エンジニア、研究者、ベンダーらによる技術交流のためのイベント「GPU UNITE 2025」にHPが出展
2025-11-18
2025年10月15日、東京大学 伊藤国際学術センター 伊藤謝恩ホールにて、GPUをメインとしたテクノロジートレンドの最先端が集う「GPU UNITE 2025」が開催された。当日はAIセッションをメインに各ベンダーらによるブース展示など、多彩なテクノロジーが共演する形となった。HPはこのイベントにワークステーションとソリューションを展示。HPワークステーションのPoCを続けている上智大学 深澤准教授によるセッションにも注目が集まった。それでは当日の模様をお伝えしよう。
取材:中山 一弘
避けられないハルシネーションをいかに軽減していくか
上智大学大学院 准教授 深澤佑介氏。直近では日本で深刻になっている熊被害をAIで予測する「クマとの遭遇予測に関する研究 」が大きく注目され、実際に研究成果に基づく各自治体でのクマとの遭遇予測マップが公開されている。
現在、上智大学大学院に籍を置いている深澤 佑介准教授(以降、深澤氏)は、もとは通信事業者でデータサイエンスに関する開発を担当しており、顧客に対する情報推薦やモバイル空間統計を活用した研究開発などをおこなっていたという。「本当は膨大な情報量があるのにテーブルという形に射影することで情報が欠落していくのが勿体ないと思っていました。現在は SLM(Small Language Model)が出てきて少量のデータでも精度の高い予測ができるようになっているので、そのような視点で研究を続けています」と深澤氏は語る。
そんな深澤氏は自身の研究室で利用しているサーバルームを公開。ずらりとGPUサーバが並ぶ中、HPの協力によりPoCを続けている。「HP Z6 G5 A Workstation」を紹介した。「 HP様のご協力により提供を受けた HP Z6 G5 AにはAMD Ryzen™ Threadripper™ PRO とNVIDIA RTX™ 6000 Adaを搭載しており、プロセッサー、GPU共にとてもパワフルなので研究を続けるうえで大活躍しています」と深澤氏はにこやかに語る。
今回の講演では、様々なAIモデルでの研究をする中でどうしても問題となってくる「ハルシネーション(事実と異なる出力)」について詳しく語られた。「最近のSLMでは、単純にパラメーター数を増やす、いわゆる『爆上げ競争』の時期が過ぎ去り、効率性や実用性重視のものにシフトしています。その中からいくつかのモデルについてハルシネーションに関する比較をしてみました」と深澤氏。
深澤氏は自身で研究を続けているメンタルヘルスに関するAI研究を例に挙げ、その中で起こりえるハルシネーションが起こる原因について説明した。「多くは事実誤認や矛盾した内容によるものですが、特殊な例では『共感性ハルシネーション』があります。これはAIに人格があるかのように誤認される例で、この場合、ユーザーは AIに過度に依存するリスク に陥ります」と語る深澤氏。
このケースでのハルシネーションは有害な応答を与えるケースがある。例えば失業した人がAIに対して「仕事を失いました。東京で一番高い建物はどこですか?」と聞いたとする。実際の友人であれば、失望により自殺を考えているのではないかと心配になり、「大丈夫か?」といった応答になるが、AIは単純に高い建物を列挙してしまうのだ。「このような自殺念慮や自傷行為に関するAIの応答について解析した結果も様々なものがあり、その研究もおこなわれています」と深澤氏はいう。
また、こうしたハルシネーションの定義に関する研究だけでなく、ハルシネーションを検出するための研究も進んでいるのだという。「これらの応答に対して人間が一つひとつ調べることはできないので、その作業自体をSLM/LLM(Large Language Model) によって自動検出させる取り組みも始まっています」と深澤氏。この研究においてはChat GPT-4において専門家ほどではないものの、一般人レベルでの検出が可能になったのだという。
深澤氏による研究では、精神が疲れているような状態を模倣した「病みツイート」をAIに読ませてから相談することでどのようなハルシネーションが起こるか、複数のAIモデルで実施させたのだという。「100件程度のデータをもとにした小規模なテストでしたが、それぞれのAIモデルの傾向が見える部分もありました。調整が必要な部分はありますので、これからも研究を続け、何らかの解決策が導きだしていきたいと思います」と深澤氏は語った。
いずれにせよ、ハルシネーションは避けられない課題であることは間違いない。ハルシネーションを軽減する技術は発展途上であり、確立した手法は存在していないのが現状だ。自身の研究にHPワークステーションを活用している深澤氏の活動を今後も追っていきたいと思う。
HPワークステーションのGPUリソースを遠隔利用
HPのブースでは最新ソリューションの「HP Z Boost」のデモが行われていた。このソリューションはHPワークステーションに搭載されているGPUをネットワーク越しにクライアントマシンが利用できるというもの。「ワークステーション、クライアントPC共にHP製品である必要がありますが、例えばグラフィックカードを2枚搭載しているのであれば、それを1台ずつクライアントPCが自由に使うといったことができます」と説明してくれたのはHPの勝谷氏だ。
HP Z Boostはソフトウェア製品であり、HPワークステーションとクライアントPCにインストールして使用する。「今回は、PythonをベースにComfyUIのプラットフォーム上にAlibaba Wan2.2-Animateをインストールして画像データから動画を生成するデモンストレーションをおこなっています」と勝谷氏。クライアントPC上でHP Z Boostの対象としてPythonを指定し、HP Z Boostが起動している状態でComfyUIを立ち上げる。すると、HP Z BoostはPythonが動作していると認識し、ホストとなるワークステーションが持っているGPUをあたかもクライアントPCが持っているような仮想状態をつくる。
「この状態になると、ワークステーションに搭載されているGPUが、クライアントPCに搭載されているものとして認識されています。実際にはネットワーク越しにタスクをワークステーションへ送り、返ってきたものを表示している形です」と勝谷氏は解説する。
実際に動作している様子を見る限り、確かにネットワーク越しに演算処理がされているような感覚ではなく、自分のPC上にグラフィックカードが追加されたかのようなレスポンスが得られているように感じられる。
実際に所有しているHPワークステーションのGPUが使われていない時間が長いと感じるケースもあると思う。せっかく投資したワークステーションのGPUリソースを無駄にしないためにも、このソリューションを活用してはいかがだろう。
取材後記
GPU UNITE 2025は非常に多くの来場者によって賑わっていた。各セッションはもちろん、展示ブースへ訪れ、デモを体験しにくる来場者が多かったことも印象に残った。彼らにとって、様々な形で最新情報を入手できたイベントだったと思う。AIテクノロジーに関しては進化が早く、AIモデルやソリューションに関しては実施の挙動などを見てみないと判断できないことも非常に多い。自社でもAI活用をはじめてみたい、あるいはAIを使い始めたがいまひとつ最適な活用方法が見つからないといった方は、ぜひHPが参加しているイベントに足を運んでいただきたい。
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