2022.07.25
気候変動問題が加速度的に深刻化していることが、世界中で取り上げられています。日本におけるエネルギー利用については、化石燃料に対する依存度の高さなどが問題になっており、その解決策となり得るのが再生可能エネルギーの活用拡大です。
各種再生可能エネルギーの特徴や、世界や日本を取り巻く状況、企業が脱炭素経営において再生可能エネルギーを活用するうえで考慮すべき点について、わかりやすく解説します。
再生可能エネルギーは有限な資源である石油や天然ガスとは異なり、自然によって常に生み出され続けるエネルギーを指すものです。活用のメリットとしては、温室効果ガスの削減やエネルギー自給率向上による経費節減などがあげられます。
カーボンニュートラルを達成するには再生可能エネルギーの活用が欠かせません。現状、日本における発電エネルギーは、石油・石炭・天然ガスなど化石燃料由来の割合が多くなっています。また原油は90%が中東に依存している状況です。
環境負荷を軽減するためにも再生可能エネルギーは重要な役割を果たすのは当然ですが、日本の産業における日本企業のエネルギー開発により、現在の輸入に頼る各種リスク軽減という側面からも日本の重要な課題といえるでしょう。
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世界の再生可能エネルギー比率は、2019年度において、カナダ66.3%・イタリア39.7%・スペイン38.2%・ドイツ35.3%・イギリス33.5%と、世界をリードしています。再エネ発電導入容量では、中国が934GWと群を抜きました。太陽光発電導入量でも同様に中国が2位のアメリカに大差をつけて1位となっています。
日本におけるエネルギー政策の基本方針は、安全性(Safety)を大前提として、自給率(Energy Security)、経済効率性(EconomicEfficiency)、環境適合(Environment)を達成するS+3Eというものです。日本における再生可能エネルギー由来の電力比率は、2019年において18%となっています。
再エネ発電設備容量は世界第6位・太陽光発電では世界第3位となっており、他の先進国にやや後れを取っている状況です。政府が示した第6次エネルギー基本計画では、再エネ比率36~38%という野心的な目標が掲げられています。
再生可能エネルギーの種類と特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。
水力発電は、水の流れる勢いを利用して発電を行う方法です。水資源が豊富な日本では、古くから利用されている手法となっています。近年では、中小水力発電の建設も増えています。
シリコン半導体に自然光が当たると電気が発生する仕組みを利用しているのが太陽光発電です。太陽光を集めて、太陽電池を用いることで、直接電気に変換できます。日本では積極的に太陽光発電を導入しており、中国・ドイツとともに世界をリードする導入量を誇っています。自家消費されなかった太陽光発電による余剰電力を国が買い取る、固定価格買取制度(Feed-in Tariff(フィード・イン・タリフ)も2009年より実施されてきました。
風力発電は、風で大きな風車を回転させることで電気に変換させる発電方法です。日本では2000年を境に導入件数が増え、2016年度末で2203基が稼働しています。発電効率の高い風力発電はより効果的な自然エネルギーとして認識され、その中でも洋上風力発電は、これから大きな開発と進展が期待されている分野です。
国内の火山帯を利用する地熱発電は、戦後早期に注目された経緯があります。現在は地理的な条件から、東北や九州を中心に活用されています。
バイオマスとは、動物や植物から発生する資源のこと。バイオマス発電は、これらを燃焼したりガスに変えたりすることで発電のためのエネルギーへと転換するものです。
太陽熱を利用した再生可能エネルギーでは、太陽熱エネルギーを太陽集熱器に集めることで急騰などに利用します。シンプルな機器で実現できるため実績も多くあります。
雪や外気を利用して作った氷を保管して、冷熱源として利用します。冷房などに利用することで温室効果ガス排出削減も見込めます。
温度差熱利用とは、地下水や下水などの水源を利用するエネルギーです。季節による水温の温度差をヒートポンプでエネルギーとして利用し発電します。建設にかかる費用が大きいため、地場の地方公共団体との連携が欠かせません。
地中熱は、地中の浅いエリアに存在します。地中熱は大気の温度に対して差があるため、これを利用して効率的な冷暖房を行えます。
原子力発電は原子力を利用し、核分裂時に発生するエネルギーを使って水蒸気を作ることから始まります。この高圧水蒸気のエネルギーでタービンと接続された発電機を動かすことで発電する仕組みです。基本的な仕組みは火力発電と変わりません。少量の燃料を用いて多くのエネルギーを発生させられることが最も大きな特徴です。
その他の再生可能エネルギーとしては大規模水力発電、地熱発電(フラッシュ方式)、空気熱、海洋温度差発電などがあげられます。
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再生可能エネルギー導入の課題には主にどのようなものがあるのでしょうか。
日本は国土の地理的条件や広さから、再生可能エネルギー大量導入には課題があります。安定的にエネルギーを供給できる手法は、太陽光発電をはじめ限られているのが現状です。また設備投資も大きな額が必要であることから、資金調達も含めた大規模な検討が必要であるといえるでしょう。
日本における2022年度の再生可能エネルギー買取費用総額は4.2兆円です。資源エネルギー庁では、そのうち、賦課金(国民負担)総額は2.7兆円に上ると見込んでいます。できるだけこの国民負担を抑制しつつ、再生可能エネルギーの導入拡大を行うというのが政府の方針です。再生可能エネルギー電力における、固定価格買取制度のための国民負担は、1世帯あたり10,476円(2021年度)となりました。
参考・出典:今後の再生可能エネルギー政策について │資源エネルギー庁
再エネ国民負担、標準家庭で年1万円超す 経産省試算│日本経済新聞
EU(欧州委員会)では、2022年に入り原発を持続可能なエネルギーとして認定することを決定しました。これはEU加盟国内でも意見が分かれる所であり、オーストリアとルクセンブルクはこの決定を不服として欧州委員会を提訴する可能性があるとしました。
