現場での点群解析も可能な18インチノート 性能を徹底追求した「こだわり」の理由とは? ――建築業界で高まる高性能モバイルへのニーズ
2025-12-02
「持ち運べるデスクトップ性能」をうたった日本HPのモバイルワークステーション「HP ZBook Fury G1i 18inch Mobile Workstation」が建築業界の注目を集めている。ほかのモバイルワークステーションを大きく超える性能を備え、データ解析、設計、CG・動画の制作・編集などの用途に使える高性能コンピューターだ。これにより建築業界の業務はどう変わるのか。そして、この製品に日本HPが込めた思いとは。キーパーソンに話を聞いた。
※本掲載内容は2025年10月28日 『日経クロステック』 に掲載された記事広告を転載したものです
建築業界で進む3D化、高性能な作業環境が不可欠に
建築業界では近年、設計や調査などに3Dモデルを活用するBIM/CIM(ビルディング/コンストラクション・インフォメーション・モデリング)や、建築物をスキャンして取り込んだ3Dの点群座標データを基に形状・構造をデジタル化する点群解析、3D仮想空間で建物の内外をリアルに体験できるVR(仮想現実)などを活用する業務が拡大している。
そこで求められているのが、作業環境の高性能化だ。
「早くから3D化が進んだ製造業と異なり、建築業では2D CADが長く主流でした。そのため、作業環境には一般のPCが使われてきましたが、近年は急速に3D化が進行。よりハイスペックなワークステーションの利用が拡大しています」と日本HPの大橋 秀樹氏は話す。
特にコロナ禍以降はテレワークやオフィスのフリーアドレス化が進行。自宅や建築現場の詰所など、狭いスペースにも設置しやすいノート型ワークステーションが一気に普及した。日本HPの製品出荷割合も、ノート型ワークステーションは全体の4割程度まで増加しており、今後もさらに増えることが予測されているという(2025年9月現在)。
ただ、ワークステーション製品で難しいのが、モバイル性能と処理性能をどう両立するかということである。3Dデータの解析を快適に行える高性能なCPU/GPUを搭載するには、大型の電源ユニットや冷却ファンが必要になる。市場のボリュームゾーンである14/16インチ製品では、それらを搭載することが困難なため、どうしても性能の上限ができてしまうのだ。「例えば、レーザースキャナーやドローンで取得した点群データの解析など、高負荷な作業には引き続きデスクトップ型を使う必要がありました」と大橋氏は言う。
大型の冷却機構で高性能プロセッサーを安定駆動する
この状況を受けて日本HPがリリースしたのが、18インチのノート型ワークステーション「HP ZBook Fury G1i 18inch Mobile Workstation」(以下、ZBook Fury 18inch)である。
「コンセプトは『持ち運べるデスクトップ性能』です。18インチなので、カバンで持ち運ぶには相当な重さがありますが、そのくらい高性能化に振り切って開発したノート型製品ということです」と大橋氏は紹介する。
まずCPUは、インテルが高性能ワークステーション向けに開発したトップエンドのプロセッサー「 インテル® Core™ Ultra 9 プロセッサー 285HX 」を搭載。このプロセッサーは、①パフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャーを採用したArrow Lake世代の24コアのCPU(最大5.4GHz)、②4コアのGPU(最大2.35GHz)、③AI処理能力が最大13TOPSのNPU(Neural Processing Unit:AIの計算に特化したプロセッサー)とメモリコントローラー、④USBなどの外部接続インターフェース、という機能を備えた4つのチップレットで構成されており、3Dデータ解析に大きな威力を発揮する。
GPUにはインテルのXeグラフィクスのほか、NVIDIAの「RTX PRO Blackwell」も搭載。用途に応じて自動的に切り替える仕組みを備えている。電力消費を抑えたインテル製プロセッサーは外付けモニターへの画面出力などに、NVIDIA製GPUは3Dデータ解析やAI推論といった高負荷な処理にそれぞれ使われるという。「処理性能と消費電力のバランスを取ることで快適な業務遂行を支援します」と大橋氏は説明する。
