映像クリエイターが選ぶべき「安定性」という武器 ―― HP Z2 Tower G1i Workstation
2025-09-18


映像家の井上卓郎です。
映像制作の現場において、「速さ」と同じくらい重要なのが「安定性」です。どれだけハイスペックなマシンでも、肝心な時にクラッシュしてしまえば意味がありません(みなさんも経験ありませんか?)。
今回は、HP Z2 Tower G1i Workstationを実際に使用し、DaVinci Resolve Studio 20で検証してみました。
※本記事はVookにて掲載されたものです。
HP Z2 Tower G1i Workstation
OS | Windows 11 Pro |
---|---|
CPU | インテル(R) Core(TM) i7-14700 プロセッサー (2.1GHz / 20Core / 33MB / 5600MHz) |
GPU | NVIDIA(R) RTX 2000 Ada 16GB |
メモリ | 64GB DDR5 SDRAM(4000MHz / Non-ECC / Unbuffered / 16GBx4) |
ストレージ | 1TB HP Z Turboドライブ G2 (内蔵M.2スロット接続 TLC SSD) DVDライター(スリムライン) Intel(R) I219LM ギガビットイーサーネット・インターフェイス(オンボード、リア1ポート) |
価格 | ¥641,000 (税別)(税込 ¥705,100 ) |

映像家
- DaVinci Resolve認定トレーナー。北アルプスの麓、長野県松本市を拠点に、自然やそこに暮らす人を題材とした映像作品を作っている。人や自然を演出することなく自然な形で表現することを心がけ、自然の中にゆっくり溶け込みながら撮影しています。
- 公式サイト:Happy Dayz Prodcutions X:@happydayz_taq
井上さんの作品例はこちら
ワークステーションとゲーミングPC、何が違うのか?
HP Z2 Tower G1i はワークステーションです。
ワークステーションという言葉は聞いたことがあると思いますが、実際普通のPCと何が違うの?と思いませんか?私もワークステーションと普通のPC、特に性能が高いゲーミングPCとの違いを知りませんでした。どちらも高性能なCPUとGPUを搭載し、似たようなスペックに見えることがあります。しかし、その設計思想と実用性には大きな違いがあります。
設計思想の違い:「止められないプロ仕事用マシン」vs「高フレームレートとコスパ重視の万能パソコン」
ワークステーションは、24時間連続稼働を前提とした「作業を止められないプロ仕事用マシン」として設計されています。この表現には、単に「ソフトが落ちにくい」以上の深い意味があります。
まず、ハードウェアレベルでの信頼性が徹底されています。専用設計のマザーボード、電源、そして長時間動作を想定した冷却設計。これらにより、突然のフリーズやデータ破損のリスクを大幅に低減します。
さらに重要なのがドライバとISV認証です。Adobe、Blackmagic Designなど主要なアプリケーションごとに動作保証されています。HP Z2 Tower G1iもDaVinci ResolveやAdobeソフトウェアの動作認証を受けており、この安心感は自作PCにはありません。
一方、ゲーミングPCは高フレームレートの実現とコストパフォーマンスを重視した設計です。同スペックでも比較的リーズナブルで、ゲームとクリエイティブ用途を両立できる万能性が魅力ですが、動作保証は自己責任となることが多いです。
ワークステーションについては以前日本HPのワークステーションビジネス担当者の方にお話しを伺ったので興味のある方はご一読ください。
▼ 井上さんが日本HPのご担当者にお話を伺った記事はこちら
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[デザイン、内部設計]コンパクトな筐体に込められた設計哲学、エアフローを徹底的に追求したデザイン
HP Z2 Tower G1iは、サイズ的にはミドルタワー相当の拡張性を備えたコンパクトタワーです。私が普段使っているフルサイズタワーの自作PCと比較すると、そのコンパクトさは非常に魅力的です。
デザインもとても魅力的です。特にフロントパネルは立体感のあるメッシュ構造でクリエイター向けPCとしてもとても良いですね(最近の高級車のフロントグリルのようなデザインで好きです)
