【中窪 悟 編】第4回:ICTの考え方を根本から見直す!構造の転換が自治体DXを促進する

元自治体キーマンが描く、ICT活用の過去・現在・未来シリーズ

2026-03-06

中窪 悟氏
中窪 悟氏

日本のICT活用の進化を決定づけるのは地方自治体だ。国家レベルの施策を実際に運用し、国民へのサービスとして昇華させるのは各自治体の役目でもある。そんな自治体において、ICT活用の進化が著しいケースがいくつかある。そしてその共通項として必ず浮上するのが、特筆すべき人材、いわゆる「キーマン」の存在だ。ここでは各自治体においてキーマンとして活躍し、大事業を達成させてきた人物にそれぞれが思い描くICT活用について語ってもらっている。彼らの考えや軌跡をみることによって、同じ自治体はもちろん、企業、組織にも大きなヒントが得られるはずなので、ぜひ熟読していただきたい。

取材:中山 一弘

中窪 悟

中窪商店(ITコンサル) 店主
一般社団法人コード・フォー・ジャパン Govtech チーム
総務省 地域情報化アドバイザー
総務省 地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー

中窪 悟
  • 自治体職員として30年間勤務。うち15年をいわゆる情シス担当として自治体の情報通信インフラからネットワーク及びシステム全般の構築・運用に従事する。
    Googleのソリューションを全面的に導入し、自治体で初めてフルクラウドによるゼロトラストな環境を構築。2025年4月より現職。

前回まで、自治体のシステムがクラウドへ移行することについてのメリットや考え方について伺ってきました。例えば、クラウドへの移行が成功したとして、どのような世界観が待っているのでしょう。

中窪

最近の生成AIやクラウド活用を推進するようなサービスというのは、すでにかなりのものがツールとして存在していると思います。

この流れを辿れば、もともと自治体の業務のなかにあった「何か物事について考え、それをまとめて整理し、さらにそれを次のサービスに活かしていく」ということがデジタル化されてツールになり、クラウド利用も可能になりながら洗練されてきているということになるでしょう。

その意味では生成AIの登場によって根本的に変わるとはいえませんが、今後はインパクトのあるサービスなども登場してくるでしょうから、そこには期待しています。

特に日本国内では Windows 上のローカルなアプリケーションを使う場面もまだまだ多いので、そこをいかにモダン化していくかというところも課題にはなってくると思っています。

インターネットやクラウドの普及によって、どこからアクセスしても仕事ができるようにはなってきましたが、次の段階としてアクセスした先でのツールや使い方、さらに新しい考え方なども登場してくるでしょう。場所を意識しなくてもよくなる仕組みというのは、今後もどんどん進化していくはずです。

いまの時点で、自治体のクラウド活用を促進するサービスのようなものには、どういったものがあるのでしょうか。

中窪

すでにある程度のサービスは用意されている段階になっているので、次はそれを使いこなしていくフェーズになってきたのだと思います。

それによって業務に要していた時間の削減や、もっと違うことに労力をかけるのかはわかりませんが、生み出された余白のようなところをしっかり使う環境や組織にしていく必要があります。

それは意識するだけではダメで、まず環境から変えていくことが必要になってきます。組織的な取り組みとしては、ここがポイントになります。

そもそも現状がオンプレミスの環境で Windows ベースにより構築されている仕組みを、セキュリティからなにから全部をクラウドネイティブに変えていくことが求められます。基本的にはIDやデバイスをベースにした、認証によるゼロトラストモデルに変化していくことによって、色々なサービスを使いやすくしていくことにつながります。

この新しい環境で仕事をするようになると、当然ですがこれまでとは大きく変わることになるので、それなりのハレーションも発生するはずです。しかし若手の職員やこれから入職してくる人にとっては、これが当たり前の環境になるので、逆にそれがないと仕事が大変だということになります。

もちろんいままで経験を積んできた職員にしても、いったん全体がそうなってしまえばもう元に戻すことはできません。これでやるしかない、となれば人も変わってくるというところもあるので、まずどう構造を変えるのか、どう実践するのかというところに知恵を絞る必要があります。

自治体の規模や職員数にもよるとは思いますが、中窪さんがシステムの構造を変化させていくときに、どのように評価しながら進めればよいのでしょう。

中窪

入り口としては単純で、フェーズがどうのということを考えるよりも、まずは目の前にある端末やサーバー、ネットワーク機器の老朽化という現実的な話があって、それをどう更新していくのかということでしかありませんでした。そこにコロナ禍や急速な人口減少などもあって、地域が縮小していくのが現実的になってきていました。

とはいえ、いくら人口が減少しても町の面積は変わりませんし、人が住む地域がコンパクトになっているわけでもありません。それをどう維持するかというのも課題であって、そのためにもインターネットやクラウドサービスというものを活用しようとしてきました。

そういう状況のなかで、この流れをうまく活かしてシステム更改をしていきたいと思っていました。仮想基盤に集約して仮想デスクトップを提供してきていたとするならば、この次はそれらをクラウドに持っていきたいということは考えていたのですが、暗中模索というような感じでした。

