2024.06.28
AI PCとは、NPUを内蔵することで生成AIなどをローカルのプロセッサーでも高速かつ省電力で処理でき、キーボードにCopilotキーがありCopilot in Windowsを使用できる、Windows OSが搭載されたPCのことです(※2024年4月時点の定義)。現在、NPUと呼ばれるAIの処理に長けているプロセッサーが搭載されたAI PCが、複数のPCメーカーからリリースされ注目されています。
この記事では、AI PCの仕組みや特徴を従来のPCと比較しながら、ビジネスシーンで利用するメリット、AIのユースケースをご紹介します。
AI PCの定義は各企業で内容が異なる場合もありますが、共通事項は以下の3点です。
AI PCにはNPUと呼ばれるプロセッサーが搭載され、ローカルでのAI処理も可能となり、従来よりも動作がスムーズになります。現段階(2024年4月時点)においてNPUに対応しているソフトウェアの数は少ないものの、今後は増加すると期待されています。
Copilotキーは、Microsoft社が提供する生成AIチャットボット「Copilot in Windows」を起動するためのキーで、Windows PCのキーボードに追加されました。
Microsoft社がCopilotを推進するように、さまざまな企業がAIを活用したサービスの普及に向けて取り組んでいます。たとえば半導体メーカーであるインテルやAMDはNPUの開発に、各PCメーカーはAIを使用した機能の搭載を進めています。
AI PCの代表的な特徴として、以下の2点が挙げられます。
従来のPCの仕組みと比較しながら、以下で特徴を見てみましょう。
AI PCで使用する演算装置(プロセッサー)は、PC内(SoC上)に設置されます。SoC(System on a Chip)とは、一つのチップ(基盤)上にさまざまなプロセッサーを内蔵した半導体のことです。
ここでAI PCに搭載されたプロセッサーについて詳しく紹介する前に、まずはAIで何ができるかをご紹介します。
AIの処理プロセスは、目的のために必要なデータの学習と推論のフェーズに分けられます。たとえば、おすすめコンテンツをレコメンドするEコマースのようなWebサイトにおいて、学習フェーズでは各データやアクセス履歴を人の手で分析しロジックを設定するのではなく、過去の購入履歴や閲覧コンテンツ、個人データをAIが学習します。
次の推論フェーズでは、学習で得られたデータを新たなデータと掛け合わせ、最適なコンテンツを推論してレコメンドします。これら学習と推論のフェーズにおいて、膨大なデータの計算や処理を行うプロセッサーが必要となります。
従来のPCでChatGPTをはじめとする生成AIなどを使用するとき、主にクラウド上に設置されたプロセッサーで処理されます。つまりPCのデータがクラウドにアップロードされ、そこで処理された結果がPCに返される仕組みです。
一方のAI PCは、クラウドではなくPC上のプロセッサー(NPU)を利用した生成AIの推論にも対応できます。ただしNPUを使うかどうかは、ソフトウェア側で設定されます。
クラウドにデータを送って処理するクラウドAIの方法と比較して、ローカルAIは処理速度が向上し、PCからデータを出さないのでセキュリティを担保できる点がメリットです。このときNPUがPCに搭載されていて、ソフトウェア側でNPUを使うよう設定されていれば、CPUやGPUに負荷をかけることなく、スムーズに作業を進められます。
これまでもローカルでAIの処理をするPCはあったため、AI PCはすでに存在していたともいえるでしょう。たとえばビデオ会議ツールの背景ぼかしやノイズ除去に、AIが利用されローカル処理されています。
しかし、CPUやGPUでは負荷が大きすぎるためAI処理に時間がかかり、消費電力がかさんだり、他の作業が遅くなったりするなどの影響がありました。そこでAIの推論処理に長けたプロセッサーである、NPUが開発されたという経緯があります。このNPUを搭載するPCを「AI PC」と呼ぶようになりました。
現在注目されている、新しく定義されたAI PCでは、PC上に設置された「NPU(Neural Processing Unit)」と呼ばれる新しいタイプのプロセッサーが利用できるようになります。NPUがPCに搭載されることで、従来のPCと比べて高性能かつ低消費電力でAIの推論処理などのローカル実行が可能になります。
そもそもPCの性能は、プロセッサーの仕様によって大きく左右されます。これまではCPUとGPUの2種類が使われてきました。AI PCでは、CPUやGPUに加えて、NPUも含めてAIの推論処理を実行します。それぞれのプロセッサーの概要は、次のとおりです。
