【中窪 悟 編】第3回:すべては必然だった!クラウドが促進した“場所”からの解放
元自治体キーマンが描く、ICT活用の過去・現在・未来シリーズ
2026-02-18
日本のICT活用の進化を決定づけるのは地方自治体だ。国家レベルの施策を実際に運用し、国民へのサービスとして昇華させるのは各自治体の役目でもある。そんな自治体において、ICT活用の進化が著しいケースがいくつかある。そしてその共通項として必ず浮上するのが、特筆すべき人材、いわゆる「キーマン」の存在だ。ここでは各自治体においてキーマンとして活躍し、大事業を達成させてきた人物にそれぞれが思い描くICT活用について語ってもらっている。彼らの考えや軌跡をみることによって、同じ自治体はもちろん、企業、組織にも大きなヒントが得られるはずなので、ぜひ熟読していただきたい。
取材:中山 一弘
中窪商店(ITコンサル) 店主
一般社団法人コード・フォー・ジャパン Govtech チーム
総務省 地域情報化アドバイザー
総務省 地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー
- 自治体職員として30年間勤務。うち15年をいわゆる情シス担当として自治体の情報通信インフラからネットワーク及びシステム全般の構築・運用に従事する。
Googleのソリューションを全面的に導入し、自治体で初めてフルクラウドによるゼロトラストな環境を構築。2025年4月より現職。
ITインフラの変遷
中窪さんはクラウドが自治体に与える好影響を当初から考えていたようですが、これまでどちらかというとオンプレミスが常識だったように思います。なぜそこからの脱却を考え始めたのですか?
以前からあったことですが、コロナ禍になってリモートワークやテレワークということが、実際にどこの会社や自治体などでも加速度的に広がることになりました。ただ、これはどちらかというと都市部での視点であったように思います。
つまり、人が多い都市部で対面せずに仕事をしたりするために、リモートワークがどうしても必要になったという側面も大きいと思います。これに対して地方の場合には、人口密度はそれほどではありませんので、むしろどこで仕事をするのかという「場所」からの解放手段としてクラウドというものが意識されたように思います。
地方の地域というと、どうしても土着的な生活をしていると思われがちなのですが、ちょっと飛躍した話をすると、例えば九州で畜産業をやっている人が、さらに北海道で畜産をやってもいいと思っています。そういうときに必要なものが何かといえば、場所にとらわれないためのツールであったり、働き方であったりするのではないかと考えたのです。
そう考えると、リモートワークを実現するような環境というのは、都市部だけのためのインフラではなくて、地方でも活用できるインフラになり得るのではないかと思いました。そういう視点からいろいろな可能性を紡ぎ出していきたいなということは、常々考えていたことでもありました。
時期的には十数年前からインフラの在り方として考えていたということでしょうか。
最初に意識したきっかけとしては、やはりスマートフォンの発展があると思います。クラウドを意識したという点では、やはりiPhoneの登場が大きかったという実感があります。
その後はクラウドストレージのDropboxやGoogleのGoogle Driveなども一般的になっていきましたが、リアルな手元にあるローカル端末上にデータがなくても、クラウドに接続すればどこにいてもなんとかなるという状況が生まれたのはかなり大きな変化だと思います。
クラウドの仕組み自体はさておき、「どこにデータがあるのかは分からないけど、どこでも使える」ということがみんなに自然なものとして受け入れられていったということで、静かではありましたが、大きなインパクトを持った潮流だったと思います。
そこにはデータだけではなく、コンテンツやアプリケーションのようなものも一緒にあって、場所に関係なくアクセスして使えるというのが特徴でもあります。
前回もオンプレミスの環境からクラウド利用への流れについてお話ししたかと思いますが、私たちは自分たちでシステムを構築してきたために、シンプルなものから仮想化基盤などの環境まで作ってきました。
そういう経験があったので、オンプレミスで使いやすい仮想化の環境を、今度はクラウドに移っていくということを想像したときに、いろいろな制限から解放されるのではないか、という大きな期待が見えてきたのです。
あるクラウドに対して、様々なデバイスから自由にアクセスすることもできるわけで、その意味ではマルチデバイスでありマルチOSが実現できることになります。
これまでは特定のOSに縛られる環境だとか、ローカルのリソースに依存することが当たり前でしたが、そもそもデバイス自体が自由になっていくところが大きな変化だと実感しました。
いまとなっては当たり前になっていますが、例えばパソコンはWindowsを使っていて、ちょっと持ち歩くときはiPadを使うようなこともごく普通に行われています。どちらでも同じデータを見ながら話したりできるのは、まさにクラウドの利用によるものだといえます。クラウドのリソースを使うことがメインであり、デバイスは単なるコンソールだという言い方もできます。
ただ、それを自治体のなかでどのように取り込んでいくかは、それぞれの立場の人たちが考えなければいけないことだと思います。その立場ごとに視点も変わってくるので、それに気づくかどうか、スキルがあるかどうかの違いなどもあって、すべての自治体が一度にクラウドベースに変えるのは難しいところもあるのが事実です。
クラウド活用の現状と課題