福島原子力発電事故を経験した日本では、原子力発電を持続可能なクリーンエネルギーと認定することは難しいのが現状です。原子力に対する各国のスタンスが再生可能エネルギー導入に大きな影響があることはいうまでもないでしょう。
原子力発電と同様に、拡大が見込まれる洋上風力への投資と発展も大きな鍵となっています。その他の手法においても、設備を設置する地場のステークホルダーの同意や協力が欠かせないなど、地域住民や世論の動向も重要となります。
参考・出典:Austria, Luxembourg eye legal steps in EU nuclear energy row│Deutsche Welle
再生可能エネルギーと企業を取り巻く環境の変化にはどのようなものがあるのでしょうか。
パリ協定が採択された背景もあり、期限を設けてカーボンニュートラル達成目標を表明する国や地域が増えています。ESG投資への注目が高まるなど、金融市場の反応もあり産業の垣根なく脱炭素に向けた機運が高まっています。
関連リンク:カーボンニュートラルの実践方法とは? 欧米や日本の現状まで一気に解説
ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を表す言葉です。金融機関や投資家は、投資するビジネスが持続可能性のあるものかを注視するようになっています。世界におけるESG投資の市場は現在約4,500兆円とも言われています。
日本の再生可能エネルギー政策には、どのようなものがあるのでしょうか。
グリーン成長戦略では、2050年までに成長すると思われる14の重要分野を設けています。中小企業の支援として、「事業再構築補助金(令和3年度補正)」に「グリーン成長枠」が設けられました。これは、グリーン成長戦略の14分野における取組を行う中小企業について支援するもので、上限金額は1億円、中堅企業で1.5億円となっています。
加えてNEDO(国立研究開発法人:新エネルギー・産業技術総合開発機構)では高性能蓄電池・材料の研究開発などを目標に、グリーンイノベーション基金事業において次世代蓄電池・次世代モーターの開発に着手しました。
エネルギー政策の基本的な方向性を示すものがエネルギー基本計画です。S+3Eを前提として策定されています。第6次エネルギー基本計画では、2050年カーボンニュートラルの達成や、エネルギーの安定供給の確保・コスト低減に向けた取組みが示されました。
経済産業省では各国における開発競争が著しい蓄電池において、次世代電池の開発において国主導の支援を急ぐとし、定置用蓄電システムの普及拡大の取り組みを実施しています。
また地域共生型再生可能エネルギーの普及拡大を目指す「地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業」、再エネを最大限活用するための「蓄電池等の分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業」が設けられました。
いっぽうで、新型コロナウィルス感染拡大後は、日本におけるサプライチェーンの脆弱性が問題となりました。国内の生産拠点等の確保を進める「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」を設置しています。
参考・出典:第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました│経済産業省
パリ協定をきっかけとして、企業の脱炭素経営へのシフトも盛んになっています。日本においてTCFD、SBT、RE100に取り組んでいる企業はそれぞれアジア1位であり、世界でもトップクラスではありますが、企業数の多い日本ではその割合を高めることも重要です。環境省では、TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業や、サプライチェーン全体の脱炭素化に向けた支援事業を行っています。
また、2050年カーボンニュートラルに向けて国はNEDOに10年間で2兆円の基金を作り、これを呼び水として民間企業の設備投資などを誘発する狙いです。
再生可能エネルギーの活用による脱炭素への取り組みは、カーボンニュートラルを目指すにあたり欠かせません。そしてそれは、個々の企業の取り組みだけでは達成が難しいともいえます。重要なのは事業のサプライチェーン全体におけるCO2(または温室効果ガス)排出量測定と削減に向けた再生エネルギーの活用が必要です。
すなわち温室効果ガス/GHGプロトコルにおけるスコープ3に該当する分野です。サプライチェーン、またはバリューチェーン全体のGHG排出量を測定することで、どの段階における排出量が一番多いかを把握し、優先的に対策すべき事項も判明します。
またそれをヒントに長期的なサプライチェーン、バリューチェーン構築戦略も検討できるといえるでしょう。
取引先選定の際にCO2/GHG排出量開示を求める企業も急拡大していくことは間違いありません。
HPにおける気候変動抑制のための取り組みを紹介していきます。
HPでは、世界中におけるオペレーションで使用する電力について、2025年までに100%再生可能エネルギーとすることを目指しています。また、提供する製品の電力使用効率を高めることや製品のパッケージングの工夫によっても、エネルギー消費をできるだけ減らしています。すでにアメリカ国内では、再生可能エネルギーを100%利用するという目標を達成しました。
HPでは、循環型経済の推進にも取り組んでおり、すでに自社製プリンター用の純正トナーカートリッジについては、100%再生素材を利用しています(インクカートリッジは85%)。また、自然体形の再生、製品の長期使用、廃棄物の削減と責任ある原材料の資料、ネットゼロカーボンなどに取り組んでいます。
HPではハイチにおけるプロジェクトを通し、プラスチックの海洋流出削減に取り組んでおり、こうした取り組みを世界の貧困地域に拡大しています。また、プラスチック洗浄設備を設置し、前述のインクカートリッジなど高い品質を持つリサイクルプラスチックを生産しています。
気候変動問題が深刻化し、カーボンニュートラルは企業の必須テーマとなっています。再生可能エネルギーの活用拡大は、カーボンニュートラルの達成において必須といえるでしょう。その一方で、カーボンニュートラルは再生可能エネルギー活用だけで実現できるものでもなく、様々な取り組みが必要です。まずは企業の持続可能性をしっかりと見据えて、未実施の場合はまず自社とサプライチェーン全体におけるCO2排出量の把握から、早期に取り組んでいきましょう。
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