Tokyo区市町村DXaward・アイデア部門優秀賞受賞|【実証実験・東京都立川市】生成AI活用による住民サービスの向上と業務負荷低減の実現に向けてHPワークステーションを使ったPoCを実施
HPワークステーションPoCレポート
2026-01-14
少子高齢化による労働人口の減少は、日本全体で問題となっている。自治体においても同様で、これまで以上の住民サービスが求められる中、限られた人材でそれを提供していくには、業務効率化が欠かせない。ここでは、特に長時間の時間外勤務が多かった部署を対象に、住民サービスの品質向上と業務効率化を実現するために、ローカル生成AIを活用したPoCを実施した立川市の取り組みを紹介したいと思う。
取材:中山 一弘
今回の実証実験が「Tokyo区市町村DX Award」DXアイデア部門において優秀賞を受賞しました。
東京都では、都内区市町村が有する優れたDX事例を共有し、職員同士や企業等との交流を通じて新たな協働を生み出すことを目的に、「Tokyo区市町村 DX Connect Day 2025」を開催しています。
このたび、令和7年度DXアイデア部門において、弊社が協力した本実証実験が優秀賞に選出されました。
詳細は以下よりご確認いただけます。
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/12/2025122604
※東京都のWebページへ遷移します。
東京都立川市
目的
- 問い合わせ業務の効率化をローカル生成AIで実現
調達方法
- HPのPoCプログラムへの参加
- HP Z6 G5 A Workstation上にローカル生成AI環境を構築
端末の評価
- AIからの回答が素早くレスポンスは良好
- 非構造化データの構造化も問題なし
- 大規模なサーバ不要でデスクサイドで運用可能
導入効果と運用
- PoC実施初期の段階で、実運用可能との回答が多数得られた
- ブラウザベースのUIにより、実運用フェーズでの利用者拡大にも対応しやすい
- 学習内容を変えることで、他部署への横展開も可能
住民サービスの負荷増大を生成AIでカバー
株式会社WEEL 代表取締役 田村 洋樹 氏、PM/エンジニア 萩原 佳太 氏
立川市 福祉部 障害福祉課 業務係 久保田 海斗 氏、DX推進専門委員 蘇武 翔太郎 氏、福祉部長 佐藤 岳之 氏、市長公室 改革推進課 デジタル改革推進係 主任 市原 巧 氏、福祉部 障害福祉課 業務係 伊藤 卓也 氏、市長公室 改革推進課 デジタル改革推進係長 安藤 悦宏 氏
株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 AI/DS市場開発担当部長 勝谷 裕史 氏、エンタープライズ営業統括 パブリックセクター DX推進営業部 アカウントマネージャー 三浦 郁也 氏
立川市は東京都のほぼ中央に位置している都市だ。新宿まで約25分、東京駅まで約40分と都心部までのアクセスもよく、緑豊かな公園や農業地帯を持ち、産業も発展していることから、交通、商業、自然のバランスがよいのも魅力だ。かつては立川飛行場があり、その広大な土地は公園や官公庁施設、商業施設として再開発がなされている。様々な子育て支援が用意されており、ファミリー層に特に人気のエリアとなっている。
ICT活用にも積極的で、様々な申請がオンラインでおこなえる電子申請ポータルサイトの整備・運営や、人事課所管で実施した、若手職員を活用し、各業務主管課の、行政手続のオンライン化を推進する活動が「Tokyo区市町村DXaward 2023」に選ばれるなど、その取り組みは広く評価されている。
「そんな立川市ですが、将来的には日本全国でもみられるように少子高齢化が進み、労働人口の縮小は避けられない状況にあります。これまで以上の行政サービスが必要となる中、新しい技術を使って労働力を補完していかなくてはなりません」と語るのは立川市で福祉部長を務める佐藤氏だ。「たとえば障害福祉課では以前から時間外勤務が非常に多く、人員を追加するなどの措置をとってみたものの、なかなか改善されない状況が続いていました。働き方改革を進めるうえでも省力化、効率化をしていかなければならないことは明白でした」と同氏は続けて語る。
佐藤氏は過去の人事課長時代と福祉部長に着任した2年前から現場の若手職員と共にその原因を探ってきたのだという。「最大の要因は、支援をすべき方が増えてきたという事実です。精神障害、発達障害、難病など、多方面でサポートが必要な項目の認知が進んだこともあり、障害の区分に入ってくる方が増えたのです」と要因について佐藤氏は説明する。
ローカル生成AIに活路を見出しPoCを打診
そのような状況を抱える中、立川市はある記事を見つけたのだという。「立川市として様々な課題がある中、とあるコンピューター誌の記事の中でHPが積極的にローカル生成AIのPoCをおこなっているという情報を見つけました。立川市独自のデータを活用した生成AIの方が多くの課題を解決できると考えており、またセキュリティ面を考慮していたため、ローカル生成AIを導入してみたらどうなるのか、実際の業務の中で試していただきたいと思い相談してみることにしました」と改革推進課の市原氏は語る。
「お問い合わせを受け、まずは訪問させていただきました。HPがおこなっている自治体様での実績や取り組みを紹介させていただきつつ、PoCのテーマやシステムの実装など、複数回にわたって打ち合わせをしました。その結果、まずは課題が大きい、障害福祉課様の残業を減らしていく方向で生成AI活用を始めてみようという結論に至りました」とHPの三浦氏はPoCが開始された背景を語る。
