【山形 巧哉 編】第6回:デジタルはそれぞれの世代に何を伝えてきたのか

元自治体キーマンが描く、ICT活用の過去・現在・未来シリーズ

2026-05-14

山形 巧哉氏
山形 巧哉氏

日本のICT活用の進化を決定づけるのは地方自治体だ。国家レベルの施策を実際に運用し、国民へのサービスとして昇華させるのは各自治体の役目でもある。そんな自治体において、ICT活用の進化が著しいケースがいくつかある。そしてその共通項として必ず浮上するのが、特筆すべき人材、いわゆる「キーマン」の存在だ。ここでは各自治体においてキーマンとして活躍し、大事業を達成させてきた人物にそれぞれが思い描くICT活用について語ってもらっている。彼らの考えや軌跡をみることによって、同じ自治体はもちろん、企業、組織にも大きなヒントが得られるはずなので、ぜひ熟読していただきたい。

取材:中山 一弘

山形 巧哉

山形巧哉デザイン事務所 代表社員
一般社団法人コード・フォー・ジャパン
北海道森町 政策参与

山形 巧哉
  • 北海道森町出身。自治体職員として、行政や教育現場でのデジタル技術活用や構築に関する実務経験を重ねながら、その経験をもとに、地域社会においてデジタルをどのように結びつけると良いかという実験・実証を行う。
    独立後は社会ニーズや技術進化により変わりゆく「公共空間」に関し、研究調査・計画・設計・実証・実装といった多角的な支援を行っている。座右の銘は「まあすわりなよ」
    合同会社山形巧哉デザイン事務所・Code for Japan・国際大学GLOCOM客員研究員・公立はこだて未来大学アソシエイト・デジタル庁オープンデータ伝道師

前回のお話しでは地元の町での教育関連イベントを幅広い年代に向けて行ったことや、若い世代を応援するための考え方や施策などについても伺いました。それを受けて今回は、デジタル技術を当たり前のものとして使う子どもたちに、どのように教えていくのかなどについてもお話しいただきたいと思っています。

山形

前回もお話ししたかと思いますが、大人の基本的な責任として若い世代の芽を摘んではいけないし、応援していかなければならないということはあると思います。

往々にして大人世代の人たちは、自分があまり得意でないことや怖いと思っていることについて、若い世代にはやらせたくないと考えがちです。私たちが若かった頃の話でいえば、「テレビを長時間見ていたらバカになる」とか「テレビゲーム機ばかりやっているとろくな大人にならない」といった具合に、上の世代の大人たちが未経験だったことを否定されるようなこともあったと思います。

これでは子どもたちに新しい体験や知識を上手に身につけてもらうことはできませんし、世代間で断絶のようなものが生まれるだけだと思います。

地域の大人や家族は基本的に応援していくことが必要ですが、もちろんなんでも無条件にやらせればいいわけではありません。デジタル技術に関しても、「これだけはやってはいけない」というようなことをきちんと知らせて、それは守ってもらうようにしていくことも大切だと思います。

このところ私はアナログ回帰というか、直接的な人とのつながりを重視するようになっています。もちろんインターネットはいまの私を形作るうえでも重要なものだったのですが、それはあくまでも「ひと対ひと」の関係が前提にあってこそのものだと思っています。

初期のインターネットの時代は、まだまだ使う人も少なかったせいかもしれませんが、ネット上での良心というか、いろいろな人とのつながりが実感できるような場所でした。実際には会ったことがない人とでも、いろいろな知識を得させてくれたり、本を薦めてくれたりといった具合に人間同士の付き合いが感じられるようなところがありました。

最近のインターネットはかなり違った世界になっているようにも思いますが、こういうことを思い出しながら考えてみると、自分がやりたかったことというのはコンサルではなくて、シンクタンクのようにとにかく考えに考えて、それを外に出していくことなのではないかと思うようになりました。これは自問自答を繰り返すなかで、はっきりとしてきたということです。

そこで、なぜこういう考え方になってきたのかということを、みなさんにお伝えすることも大切ではないかと思うようになりました。果たして売れるかどうかはさておき、私がこれまで読んできた書籍を紹介しつつストアとして公開してみるチャレンジを始めました。これはいわば私を構成している知識についてのショーケースのようなもので、もしそこに興味を持ってくれる若い人がいたら、「こういう大人はこんな本を読んでいる」といった程度のことでもいいので知ってくれたら嬉しいと思ってやっていることです。

もちろんこれはWeb上でやっていることではありますが、「だからお勧めの本をKindleで買って」というのはちょっと違うと思っています。知らない誰かでもいいのですが、顔の見えるところにいる人に「この本良かったからあげるよ」とか言えるような関係になれればいいと思うのです。

これは地域の大人たちや親御さんにも同じようなことをしてほしいし、そういう関係性も大事にしてほしいと思います。

山形

前にも「よくオーストラリアのメルボルンに行く」ということを紹介しましたが、先週またメルボルンを訪問してきました。単なる観光ではなくて、言ってみれば「仕入れ」が大きな目的としてありました。先ほど話したようなことをするための材料としての本や、いろいろなものを探しに行ったという感じです。

今回はいつもと違い、たまたま私の姪と一緒に行くことになりました。高校2年生なのですが、「もし行きたいなら飛行機代は自分でアルバイトなどして貯めておきな」ということにしました。これは自分自身の考え方の押し付けかもなと思いつつも、高校生のうちに自分でお金を貯めて、そのお金でどこかに旅をし経験する。自身で自分の経験に投資するということが彼女にとっていい価値を産むはずだと思ったからです。