NPUは、CPUやGPUと比較してAIの推論を処理することに長けているので、消費電力を抑えられる点が大きな特徴です。これまでCPUやGPUが消費電力を大きく使って処理していたAI推論について、NPUであれば省電力でスムーズに処理できます。CPUでは数十ワットの消費電力を要するAI処理でも、NPUであれば1/10程度の消費電力に抑えられます。
また、すでに「NPUが搭載されていなければ使えない機能」もあるのは、特筆すべき点です。たとえば、ビデオ会議で背景のぼかしなどに使われる「Windows Studio Effects」の使用には、NPUが必要となります。このように、ソフトウェア側でNPUを使用するよう設定されたアプリケーションは、今後増加すると考えられます。
さらに1秒間に何兆回の演算を実行できるかを表す「TOPS」で見ると、本原稿執筆時点で入手できるNPU単体では10〜16TOPSですが、今後は40TOPSを超えるものも販売される予定があります。ただし、PCの性能はNPU単体ではなく、CPUやGPUを合わせて総合的に性能を判断することが大切です。
クリックして拡大表示
出典:PCローカルのAI処理でユーザーに安心と便利をもたらす「AI PC」(フリーランスライター:笠原 一輝)
https://jp.ext.hp.com/techdevice/ai/personalcompanion02/
前述したように、ChatGPTやCopilotのような生成AIはクラウド上で処理されています。しかし今後のトレンドは、ローカルAI/ハイブリッドAIへ移行していくと考えられています。
ハイブリッドAIとは、これまでのクラウドAIとローカルAIを組み合わせた処理方法のことです。大規模な動作が得意なクラウドAIと、処理速度やセキュリティ向上が見込めるローカルAIの利点を組み合わせた、ハイブリッドAIへの移行が今後のトレンドとなるでしょう。
現時点において対応しているアプリ数は多くありませんが、今後増加すると期待されています。その未来に向けて、ローカルAIを効率良く実行するNPUが求められているのです。
関連リンク
ここでは、AI PCをビジネスで利用する2つのメリットをご紹介します。
NPUが搭載されたAI PCを使うと、ローカルでのAI処理性能が向上します。NPUに高い処理性能が求められるタスクを割り当てることで、従来の方法よりもAI処理の高速化が期待できます。
クラウド上でAIを処理する場合、PCとクラウド間でやり取りするデータ量が増加し、通信遅延が発生する点がデメリットです。しかしローカルAIであれば、それを回避でき処理スピードが向上します。
また従来のPCのように、CPUやGPUを使用してローカルでAI処理する場合、バッテリー消費が激しく、他のアプリケーションや作業のレスポンスが遅延することがあります。そこでNPUに負荷が大きいAI処理を任せることで、CPUとGPUが空き、PCの動作がスムーズになるなど、パフォーマンス向上が期待できるでしょう。
AI PCで生成AIをローカル処理できれば、セキュリティリスクを抑えられます。
一般的に公開されているような生成AIを使い、クラウド上でAIの推論処理を行う場合、データをクラウドにアップロードする必要があります。つまり社外秘のデータを外に出すことになるため、セキュリティ面が懸念されます。企業によっては、クラウドへのデータアップロードやAIの活用も制限されている場合があるでしょう。
しかし企業向けのCopilot for Microsift 365のように、セキュアな状態でクラウド利用も可能なAIや、ローカル処理で完結するAI PCを使うと、セキュリティリスクが低減します。AI活用の幅が広がり、業務効率化につながります。
ビジネスシーンでAIはどのように活用されるのでしょうか。ここでは、Microsoft社が提供する生成AIサービス「Microsoft Copilot」を例に挙げて解説します。
PCにWindows OSを提供するMicrosoft社は、ChatGPTを開発するOpenAI社とパートナーシップを構築しています。そのような背景からMicrosoft Copilotが開発され、WindowsにCopilotの機能を搭載した「Copilot in Windows」が展開されました。
現在はクラウドベースで利用できますが、今後NPUが使えるようになればローカルAIを実行でき、大幅な業務効率化や生産性向上が期待できます。