多くの自治体にとって、オンプレミスからの解放をしなければならないといった課題感はあるのでしょうか。
様々な自治体様をみてきましたが、そういったもどかしさを感じることは現在でもあります。
最近では生成AIの登場などで、それをどう使いこなすかなども絡んで余計に複雑になっていることもあります。むしろどんどん先に行く人と、後から付いていく人の差が広がっているような気もしています。
もちろんクラウドだけが優れているということではありませんが、そのメリットを十分にいかしきれていないことが多いのもまた事実です。
中窪さんは前職、自治体としてクラウドへのシステム移行をどこよりも早く実現させた先駆者だと思います。他の自治体へ向けてアドバイスのようなものはあるのでしょうか。
「興味があれば」「好きであれば」というところはあるとは思うのですが、いまではスマートフォンをほとんどの人が持っているでしょうし、そこで使えるようになってきたAIにもなじみ深いという人が増えていると思います。
そういうレベルからでかまわないので、興味を持ってなにかをしていくのは大切だと思います。
基本的にスマホやPCは単なるツールだと思っているので、それがインターネットの仕組みでここではない場所とつながっていて、実態はその先にあるということを理解し、そのうえでスマートフォンでもAIでも使っていくことが重要です。
ここを意識して使うようになっていくことが自治体の職員さんなどに対する教育としても大切だと思っています。どうしてもPCだけで作業をしていると、いっけんそこで完結したように見てしまいがちです。しかし実際には、役場の基幹システムだけでなく、インターネット越しになにかとつながって作業しているということも多いと思います。これがスマートフォンであれば、なおさらクラウド中心の利用方法になっているはずです。
手元にあるデバイスというのは、あくまでもクラウドへのアクセスのための道具であって、その先にあるデータやサービスを使っているのだという意識への変化が求められると思います。
クラウドを意識したICTリテラシーの醸成
端末がインターネットに繋がり、クラウド上のサービスを使う。この一連の仕組みを理解することが大切なのですね。
なんとなく当たり前になってきて意識せずに使っている場合も多いでしょうが、仕組みも含めてそれらをきちんと意識する教育も大事だということです。
いま学校教育ではこういうこともしっかり教えるようになっているようですが、子どもの頃からそれをどう教えていくかが大切です。特にGIGAスクール構想以降の世代の子どもたちは、基本的にクラウドサービスがあればどこにいても同じ教育が受けられることも事実です。
HPさんの販売実績などでも、Chromebookが急成長しているとも聞きますが、新しい世代はそれこそデバイスにとらわれないクラウドサービスの利用をごく自然に受け入れていると思います。
そういう意味でGoogleのシェアが上がっているということもよくわかります。もとがクラウドサービスの会社なので、そのシェアが増えているのも当然の状況だと思っています。
こういったプラットフォーマーに関していえば、他にもMicrosoftやAppleなどもありますが、競合他社がさらに増えるかというとそこは疑問だと思います。むしろ、それぞれのプラットフォーマーのなかで動くサービスや、例えばAIのような画期的なサービスを提供するところが出現して、急成長していくような状況が続くのではないでしょうか。
課題としては、例えばWindows上だけで動作するアプリケーションなどはまだまだたくさんありますが、これらをいかにしてモダン化していくのか、ということがこれから求められてくると思います。
現状ではインターネットにどこからでもアクセスできるようになってきて、そのデバイスもパソコンだけでなくスマートフォンでもタブレットでも腕時計でもなんでもかまわない状況になっています。
次の段階としては、アクセスした先でどんな新しい考え方が出てくるのか、どんな新しい技術が出てくるのかというところまできているのだと感じています。
ちょっと面白いところで、町でやったお祭りについての話があります。これまでは役場の広報担当が1人で走り回って写真を撮っていたのですが、町を挙げてのお祭りなのでイベントも同時多発的にあるし、全体では周囲1kmくらいの範囲で開催されているので、十分に廻りきることが難しかったのです。
そこで考え方を変えて、それぞれのブースにいる職員に自分のブースの写真を撮ってもらい、それをスマホでGoogle Photoのアルバムにどんどんアップしてもらうようにしたのです。
もちろん、そのアルバムに入れるのは特定のユーザーだけですが、その権限を持った担当者がお祭りのいろいろな場面を撮影してアップしていくことで、同時にあちこちで行われているイベントなどの様子もスムーズに集めることができました。広報担当は1人でも、その全体的な様子を統括できていればいいので、余裕を持って祭りの様子をまとめていくことができるようになりました。
こういうことも、クラウドならではの使い方といえるし、それによって業務が簡単かつ品質も向上したことのよい例だと思います。それぞれが違う場所にいても、まとめることで全体の効率も上がり楽しさも伝えやすくなったということです。
場所の制約からの解放や、端末を問わない使い方というのも、けっこう身近なところから始まっているといえるのではないでしょうか。
とても分かりやすい事例ですね。話が盛り上がってきたところですが、ここで時間になりました。次回も引き続き自治体とクラウドについてお聞かせください。
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