDIA Research」などを紹介した佐々木氏は、「AIに関しては、最先端の研究成果が市場に投入されるまでのサイクルが非常に早いのです」と現状を語る。
「これからも演算とグラフィックスを両方、しかもうまく合わせながら、アクセラレーテッドコンピューティングを進化させていきます。さまざまなスタートアップ企業様などにも連携や支援などを行いながら、AIの革命といえるようなことを進めていきたいと考えています。これからも引き続き NVIDIA にご期待いただければと思います」と最後に佐々木氏は語ってくれた。今後もAIシーンをより進化させる NVIDIA に対し、会場から期待の拍手が沸き起こっていた。
NVIDIA のセッション終了後、佐々木氏、田中氏にお話を伺う機会があったので、内容を紹介しておこう。
エヌビディア合同会社
エンタープライズマーケティング
シニアマネージャー
田中 秀明氏
――セッションお疲れ様でした。せっかくの機会ですし、もう少しお話を伺えたらと思ってお呼び止めさせていただきました。全体の話題としてはNPUの色が濃かったと思いますが、NVIDIA 様はHPの製品だとワークステーションと組み合わせることが多いように思います。
田中氏:用途としてCAD/CAMが多いのでどうしてもそうなります。しかし、今後は私たちのNVIDIA RTX シリーズもエッジAI向けのランタイムが出る予定があるので楽しみですね。
――そもそも、NPUとGPUでは立ち位置が違いますよね。圧倒的低消費電力と圧倒的パフォーマンスに分かれるので、ニーズがまったく別だと思います。
田中氏:TOPSのお話だと、現在のNPUは40TOPSぐらい。私たちのラップトップ向けグラフィックスで1400TOPSになりますから、単純な比較はしないほうが良いです。逆にHP様には幅広いポートフォリオがありますから、要所でAIを活用する方にはAI PC、電力消費は無視してAIのパフォーマンス優先する場合はワークステーションというような住み分けがより明確になったような気がします。
――確かにどちらが良い悪いの話ではなく、使い分ければよいですし、適材適所ですよね。
田中氏:そもそもグラフィックスにもたくさんの種類ありますからね。NVIDIA RTXの場合、2000番以上でしたが、現在は400番台までラインアップを増やしています。このシリーズには Tensor コアというAI専用コアがあるのですが、日常使いや静止画の編集なら低くても十分ですし、AI開発まで視野に入れているならハイエンドにしていただくなど、ニーズに見合う適切なラインアップになっています。
佐々木氏:AIでいうと推論だけでなく、トレーニングまでやるなら NVIDIA RTX の方が断然有利ですよね。ローカルでAIを使うというだけでしたら、NPUでも十分ですが、カスタマイズまで含めると、ディスクリートグラフィックスがあったほうがスムーズですね。
――おっしゃる通りだと思います。ちょうどお話にも出てきましたが、ソフトウェア開発の支援も NVIDIA 様は以前からやられていましたよね。
田中氏:かなり以前からそのようにさせていただいています。もともと、データセンターのリソースでトレーニングをするといった大きなビジネスや、それこそHPワークステーション上でAIソフトを開発するといった企業様もサポートしてきました。
田中氏:AIの世界にはGPUが最適だというお話は以前からしてきましたが、ようやくデータセンターから、みなさまのお手元に下りてきて、さらに実用段階に入っている。そう思うと感慨深いですね。
――NVIDIA 様でエッジAI向けにソフトウェアを出されたりはしないのですか?
田中氏:NVIDIA ACE や Maxine といったデジタルヒューマン開発向けのソリューションを開発中です。順次利用できるようになりますので、ご期待いただけるとうれしいですね。
――それは楽しみです。公開されるのを楽しみにしています。お疲れのところご対応いただき大変感謝です。本日はありがとうございました。
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