筐体の設計を見ると、フロント、サイド、底面すべてがメッシュ構造になっており、前面から背面へと一直線に空気が流れる設計です。3つのファンが前から後ろへ空気を送り、CPUクーラーも大型のものが搭載されています。内部にギッチリとパーツが詰まっているわけではなく、エアフローを阻害しない配置が徹底されています。
プロ仕様の接続性
接続性においてもワークステーションらしい配慮が随所に見られます。フロントには4つのUSB3.0(10Gbps)と2つのUSB-C(20Gbps)、ヘッドフォン端子を配置。最近では珍しいDVDドライブも搭載されており、レガシーメディアへの対応も考慮されています。背面には5つのUSBポート(内2つは10Gbps対応)、マザーボードから2つのDisplayPort、そしてシリアル端子まで用意されています。
ただしお借りしたこのモデルはHDMI端子はついていませんでした。DisplayPortがついたモニターもしくはHDMIへの変換機器が必要となります。
高解像度映像の編集には外部の高速SSDやRAIDシステムを使うことをオススメします。フロントには20GbpsのUSB-C端子がついていますが、背面にも高速なUSB-CもしくはThunderbolt端子が欲しいところですね。
ネットワーク通信周りでは、WiFi機能は搭載されていないため、ネットワーク接続にはLANケーブルが必要です。有線接続による安定したネットワーク通信を重視した設計と言えるでしょう。
余談ですがシリアル端子は、映像制作をする上ではあまり目にすることはありませんが、製造業の工作機械や測定機器、一部の業務用映像機器と接続する用途ではいまだに現役です。USB接続も増えましたが安定性を重視する「止まっては困る現場」ではいまだに使用されています。
内部アクセスの容易さとメンテナンス性
サイドパネルは取手のレバーを引くだけで簡単に外すことができます。内部はスッキリと整理されており、エアフローはとても良さそうです。マザーボードはHP自社設計生産品で、ワークステーション的な安定性を供給するためには既製品のマザーボードでは不十分という判断が伺えます。
PCIスロットはPCIe 4.0のx16とx4が一つずつ空いており、BlackmagicのDecklinkなどの拡張カードを追加できます。ただし、拡張を行った場合は保証対象外になる可能性があるため、事前の確認が必要です。
[CPU]インテル® Core™ Ultra 9 285K:次世代アーキテクチャを映像制作で使うメリット
HP Z2 Tower G1i の心臓部には、インテル® Core™ Ultra 9 285Kが搭載されています。これはCore Ultraシリーズの最上位モデルのCPUで、従来のCore iシリーズから大きく進化したハイブリッドアーキテクチャを採用しています。
映像編集においては、編集・AIエフェクト・エンコードを同時並行しても余裕があり、静音かつ安定した動作が魅力です。
DaVinci Resolve Studioの最新版 バージョン20ではAIを使った機能が大幅に進化しましたが、複雑な処理中でもインターフェースがスムーズに動作し、クリエイターのワークフローが中断されることがありません。
また、インテル® Core™ Ultra 9 285Kは長時間のレンダリング作業や、複数のアプリケーションを同時に使用するマルチタスク環境で真価を発揮します。
AI処理における専用アクセラレーション
インテル® Core™ Ultra 9 285Kには、AI処理専用のNPU(Neural Processing Unit)が搭載されています。これは従来のCPUやGPUとは異なる専用アクセラレーターで、AI機能を効率的に処理できます。DaVinci Resolveの機械学習ベースの機能(顔認識、オブジェクト追跡、ノイズリダクション等)において、NPUがCPUやGPUの負荷を軽減し、全体的なシステムパフォーマンスの向上に貢献します。
このNPUは特に継続的なAI処理に威力を発揮し、長時間のプロジェクトでも安定したパフォーマンスを維持できます。後ほどの検証でもAIを使った機能で大きな力を発揮しました。ちなみに私ははじめてNPUという言葉を知りました。4年前に自作PCを組んだ時は今ほどAIは注目されていませんでした。
[GPU]瞬発力か安定性か――GeForce vs RTX 2000 Adaの選択基準
