オートデスク×日本HPが語る、BIM設計を底上げするワークステーションの真価

BIM活用が建設業界で本格化し、2026年には建築確認での「BIM図面審査」も始まる。制度対応と実務の効率化の両面で、ツールやPC環境の見直しが急務だ。オートデスクの林弘倫氏と日本HPの若宮明日香氏にBIM運用の課題と展望、そして進化する設計環境を支える最新のワークステーションについてうかがった。

  • 林弘倫氏

    林弘倫氏

    オートデスク 日本地域営業統括 技術営業本部 AECテクニカルソリューション エグゼクティブ

  • 若宮明日香氏

    若宮明日香氏

    日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長

転載元:BUILT
2025年7月28日掲載記事より転載
本記事はアイティメディアより許諾を得て掲載しています。

建設業界では、大手ゼネコンや組織設計事務所を中心にBIM活用が着実に進み、設計業務や施工業務に幅広く活用されている。協力事務所や中小の建設会社では、いまだ2DCADで業務をしていることが多く、BIM導入は大手と比較して遅れているのが実情だ。こうしたBIM導入の格差には、いくつかの要因がある。

まず、初期投資の負担が挙げられる。さらに、BIMに対する認識にも差がある。大手ではBIMを「情報マネジメントの基盤」として捉え、設計から施工、維持管理までを視野に入れた運用が進んでいる。一方で中小では「立体的な図面を描けるソフト」という認識にとどまることも少なくない。

オートデスク 日本地域営業統括 技術営業本部 AECテクニカルソリューション エグゼクティブ 林弘倫氏は、「BIMの本質的な価値がまだ浸透しきれていない」と語る。

こうした状況を踏まえ、国は旧来の建築BIM加速化事業を刷新し、2025年度から「建築GX・DX推進事業」をスタートさせた。BIMソフトや共通データ環境(CDE)のライセンス費、トレーニング費の他、関連費用としてのPCリース費などを対象とした補助制度で、元請けと協力会社の共同申請が必要な仕組みとし、下請け企業のBIM導入を後押しする。

さらに「中小企業経営強化税制」を活用すれば、ソフトやPCの導入で税制支援も受けられる。林氏は「業界全体がBIMに移行していくのは明らか。後は各企業が、BIMに投資する経営判断がとれるかどうか。いまはそういう段階にきている」と話す。

BIM導入を後押しする制度は、補助金や税制だけではない。国土交通省は、建築確認へのBIM活用に向けた制度整備を進めており、2026年春には「BIM図面審査」がスタート。その後、2029年には「BIMデータ審査」の開始が予定されている。

国交省の建築BIM推進会議は、2025年3月に「BIM図面審査ガイドライン(案)」や「申請審査者用マニュアル(素案)」を公開。 BIMライブラリ技術研究組合(BLCJ)も、各種BIMソフトウェアに対応したサンプルモデルを参考資料として公表するなど、実務での活用に向けた具体的な準備が進みつつある。

こうした動きの中、設計事務所にとって「どのBIMソフトを使うか」は、重要な検討事項になっている。建築確認申請では、意匠・構造・設備の情報が整合性をもって一貫していることが求められるが、それを単一のプラットフォーム上で完結できるBIMソフトは限られている。林氏は、「現在公開されているサンプルモデルの多くは、単一分野ごとに構成されている。Autodesk Revitは、意匠・構造・設備の全てを統合でき、建築確認申請に必要な整合性や一貫性を担保できる」とRevitの優位性を強調する。

異なるBIMソフト間でのデータ交換を担うIFCは変換の共通ルールがなく、ガイドラインでも「整合性は今後の課題」とされており、ワンストップで統合管理できるRevitの強みは大きい。

また、Revitは「中小企業経営強化税制」の対象製品でもある。3年契約で導入すれば即時償却や税額控除の適用が可能だ。林氏は「制度を活用すれば、中小企業でも現実的に導入できる環境は整っている」とした。

BIMソフトを快適に運用するには、マシンの処理性能も欠かせない。BIMモデルには設計情報や材料、数量など膨大な属性情報が含まれるため、CPU/メモリ/GPUの総合力が業務効率化に直結する。

こうしたニーズに応えるのが、最新のインテル Core Ultra プロセッサー(シリーズ2)を搭載した日本HPの最新ワークステーションだ。モバイルタイプとデスクトップタイプの双方で用途に応じたラインアップをそろえている。

エントリーモデルの14インチ「HP ZBook 8 G1i 14 inch Mobile Workstation PC」は、軽量かつコンパクトながら、最上位構成でインテル Core Ultra 9とNVIDIA RTX 500 Adaを搭載。64GBまで拡張可能なメモリで、簡易的な3D作成にも十分耐えうる性能を持つ。また、Core Ultra(シリーズ2)では低消費電力を実現しているため、外出先での編集や図面確認にも十分対応する。テンキー非搭載ながら、タッチ操作にも対応しており、打ち合わせ時の注釈入力など直感的な操作も可能だ。

より高い性能を求めるユーザーには、16インチ/18インチの「HP ZBook Fury G1i」がおすすめ。最大128GBメモリと、最新GPU「NVIDIA RTX PRO 5000 Blackwell」を搭載し、大規模モデルや点群処理にも余裕をもって対応する。日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長 若宮明日香氏は「持ち運べるデスクトップにふさわしい性能」と話す。

「HP ZBook Fury G1i 18 inch Mobile Workstation」を手に持ち、使い勝手を確認する林氏
「HP ZBook Fury G1i 18 inch Mobile Workstation」を手に持ち、使い勝手を確認する林氏
「HP ZBook Fury G1i 18 inch Mobile Workstation」を手に持ち、使い勝手を確認する林氏