彼女の世代では当たり前のことかもしれませんが、せっかくメルボルンに行ったのだからということで、インスタなどにリアルタイムでどんどんアップしていきたいと思ったようです。SNSの使い方として、あの世代では当たり前なのだと思います。

ただそうすると、例えば私も一緒に写っていれば、自分の家が無人であることが多くの人にバレてしまいかねません。自分の身は自分で守らなければいけないし、例えば私のSNSにしても多くの人が見てくれているようなこともあります。

先日もあるところで「オーストラリアに行っていたのですね」と声をかけられるようなことがあって、「あ、この方もフォロワーさんだったのだな」と気づくようなことがありました。そこで彼女にも、「インスタにアップしたいことはよく分かるけれども、こういった危険もあるからそこは考えてやってね」と伝えることで、実体験としてそれを理解してもらうことができるようになります。自分だけではなく、自分の家族まで危険にさらしてしまう可能性があることをやっている、ということを理解してくれれば普段の生活でも気を配るようになるでしょう。

もちろん彼女も学校でセキュリティなどに関するこうしたことは聞いていると思いますが、リアルな現場でそれを体験したことによって、より深く刺さったということになると思います。やはり身近な大人にそれを言われると、「そんなこと考えたこともなかった」と印象に残る気づきになるようです。

SNSを楽しく使うのはいいけれども、この機会に姪にも「どうしてSNSをやるの?」と聞いてみたことがありました。そこで言われたのが「なんのためにやっているのかは考えてはいないけど、とりあえずやってないとみんなとつながっていないような気がするから」というようなことでした。

もちろんそれもいいことですが、あまりそればかりに集中してしまうと、せっかくの旅行なのに「この写真撮ったら投稿できるかな」といった具合にスクリーン前提の考え方になってしまいます。

それより、「いませっかくここに実際にいるのだから、ダイレクトに見たり感じたりしてもいいのではないかな」というようなことを伝えると、また感じ方も変わってくるのではないかと思います。若い世代のやることを否定するのではなく、そういう違った見方もサラッと提示できるような大人がいることも大切なのではないでしょうか。

山形

いまの若い世代は「デジタルネイティブ」と言われることもありますが、私は40代~50代こそが真の意味でデジタルネイティブなのかもしれないと思っています。子どもの頃にテレビゲーム機が登場し、それがパソコンになってスマホになり、色々なゲームもインターネットもすべて登場したものをリアルタイムで取り入れてきた世代です。本当に色々なデジタルツールをイチから使い始めてきた世代なので、体系立ててそれを理解してきたデジタルネイティブ世代でもあると思っています。

例えばSNSにしても、我々の世代でもたくさん始めた人がいたけれども、途中で飽きたりどうでもよくなってやめてしまったりした人も多い、というようなことを若い世代に伝えるのも意味があると思います。

いまは社会全体が、SNSなどを特に若い世代から搾取する手段として使っているような気もします。悪い面ばかりではないことは分かっていますが、我々が最初にインターネットの世界を知ったときとはかなり状況が異なります。

初期のインターネットは、表現が適切かどうかは不明ですが「ヒッピーカルチャー」のようなもので、自由な発想で新しいサービスを生み出したり、便利な使い方を発想したりするような側面が大きかったと思います。

そうした面があったことも若い世代に伝えていけば、再生回数などで儲けのためだけにコンテンツを作っている「気持ち悪さ」のようなものばかりになって、なんだか分からないけれども「自分たちが求めていたコミュニティはこれじゃなかった」という価値観もあることが分かってもらえるのかもしれません。

これはちょっと比喩的な表現になりますが、もしかしたらこれからは3Dプリンターで食材としてのお肉やお魚が作れるようになるかもしれません。ただ、私は本物の牛肉が好きですし、マグロは獲ってきたものがいいと思っています。でも最初から3Dプリンターで作成した肉を食べて育ったとしたら、その価値観だけしか知らないことになってしまいます。そうなったら逆に本物の牛肉を、美味しいと思わなくなってしまうかもしれません。

それはそれでかまわないのですが、もしそうなったときに「本物の牛肉を食べている人間のことをけなすな」とか、お互いに守るべき一線があることも理解しておく必要があります。人類のフェーズが変わっていったとしても、そこに多様な価値観があることは変わらないはずです。この多様な価値観を否定する、あるいは罵倒するようなことが、いまインターネットで起きていることと同じようなものだと思います。

私はSNSなどに関して、以前は「ひとの嫌がることをしない」と言っていましたが、これももしかすると価値観の押しつけかもしれません。逆に「自分の快楽のためだけにしない」ということかとも思いましたが、まだモヤモヤするところがあって、すっきりと表現できるところにはたどりついていません。そういう人たちに対して伝えるべき言葉を、まだ模索している感じではあります。

これは誰かがやることではなく、「個人個人、みんながそれぞれで考えていかなければならないこと」なのかもしれません。最終的には、自分が経験してきたことをどうかみ砕いて若い世代に伝えていけばいいのか、これは難しいけれども一緒に悩みながら考え続けていきたいことだと思います。

本日はありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

連載
  1. 第1回:小さな町から始めたDIY行政ネット改革
  2. 第2回:「まちづくり」を阻む壁を取り除くデジタルテクノロジー
  3. 第3回:まちづくりに気づきを与える住民と観光客の視線とは
  4. 第4回:ライフスタイルに合う土地と、生きづらさを感じる土地の違いを考える
  5. 第5回:親世代からの自然伝播が子どもたちの心に届くときに何が起こるのか
  6. 第6回:デジタルはそれぞれの世代に何を伝えてきたのか

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