2020.05.18
昨今注目が高まっているテレワーク。推進する目的と、企業における効果とは?
この記事では、政府がテレワークを推進する背景や、導入メリットなどを、各企業の取り組み事例を取り上げながら解説する。
テレワークとはICT(情報伝達技術)を使用して会社のオフィスから離れた場所で業務を行うことを指す。そして、テレワークには自宅を職場とする「在宅勤務」、営業などの出先から端末を使用して報告や書類のチェックなどを行う「モバイルワーク」、レンタルしたスペースをオフィスとする「サテライトオフィス勤務」という3つのスタイルがある。
また、全ての業務をテレワークで行う場合と、オフィスでの勤務と組み合わせて行う場合がある。例えば、基本的にはオフィス通勤だが、事情があるときだけ在宅勤務にしたり、基本的には在宅で業務を進め、報告やミーティングのために1~2日程度オフィスで業務を行ったりするパターンもある。
企業ごとに適したスタイルを用いることで、企業にも社員にも地域にもさまざまなメリットをもたらすのだ。
総務省の「通信利用動向調査」によると、2018年における企業の「テレワークの導入状況」で、導入していると回答した企業は19.1%となっている。2015年の時点で導入率が85%(データ元::Survey on workplace flexibility 2015, WorldatWork)のアメリカと比べると、かなり低い数字であり、今後も政府はテレワークを推進していくと考えられる。なぜ、そこまでテレワークが必要とされているのだろうか。テレワークの導入で期待される効果について見ていこう。
少子高齢化社会における労働力不足が懸念されている中、在宅勤務によって、子育てや介護などでキャリアを中断させることなく働き続ける人が増えれば、企業にとっては貴重な人材の確保が可能となる。
また、退職後ではあるが経験を活かしたいと考える高齢者も、体の負担が少ない状態で働くことが可能となる。
通勤時間がなくなることにより、睡眠時間を十分にとることができたり、プライベートの趣味を充実させたりすることもできる。仕事のスキルを高めたい人にとっては、資格の取得などに時間をあてることもできる。
社員のプライベートが充実することは、気力の充実にもつながり、社員一人一人が能力を十分に活かせる環境が得られると考えられている。
現在、東京などの大都市圏に人口が集中し、地方との格差が進んでいる。地方では過疎化が進む一方で、首都圏では満員電車をはじめとした、人口の過密からくる問題も多い。
企業がテレワークを導入することで、地方に住んだまま仕事をすることができ、各地域の活性化が期待できる。都市の人口過密も解消されるとも考えられている。
通勤やそのほかの業務に関する移動が減ることで、地球環境への負担が軽減することも目的のひとつだ。厚生労働省委託事業 テレワーク相談センターによると、テレワークを実施することで年間321~442トンのCO2の削減が期待できるという。
次に、実際にテレワークが企業にどんなメリットをもたらすと考えられるのか紹介する。
社員の交通費をはじめ、オフィスの光熱費などが削減。会議室や社員の休憩用のカフェスペースなども最小限にできるため、借りるオフィスのフロアも小規模にすることが可能となり、家賃の節約につながる。
テレワークを導入することで、前述の通り通勤時間がなくなるため、心身のストレスが軽減することで、生産性の向上につながることも多い。特に集中力を必要とする業務においてあ、テレワークの環境を整えることでオフィスよりも快適な空間を構築でき、業務効率も上がるだろう。
例えば高齢者や、障害者、地方在住者などで通勤困難と考えられ、今までは雇用が難しいと思われていた人材でも、本人に仕事をしたいという意思があれば採用が可能となる。
また、育児・介護などによる社員の離職も抑えることができる。前述の厚生労働省の「平成26年度テレワークモデル実証事業」では42.7%が「テレワーク実施によって得られた/得られつつある成果(雇用面)」として「家庭で育児を担う人材の離職抑制、就労継続支援」を挙げている。
たとえば災害時や天候不良による交通マヒが起きた場合でも、在宅勤務であれば業務を続けることが可能だ。パンデミックで外出が困難になった場合でも、業務の継続を行うことができる。
日本は災害が多い国であり、さらは感染症の拡大もの影響もあって、テレワークは急激に浸透しつつある。
すでにテレワークを推進し、成果を挙げている企業もある。取り組みの経緯、取り組み方法、そして成果とはどのようなものだろうか。
社員が主体的に行動することを創業当時から重視している日本ヒューレット・パッカード株式会社では、社員の自律性を高めて生産性を向上させることをテレワークの目的としている。また、移動時間削減に伴う拘束時間の削減、ワーク・ライフの充実を図ることを意図している。
日本ヒューレット・パッカードでは他社に先駆けて1977年よりフレックスタイム制を導入。2001年より個人の固定席を設けることのないフリーアドレス制を導入するなど、段階的に働き方の多様化への改革を行っていた。そして、2007年には、週4日まで自宅で仕事ができるテレワークをスタートさせた。
いつでもどこでも同じ環境で成果が得られるよう、各自のPCにSkype機能を標準搭載するなど、テクノロジーカンパニーらしく、IT面でのサポートを充実させている。
