Windows 10
日本HPはビジネスにWindows 10 Pro をお勧めします。

2021.05.26

積水ハウス流の働き方改革、成功の秘訣

IT部門は「現場に巻き込まれる」存在であるべき

リンクをクリップボードにコピーしました

 ニューノーマルが到来し、企業にはこれまで以上にテクノロジーの活用、働き方改革、そしてDXという変化が求められている。しかし、それらの取り組みが思うように進まない企業は多いのではないだろうか。

 大手住宅メーカーの積水ハウスは、「働き方改革」が話題になる前の2009年頃から、持続可能な社会の実現に向けて「まずは自社の社員を幸せにすること」を目指し、ITによる業務の効率化に乗り出していたのだという。改革を成功に導くための勘所について、積水ハウス株式会社 IT業務部長 宍倉正人氏に話を聞いた。

積水ハウス株式会社 IT業務部長 宍倉正人氏

「住まい手」の幸せのために何をすべきか

―― 今、働き方改革が企業や社会の大きな課題になっていますが、これまでに取り組んできた施策について教えてください。

宍倉正人氏(以下、宍倉氏) 当社は働き方改革という言葉が出る前に、別の文脈から布石を打ってきました。その背景にあるのが、企業としてのビジョンです。お客様である「住まい手」にどのような価値を提供するのか、30年1フェーズとし、第1フェーズは住宅難の日本に工業化住宅を提案し、人命と財産を守る暮らしに「安全・安心」を提供、第2フェーズは、高付加価値住宅へと事業領域を拡大し「快適性・環境」を追求してきました。

 そして今は、「人生100年時代の幸せ」を提供する第3フェーズ。グローバルビジョンとして「“わが家”を世界一 幸せな場所にする」を掲げています。そこでは、幸せに暮らして頂くための住まいを提案する我々、つまり、積水ハウスグループの従業員と取引先といった関係者が幸せでないと「住まい手」に幸せを提供することはできない、という考えが前提になっています。

 健康な状態で働き続けることができ、生きがいや誇りを感じる業務環境をつくるために、第2フェーズの後期にあたる2010年から、4つの施策「コア情報一元化による業務連携の再構築」「CADプラットフォームの構築」「デジタルファースト」「真の働き方、業務変革」をスタートしました。2015年頃からは社会的にも働き方改革が話題になり始め、そこに合流したということになります。

働き方改革、すべては「情報の一元化」から始まった

―― 最初は何から取り組まれたのでしょうか。

宍倉氏 まず取り組んだのは、散在しているデータを一つにすることです。いわゆる「コア情報の一元化」ですね。

 以前は大量のデータを流すことが優先されており、それぞれが部門最適になっていたため、データは分断されている状況でした。そのため、上流のプロセスを変更したり、下流で求められている情報を補ったりと、色々と非効率が出てきていました。随時バッチなどを使って対応を繰り返し、シームレスに流れていない情報を統合する必要があった、ということです。それ以降は「情報データベース」を中心に据えて、そこに向かって仕事をしようということで、全ての仕組み・業務の流れを整理していきました。

 2013年には営業担当者からの「打ち合わせにデバイスを持ち出したい」という要望を踏まえて、モバイルデバイスを全社員に配布しました。当初、我々もまだ早いと考えていたのですが、従業員が自分たちでデバイスを準備して使い始めると、セキュリティ的に問題が出てきます。そこで、全ての職種、関係会社を含めて一気に導入に踏み切りました。現在ではグループ会社も含め、モバイルデバイスを2万6000台導入しています。

 コア情報を一元化した上でデバイス戦略を進めることで、いつでも、どこでも必要な情報を見たり更新したりできるようになりました。それによって、働き方改革という観点で言うと、残業時間がかなり減りました。日頃、外出が多い営業や建築部門の社員は、今まで事務所でしかできなかったデータ登録や、事務処理を外出先でもできるようになり、事務所に帰る必要がなくなります。その結果、「これを使えば、仕事を早く終わらせることができる」「出先で情報を更新できるから便利」という状況になり、この頃から社員のデジタルに対するマインドが変化していきました。

 我々がそこで一番に感じたメリットは、情報伝達の速度、および精度が格段に上がったことです。「情報をきちんと揃えていく喜び」を得られたことが一番の効果であると考えています。

現場にITを定着させ、効果を出すまでが仕事

―― 2010年から始めた数々の取り組みの効果として従業員の方のマインドが変化し、ITを業務に受け入れる土壌ができあがっていった、ということなのですね。

宍倉氏 しかし、ここまでは現状の業務を効率化しただけ、外で仕事ができるようになっただけ。真の働き方改革を行うために、ユビキタスな業務環境を整え、現状の業務の流れを変える必要があるのではないか。そのように考え、仕事の仕方そのものを見直そう、という動きが始まりました。

