医療機関のDXに必須な最新のデジタル情報を提供する「医療ビジネス情報交換会」を開催
2026-01-20
2025年12月12日、東京国際フォーラムにて、HPが主催する医療業界向けの最新デジタルをお届けする「医療ビジネス情報交換会」が開催された。今回で10回目の開催となるこのイベントは事前登録の段階で満員御礼となるなど、回数を重ねるごとに参加者が増える状況となっていた。大盛況となった今回はどのような発表がなされたのか、ダイジェストでお伝えしたいと思う。
取材:中山 一弘
開会のあいさつ
冒頭、壇上に立ったのはHPの新井氏。「本イベントは、パート10ということで10回目を数えております。ここまで様々なテーマで開催してきましたが、今回は皆様が最も興味をお持ちの『AI』について考える会にしたいと思っています。本日は協賛いただいたNVIDIA様をはじめ、AIソリューションを最先端で開発販売しておられる企業の方々、そして実際に生成AIで生産性を上げておられる織田病院からもお話しをいただく予定です」と同氏は開会の辞を述べ、医療業界にもいよいよAIの波が届き始めていることを力強く宣言。その中でHPワークステーションが求められる役割や当日のセミナー概要を伝えた。
到来するAIエージェント時代:NVIDIAの最新ソフトウェアと活用事例
続いて、壇上に上がったのはNVIDIAの津田氏。「NVIDIAはGPUを作っている会社というイメージが非常に強いと思いますが、実のところ、かなりソフトウェアにも力を入れている企業でもあります」と語る同氏。NVIDIAに所属しているエンジニアの65%がソフトウェアエンジニアであることや、10年以上前からAI分野に力を入れてきたことなどについて説明した。
次にAIエージェントは、コンテクスト理解、計画立案、ツール活用、自己検証といった一連のサイクルにおいても人間のようにタスクを自律的に実行できるところまで進化していることを示唆。実際にNVIDIA内の業務向けに開発・活用しているのだという。「我々は本番環境向けにAIエージェントを楽に構築して安心して運用していただけるように、いろいろなソフトウェアをビルディングブロックとして提供しています」(津田氏)
NVIDIAはAIモデルを容易にデプロイし、安全に運用するためのソフトウェアをコンテナイメージとして提供している。「そのソフトウェアは『NVIDIA NIM』と呼ばれています。NVIDIA NIMはコンテナ型で提供され、その中には高速化のためのライブラリやサービング用のソフトウェアなど、モデルの推論に必要なすべてが入っています」と語る津田氏。これにより、自社環境においても、安全かつ高速に生成AIを構築・展開することが可能となるというわけだ。
続いて津田氏は飲食業界や金融業界などにおける、最新のAI環境構築事例を発表。「本日は今後の医療業界への参考になればということで、他業界における最新の事例をご紹介させていただきました。もしご興味がありましたら、いつでもお声かけください。」と津田氏は最後に語り、セミナーを終了させた。
個人情報機微秘匿データを安全なオンプレミス環境で生成AI活用
neoAIが提供する生成AIプラットフォームは金融業界などのセキュリティ要件が厳しい企業への導入実績が高いという特長がある。何よりもクラウドサービスの生成AIをそのまま使うのではなく、業務ごとに特化した「AIアシスタント」が開発できる点が核心となっている。
「私たちのサービスは生成AIによるアシスタントを複数作り、それぞれに向けてあたかも社員スタッフへ声をかけるように『これをやって欲しい』『それを作るにはこんなノウハウがある』『ルールがあるから、それをやってはいけない』といった形で、AIアシスタントを教育することで、きちんと自律して働けるようになります」と語る木内氏。こうした環境はオンプレミスでおこなわれるため、極めてセキュアな領域の中で安全に運用できるメリットもあるのが特長となっている。
AIアシスタントはそれぞれ専門性を持たせた運用が可能で、業務ごと、顧客ごとといった形で何種類も生成が可能だ。「例えば、金融機関のローン受付業務にAIアシスタントを作った場合、『この地域では農業が盛んでこのような商品が多い』『そのような特色から農業関係者が来た場合、そのような業者向けのローンサービスを提案するといい』といったように教えることで、その日から働いてくれるようになります。簡単にいうと、その金融機関で20年、30年働いているベテラン職員が転職してきたような感覚です」と木内氏は説明する。
木内氏はその後も数々の事例を交えてAIアシスタントのメリットを紹介。「医療業界においては診療報酬について精通した優秀な医療事務スタッフとしてAIアシスタントを育てるといった方法があります。FAQに対応できるように教育することで、開示可能な情報の中から最適な回答が瞬時に得られるようになります」と木内氏。外部に出せない情報でもオンプレミス環境内に限定されれば問題はなく、セキュアな環境の中でしっかり働くAIアシスタントを自ら育てることも可能なのだ。「HPのAIワークステーションに私たちのアプリケーションとAIをインストールすることで、インターネットを介さなくても十分な働きが期待できる生成AI活用が可能となります。オンプレミス環境で安心、安全に使える生成AIをぜひ使ってみてください」と木内氏は語り、壇上を降りた。
