Windowsに統合された生成AI「 Windows Copilot 」を仕事で活用（前編）

2023.09.27

Windowsに統合された生成AI「 Windows Copilot 」を仕事で活用（前編）

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ChatGPT をはじめとした生成AI（ジェネレーティブAI）が大きな話題です。今まで人が作業してきたことを生成AIが自動的にこなし、大きな生産性の向上が期待されています。

そのような中、2023年6月29日、マイクロソフトはWindows OSにAI機能を組み込んだ「 Windows Copilot 」のプレビューを開始しました。本レポートでは、Windows Copilot のプレビュー版を紹介することで、いち早くどういった作業に生成AIを活用できるのかということを前編、後編に分けて紹介したいと思います。

ライター：赤井誠

マイクロソフトは、AIをどのように捉えているか？

前編では、まず、Windows Copilot が登場する背景となった調査結果およびマイクロソフトの戦略について、紹介することにします。

マイクロソフトでは、年に1度、31か国の31,000人を対象にした調査結果を基にして、知見を加えた働く人や組織の変化をまとめたWork Trend Indexというレポートを発行しています。

最新のレポートとなる2023年度版では、AIが労働力にどのような影響を与えるかを展望しています。

データ、電子メール、会議、通知の量が、私たちの処理能力を上回っているため、64％の人が、仕事をするための時間とエネルギーの確保に苦慮していると回答しています。そのため、ビジネスリーダーも従業員も、より創造的な仕事を行うため、AIで人を置き換えるのではなく、AIが人を支援することを望んでいることがわかりました。

そこで、マイクロソフトCEO のサティアナデラ（Satya Nadella）氏は、次のように述べています。

「この新世代のAIは、仕事の雑務を取り除き、私たちの創造性を解き放ってくれるでしょう。デジタル負債の軽減、AI 適性の構築、従業員の能力向上を支援するAI搭載ツールには膨大な機会があります」

つまり、働く人が、大きな負担を軽減して、よりクリエイティブな作業に集中できるようなAI搭載ツールが望まれているということになります。このような背景から、マイクロソフトが提供するAIを搭載した製品やソリューションには、操縦士（Pilot）を支援するCopilot（副操縦士）という単語が付加されています。

では、Copilotとついた最新の製品の1つである Windows Copilot を見ていきましょう。
最初に、Windows Copilot のインストール方法を紹介し、続いて、いくつかの機能を紹介します。

Windows Copilot のインストール

Windows Copilot をインストールするには、Windows 11 Insider Preview を利用する必要があります。Windows 11 Insider Preview は、一般提供前のWindowsをいち早く試すことができるプログラムです。Insider Previewは、登録すれば誰でもアクセスすることが可能です。目的や用途の違いによって、チャネルと呼ばれる最新のWindows Insiderビルドをダウンロードして利用できます。

今回、Windows Copilot が提供されたのは、Dev/Betaチャネルです。Devチャネルは、マイクロソフトが新しいアイデアを試したり、新開発の機能を紹介したりする場です。ここで製品版へ取り入れることができると判断されると、BetaチャネルやRelease Previewチャネルへ移行され、製品として提供されるようになります（テストの過程でリリースされないこともあります）。

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そして、Windows Copilot と連携して動作する Microsoft Edge もアップデートが必要です
（v115.0.1901.150以降）。

Windows Copilot を試してみましょう！

Microsoftアカウントあるいは「職場または学校アカウント」で、Windows 11 へログインします。

OS起動後に、「 Windows Copilot 」を開始するにはタスクバーのボタンを押すか、［Windows］＋［C］キーを押します。

Windows Copilot は、起動するとデスクトップ右側25％程度を占有します。また、アプリケーションのウィンドウとは重ならないため、必要なときはいつでもアクセスできます。

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Windows Copilot を使用する想定として、企業で働くビジネスパーソンと情報システム部門の担当者の2つを想定してみましょう。

ビジネスパーソン向けの使用例　手順書の作成

企業では、作業の効率化や品質向上のために、手順書が多く作成されます。今回は、ABC商事営業部部長が、顧客への提案書を書く手順書を作成するということを想定しましょう。

作成を指示するプロンプトとして以下の内容を入力します。

指示プロンプト

会社名ABCで働く営業部長です。部員向けのお客様向けの提案の手順書を作成しています。以下の入力内容をもとに、提案業務マニュアルを作成してください。

# 条件

手順説明には「1．」「2．」「3．」といった形で番号を振ってください
テーマが分かれる場合には適宜【】を使ってください
説明文は「ですます調」
一人称は「部員」
想定読者：ABC商事の営業
制作マニュアル：提案の手順書

これを入力すると、次のような出力が得られました。

出力

こんにちは、このはBingです。お客様向けの提案の手順書を作成するお手伝いをいたします。☺

提案の手順書は、以下のような内容で構成されることをおすすめします。

【提案の目的】
提案の目的は、お客様にABC商事の商品やサービスの価値を伝えることです。提案の目的を明確にすることで、お客様のニーズや課題に対する解決策を提示しやすくなります。提案の目的は、以下のように書くことができます。

