2023.02.01
社会貢献的発想から脱却し、新たな市場づくりへシフトせよ
「SDGsブーム」といわれる昨今、テレビやWebメディアでその言葉を聞かない日はない。その一方で、「SDGsウォッシュ」と呼ばれる上辺だけの取り組みを批判する声も出てきており、企業にはSDGsの達成に寄与する本質的な取り組みが求められている。SDGsの取り組みが上辺だけになる原因は何なのか。そうならないために今、どのように進めるべきなのだろうか。「企業と社会」「サステナビリティ経営」に関する研究に精通した早稲田大学商学学術院 商学部 教授の谷本寛治氏に話を聞いた。
早稲田大学商学学術院 商学部 教授/谷本寛治氏
谷本 寛治 氏(以下、谷本氏) 一番の問題は、多くの企業が「なぜ、CSR(企業の社会的責任)が問われるのか」「なぜ今、SDGsに取り組まなければならないのか」という背景を理解していない点にあります。
SDGsが日本で話題に上がるようになったのは、ここ5年ほどのことですが、このような動きは突然始まったわけではありません。世界はもっと前から動き始めていました。
持続可能な世の中に向けた国際的な議論は1990年代から広がり始めました。1992年、リオでの国連の環境サミット以降、ヨーロッパでは国家戦略として「サスティナブル・ディベロップメント(持続可能な開発)」を徹底するようになり、北米でもさまざまCSRに関する新しい動きが出てきています。また、企業だけでなく、複数のステークホルダーと共に社会的な課題解決に向けた議論を進めていくことも、20年ほど前から取り組まれてきました。
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谷本氏 そうですね。しかし日本では、CSRもSDGsもESGも「急にブームがやってきた」と思っている人が多い。日本の中でブームになってきたから、「こんなに言われたら無視できないな」と、背景もよく理解しないままにようやく動き出した、という印象です。そんな形で取り組むから、結果的に「CSRウォッシュ」「SDGsウォッシュ」といった状況に陥ってしまうことが多いのだと思います。
谷本氏 国際的な動きに、日本が十分入り込めていないからだと思います。よくビジネスマンは「アンテナを立てる」という言い方をしますが、それは外から動きを見ていて、遅れまいとしている状態です。CSRやSDGsの取り組みも同じで、日本はその動きの外にいる状態になってしまっているのです。
脱炭素、あるいは希少な資源を持続可能に管理する方法といった国際基準は、ほとんどがマルチステークホルダーで取り組むようになっています。そのオリジナルメンバーに日本企業が入って、一緒に議論を進めていかなければなりません。もちろん、後から入って一生懸命取り組んでいる日本企業もありますが、大部分が「出てきた動きに対していかに対応するか」という姿勢に終始しています。
谷本氏 やはり企業のトップが「会社全体の戦略として位置づける」「本業としてイノベーティブに取り組む」などしっかり考える必要があります。担当だけに任せていればいいものではないし、会社の動きと取り組みが切り離されないようにしなければならないからです。
SDGsの取り組みは、社会貢献的なイメージが強いので、どうしても「できることだけやればいい」と考えがちです。ただし、現在は「社会的な課題に対して、何かできることをする」のではなく、「社会的な課題に取り組むことで、新しいビジネスや新しい市場をつくる」といった方向性を理解する必要があります。
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谷本氏 そうですね。ボランティア的な取り組みも必要ですが、いろいろな社会的な課題に対して「自分たちがどういったビジネスプランや製品、サービスを提供できるか」を考えることが重要です。
例えば、アウトドア用品などを手掛ける「パタゴニア」は、近年は食品事業も展開し、持続可能な農業や漁業に取り組んだり、服のリサイクルからサーキュラー・エコノミーのシステムを自分たちで作り出したりしています。これは、「SDGsの視点をビジネスに取り込む」というより「ビジネスそのものがSDGsになっている」状態です。そもそものビジネスの在り方が、社会に責任を果たせる形で考えられているのです。
地球環境のサステナブルに貢献
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HP Elite Dragonfly G3は、EPEAT® Gold 取得、国際エネルギースタープログラムを適合。各素材や梱包材に持続可能な資源を使用するなど、環境に配慮した製品づくりを推進しています。