バーチャルヒューマンで無人受付が実現できるか
バーチャルヒューマン「imma」が大きな話題となったことで知られるAww。フォトリアルな3DCGとAIを組み合わせ、ゲームエンジンをベースにキャラクターを開発。2018年に生まれたimmaは広告やアンバサダーとしてSNSを含めて世界的な活躍をするまでに成長した。「バーチャルヒューマンやAIを活用することでコミュニケーションの改革が起きると考えています。バーチャルヒューマンを学習させることで、人間以上の活躍と働きができることについてお話ししたいと思います」と冒頭で語る守屋氏。
すでにAwwがリリースしているバーチャルヒューマンは、人間と見分けがつかない水準まで達しており、声、感情、表情などにおいても自動生成することも可能な領域まで達している。「大切なのはストーリーテリングで、なるべく人間に近いストーリーを描くようにしています」と語る守屋氏。さらに人格特化型LLMと連携させることで、自律的な対話能力も獲得でき、例えば販売促進や商品説明、専門アドバイザーなど、多様なビジネス活用も視野に入るようになったのだという。
「医療分野に特化したLLMとAwwのバーチャルヒューマンを連携させることで、医療の話題について対話ができるキャラクターを生み出すことができます。さらに高性能なワークステーション1台によるオンプレミス環境でもそれは実現可能です。医療現場でもセキュアな環境でバーチャルヒューマンと対話することができるのです」と守屋氏は語る。
人材不足や増え続ける外国人患者に対する多言語対応など、課題が山積する医療現場での活躍に期待がかかるバーチャルヒューマン。「そのほか、24時間対応、感情に左右されないサービス品質など、医療者の『代替』ではなく、『拡張』的な部分での課題解決に貢献できるのではないかと考えます」と守屋氏は最後に語り、セミナーを終了とした。
医療現場における生成AIの活用 退院時看護サマリー作成時間54.2%削減の背景
株式会社オプティムは、日本の深刻な高齢化と医療従事者不足を背景に、医療現場の効率化を実現するべく、自社開発により「オプティムAIホスピタル」を開発。電子カルテ情報から看護サマリーを自動生成することで、看護師の業務負担を大幅に低減することに成功している。
祐愛会織田医院は、佐賀県の医療を続ける中、高齢者医療や地方医療における厳しい現実からデジタル化を促進。オプティムとの共同開発による、遠隔診療やAIカメラなどを積極的に導入。AIホスピタルの活用においても先駆者であり、試行錯誤の中で現場の課題解決に取り組んでいる。
「経営難が多い病院運営において、資金のない中でどのようにデジタル活用におけるスモールスタートを実現するのか、そのカギとなるのは業務フローが比較的組織化されている看護師に焦点をあて、ひとつの決められたフォーマットを自動化していくことで効率化が実現できると考えました」と語るオプティムの山本氏。
織田氏と山本氏は、織田病院へオプティムAIホスピタルの導入を進め、どのような効果があるのか検証したのだという。「HPのワークステーションにNVIDIAのグラフィックスを搭載し、看護サマリーの自動生成を実行しました。電子カルテと連携させ生成AIが患者情報を参照することですぐに結果を見ることができます」と山本氏。
その結果として、対象業務の54.2%の削減効果が得られたのだという。「業務の削減効果ですが、今までは書類作成を看護師さんが直接手作業で業務の合間に作成していましたが、生成AIによって最終的には2分で出力できるようになりました。これ以上は短くならないというところまで実現できているので、私たちの病院ではこれが最大限の改善効果が得られていると考えています」と織田氏は結果について語る。
その後、山本氏と織田氏による、医療現場におけるデジタル化を成功させるための議論が進み、クラウドとオンプレミスの使い分けといった情報セキュリティ的な観点、導入に必要な資金を得るための補助金活用などの予算確保の問題、最後に導入するだけで終わらないITベンダーとの継続的な改善活動などの伴走支援の実現といった課題をクリアする必要があると結論づけ、セミナーを終了した。
2026年度診療報酬改定の最新動向
「2026年度の診療報酬改定をひと言でいうと『賃上げ改定』になります」と冒頭で語りセミナーを進めた大西氏。とはいえ、単純な賃上げ率の話ではなく、もともと低かった医療現場の最低賃金を引き上げるというスタンスであり、その実現にはICTやAI活用による業務効率化と生産性向上の実現が不可欠なのだという。
「ベースアップにはICTやAI活用も点数評価の対象となります」という大西氏。医師事務作業補助者の業務における生成AI活用は労働時間短縮に効果的と認められており、AI導入やICT活用を評価する新たな診療報酬(加算)が創設される可能性が高いのだという。
もうひとつ、医師の地域偏在についても改定される見込みだ。「都市部では医師があまり、地方へ行けば行くほど医療が苦しくなっている。この格差が劇的になっており、地方に人が住めない地域ができてしまう状況です。その結果、都市部での開業規制ができそうな方向性になっています」と大西氏は語る。
