2022.11.21
業務効率化のためには、現在どのような手順で業務が行われているか、洗い出して整理しなくてはなりません。しかし、どのように整理し表現するかはなかなか難しいものです。そのために役立つのが業務フロー(または業務フロー図)です。
本記事では業務フローの概要と描画法や記号の種類について、サンプルを交えてわかりやすく解説します。
業務フローとは、業務の流れを視覚的に表現した流れ図です。会議などで業務改善について議論する際や、新入社員に新しい業務を教えるときなどに使用されます。業務改善するにも教育をするにも、最初に業務の現状の流れを可視化する必要があります。
業務フローを可視化し整理することで、効率化のアイデアを出すためのブレーンストーミングもしやすくなります。
業務フローを作成する目的は主に3つあります。それは「業務の可視化」「業務の効率化」「業務の標準化」です。
業務フローを作成する目的の1つ目は「業務の可視化」です。業務フローを作成すれば、業務を可視化し、整理することができます。
どんな業務でも、決まった手順や流れが存在します。その流れを客観的な視点で図式化したものが、業務フローです。業務を改善したり、新しい業務を覚えたりするときは、その流れのステップや段階、ステージ、フェーズといったものを理解する必要があります。
業務フローは主観的な視点を排除し、シンプルな記号を用いて描くので、誰にでも視覚的に理解しやすいというメリットがあります。
業務フローを作成する目的の2つ目は「業務の効率化」です。業務効率を継続的に向上させていくには、プロセスの定期的な見直しと無駄の排除が重要になります。
業務プロセスのなかには、本来何も価値を生み出していないのに、習慣的に残ってしまっている作業が含まれているケースも少なくありません。またITに置き換えることで効率化できるものも多くあります。
たとえば、承認者の多すぎる稟議などは承認者を適切に見直すことでプロセスを減らせます。紙やハンコを中心とした業務プロセスはITに置き換えることで大幅な業務効率アップを見込むことができます。
業務フローを作成する目的の3つ目は「業務の標準化」です。
業務フローを作成する過程において、業務が可視化され無駄なプロセスは整理されます。今まで属人的だった業務は統一され、新しいフローに統合されます。それをもとに業務マニュアルを作成すれば、業務の標準化につながります。また作成した業務フロー図は、そのままマニュアルや業務のチェックリストに使うことができます。
業務フローを描くときに、個人ごとに異なった定義の記号を使っていると属人的な解釈が生まれてしまいます。業務フローに使える規格は複数あるので、使う際には社内で利用する規格を統一し、凡例として記載しておき、だれでも理解できるようにしておく必要があります。ここでは業務フローの規格のいくつかを紹介します。
JISで定められた「情報処理用流れ図」の規格が業務フロー図の描画にも応用できます。情報処理用流れ図はもともと情報処理の手順を表すフロー図で、プログラミングの際の設計図などに用いられます。
ただし、もともと業務の流れを規定したものではないため、情報処理用の記号の定義を業務に当てはめて書く必要がでてきます。利用する際には、個々人が異なる定義で記号を使わないように、どの記号が何を表すのかを社内であらためて確認し、認識の統一をしておくことが推奨されます。
BPMNは日本語では「業務プロセスモデル図」と呼ばれる業務フロー図の規格です。この規格はビジネスプロセスマネジメントイニシアティブ (BPMI)によって開発されました。この団体は合併により無くなっているため、現在はObject Management Group(OMG)という団体が管理しています。
BPMNは最初から業務の流れを図示することを目的として作られたため、業務フローとしては比較的使いやすい規格になっています。
データフロー図はDFDとも呼ばれるフロー図の規格です。もともとはシステム開発においてデータの流れを図示するのに利用されているものですが、業務フロー図の作成にも応用できます。
データフロー図は、あくまでも情報(データ)のやり取りと保存場所を示すもので、処理の順番を表すものではありません。業務フローとして使う際には「業務の順番」という概念を表現できるように定義にアレンジを加えるか、フローチャートなどと組み合わせて使うなどの工夫が必要になります。
スイムレーン図とは業務フローによく使われる描画法で、部門ごとの業務の流れを可視化するものです。他の規格や描画法と違うのは「部門」の概念がある点です。部門間の役割の分担ややり取りと、部門内の処理の流れを1つの図で表現できる点に特徴があります。実際の業務のあり方とも近いため、使いやすい描画法です。
日本では業務フロー図として最も歴史があり、有名な描画法です。業務改善のための業務フロー図だけではなく、業務マニュアルやシステム開発の要件定義などさまざまな目的で利用されています。定義されている記号やルールが豊富なのが特徴です。幅広い内容を表現ができる反面、覚えるまでには時間がかかる点がデメリットといえます。
