【山形 巧哉 編】第4回:ライフスタイルに合う土地と、生きづらさを感じる土地の違いを考える
元自治体キーマンが描く、ICT活用の過去・現在・未来シリーズ
2026-03-06
日本のICT活用の進化を決定づけるのは地方自治体だ。国家レベルの施策を実際に運用し、国民へのサービスとして昇華させるのは各自治体の役目でもある。そんな自治体において、ICT活用の進化が著しいケースがいくつかある。そしてその共通項として必ず浮上するのが、特筆すべき人材、いわゆる「キーマン」の存在だ。ここでは各自治体においてキーマンとして活躍し、大事業を達成させてきた人物にそれぞれが思い描くICT活用について語ってもらっている。彼らの考えや軌跡をみることによって、同じ自治体はもちろん、企業、組織にも大きなヒントが得られるはずなので、ぜひ熟読していただきたい。
取材:中山 一弘
山形巧哉デザイン事務所 代表社員
一般社団法人コード・フォー・ジャパン
北海道森町 政策参与
- 北海道森町出身。自治体職員として、行政や教育現場でのデジタル技術活用や構築に関する実務経験を重ねながら、その経験をもとに、地域社会においてデジタルをどのように結びつけると良いかという実験・実証を行う。
独立後は社会ニーズや技術進化により変わりゆく「公共空間」に関し、研究調査・計画・設計・実証・実装といった多角的な支援を行っている。座右の銘は「まあすわりなよ」
合同会社山形巧哉デザイン事務所・Code for Japan・国際大学GLOCOM客員研究員・公立はこだて未来大学アソシエイト・デジタル庁オープンデータ伝道師
暮らしやすさや面白さの根源
第3回では住民と観光客という、2つの視点から考えていこうというお話しを中心に伺いました。今回はどのようなお話を伺えるのでしょう。
これから行政が様々な施策などを行っていくうえで、対話や情報開示といったことを積極的にしていくことが、地域住民だけではなく観光客(来訪者)なども含めて関係する人たちとのなかで重要になってくることをお話ししたかと思います。そのような観点で考えたときに、最近読んだ本でとても興味深いものがありました。
大石奈々さんが書かれた「流出する日本人-海外移住の光と影」(中公新書)というものなのですが、ワーキングホリデーなども含めて海外移住の当事者へのインタビューやデータを元に実態に迫っていくというものです。
参考URL https://www.chuko.co.jp/shinsho/2024/03/102794.html
私自身がここ数年、オーストラリアのメルボルンに何回も行くようになっていて、そのまちづくりがとてもいいと思っています。そこでフィールドワークなどもしているのですが、著者の大石さんはご自身がメルボルン大学に通われた経験があり、「なぜ日本人がワーキングホリデーなどでメルボルンを選ぶことが多いのか」というような話題が本書でも書かれています。
日本人だけではなく、他の国の人もメルボルンにはとても多いということで、将来的には人口や経済規模もニューヨークやロンドンを超すかもしれないといわれています。
「なぜそういうまちになってきたのか」についても書かれているのですが、価値観としてとても面白いと感じたのが、諸外国の多くの人がメルボルンに来るのは「ライフスタイル移住」というべきものであるということです。
ライフスタイルに合う“まち”とは
お金や仕事というよりも、そもそも「メルボルンというまちがいい」という理由で移住してくる人が多いということです。まちの雰囲気もそうですし、自由さや緩さとでもいうようなところが好まれているように思います。私自身もメルボルンで多くの時間を過ごして、ライフスタイルが気に入って移住するというのもよくわかる気がします。
私がオーストラリアにフィールドワークなどで行く際には、だいたいメルボルンの中心地からトラム(路面電車)で30分ほどのところにある、ブランズウィックという街に居を構えることが多いのですが、日本でいえば下北沢のようなイメージのところです。自由さと緩さが共存しているような、住んでいる方たちもあたたかい感じで気に入っています。そこで小さなアパートを借りて数週間過ごすのですが、彼らは私をとても歓迎してくれます。
日本ではオーバーツーリズムなどにより感覚がずれてきたことで「観光客にはお金を落としてもらえばいい」という短絡的な発想が見え隠れし始めています。そこを、「観光客も住民である」という発想に変えていくことで、ちょっと長く滞在してもらったりリピーターになってもらったりしていった方がよいのではないかと思います。そしてライフスタイルが合えばそのまま移住してもらうこともできます。
ただし、雰囲気だけでそこに住むことを決断できる人は多くありません。移住しようと思えば、そこで行政の発表するデータなどをしっかり確認するでしょうし、その情報の充実度も重要になってくると思います。
私自身、役所をやめて海外にもいくようになりましたが、そうして身銭を切ることになると行き先についても真剣に調べるようになりました。インスタなどのSNSもそうですが、あらゆる情報源にアクセスしてしっかり備えようと思うようになったのです。
この場合、目的地がメルボルンであれば、SNSのリール動画などを意図的に何回か観るようにしています。そうすればシステム側から積極的にそこに関連する動画や情報などがオススメされるようになってくるので、SNSの特長を使った方法で調べるようになりました。単なる観光情報だけではなく、治安の善し悪しの地域別情報なども含めて得ることができます。そのようなデータを見るたびに情報の開示が大切であることを実感します。