以下では、PC上で生成AIサービスを効率的に活用できる「Copilot in Windows」(以下、Copilot)を、資料作成や営業活動でどのように活用できるか、ユースケースを見てみましょう。なおCopilotの戦略については、以下の記事も合わせてご覧ください。
関連リンク
販促支援活動の一環としてセミナーを開催する際、以下の手順でCopilotを活用すると、セミナー企画からプレゼンテーション資料の作成まで効率的に進められます。
Copilotが実際に資料を作成する様子は、以下の記事で詳しくご紹介しています。合わせてぜひご覧ください。
関連リンク
営業活動において企業調査を行うときにもCopilotを活用できます。Copilotを使って、顧客の事業分析を効率的に行う手順を見てみましょう。
以下の記事では、実際にCopilotがURLから作成したサマリーをご覧いただけるので、合わせてご確認ください。
関連リンク
日本HPは、AI PCのラインナップを拡大しています。ここでは法人向けシリーズをご紹介します。
法人向けノートPC「HP EliteBookシリーズ」は、インテル® Core™ Ultra 5および7プロセッサーまたは次世代AMD Ryzen™ プロセッサーと、専用のNPUを搭載しています。Microsoft社が推進する「Copilotキー」もノートPCに搭載されていて、キーを押すだけでCopilotを起動できます。さらにAIタスクのパフォーマンスがパーソナライズされるため、業務効率化を促進できる点が特長です。
たとえば2024年3月下旬に発売開始された、各モデルをはじめとするインテル® Core™ Ultra 5または7プロセッサーを搭載するHPのビジネスPCは、AIテクノロジーの利用によって、従来の製品と比較して消費電力が最大38%低減。さらにビデオ編集は最大132%速くなります。また最大21時間のバッテリー駆動時間を実現し、外出先でも快適に利用可能です。
さらに「HP EliteBook 800 G11シリーズ」は、強力なパフォーマンスやコラボレーション機能が必要なナレッジワーカーに最適なシリーズです。また「HP EliteBook 635 Aero G11」は、NPUを実装するAMD Ryzenプロセッサーを搭載しています。
日本HPのAI PCラインナップについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連リンク
AI PCと呼ばれる最新のPCには、AIを活用したさまざまな機能とNPUが搭載されています。AI PCの利用によって、企業は処理能力の向上やセキュリティリスクの低減などのメリットがもたらされます。
現時点ではNPUを使用するソフトウェアの数は少ないものの、今後は数が増加すると考えられています。AI PCをビジネスシーンに導入することで、さらなる業務効率化や利便性の向上につながるでしょう。
HPは、ビジネスに Windows 11 Pro をお勧めします。
Windows 11 は、AIを活用するための理想的なプラットフォームを提供し、作業の迅速化や創造性の向上をサポートします。ユーザーは、 Windows 11 のCopilotや様々な機能を活用することで、アプリケーションやドキュメントを横断してワークフローを効率化し、生産性を高めることができます。
組織において Windows 11 を導入することで、セキュリティが強化され、生産性とコラボレーションが向上し、より直感的でパーソナライズされた体験が可能になります。セキュリティインシデントの削減、ワークフローとコラボレーションの加速、セキュリティチームとITチームの生産性向上などが期待できる Windows 11 へのアップグレードは、長期的に経済的な選択です。旧 Windows OSをご利用の場合は、AIの力を活用しビジネスをさらに前進させるために、Windows 11 の導入をご検討ください。
※このコンテンツには日本HPの公式見解を示さないものが一部含まれます。また、日本HPのサポート範囲に含まれない内容や、日本HPが推奨する使い方ではないケースが含まれている可能性があります。また、コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。
ハイブリッドなワークプレイス向けに設計された Windows 11 Pro は、さらに効率的、シームレス、安全に働くために必要なビジネス機能と管理機能を搭載しております。HPのビジネスPCに搭載しているHP独自機能はWindows 11で強化された機能を補完し、利便性と生産性を高めます。