業務フローでよく私用される記号には以下のようなものがあります。ここでは「スイムレーン」でよく使われる記号について解説します。
処理の名前 | 処理の内容 | 記号 |
---|---|---|
開始・終了 | 業務プロセスの開始と終了を表します。何をきっかけに始まるのか、どのようになったら終わるのかを明確にするために描きます。 | |
プロセス・処理 | 1ステップの作業を表します。どのような作業をするのかを一言で表します。長くなる場合は、複数のステップが含まれている可能性があるので分割します。 | |
判断 | 条件による作業の分岐を表します。条件ごとに作業の流れが変わる場合はこの記号を使います。記号の中心には分岐の条件を書きます。 | |
データベース | 電子データを保存するシステムを表します。データベースや別のシステムにデータを入力したり、そこからデータを出力したりするときにこの記号を使います。 | |
サブプロセス | 業務のステップ数や分岐が多く、複雑でわかりにくい場合は、いくつかの部分的なプロセスに分割します。その分割したプロセスをサブプロセスといい、この記号で表します。 | |
接続 | 業務フローが大きくなりすぎたときには、ページを分割します。そのときに別のページと接続されていることをこの記号で表します。 | |
保存・保管 | データの保存や保管を示します。データベースとは異なり、紙の書類を保存する場合も含まれます。 | |
書類・ドキュメント | 書類を表します。たとえば稟議書などの書類や帳票が挙げられます。手書き、プリントアウト、電子データなどの媒体の種類にかかわらず、書類や帳票であるならばこの記号を使います。 |
※スワイプで左右に移動します。
実際の業務フローのサンプルをご紹介します。
これは紙の契約書による契約手続きと、電子契約における契約手続きを比較した業務フロー図です。簡略化した図ですが、紙の契約書によるフローでは、印刷や製本、印紙の貼り付け、押印作業が発生しています。実際には修正作業などの分岐条件でさらに図は複雑になります。
電子契約では製本や押印、郵送などの手順がすべて省かれ、データのやり取りと電子的な合意のみで契約プロセスが成立しています。業務プロセスがシンプルになると同時に、契約締結にかかる工数や日数、印紙や郵送代などのコスト削減につながるなど、多くの生産性向上につながります。
これはスキャナで紙をスキャンし、電子化する業務を図示した業務フロー図です。従来のワークフローでは複合機でスキャンをしたあと、デスクに戻り、PCでスキャンデータをダウンロードし、再び目的とする保存場所にアップロードをする必要がありました。
しかし、HPが提供するHP Workpathという機能を使うことで、複合機でスキャンするだけで、自動的に必要な場所にスキャンしたデータを保存できます。
業務フローを使って業務改善するにはいくつかのポイントがありますが、ここでは重要な以下の3点について説明します。
業務フローによって業務のプロセスが可視化した後は、不要な作業が含まれていないかを探し、省略できないか検討が必要です。
たとえば、承認者が過剰に多いワークフローです。申請の内容によって承認者の人数が変わるのはよくあることですが、本当に全員の承認が必要なのか、権限の配分が適切なのか、検討する必要があります。
業務フロー図を使ってプロセスを可視化できたら、ITツールを用いて効率化できる作業は無いか検討することも有効です。契約書やスキャンのように、ITツールによる自動化や効率化により作業時間の大幅な短縮が可能なケースも少なくありません。
他にも、請求書の受領や会計システムへの入力・消し込みはスキャナとAI-OCR、RPA、クラウド会計などによってある程度自動化することが可能です。
業務フローを可視化し業務効率化を実施したあとも、定期的に評価と検証を行う必要があります。業務効率化の前と後で作業時間や工数がどれだけ変わったかを数値化し、比較します。もし、あまり短縮されていなかったり、逆に増えていたり、別の部分が非効率になっていたりする場合には、再び改善施策の検討が必要となります。
一度見直した業務プロセスも環境変化等によって、適切ではなくなる場合もあります。そのため、定期的に見直すことが推奨されています。
業務フローは、業務のプロセスをシンプルな記号により可視化した図です。業務フローを整理することで業務効率化だけでなく、業務の標準化にも効果的です。
オフィスにおける業務プロセスの中では印刷やスキャンという作業が頻繁に登場します。とくに昨今ではペーパーレスやデジタル化の推進が求められており、企業はこれらに関連する業務プロセスの見直しに迫られています。
HP MPSは印刷環境を可視化し最適化するソリューションです。上述のHP Workpathをはじめ、業務プロセスの改善、効率化に役立ちます。HP MPSの詳細はホワイトペーパーでも紹介していますので、ぜひご覧になってください。
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