【検証事例・株式会社CHINTAI】HPワークステーションで実現するローカルLLMによる掲載物件の自動チェックシステムを構築
株式会社CHINTAI
2026-05-14
不動産業の中でも賃貸業務では広告やチラシによる物件の宣伝が欠かせない。しかし誤認をさけるための厳正なルールがあり、業界ではそのチェック作業に追われる日々が続いている。株式会社CHINTAIでは生成AIによる業務効率化に早期から取り掛かっており、今回はローカルLLMによるチェック業務の自動化をテーマとしたPoCを実施、その可能性を模索した。どのような結果が出たのか担当者に話を伺ってきたので紹介しよう。
取材:中山 一弘
目的
- 賃貸物件における媒体掲載時のチェック業務をローカルLLMで自動化
アプローチ
- HP・調和技研が主導しているワークステーションを活用したPoCキャンペーンへの参加
端末の評価
- システムに必要なスペック・モデルについての最適な提案
- 大規模データ群への対応にも十分な手応え
- パフォーマンスの余力を活かしたチラシ・契約書・広告といった各審査業務への横展開も視野に
運用の効果
- チェック業務に対して一定の成果と良好なレスポンスを確認
- 掲載物の内容により複雑なデータ抽出があることを確認
- 業界特有のニーズに対するアプローチの必要性を確認
厳正なルールに準拠するための生成AI活用を模索
お部屋探しのリーディングカンパニーである株式会社CHINTAI(以降、CHINTAI)は、「住まい」「お部屋」をベースに、暮らしを豊かにするためのさまざまなサービスを運営するメディア会社だ。1992年4月の設立以来、賃貸物件を紹介する雑誌やインターネットによる情報提供などを通じて、利用者に厚い 信頼を勝ち得ることに成功している。
また、デジタルテクノロジー活用にも積極的で、AIによる物件提案ができる「CHINTAIエージェント」なども展開。時代のニーズに合わせたサービス展開により、多くのユーザーが望む形の賃貸物件提案を続けている。
そんなCHINTAIは自社業務においても生成AI活用に取り組んでおり、業務効率化や生産性向上に直結する使い方を検討するプロジェクトも立ち上がっている。その場では盛んな情報交換がなされているのだという。
「私が所属する情報審査室は、不動産物件情報・広告に記載されている情報が正確なものなのかを担保する役割を持っています。不動産に関する情報には様々な規制があり、それらを細かくチェックするために多くの労力が必要とされているのが現状です 」と語るのはCHINTAI 情報審査室 マネジャー の折戸 好美 氏(以降、折戸氏)だ。
「物件情報自体は世間に出ているものになりますが、扱いとしては個人情報に準ずるものです。そのため、日常の業務の中でも情報の取り扱いには慎重を期しています。これらの情報管理に生成AIを使いたかったのですが、クラウドにアップロードするわけにはいかないため、どのような方法があるのか模索していました」と語るのは同じく情報審査室のスペシャリスト保科 里佳 氏(以降、保科氏)だ。
そのタイミングでCHINTAIを訪れていたのはHPの三好氏だ。「お話を伺ったのですが、まさに弊社が得意としているワークステーションを活用したローカルLLMで解決できる課題だとわかりました。ちょうどローカルLLMのPoCキャンペーン中だったので、担当部署へ急ぎ連絡をとらせていただきました。CHINTAI様に自社内でセキュアに構築できるローカルLLMの可能性を感じてもらえればと思っていました」と同氏は語る。クラウドを利用せず社内環境で完結するローカルLLMとワークステーションを採用することで、漏洩リスクが問題になる機密・機微情報の高い不動産情報を外部に送信することなく安全に処理できる点でCHINTAIはPoCに合意。情報審査室の課題解決へ向け、ローカルLLMのPoCが開始されることになった。
深い理解が必要とされる業界特有のニーズ
2025年7月、CHINTAIにおけるPoCの実施へ向け、要件定義のための打ち合わせが開始された。その結果、従来はユーザー申告に基づき、都度人手によるマニュアル対応を行っていた作業の自動化が可能であることがわかった。「当初は社内のガイドラインに応じたチェック項目があるというお話だったので、シンプルな内容の分析になると考えていました。ところが実際の業務フローを伺ったところ、非常に奥深い内容だったのです」と語るのはHPのパートナー企業であるAI開発事業者、株式会社調和技研の武藤氏だ。
不動産業務の中のルール準拠について人間がチェックする場合は正誤の判断でいけるような内容でも、例えば間取り図内のテキストの正誤確認の場合、生成AIではただの図形と認識されてしまいチェック漏れが出やすい部分があったのだ。「チェック漏れが出やすい部分や、人間が再チェックしたほうがよい部分を分かりやすく表示するといったように、業務ルールと生成AIの得意不得意を切り分けながら、知見を深めていくような進め方が中心となりました」と武藤氏は説明する。
「PoC中のシステムの中核となるワークステーションには『HP Z6 G5 A Workstation』をご提供し、生成AIには2025年8月に公開されたローカル実行可能なLLMのオープンモデル「gpt-oss-120B」を採用しました。グラフィックスには NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwellを使用しています。「gpt-oss-120B」はOpenAI社が公開したLLMで、同社の既存のクローズドモデル(o4-mini)と同等の精度を保ちながら、ローカルLLMとしてNVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Max-Q で動作させることで、クラウド生成 AIよりも 高速なレスポンスを実現できます。