SNSの活用は災害の発生時などにも重要なことで、例えば大きな地震が起きて避難所が開設されるようなときに、近隣の自治体の「LINE」などをすべて登録しておくと、発信力の差が如実に表れてくることになります。例えば隣町の「LINE」では避難所開設情報からなにからどんどん送られてくるのに、自分の町ではちっとも情報が共有されてこない、というようなこともはっきりわかります。
災害時などはそこに住んでいる人だけではなく、その家族・親戚・友人などゆかりのある他地域に住んでいる人々も情報を得ようとしてアクセスしてくることが多いものです。つまり、こういう時の発信力の差は全国で実感されることになるという想像力を持つべきなのです。
また、過去に行政がやってきたことの検証のためにも、行政情報はなくしてはいけません。常に検証可能な環境にしておくためにも、蓄積と情報公開が重要になってきます。批判のためではなく、その時代時代の価値観というものがあるので、純粋な情報として残しておくべきだと思います。
蓄積されたデータとAIの可能性
行政の持つ情報なども含めて、AIを活用する動きが急速に広まってきていると思います。山形さんが最近お仕事をされているなかでも、そのようなことを実感することはあるのでしょうか。
最近は私自身のクライアントのみなさんにも、AIの活用については積極的に勧めています。
現在はクラウドベースの大規模言語モデルが主流ですが、これからは小規模でよりローカル寄りにあるAIが中心に変わっていくと予想しています。そのためには、より精度の高い情報やきちんとデータ化して残してある状態であるかが大切になってきます。
例えば最近の例でも、あるクライアントのところで1年間の議事録を生成AIにスライドでまとめさせたものをお見せしたことがありました。それを目の当たりにしていただくことで、すでにこういう時代になっていることを実感してもらうことができました。
いま自治体などには、まだまだ非構造化データがたくさん溜まっている状況だと思います。前回のお話しにもありましたが、データベンダーとなるべくせっかく生成AIを使って構造化データに変えていくのであれば、それぞれの人の仕事が楽になっていったり、負担が少なくなったりするような使い方をしていきたいですよね。
これまでは私も、「生成AIを使って余裕ができた時間で、他のことを考えよう」というようなことを言うこともありました。ただ、実際にそういう状況になってみると、「その分で少し休もう」という考え方でもいいのではないかと思っています。私自身の座右の銘として「まあ座りなよ」というのがあるのですが、適度な息抜きをしながらゆっくりする時間があってもいいのではないか、ということです。
ビジネス的には「余った時間でクリエイティブなことをしろ」というのかもしれませんが、そればかりでは疲れてしまいます。もしかすると、逆にゆっくりしたり休んだりしているときの方が、クリエイティブなとんでもないアイデアのようなものが生まれてくるのかもしれません。
先ほどもメルボルンのお話しをしましたが、この1年間で3回訪問しています。ここまでハマるとは自分でも思っていませんでしたが、なんでそうなったのか自分でも考えました。
オーストラリアといってもほぼメルボルン周辺にしか行っていないのですが、要するに自分にとってライフスタイルが合っているということに尽きると思います。
メルボルンはスマートシティとしても有名なのですが、防犯カメラなどが東京以上にある印象です。ただ、それほどのカメラがあったとしても、監視社会という感じはありません。
東京では防犯カメラがあれば「悪いやつを監視しているぞ」という雰囲気があるかと思います。しかしメルボルンの防犯カメラには、「カメラで見ているからみんな笑顔でね!」というメッセージが書かれていたりします。監視していることは同じですが、それだけのことでイメージが大きく変わってきます。
かつての日本では地域のなかでお互いに見守っているような環境があったと思います。それをいつの間にかバッサリ切り捨ててしまったために、なんとなくお互いに無関心で生きづらいような状況が生まれているのかもしれません。
昔に戻すことはできないかもしれませんが、改善の余地はあると思います。地域をどんな目で見ていくか、そこで気持ちよく生活していくにはどうすればよいのかを考えていくべきだと思います。
車に乗ったときに困っている人がいたとしたら、さらっと手助けをする感覚を取り戻し、周囲もそれに対して寛容な心で見守ることを思い出すことも大切だと思います。いまや田舎でさえ、地域のおじいちゃんが「おはよう」と子どもに声をかけたら不審者扱いされてしまうようなこともあると聞きます。都会ではそういう事例もあるのかもしれませんが、その価値観を地方にまで拡げることはないと思っています。
こういった日常生活のなかでの「小改善」と、時々ある非日常の状態との「二列評価」という考え方も必要になってくるのではないでしょうか。
非日常ということでいうと、例えばメルボルンでもロンドンでも、電車に乗るときにはあちこちにバリア(障壁)があります。石畳や古い建物などが多く、車椅子などで動きにくい状況が依然としてあります。
このなかでどうやって生活しているのかなとみていくと、車椅子はほとんど電動だし、杖をついて頑張って歩いている人もいますが、もしその人たちが困っていれば誰かが進んで助けてくれます。日本ではこういったところまでサービス化されすぎて、かえって不便な状況が生まれていたりします。
これらを解決していくためには、物事をとらえるときの主軸や価値観といったものを落ち着いて見直す必要があるのかもしれません。行政側も住民側も、こういったことを考え直す時期がきているのかもしれません。
もっと聞きたいのですが、本日も時間が来てしまいました。続きは次回にお願いします!
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