『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で導入された映画制作技術を「体験」へ
2026-04-30
「エヴァフェス」ヴァーチャルカメラスタジオの舞台裏とHPのZシリーズが果たした役割
株式会社カラー
BASSDRUM
2026年2月21日から23日まで横浜アリーナで開催された「EVANGELION:30+;30th ANNIVERSARY OF EVANGELION」。『エヴァンゲリオン』シリーズ30周年を記念したこのイベントでは、巨大LEDによるセントラルタワーを中心とした展示周遊が可能な「EVA EXTRA 30」エリア、多彩なステージエンタテインメントを提供する「STAGE AREA」にセパレート、エヴァの“これまで”と“これから”を表現する多彩な展示が来場者を迎えた。
そんな中で多くの来場者の注目を集めていたのが「ヴァーチャルカメラスタジオ」だ。来場者自身がヴァーチャルカメラを手に取り、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2021年3月公開)の世界を実際に撮影できるこの展示は、鑑賞型展示とは一線を画す体験型コンテンツとなっていた。
このヴァーチャルカメラスタジオは、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』における初号機VS第13号機の戦闘シーン制作で、実際に制作現場で使われたヴァーチャルカメラシステムを基盤に構築されている。体験後には、自身が撮影したカメラワークの映像をダウンロードできる仕組みも用意され、イベント期間中は多くの体験動画がSNSに投稿された。
このヴァーチャルカメラスタジオがどのような思想とプロセスを経て生まれ、どのようにして映画制作の技術が「体験」へと変換されたのか。ヴァーチャルカメラスタジオが生まれた背景を株式会社カラー デジタル部の釣井氏、株式会社カラー システム部の阿部氏、BASSDRUM 中田氏に、実装・運用の舞台裏についてBASSDRUM 中田氏、小川氏、村山氏にうかがった。
阿部氏(後列左):株式会社カラー システム部所属。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の制作において、ヴァーチャルカメラシステムの開発・運用を担当。庵野秀明総監督をはじめとする制作陣が使用するシステムの構築から、実際のヴァーチャルカメラでの撮影作業まで幅広く関わった技術スペシャリスト。
中田氏(後列右):BASSDRUM所属。映像とデジタル技術を掛け合わせた体験型コンテンツを得意とする。今回のイベントでは釣井氏、千合氏とともに総合演出をつとめ、ヴァーチャルカメラスタジオにおいては技術と表現の橋渡し役として企画立案から制作全体に関わった。
小川氏(前列左):BASSDRUM所属。AR技術を活用したR&D業務に従事し、ヴァーチャルカメラスタジオではユーザー登録から動画生成・配信までの全体的なシステム開発のテクニカルディレクションを担った。
村山氏(前列右):BASSDRUM所属。展示からアプリまで幅広い領域のシステム開発に従事。ヴァーチャルカメラスタジオでは、iOS用ARカメラアプリ及びPC用3Dレンダリングアプリのシステム開発のテクニカルディレクションを担った。
ライター:武者 良太
『エヴァ』の歴史を振り返るだけでなく、「次の作り手」へつなげる
この企画の発端は、イベント開催の2年以上前にまでさかのぼる。イベント全体の総合演出を担当した株式会社カラー デジタル部の釣井氏は、イベントのテーマ設定について以下のように振り返る。
過去を振り返る回顧展ではなく、次の時代の作り手につなげる場にしたい。その思想を、実際の体験コンテンツへと翻訳する役割を担ったのが、BASSDRUMの中田氏だった。
検討段階では、ARを用いた屋外演出など、大規模なアイデアも数多く俎上に載せられた。たとえば「横浜の街の上空に巨大なAAAヴンダーを出現させる」といった構想も、そのひとつだ。しかし、来場者の安全管理や交通規制といった問題から、屋外演出は断念されることになる。アリーナという限られた空間の中で実現でき、なおかつ来場者にとって濃度の高い体験は何かを逆算した結果、映画制作で実際に用いられていたヴァーチャルカメラシステムに光が当たった。
起点は『シン・エヴァ』制作現場のヴァーチャルカメラシステム
ヴァーチャルカメラスタジオを理解するうえで欠かせないのが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』制作時に使用されていたヴァーチャルカメラシステムとの連続性だ。カラーでシステム開発を担当した阿部氏は、その開発背景について次のように語る。
初期段階では映画用カメラサイズのARコントローラーが用いられていたが、長時間の使用による疲労が問題となり、最終的にはミラーレスカメラ型の軽量なコントローラーへと進化していった。
このヴァーチャルカメラシステムにおいて重要視されたのが、映画における「1フレーム」の重みだった。
釣井氏は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を制作中、ヴァーチャルカメラシステムによって撮影されたカットのサムネイルを目にした時の印象をこう振り返る。
制作技術を「体験」に変えるという挑戦
そうして釣井氏をはじめとしたクリエイティブチームとBASSDRUMのテクニカルチームが案を突き合わせながら、「来場者体験として成立するもの」へと収束させていった。