また、高性能実現の要になる冷却機構については、CPU、GPU、NPUの各チップレットに1つずつ、計3つの新型高密度ブレードターボファンを設置。加えてCPUとGPUの下部には「ベイパーチャンバー」も搭載している。
「ベイパーチャンバーとは、気化しやすい液体を入れた銅製のヒートパイプを、チップレットを取り囲む形状に配置し、発熱によって液体が蒸気(Vapor)になる際の気化熱で温度を下げる仕組みです」(大橋氏)。銅板のヒートシンクよりも放熱効果が高いため、同社のワークステーション製品の多くに採用されている。このような仕組みを複数組み合わせることで、CPU/GPUの温度を効率的に下げ、性能の最大化と安定駆動につなげているという。
メモリーは最大4スロット、128GBを実装可能。また、大容量データの取り回しを考慮して有線LAN端子も搭載している。これら一連のスペックの多くが、18インチという大型サイズであることによって実現可能になったのだ。
点群データをその場で取り込み、確認することが可能に
ZBook Fury 18inchは建築業界にどのような価値をもたらすのか。分かりやすいのは点群解析の業務だ。
ドローンやレーザースキャナーを用いて、実在する建築物の形状を読み取り、それを3D空間上に点で配置したものが点群データである。膨大な点群データを基に、建物の形状・構造を可視化することで、設計図面や3Dモデルの作成に役立てる。
「スキャナーによる点群データの取得精度は100%ではないため、データを取り込んだ時点で取得漏れに気付くケースがあります。その場合、データを再スキャンする必要がありますが、文化財などの建物は立ち入れる時間に制限があることが多く、再スキャンは簡単に行えません。そのタイムロスが施工スケジュールに影響してしまいます」と大橋氏は言う。
このような事態を回避するため、現地にデスクトップ型ワークステーションを持参する企業もある。先に紹介した通り、14/16インチ製品では点群解析を実行することが難しいからだ。
ZBook Fury 18inchは、そのような課題を解決する。「事前に設定を済ませて、1箱に詰めて送っておけば、現場で立ち上げてすぐ作業を開始できます。スキャン後、その場で点群データを取り込み、取得漏れの確認や解析を行うことで、スムーズに次のプロセスに進むことができるでしょう」と大橋氏は言う。
屋外などのハードな環境での利用も問題ない。日本HPのPC/ワークステーション製品はすべて、米軍調達基準で規定された厳しい耐久性試験をクリアしているからだ。動作温度は0~35度、動作湿度は10~90%(非結露)で、落下や振動への耐性も高い基準を満たしているという。
ワークステーション専任のエンジニアがサポートする
万一の故障や、使い方の質問などに対応するユーザーサポートも充実している。3年間の休日サポート付き保守、訪問修理保守といった標準サービスに加えて、ワークステーション製品向けの専用窓口を用意。ここでは経験豊富な専任エンジニアが、受付時から対応するという。
「ハードウエアの不具合はもちろん、ドライバーやBIOS関連と思われる不具合まで、過去の対応データを基に広範なトラブルの対応をご支援します」と大橋氏は語る。
このようにZBook Fury 18inchは、モバイルワークステーション市場にこれまでにない価値を提案する製品といえるだろう。“尖った”製品であるがゆえ、爆発的に普及することはないかもしれない。だが、そこまでこだわることにHP Inc./日本HPというPCメーカーの矜持がある。「ニーズがある限り、そこに最高の製品を届ける」――。ZBook Fury 18inchからは、そんな同社の思いが伝わってくる。
「当社は日本の建築業界のお客様の声を非常に重要視しています。今後も様々なニーズにお応えしながら、お客様のDXをご支援していきます」と大橋氏は最後に語った。
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