また、電子カルテにおいては普及率が5~7割といわれている中、ここへも改定が入る見込みだという。「政府は医療情報の共有を通じ効率的な医療提供体制の法律を促進するため、電子カルテを実現しなければならないといっており、すなわちこれで電子カルテは義務化するということになります。いつまでにということでいえば2030年までに普及率100%を達成することが求められています」と解説する大西氏。さらにこの時の電子カルテはクラウドベース化が推進されており、集積された医療情報は国家間でのデータビジネスに活用されることも検討されている。
「高齢化社会を迎え、医療費は必ず高騰します。しかし、人手不足は深刻であり、賃金はベースアップせざるを得ません。タスクシェアリングもDXも進めるしか方法はないのです。ただし、これは私から政府への要望ですが、診療報酬の引き上げ対応とDX支援へ向けて補助金を出して欲しいと思っています。そうでないと絵にかいた餅で終わってしまう可能性もあります」と最後に語り大西氏のセミナーは終了となった。
閉会のあいさつ
「本イベントも10回を数え、AIについてもたびたびお話しされてきました。これまでは診療を助けるためのAIという文脈で出てくることが多かったように思いますが、今回は事務的な部分の業務効率化にAIが使われる事例が出てきました。私自身も様々な業界の方々とお話しをさせていただいておりますが、どの業界でも本業に投入する人材にクオリティの高い仕事をしてもらうために、それ以外の業務を自動化・簡素化したいという見方が多くなり、そこへ生成AIが入ってこようとしています」とイベントを振り返りつつ現状を語る大橋氏。
今回の事例では織田病院の事例は先進的であり、他業界と比較しても進展が大きいといえるが、全体像としては多くの組織がPoC(Proof of Concept:概念実証)にとどまることが多く、本格導入は限定的と大橋氏は見ているのだという。「しかし、2026年を迎えると事態は生成AIの実装が相次ぐのではないかと考えています。とはいえ、クラウドベースにするのか、オンプレミスにするのか議論が尽くされていないケースもありますし、PoCの結果が伴わず挫折するケースもあるようです。今回事例として出てきた織田病院様のように、本業以外の部分を自動化、省力化して、本業に時間を使うといった方法をとることで動きが活発になるケースが増えてくると思っています。2026年のパート11の際にはより実践的な事例がたくさん出てくると期待しています」と大橋氏は最後に語り、イベント終了のあいさつとした。
イベントを終えて
今回のイベントを支えた運営関係者のコメントを紹介
年末のお忙しい中、これほど多くの医療関係者の皆様にご参加いただき、心より御礼申し上げます。本日はAI企業の皆様にもご登壇いただき、医療とAIの融合が新たな価値を生み出す可能性を改めて感じることができました。医療現場の皆様とAI技術の専門家が理解を深め、つながりを築くことは、今後の医療の質向上に欠かせない要素だと確信しています。
これからは、医療機関や医療関連企業の皆様に加え、AI技術を提供する企業とも連携し、より良い医療の未来を共に創り上げていきたいと考えています。2026年もHPは技術とサービスの両面から皆様を全力でサポートしてまいりますので、引き続きご支援・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
ご参加者・ご関係者の皆様のおかげで今回10回目の医療情報交換会を迎えることが出来ました。本当にありがとうございました。この医療情報交換会を始めたきっかけは、ご参加の皆様へ有益な情報をご提供し皆様とご一緒に発展をし続けていきたいのが大きな理由です。その中で今回の10回目はAIにテーマを設けさせて頂きました。今後とも皆様とご一緒にビジネスを伸ばしていきたいです。今後ともよろしくお願いいたします。
取材後記
半日を費やす一大イベントとなった今回の医療ビジネス情報交換会は常に満席のまま終了となった。どのセミナーも聞きごたえのある内容で、来場した医療関係者は多くの情報を持ち帰ることができたはずだ。イベント終了後は懇親会が開催され、来場者らも集合した。今回の登壇者らとの会話ができる良い機会というだけでなく、来場者同士のつながりを作る機会にもなっているようで、そこでも多くの会話が途切れることなく続いていた。大橋氏のいうとおり、来年の同イベントにはさらに先進的な取り組みを見ることができるはずなので、次回開催のアナウンスがあった際にはぜひ早めの登録をしていただくようおすすめしておきたい。
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※このコンテンツには日本HPの公式見解を示さないものが一部含まれます。また、日本HPのサポート範囲に含まれない内容や、日本HPが推奨する使い方ではないケースが含まれている可能性があります。また、コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。
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