来場者が撮影した映像のエンドクレジットに自分の名前が入る設計、おみくじ形式で『エヴァ』の名セリフが印刷されるレシート、そして体験映像をダウンロードして持ち帰るといった来場者への体験設計もこの段階で生まれている。
エンタメとしての楽しさと、クリエイターとしての視点を重ねて体験できる設計が、イベント全体のテーマと接続していたといえる。
映画制作の裏側にある思考や試行錯誤を、観るのではなく、触れて理解する。その試みは、『エヴァンゲリオン』シリーズの世界観を次の世代へ手渡すための、新たなアプローチだったと言えるだろう。
なぜ、この体験は来場者に受け入れられたのか
ヴァーチャルカメラスタジオは、多くの来場者に喜ばれた展示となった。実際に自分が体験していなくとも、後ろから体験者のカメラワークをディスプレイ越しに見て、「いまのアングルいいね!」「斬新な視点だね」「これは庵野さんのようなカメラワークだね!」と笑いながら感想戦をするなど、多くのコミュニケーションを生んでいた。
なぜヴァーチャルカメラスタジオは面白いのか。BASSDRUMの小川氏は、その本質をCGと実写撮影の差異から説明する。
実際の体験は、約1/500スケールのミニチュアを空撮するような感覚になったという。
この判断には、来場者の多様性への配慮があった。プロのカメラマン感覚に近いユーザーから、映像制作に初めて触れるファンまでを対象にしながら、どちらにも違和感なく楽しんでもらえる水準を探った。
技術以上に難しかったのは「運用」
開発において最も時間を要したのは、イベントとして安定した体験を届け続けるための運用設計だった。トラッキング方式の選定では、精度だけでなく、回転率やキャリブレーション負荷といった運用面の現実性が重視された。
また、ヴァーチャルカメラとして使用されたiPhone Proシリーズは、長時間AR処理を行うことで発熱し、サーマルスロットリングを起こして処理能力が落ちてしまい性能が低下する可能性があった。そのため、カメラのオンオフマネジメントやUI設計段階からの冷却時間確保、さらには冷却装置の取り付けまで、とにかく「運用を止めない」ための準備が必要だった。ARマーカーの精度は利用環境の明るさにも大きく影響を受ける。精度を担保するために、会場照明まで含めて計算し尽くすなど、いかに利用者にストレスを与えず、コンテンツに集中できるかを追求していた。
現場を支えたHP Z6 G5 A Workstation(以下、Z6)
こうした厳しい条件の中で、バックエンドを支えるワークステーションとして採用されたのがZ6だ。今回のイベントでは、GPUにNVIDIA RTX™ 6000 Ada、CPUにAMD Ryzen™ Threadripper™ を採用した構成で運用され、長時間の高負荷稼働にも対応できる環境が整えられた。
具体的な構成としては、AMD Ryzen™ Threadripper™ 24コア以上(最大96コア)、メモリ128GB以上、SSD 1TB以上を搭載したマシンに、NVIDIAの協力のもとVRAM 48GBを誇るNVIDIA RTX™ 6000 Adaを全マシンに搭載。スペックの細部は機材によって異なるものの、3日間のイベントを通じた安定稼働を前提とした、高性能かつ長時間運用を意識した機材選定となっている。
また、Z6は高性能を長時間維持するための優れた冷却構造を備えた筐体設計が特徴だが、その分、筐体外部への排気温度が高くなる。マーカーの台に設置する際に熱がこもらないよう、設置方法についても事前に入念な議論が行われたという。
実際、イベント期間中に不意なシャットダウンは一度もなく、用意されていたスペア機が使われることもなかった。
GPUが変えた、体験の回転率
HP Zシリーズの活躍は、単なる安定稼働にとどまらなかった。会場には5つのヴァーチャルカメラスタジオブースが設けられ、各ブース毎にZ6が設置された。更にそれぞれで撮影された映像はネットワーク経由で別のZ6に集約された。ここで体験者に共有する動画データがリアルタイムで生成されている。つまり計6台のZ6が同時にフル稼働するシステムが構築された。
CPU処理では1本あたり約1分かかってしまうところ、GPUを活用した並列処理を行うことで、10秒以下へと短縮されている。これにより、体験後すぐに動画をダウンロードできる環境が実現し、待ち時間を最小限にすることで、体験可能な人数のキャパシティ、個々の体験の質を大きく向上させた。
体験中の映像は正面のディスプレイにも表示され、ラウンジでは完成した映像も上映されたことで、体験できなかった来場者も映像を楽しめる設計となっていた。「人が体験している様子を見るのも楽しい」という視点が、フェス全体の一体感を高めていた。
技術を、次の世代へ
イベント終了後、「CGのカメラワークという仕事があることを初めて知った」という感想も寄せられたという。今後のアニメ制作においてプリヴィズやヴァーチャルカメラの重要性はさらに高まっていくため、制作におけるこうした技術は更に進化していくといえる。
中田氏は「ヴァーチャルカメラスタジオ自体をアップデートしたいとも感じます。今回はワンカットだったが、体験者もカット編集できるシステムなどコンテンツ価値を高める余地はまだまだ大きい。世の中に技術はたくさんある。その技術と表現をいかにマッチングできるか、それによってもっと面白いものが生み出せていけるはず」と進化の可能性について語った。
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