例：本提案書は、お客様の◯◯事業におけるコスト削減と品質向上を実現するために、ABC商事の◯◯製品をご紹介するものです。

【提案の背景】
提案の背景は、お客様の現状や課題を分析し、ABC商事がどのように関わってきたかを示すことです。提案の背景を詳しく説明することで、お客様への理解度や信頼度を高めることができます。提案の背景は、以下のような手順で書くことができます。

お客様の業界や市場に関する最新情報やトレンドを紹介します。
お客様の事業や組織に関する情報や特徴を紹介します。
お客様が抱える課題やニーズを具体的に挙げます。
ABC商事がお客様とどのような関係にあるか、どのようなサポートをしてきたかを紹介します。

例：◯◯業界では、近年、環境問題や競争力低下などの課題に直面しています。その中で、お客様は◯◯事業を展開しており、優れた技術力とサービス力で高い評価を得ています。しかし、お客様もコスト削減や品質向上などの課題に取り組まれていることを拝見しております。ABC商事は、お客様と長年にわたり良好なパートナーシップを築いてまいりました。これまでにも、◯◯製品や◯◯サービスをご提供し、お客様の事業成長に貢献してまいりました。

【提案内容】
提案内容は、ABC商事がお客様に提供する商品やサービスの詳細やメリットを示すことです。提案内容は、以下のような手順で書くことができます。

ABC商事が提供する商品やサービスの名称や特徴を紹介します。
商品やサービスがお客様の課題やニーズにどのように応えるか、具体的な効果やメリットを示します。
商品やサービスに関するデータや事例、証拠などを用いて、信頼性や優位性を裏付けます。
商品やサービスに関する価格や納期、保証などの条件を提示します。

例：本提案書では、ABC商事が開発した最新型の◯◯製品をご紹介いたします。◯◯製品は、◯◯技術を採用した高性能な製品で、お客様の◯◯事業におけるコスト削減と品質向上を実現します。◯◯製品は、以下のような効果やメリットがあります。

- ◯◯製品は、従来の製品に比べて消費電力を50%削減し、環境負荷を低減します。
- ◯◯製品は、高精度なセンサーやAIを搭載し、製品の品質や安全性を自動的に検査します。
- ◯◯製品は、ABC商事が独自に開発したオリジナルのデザインで、お客様のブランドイメージを向上させます。

◯◯製品の性能や効果については、添付の資料や参考サイトをご覧ください。また、ABC商事が過去に実施した事例やお客様からの評価もご紹介いたします。◯◯製品の価格は、1台あたり◯◯円（税別）です。納期は、ご注文から2週間以内にお届けいたします。保証期間は、1年間です。

【提案のまとめ】
提案のまとめは、ABC商事が提供する商品やサービスの価値を再確認し、お客様に契約や購入などのアクションを促すことです。提案のまとめは、以下のように書くことができます。

例：以上が、ABC商事がお客様にご提案する◯◯製品についての内容でございます。◯◯製品は、お客様の◯◯事業におけるコスト削減と品質向上を実現する最適な製品であると自信を持ってお伝えいたします。ぜひこの機会に、ABC商事の◯◯製品をご検討ください。ご契約やご購入に関するご相談やご質問などがございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。ABC商事は、お客様の事業成功のために全力でサポートいたします。

以上が、提案業務マニュアルの一例です。部員の皆さんは、このマニュアルを参考にして、お客様に魅力的な提案を行ってください。ABC商事は、部員の皆さんの活躍を応援しています。☺

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いかがでしょうか？　かなり使えそうな概要が作成できたのではないでしょうか？

入力情報を外部に漏らさない Bing Enterprise Chat と連携

この機能をみて、Bing（ ChatGPT ）の機能ではないだろうかと考える人も多いと思います。Windows Copilot は、Bingと連携して、Bing Chat（ GPT-4 を利用）を利用しているのです。

皆さんの企業では、ChatGPT をはじめとした生成AIに情報を入力すると、外部に機密情報が漏れるのではないかと懸念を持っているところも多いかもしれません。

実際に、2023年5月、韓国のサムスン電子では、社員が ChatGPT に入力した機密情報が流出する事案が発生したことを受けて、生成AI の使用を原則禁止にしています。
参考

そのような背景もあり、マイクロソフトでは、Windows Copilotは企業の自社データを保護する Bing Chat Enterprise と連携するとされています。

Bing Chat Enterprise の利用には、Microsoft 365 のログインで利用する組織アカウントが必要となります。組織アカウントというのは、マイクロソフトのクラウドサービス（Azure、Office ProPlus など）を利用するときのアカウントです。多くの場合、企業は1つのテナントを持ちます。Bing Chat Enterprise では、社員が入力した情報（入力および結果）は、企業が契約するテナント内で保護されます。そして、マイクロソフトは、それらの情報を参照することも、外部に提供することもありません。

情報の機密管理にセンシティブな企業にとって、重要な製品だと思います。

Bing Chat Enterprise は、Microsoft 365 Standard、Business Premium、Enterprise E3/E5 を契約している企業であれば、無償で利用できます。

後編では、一歩進めて、仕事現場で役に立つ Windows Copilot の機能を紹介します。ご期待ください。

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