「やれること、全部やる」。伊藤羊一が体現する、オンライン時代の“伝え方”

2026-05-12

伊藤羊一氏
伊藤羊一氏

武蔵野大学武蔵野キャンパスの一室。取材が始まって30分ほど経った頃、伊藤羊一氏の上体が不意に前へ動いた。

「いや、ですから──」

椅子から身を乗り出し、こちらの顔のすぐ手前まで迫ってくる。対面のコミュニケーションとしては、明らかに近すぎる。取材班が一瞬、身を引く。

伊藤羊一氏
伊藤羊一氏

「私は今、燃えてます! って、こうやるんです」

そう言い切ると、すっと椅子に戻って笑った。

「対面でやったらドン引きでしょう? でもリモート会議なら、この大げさな動きが"迫力"として伝わるんです」

累計71万部を超えた『1分で話せ』の著者にして、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長、伊藤羊一氏は、取材の場でもオンラインのコミュニケーション手法を実演してみせた。

対面なのに、オンライン仕様の体の使い方。その落差が、逆に伝わってくるものがあった。

「正しいことを言っているのに、なぜか伝わらない」

オンライン会議が当たり前になった今も、そう感じている人は少なくないだろう。伊藤氏に言わせれば、それは当然の結果だ。

「オンラインは、対面の延長線上にない。別物です」

そう語る伊藤氏は、終始“オンライン仕様”のエネルギーで満ちていた。

『1分で話せ』が世に出たのは2018年。あれから約8年が経ち、伊藤氏は「伝えること」をめぐる課題が明らかに深化したと感じている。

「出版した当時は、『ダラダラ喋るんじゃなくて、結論と根拠を話そう』というだけで事足りる時代でした。ロジカルに、構造を持って話すことすらできていない人が多かった。しかし今は、それが当たり前の前提になりつつある」

その先にある課題とは何か。

「『正しい』だけでは、人は動かない、ということです」

伊藤羊一氏
伊藤羊一氏

伊藤氏はこう続けた。たとえば、上司に企画を上げる場面。OKが出る判断基準は、「言っていることが正しいか」だけではない。

「あいつはやる気がありそうだ」「エネルギッシュだな」──。

そうした非言語的な情報が、無意識のうちに判断を左右している。内容の正しさは、もはや必要条件にすぎない。

この感覚を多くの人が痛感したのが、コロナ禍だった。

全世界の人が「対面なし」での仕事を経験したことで、逆説的に「会うことの意味」が可視化された。

伊藤氏の答えは「ハイブリッド一択」。人間関係やエネルギーは“対面”で、頻度を上げてコンテンツを積み重ねるのは“オンライン”で。問題は、そのオンライン側の「伝え方」だ。

「もともと僕は、オンラインだろうがリアルだろうがコミュニケーションの質は変わらないと思っていたんです。でも実際に経験してみると、明らかに違った」

実際、声のトーンや表情、身振りといった非言語情報が、コミュニケーションに大きな影響を与えていることは誰もが実感するところだろう。

そしてオンラインでは、その非言語情報が圧倒的に届きにくい

「リアルで会ったらめちゃくちゃエネルギッシュなのに、オンラインになった途端に淡々と話し始める人がいますよね。『どうせ伝わらないから』というバイアスが無意識にかかっている。でも、そんなわけがないんです」

欠けている分を意識して補う。そのために伊藤氏が実践しているテクニックは明確だ。

オンラインで伝わる4つの技術伊藤羊一氏の実践
オンラインで伝わる4つの技術伊藤羊一氏の実践

伊藤氏がコミュニケーションに「本気で」向き合うようになった原体験がある。2011年、ソフトバンクアカデミアで初めて孫正義氏にプレゼンした時のことだ。

「孫さんだと、めったやたらなことじゃダメだなと思って。300回練習して臨みました」

300回。口が勝手に動くレベルまで身体に刻み込んだ結果、プレゼン中に不思議な感覚が訪れたという。

「意識がふっと上に上がったんです。口はもう自動で動いている。その間に、『孫さんを笑わせるには横のこの人を動かすのがいいな』と考えて、ギャグを飛ばす。あのメタ認知感は、初めての経験でした」

伊藤羊一氏
伊藤羊一氏

この「空の上にもう一人の自分がいる」感覚は、取材の場でもずっと作動していた。

伊藤氏はカメラマンがレンズを向けるタイミング、取材班の表情の変化を、話しながら同時に感じ取っている。実際、カメラマンがアングルを変えた瞬間、さりげなく姿勢を正す場面があった。

「話す内容はここを見ていればいい。でも空の上の自分は、それ以外の全部を見ている」

思ったことをそのまま話すだけでは、伝わらない。

「今、何をすれば相手に届くのか」を、空の上からもう一人の自分が常に見ている──。このメタ認知こそが、伊藤氏の言う「伝える技術」の核心だ。

対面でもオンラインでも、この姿勢は変わらない。ただ、オンラインではその意識をより強く、より大げさに働かせる必要がある。

これだけの技術を駆使する伊藤氏でも、オンラインには「純粋に疲れる」と漏らす瞬間があった。

「だってそこにいないんですよ。『でしょう?』と言いながら肩を叩きたい時に叩けない。ハイタッチしたくてもできない」

人が幸福を感じる時に分泌されるオキシトシンは、賞賛と身体的接触から生まれるとされる。オンラインでも画面越しに拍手はできる。しかし「リアルでみんなでハイタッチした時にグワッと来る感覚」は、どう工夫しても再現できないと伊藤氏は言い切る。