テレワークという効率のよい働き方により、朝夕に私用が行えたり、満員電車を回避したりすることも可能になり、社員の身体的な負担を軽減。業務効率もあがったことなどを成果として挙げている。
日本マイクロソフト株式会社は、社員の充実したワークとライフが会社にさらなる進化をもたらすと、働き方改革を推進。その一環として2007年より、在宅勤務制度を開始し現在に至っている。当初は育児や介護などの事由がある社員のみなど、限定的な形でのスタートであったが、2016年5月には就業規則を変更し、全社員を対象に、時間や場所にとらわれないテレワーク勤務制度を導入した。
オンライン会議には自社製品のSkype for Businessを使用。在宅勤務のために、フレックスタイム制度におけるコアタイムを廃止し、より柔軟な勤務時間の運用を実現している。
社員のワーク・ライフ・バランスの満足度がアップし、女性の離職率が大幅に減少したという。平成29年度の「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」を受賞。
ChatWork株式会社は、社員の家庭環境やライフステージに合った働き方の実現、非常時であっても事業を継続できるような体制づくり、そして、多拠点での業務を可能とすることなどを目的とし、テレワークを積極的に取り入れている。
ビジネスチャット「チャットワーク」を運営している会社であることから、テレワークにも「チャットワーク」を活用。チャットワークを使用して、テレワークの希望日数や理由などを申請できるようにしているほか、会議、報告もチャットワークで行っている。
このテレワーク勤務により、支社のない地方でも優秀な人材を確保。また、離職防止にも役立っているという。平成28年度「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」に認定。
インタラクティブマーケティングの株式会社イーライフは、クラウドを活用して、約1000名の社員がテレワークを行い、総務省の平成29年度「テレワーク先駆者百選」にも認定されている。テレワークの目的としては移動時間短縮、生産性向上、優秀な人材確保、オフィス経費削減などがあげられる。
同社では1999年の創業当時からWebサイトの運営という事業内容の特性から、地方の委託業務契約先とオンラインのやりとりが多く、その時点でテレワークができる体制が整っていたという。2010年には就業規則としてテレワークを明文化し、本格的に導入している。
テレワーク希望者だけではなく、通常は通勤している社員も、いつでもテレワークに切り替えられるようにしている。体調不良や家族の事情により数日のみのテレワークということも可能だ。
また、通勤が難しい遠隔地に引っ越したとしても、退社することなく、そのまま業務を続ける社員もいるという。
三井住友海上火災保険株式会社は、社員一人一人の事情に配慮し、職場環境を整えることで柔軟な働き方を実現するため、2016年度から働き方改革を本格的に推進。2017年4月に、社員の柔軟な働き方を目指して、契約社員を除く全社員を対象として、在宅勤務制度を新設した。原則として週2日(3日以上も可能)の在宅勤務を可能としている。
育児休業中に在宅勤務ができる「MSクラウドソーシング」も実施。希望がある場合、育児休業中でも臨時就業が可能とし、育休終了後に社員が職場復帰しやすいようにサポートしている。
セキュリティ面も万全にするために、シンクライアントPCを全社員に順次配備。職場毎にテザリング用のスマートフォンを配布するなど、テレワークが可能となる環境を整備している。また、全国約300の拠点に小型Wi-Fiも設置している。
働き方改革の一環としてテレワークを導入した結果、1人当たりの残業時間を10%削減することが可能に。ほか、経費削減、人員確保などに効果が出ている。また社員のワーク・ライフ・バランス向上への意識が高まり、下記休暇の取得率も上昇したという。
大同生命保険株式会社は、ワーク・ライフ・バランスの推進と生産効率の向上のため、2014年4月から本社にて在宅勤務制度を導入している。
2015年12月には、仕事を楽しみ能力を最大限に発揮するための新しい働き方を実践する「DAIDO-style」を策定し、ITを駆使した働きがいや生産性の向上をさらに加速させている。また、育児休暇中の社員には会社情報が閲覧できるノートPCを貸与し、復帰がスムーズにいくようにサポートしている。
取り組みについては社内でも評価が高く、平均残業時間の減少、生産力の向上がみられるとともに、従業員意識調査では、総合満足度も高まっているという。2016年度末にはワーク・ライフ・バランスを充実させながらも生産性が向上し、保有契約高が過去最高の40兆円を達成。
平成29年度の「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」を受賞。
政府も推進しているテレワークは、人材の確保やライフ・ワーク・バランスの向上、経費の削減など、企業にとってもメリットは多い。現在、すでに導入している会社も、ICTを活用して成果をあげているようだ。テレワークで業務の効率化を図りながら、社員の仕事とプライベートへの満足度を高め、離職率を下げて優秀な人材を確保し続けられることが、テレワークの理想の形と言えるだろう。
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