ここでGIGAスクール構想がやってきて、Chromebook の存在というものが大きくなってきました。

これによって、それまでとは違ってエンタープライズ向けのサービスとしても使えるのではないか、と思うようになりました。ここにはコストの問題も関連していて、例えば Windows であれば各種ライセンスの料金が値上がりするなどの動きもあったため、その点も考慮したシステム更改というものを考えるようになっていました。

最初からすべてを見通して計画していたわけではなくて、目の前にある課題をどうするかを考えながらやっているうちに、最終的に現在の形になってきました。そこには外部の方にも入っていただき、やりたいことや予算を整理しながら変えていくことをひとつひとつやってきたという印象です。

評価については、いま振り返ってみれば「ちょうどそういう時期だったんだね」ということになりますが、当時は目先のことを順次こなしながらといった感じです。結果として、ちょっとずつ整理しながら必然的に進んできたということになります。

例えば「クラウドで情報基盤を構築する」という目的を作ってみると、実際にはこういう問題が生じるというようなことがどんどん立ちはだかってきます。それをひとつずつ解決していくことが、着実な進歩につながるはずです。

もちろん、自治体ごとに状況も異なってはきますが、小さな自治体でも生成AIを使いたいとか、セキュリティ性も向上したいという目標を立てたときに、いきなり全部やることは難しいと思います。

しかし、小さな自治体の場合はかえって意思決定が早かったりする利点もあるので、一足飛びになどとは思わないで、着実に進めることを考えていった方が最終的には効率的になるかと思います。

とはいえ、実はクラウド化していくことが最終目的ではなくて、なぜそういうことをするのかという問題意識は常に持っておかないと、形だけ作って満足して結局は業務改善や働き方改革につながらなかったということにもなりかねません。

生成AIを使うにしても、それを使うことが目的なのではなくて、なんのために導入するのかが明確になっていなければなりません。これがないと、なかなか進めていくのも大変だと思います。

私自身のなかでは、そういったビジョンを作り上げるのがDXの本質なのではないかとも感じています。DXの必然性というところも含めて、目の前の課題にどう対応するのかをイメージしておくことが重要だと思います。

これを言い換えれば、「DX化するためには構造の転換も必要」ということにつながっていきます。

面白い捉え方ですね。DXについてはほとんどの自治体が課題感を持っていると思います。

中窪

DX化を単純に効率化やコスト削減のためのものとしか捉えないのは、ちょっと違うとも考えています。そもそも、いま使いにくかったりやりにくかったりすることを、根本的に解消するためのものとして使うような意識の方が適切かもしれません。

例えばこれまでの業務で「住民の方から申請書を受け取って、処理してから戻す」というものがあったとします。DX化はこれをデジタルツールで効率化するだけのものではなくて、「そもそも申請書という形式が必要なのか」というような発想の転換や構造の転換を伴うものになっていくはずです。

その意味では新しい業務の構造を作り上げていくものでもあるので、既存のなにかを壊していくようなところもあるかもしれません。

こういうことは、既存のセキュリティルールやガイドラインなどから考えると、絶対にできないことかもしれません。そうではなくて、いったんそれは置いておいて、自分たちがやりたいことや目指すものだけを考えて、どうしたらいちばんいい形になるのかを考えることです。

本来、行政改革や自治体DX化のようなものは、目先のものではなく将来を見据えて構想を練ったうえで作り上げていくもののはずです。ただ多くの場合、そこまでいかないうちに目先の課題解決のために「なにかいいソリューションはありませんか?」となってしまいがちです。これではとりあえずの結果しか得られないので、構造転換や改革も進まないということになってしまいます。

常に「自分たちはどうしたいのか」や「働き方をどう変えていきたいのか」をよく考えたうえで、手元にあるテクノロジーをどう使っていくのかを考える必要があるということです。

どこの自治体でもこういう問題には気づいているとは思うのですが、なかなか内部に居ては難しいところもあります。私は退職して外部の人間になったことで、他地域のことも知るようになりました。

そこで初めて、ある町では当たり前であっても、他の町の文化や風習ではまったく違っていたということにも気づきました。いってみれば「違和感」を感じてみないことには、自分たちの自治体の危機的状況をどうにかしようというところまでいかないのかもしれません。

また、役所の人間というのは意外と外に出ないので、住民の方が生活している場所に行くこともあまりありません。逆に住民の方からみれば、市役所などは用がない限り行かないところなので、そこで職員がどのような仕事をしているのかわからないし、特に期待するようなこともありません。そういったところで両者の認識のズレのようなものができてきて、コミュニケーションも取りにくいようなところもあると思います。

私がいた肝付町でも、最初は町内どこでもテレワークできるような環境を作ろうとしていましたが、これは住民の方と近いところで仕事をしようという意図もありました。そういうところで、DX化というものは役立ちますし、それが構造の転換にもつながっていくのかもしれません。

職員は地域をよくするために仕事をしているので、地域の声が聞こえるところに出ていくことも、これからは必要とされるのではないでしょうか。

DXについての大きなヒントになりますね。本日はありがとうございました。次回も引き続きお話をお聞かせください。

連載
  1. 第1回:肝付町を変えた光回線と行政DXの起点
  2. 第2回:オンプレミスからクラウドへの変革はなぜ必要だったのか?
  3. 第3回:すべては必然だった!クラウドが促進した“場所”からの解放
  4. 第4回:ICTの考え方を根本から見直す!構造の転換が自治体DXを促進する

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