オンラインとリアル伊藤羊一氏の使い分け
オンラインとリアル伊藤羊一氏の使い分け

「だからこそ使い分けなんです。締め会やアワードは対面がいい。でも、毎週朝6時から全国の30人で進捗を共有するミーティングなんて、リアルじゃ絶対できない。物理的な距離を取り払えるのがオンラインの強みです」

オンラインに対面を求めるのではなく、それぞれの媒体で「やれることを全部やる」。その割り切りが、伊藤氏の実践を支えている。

では、オンラインから身体性が剥がれた今、最後に残っている身体的なチャンネルは何か──。「声」だ。

ここで話題は、声の「環境」に移る。オンライン会議で声が途切れたり、雑音が混じったりする状況は、今もなお日常茶飯事だ。しかし伊藤氏の指摘は、単なる不快感の話にとどまらない。

「聞き取りにくい声が続くと、聞く側は無意識に“補完”をし続けます。『今なんて言ったんだろう』『たぶんこういう意味だろう』という処理を、会議の間ずっとやっているんです」

伊藤羊一氏
伊藤羊一氏

本来は話の内容に集中すべきリソースが、音の補完に消耗され続ける。「なんとなく疲れる」の正体は、これだ。

1on1のような信頼関係を築く場面では、問題はさらに深刻になる。

1on1は、内容だけではなく「この人は自分の話をちゃんと聞いてくれているか」という感覚を積み重ねる場だ。そこで声が途切れたり聞き返しが続いたりすれば、話す側は「伝わっていないかもしれない」という不安を抱え続けることになる。

逆に、プロの機材で音質が整った会議は「気持ちいい」と、伊藤氏は実感を込めて語った。

「声の質が整っているだけで、会議の“不愉快度合い”がなくなるんですよ。長時間話しやすくなるし、内容そのものへの集中度も全然変わる。オンラインはただでさえ壁がある媒体なのに、そこに声の問題が重なれば、伝えたいことの大半は届く前に失われてしまう」

では、なぜ声の環境はこれまで個人任せにされてきたのか。

「気にする人がいなかったから、だと思います。リモートワークが広がった当初は、オンラインで仕事ができること自体がまず優先された。PCを支給して、Zoomが使えるようにして、それで“オンライン化した”と思っていた。声の質まで考えが及ぶのは、その後の話です」

伊藤氏自身は、声の環境にかなりの投資をしてきた人だ。

自宅に高性能なマイクとスピーカーを据え、可能な限り静かな環境でオンライン会議に臨む。「ヘッドセットはずっと、しっくり来るものを探していた」と語る伊藤氏が、HP Polyの業務用ヘッドセットを使った感想をこう表現した。

『HP Poly Voyager Legend50』を着用する伊藤氏。
『HP Poly Voyager Legend50』を着用する伊藤氏。
『HP Poly Voyager Legend50』を着用する伊藤氏。

「“意思を持って作っているな”というのが、最初の感覚でした」

音質の違いを、伊藤氏はレコードとCDに喩える。

レコードは生音。CDはデジタルに変換された音。一般的なヘッドセットの音は「電子音そのまま」で、金属的だ。しかしPolyには、「できるだけ生の声に近づけよう」という設計の意思を感じたという。

「メカがそのまま音を出せば金属音になる。そこに意思を持ってコーティングしているような感覚なんです。音楽用のイヤホンやヘッドホンとも違う。人の声を、生音に近づけようとしている。その“近づけているんだぞ”という意思が見えることで、届く声の質がまったく変わってくる」

伊藤氏は、ヘッドセットが「こだわりのある人のためのもの」にとどまる時代は終わると見ている。

「かつてはPCも個人が自分で用意するものでした。でも今は会社が支給するのが当たり前ですよね。ヘッドセットも同じ流れになっていくと思います。オンラインが業務の前提になった以上、声の環境は個人の好みやマナーの問題じゃない。仕事をするためのインフラなんです」

伊藤羊一氏
伊藤羊一氏

AI議事録やリアルタイム翻訳が普及する今、「入力としての声の質」の重要性はさらに増していく。AIの処理精度は、入力される声のクリアさに直結する。声の環境を整えることは、人間同士のコミュニケーションを良くするだけでなく、AIを正しく機能させるための条件にもなりつつある。

HP Poly 業務用ヘッドセット一推し製品
HP Poly 業務用ヘッドセット一推し製品

取材の終盤、伊藤氏の声にひときわ力がこもった。

「考えてほしいのは、“コミュニケーションを何のためにやっているか、毎回意識していますか?”ということです」

目的は、相手を動かすこと。それだけだ。なのに、驚くほど多くの人がこの問いを立てないまま、定例会議に出て、オンラインでなんとなく喋っている。

“やらなきゃいけないからやっている”になっているんですよ。ダメなんです、それじゃ」

相手を動かすために、喋り方を変える。話の構成を変える。デバイスで声の環境、届き方を整える。やれることは全部やる──。だからこそ「伝わる」のだ。

※撮影時の衣装・ロゴは、日本HPおよびHPInc.とは関係ありません。

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