ZBook 8 G1iとZBook Fury G1iは、ともに米軍調達基準(MILスペック)準拠の堅牢性も備えており、現場への持ち運びでも安心だ。

設計事務所での常設マシンとしては、最新の「HP Z2 Mini G1i WorkstationデスクトップPC」が注目だ。筐体サイズはコンパクトながら、インテル Core Ultra 9とNVIDIA RTX 4000 SFF Adaを搭載できるパワフルなスペックを誇る。モニター裏に取り付けることでデスクスペースを有効活用でき、場所を取らずに高性能環境を整えられる。

左から「HP ZBook 8 G1i 14 inch Mobile Workstation」「HP Z2 Mini G1i Workstation」「HP ZBook Fury G1i 18 inch Mobile Workstation」
左から「HP ZBook 8 G1i 14 inch Mobile Workstation」「HP Z2 Mini G1i Workstation」「HP ZBook Fury G1i 18 inch Mobile Workstation」
左から「HP ZBook 8 G1i 14 inch Mobile Workstation」「HP Z2 Mini G1i Workstation」「HP ZBook Fury G1i 18 inch Mobile Workstation」

BIMは今や設計だけのものではなく、リノベーションや維持管理のフェーズでも活用が広がっている。オートデスクでも、近年「Scan to BIM」と呼ぶ取り組みを進めている。既存建物や現場の状況をレーザースキャナーで取得した点群データを、「Autodesk ReCap(リキャップ)Pro」でメッシュ化し、RevitなどのBIMツール上で利用可能なモデルを作成する手法だ。設計段階での図面と施工後の現況にはズレが生じがちだが、実測点群を使えば現実に即した正確な設計が可能となる。

最新版のReCap Proでは、従来はクラウド上で処理していた点群変換をローカルPC上で完結できるようになった。そのため、マシンには高い演算能力とGPU性能が求められる。この重い処理に耐えうるマシンとして期待されるのが、ZBook Fury G1iだ。

若宮氏は、「都市開発やインフラ系の大規模案件では、点群のデータ量も膨大になる。従来のPCでは途中で止まってしまったような処理でも、ZBook Fury G1iならストレスなく編集や整備が進められる」と自信を示す。

コロナ禍を経て、リモートワークや現場常駐とのハイブリッドな勤務形態が定着し、もはや「オフィスでなければ設計できない」という時代ではなくなった。BIMを取り巻く環境も大きく変化し、求められているのは、場所を選ばず高負荷な業務をこなせる柔軟なPC環境だ。

若宮氏は、「今の設計現場では、モデルを表示するだけでなく、打ち合わせ中にその場で修正し、図面を再出力するといった即時対応が求められる。そうした柔軟な働き方を支えるには、高性能なモバイル機が不可欠だ」とモバイルワークステーションへの期待感を語る。

日本国内のモバイルワークステーション導入率は、コロナ前の約2割から現在では4割近くにまで上昇しているという。従来は設計職専用だった高性能PCが、いまや営業職やマネジメント層にも活用が広がり、現場対応力を支える基盤となっている。

BIMの最適な設計環境について議論を交わす林氏と若宮氏
BIMの最適な設計環境について議論を交わす林氏と若宮氏
BIMの最適な設計環境について議論を交わす林氏と若宮氏

設計支援、データ解析、文書生成──。ここ数年で建設業界でもAIの活用領域は急速に拡大しつつある。オートデスク製品でも、AI搭載は今後加速する見通しだ。例えば業界向け次世代クラウドの「Autodesk Forma」では、初期検討時の都市スケールでの風環境解析や日照シミュレーションをAIが行う機能が実装済みだ。また、「Autodesk Construction Cloud(ACC)」では、英語版限定だが、AIがクラウド上に保存された仕様書を読み取り、チャット形式で情報照会できる新機能も登場している。

林氏は、これからはBIM業務とAI処理を同時に行うケースが増えると予測し、「AI処理はCPUに大きな負荷をかけるので、併用するとBIMソフトの動作に支障が出る恐れがある。NPUが搭載されていることで、AI処理とBIM操作の処理の住み分けが可能になる」 とインテル Core Ultra搭載の日本HP製ワークステーションを評価する。

インテルロゴ
インテルロゴ

BIMはこれまで、「3Dモデル=ビジュアル表現」として認識されてきた。しかし今後は、属性情報やプロセス間のデータ活用を軸とする情報マネジメントへと進化していく。

林氏は、「オートデスクではACCに蓄積されたBIMデータを粒状化し、グラフデータ形式で保存する仕組みを公開している」と語る。これにより、外部アプリやAIがGraphQL経由で特定の属性や履歴にピンポイントでアクセスできるようになる。 BIMは単なる設計ツールではなく、建物情報を中核とした“データプラットフォーム"としての役割を担うわけだ。

こうした変化の中では、PCに求められる役割も変わる。単なる「図面を作図するための道具」から、建築フェーズを横断的に支える「情報処理基盤」としての性能が求められる。若宮氏は「3Dモデルの閲覧、修正、図面出力、打ち合わせを一台でこなせる高性能マシンが現場を支える」と補足する。

製造業では既に3Dデータを軸とした設計から生産へのシームレスな連携が進んでいる。建設業も、いよいよBIMを基軸とした情報ドリブンなワークフローへと向かっている。

林氏は「建築のデジタル化はようやく本格始動した段階。ここから先は、ソフトだけでなく、それを支えるハードウェアが業界変革の鍵を握るだろう」と締めくくる。

若宮氏も「設計・施工に最適なマシンを幅広く用意している。BIMの提案力や業務効率を最大化することこそが日本HPの使命だ」と力強く口にした。

集合写真
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