「課題を伺った結果、住民の方々からのお問い合わせが非常に多いことが原因のひとつとして挙げられました。質問内容は多岐にわたるのでベテラン職員でないと知識量が足りず、それを調べる時間が多かったのです。そこで過去から蓄積されている情報を生成AIに学習させ、チャットボットの要領で住民の方との会話の中で出てきたAIによる回答を職員が参考にして受け答えをする仕組みが有効だと考えました」と語るのは、今回のPoCでローカル生成AIを開発、実装したWEELの田村氏だ。
これらのシステムを構築するのに必要なコンピューターはHPワークステーションと決定した。「64コア128スレッドと圧倒的なコンピューティングパワーを持つAMD Ryzen™ Threadripper™ PRO 7985Xプロセッサに、メインメモリが128GB、グラフィックスにはNVIDIA™ RTX 5000 Adaを搭載したHP Z6 G5 A Workstationをご提案しました。このスペックなら、チャットボットがフル活用されても十分なレスポンスで返すことが可能だと考えます」と語るHPの勝谷氏。
「AIモデルについてはGemmaの12Bで量子化されたものを使っています。今回いただいたデータにはPDFやワードファイル内の図など非構造化データのものもありましたが、それらも構造化させながら学習させていきました。またブラウザベースのUIを採用したことで環境を選ばず利用可能です」とWEELの萩原氏はシステムについて説明する。
こうしてテーマやシステムも決まり、HPとWEELで編成されたチームで開発・導入は進み、立川市のローカル生成AI活用のためのPoCはスタートを切ることになった。
各部署が連携してPoCを実現
2025年5月から約3カ月に渡って繰り返しミーティングをおこないつつ、同年8月にシステム構築へと進んだ。「導入期間があったので、実際にPoCがスタートしたのは9月中旬でした。まずは障害福祉課の事務職や専門職の職員らを対象に40人規模で開始され、過去に寄せられた住民からの問い合わせをAIに照会させ、それに対する回答内容の精度と回答速度を検証してみました」と語る障害福祉課の久保田氏。「これまではマニュアルを参照したり、ベテラン職員に聞いたりしなければならないケースもありましたが、すべてではないもののAIを活用したことで正確な回答を得られることが分かり、実際に住民からの回答として使えるものも多かったと実感しています」と同氏は続けて語る。
「実生活で生成AIを使っていて、これを業務に落とし込めたら効率化できると考えていました。残業時間を減らせる魔法のようなシステムなので、これから大事に育てていきたいと思いました」と、PoC開始直後の印象を語るのは同じ障害福祉課の伊藤氏だ。
「PoCを進めるにあたって調整役として見守ってきましたが、現場で活用していくには精度と速度がないと利用されません。実際に現場で使ってみてレスポンスや回答の精度が上がっていったので、今後につなげることができるという手応えを感じています」と語るのは改革推進課の安藤氏だ。
「生成AI活用においてはハルシネーションの心配もありましたが、AIが直接住民に回答を与えるのではなく、職員が一度判断するという過程が入れば大きな問題にはならないだろうと思いました。このPoCが良かったと感じるのは、久保田さん、伊藤さんといった実際に現場に立っている方々がデジタルを活用して自分たちの業務をよくしていくという姿勢を見せてくれたことです。積極的にAI活用をはじめた若い世代の成長と組織全体のデジタル活用の風土醸成を管理職の方々の協力を得ながらサポートしたいと思っています」と語るDX推進専門員の蘇武氏。
「障害福祉課の時間外勤務が多いという課題は市長からもその解消を直接指示されているほどの大きな課題でもありました。長い年月が掛かりましたが、解決の一助になりえるツールが手元にあるという安心感は大きいです。劇的な改善とまではいきませんが、今後に期待がつながる成果は得られていると思います」とこれまでを振り返りつつ佐藤氏は感想を語る。
システムの品質向上と横展開が今後のカギ
PoCは今後も続くが、導入から初期運用を経た現在、新たに見えた課題はあるのだろうか?「AIに質問するにあたり、質問する側に動的な知識がないとAIがうまく返答できないケースがありました。一方で、職員がマニュアルを参照する際に、細部で見落としがちな内容でも、生成AIではそうした部分も含めて正確な回答が返ってくるケースもありました。こうした特徴を踏まえて、プロンプトの与え方などについても調整していきたいと思います」と語る伊藤氏。
「今回、障害福祉課の一部の業務に特化したローカル生成AIを作っていただきましたが、ほかの担当者からも、これは自分たちの業務にも使えそうだなといった意見も出ています。今後はシステムの横展開についても可能性を探りたいと思っています」と久保田氏も言葉を続ける。
「PoCはまだこれからも続くので、精度の高い回答が瞬時に得られるようにしていただければと思います。先ほど他部署への横展開の話がでましたが、自治体が抱えている課題を他の自治体とも共有し、セキュリティが担保されているローカル生成AIで解決していく。そんな相互運用が可能になれば、行政全体の効率化が実現できるのではないかと考えています。また、今回は若手を中心にHP様およびWEEL様とPoCをやるんだという機運が盛り上がり、PoCの実運用までこぎつけることができました。通常業務をやりながらですから大変だったと思いますが、若手の職員たちの成長にもつながる、非常に有意義な経験を積ませていただいたと考えています」と最後に佐藤氏は語ってくれた。HPとWEELはこれからも立川市のサポートを続けていく。
他の自治体とも課題を共有し、セキュリティが担保されているローカル生成AIで解決していく。そんな相互運用が可能になれば、行政全体の効率化が実現できるのではないかと考えています。
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