搭載されているRTX 2000 Adaは、プロ向けワークステーション用GPUです。最大の特徴は16GBのVRAMとECC(Error Correcting Code)対応です。VRAMは多いに越したことはありませんが、16GBあればDaVinci Resolveの多くの機能で不満はありません。またECC機能によりメモリエラーの自動修正も行われるので動作も安定しています。4Kや8Kなどの高解像度の映像を編集する際、パフォーマンス低下やクラッシュのリスクを大幅に軽減できます。
みなさんがよく知るGeForceとの違いはRTX 2000 Ada「プロ現場の止まらない安心」GeForce「瞬発力重視のパワー系」というところでしょうか。
HP Z2 Tower G1iはGeForceも搭載できる設計となっており、ハイパフォーマンスなGeForceを搭載したモデルも販売開始されるようです。GeForceを搭載する場合はHDMI端子がついているので便利になりそうですね。
[検証]DaVinci Resolve Studio 20での実証検証
DaVinci Resolve Studioの最新版 バージョン20ではAIを使った機能が進化した分、PCへの負荷も大きくなりました。
今回の検証では、手持ちのMacBook Pro M1 Maxとの比較を行いました。やや古いマシンとの比較ではありますが、買い替えを検討している方の参考になるはずです。
今回テストをした項目は下記の5項目
CPU、GPU共に負荷がかかる処理を選んでみました。
① AIマジックマスク2 : AIを使ったマスク処理のトラッキングにかかる時間
② ノイズリダクション AI Ultra NR : AIを使ったノイズリダクション 60秒の映像のレンダリング時
③ ノイズリダクション 時間的NR:従来からあるノイズリダクション 60秒の映像のレンダリング時間
④ 4K UHD 10分の映像 H.265 2Passでレンダリング時間/⑤4K UHD 10分の映像 H.264 2Passでレンダリング時間
CPUの能力を活かすレンダリング速度などは速くなることを想定していましたが検証した結果、GPUの性能が必要と言われるAI系の処理能力がとても高かったです。
正直なところ、4年前のPCとはいえ最もハイスペックな構成にしたMacBook Proとは大きな差がないと予想していました。しかし、AI処理において大幅な性能差が現れました。
AIを使った機能について、AI Ultra NRとAIマジックマスク2の検証結果を見ると、共にHP Z2 Tower G1iの方が約3倍の高速処理を実現しています。これは、インテル® Core™ Ultra 9 285KのNPU(AI処理専用アーキテクチャ)やRTX 2000 AdaがAI処理に最適化されていることが大きく影響していると考えられます。重いAI処理になるほど性能の差が大きくなりそうです。
エンコード処理について: H.264では若干の優位性を示しましたが、H.265ではM1 Maxが健闘しています。ただし、安定性と継続性を考慮すると、長時間のレンダリング作業ではワークステーションである[HP Z2 Tower G1i]https://jp.ext.hp.com/workstations/z2_tower_g1i/)の優位性が発揮される場面が多いでしょう。
クリエイターがワークステーションを選ぶ意味
「原因不明のトラブル」からの解放
自作PCユーザーなら誰もが経験したことがある「原因不明のクラッシュ」や「突然の不具合」。これらのトラブルシューティングに費やす時間は、クリエイターにとって大きな悩みです。ワークステーションは、こうした不安定要素を最小限に抑え、クリエイティブワークに集中できる環境を提供します。
長期サポートと動作保証
ワークステーションのもう一つの大きなメリットは、長期サポートと動作保証です。主要なクリエイティブソフトウェアとの互換性が保証されており、OSやアプリケーションのアップデート後も安心して使用できます。
まとめ
HP Z2 Tower G1i は単なる高性能PCではなく、クリエイターにとって欠かせない「安定性と高性能」を両立したPCであることを実感しました。
優れたAI処理能力による時短効果に加え、負荷の高い処理でも「止まらない安定性」という安心感が得られることで、突然のトラブルへの不安から解放されます。クリエイターは技術的な心配をすることなく、安心してクリエイティブワークに集中できる環境を手に入れることができるでしょう。
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