完全にローカルで動作させることが可能なため、不動産関連の機微な情報が外部に流出するリスクは極めて低いです。CHINTAI様が取り扱っていらっしゃる不動産情報は膨大ですが、それらを取り扱う場合でも快適に動作するスペックになっています」と語るのはHPの勝谷氏だ。
「これまでも掲載物件のチェックは行ってきましたが、時間と人数の点で非常に厳しい環境でした。生成AIによって多くの処理がスムーズに処理できれば大きなメリットとなると期待していました」とPoCへの当初の期待を語る折戸氏。
「生成AIに関しては弊社内でGoogle Workspaceを利用している関係で、主にGeminiを日常的に使っていますが、ハルシネーションが気になっており、その点もワークステーションとローカルLLMでどこまで改善されるのか確認したいと思っていました」と保科氏も当時を振り返る。
HP・調和技研とCHINTAIによるPoCは、このような対話を通じてトライアンドエラーを続けながら進行していった。
PoCにより最大約60倍の効率化を確認
2026年3月、PoCが正式に開始されてから終盤へと近づいた段階ではあるが、取材時の状況をCHINTAIではどのように感じているのだろう。「PoCが進むにつれ、チェック速度も向上して、これまで1件あたり人間の確認作業として3分程度が必要だったものが、AIを活用することで3秒で終わるようになりました。 目視とは比較にならない良好な結果です」と保科氏は感想を語る。今回のPoCでは最大で60倍の効率化を実現することが可能であることが判明したのだ。
「本当に素晴らしい結果が得られていると思います。一方で当初も課題となりましたが、写真や図の中に書かれている内容のチェックについてはグレーと判断するシステムにしたため、再確認が必要となる部分も残っています。例えば、グレー判断となる大きな要因である画像や図の解析のみを別のAIに任せるといったことも含めて、今後のテーマにしたいと思いました」と折戸氏は現状を受け止める。
「今回のCHINTAI様でのPoCで課題となった業界特有の細かなルール設定など、特定業務の中では当然とされることでも外部の人間には細部までは見えないということがあるということが今回の件でよく理解できました。今回は時間の関係でチェック結果を『〇△×』の3種類で出すことにしましたが、本番システムの場合には折戸様がおっしゃる通り、難しい判断の部分についても改善の余地はあると思いました。いずれにしてもPoCの中でお客様と接点を持ち、意思疎通を繰り返すことの重要性も実感することができ、私としてはとても良い経験をさせていただいたと思っています」と武藤氏もPoCを振り返る。画像内テキストなどの非構造データについては完全自動化には至らず、人手による再確認を前提としたより業務に即した運用設計が必要であることも明らかになった。
一般的なAIコンサルティングとは違い、AI開発のエキスパートとハードウェアのプロフェッショナルによる実際のシステム構築を通じたコミュニケーションが得られる点で、HP・調和技研が提供するPoCキャンペーンは希望するユーザー企業だけでなく、提案する側にも様々な学びが得られる機会となっているのだ。
今回のPoCを通じて、ルールに準拠した記載がされているかのチェックに重点を置いた内容でローカルLLMのパフォーマンスを確認することができたCHINTAI。本格的な導入へ向け、どのような感触を得ることができたのだろう。
「物件広告はあくまでも全体を見ながら内容に問題がないかどうかをチェックしていくものなので、生成AIによって総合的にスクリーニングできるようになれば活用できる幅も広がっていくと思います。そうしたことをさらに深く掘り下げていけるように、HP様と調和技研様には今後もいろいろと教えていただきたいと思っています」と語る保科氏。
「グループ全体で言えば、インターネット上のポータルサイトでの広告掲載以外にも、ポスターやチラシなどの広告物もあります。『審査』という範囲だけをみても、PoCで体験した生成AI活用は横展開が可能だと考えています。今回のためにご提供いただいたワークステーションのパフォーマンスにはまだまだ余力があるとお聞きしました。そうした複数の目的のための生成AIを1台のワークステーションで動かすことができれば非常に使い勝手もよくなると想像しています。今後もみなさまにご相談させていただきたいと思っています」と折戸氏は最後に語ってくれた。HPと調和技研は今後も本PoCの成果を踏まえ、実運用に向けた高度化と横展開の支援を継続していく。
複数の目的のための生成AIを1台のワークステーションで動かすことができれば非常に使い勝手もよくなると想像しています。
情報審査室 マネジャー
折戸 好美 氏(左)
同
情報審査室 スペシャリスト
保科 里佳 氏(右)
ビジネス開発部事業推進グループ
マネージャー
武藤 悠貴 氏
サービス・ソリューション事業本部
クライアントソリューション本部 ソリューション営業部
三好 健夫 氏(左)
同
ソリューション営業本部 ワークステーション営業部
AI/DS市場開発担当部長
勝谷 裕史 氏(右)
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※本ページに記載されている情報は取材時におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承下さい。
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