 その一例が、デバイスの利用にも慣れて業務効率に変化が見えてきた中で、「現場監督の働き方」に注目したことです。そこからは、少子高齢化といった社会的背景による現場の減少がみられる一方、労働時間は変化しておらず、「現場へ出向いている時間」が減少していることが見えてきました。

 次にその理由の分析をしたところ、現場へ出向く時間が減少している要因として、さまざまな現場への移動時間と、会議などの打ち合わせの増加があるとわかりました。そこで、第一に現場を充実させることを優先に、「現場監督の現場労働時間を50%以上にする」という目標を設定したのです。その上で現場に行けない時間の効率化を図り、余った時間は現場に向かえるようにしました。

 ここまでくると、徐々に利用者から具体的な要求が出てくるようになります。「こういったデバイスがないと仕事ができない」といった具合です。それを改善しながら、PDCAサイクルを回す。今の状態を見える化して、もっと高みを目指して対応していく。このようにして、どんどんスパイラルアップしていくような形になっていきました。

デジタル化された図面も様々な現場で活用されている

 忘れてはいけないのは、システムを提供して終わりではないということです。我々のポリシーに「運用定着して効果を出すまでが我々の仕事だ」という言葉があります。だからこそ、効果が出ないところにはとことん行って現場を見るように、といつも部員に言っています。

 例えば、何かのシステムを導入したものの、現場の従業員が反発して使わない、ということがあったとしましょう。そんな時に現場へ直接足を運び、実際に使い方を見てもらう、ということです。現場監督の働き方改善の例では、IT業務部の部員約90人が現場に出向いていって、約2500名と話をしました。

 こうした取り組みの結果、業務フローでいう「家を建てる」フェーズがうまく回るようになり、作業時間を抑えることができました。社員にとっても家に帰る時間が早くなったため、家族との時間も増やすことができ、一挙両得です。このような取り組みを繰り返しながら、ようやく信頼を得てきました。

管理部門から経営に近い戦略部門へとシフト

―― 中心になってDXを進めているIT業務部について、そもそもの成り立ちを教えてください。

宍倉氏 会社が設立されてから60年が経っていますが、その歴史の中でIT業務部も色々とシフトチェンジしています。

 当初、「経理部 機械計算課」という名前で発足しました。ホストコンピューターの経理系の仕事をする部署で、部員数は6名くらいだったと聞いています。1995年には「電算部」から「情報システム部」と名前を変えました。元々は経理系の仕事だけでしたが、徐々にCADの仕事などが入ってくるようになり、業務の中身に合わせた形です。

 現在の部署名「IT業務部」になったのは2009年。これはITという言葉が流行っていたからではなく、「業務の中にITを適用していく」という意味合いを込めたものでした。住宅メーカーは、お客様との出会い、完成した住宅の引き渡し、その後のアフターフォローに至るまでフロー型のビジネスモデルで成り立っています。そのフローに沿って、ITを適用していく、ということです。

 また、元々は管理部門にありましたが、2018年には経営に近い戦略部門に変わり、組織の中での立ち位置も変化してきました。そうした中、言われることだけをやるのではなく、やるべきことを精査した上で量から質を追求するようになっていきました。現在は、攻めと守りのバランスシフトにも取り組んでいる最中です。

―― IT部門が主体的に業務フローを改善することは決して簡単ではないと思いますが、どのようにして継続した取り組みにしているのでしょうか。

宍倉氏 当社のような組織体だからこそ、うまく回っているのだと思っています。我々IT業務部は利用社員に近いところにいるからこそ、現場の声を聞きながら必要な取り組みを精査していきます。決して、現場の声をそのまま作り込んでいるわけではありません。

 利用社員から要望に対して疑問を持ち、現状分析をした上で、経営からの伝達事項を各事業部門・各企画部門とすり合わせます。そして、最適な形に開発をして、利用社員に提供していくわけです。経営層から利用社員までが近い組織体であるからこそ、こういった働き方改革がうまく回っているのではないかと思います。

 これは私の持論ですが、企業内の情報システム部門は請負仕事ではいけません。やはり会社の主業務を知って、その中にどのようにITを適用すべきか、いかに効率化していくか、具体的な企画を自ら立てることが重要です。我々は今後も、業務横断型で効率化を企てる部門でありたいと思っています。

コロナ危機を機会に変え、住宅産業のDXを推進する

―― 作って欲しいという要望に沿って作ればいいわけではなく、真の業務の効率化、新しい価値の創造に繋がるものは何か、精査する段階が重要ということですね。その際、関係する部署や関係者を巻き込むことになると思いますが、どういう舵取りが必要になるのでしょうか?

宍倉氏 利用部門は「部分」的な話をしがちですが、我々IT部門はシステム全体を見ている中で、データのリレーションを把握していることから、一部分が良くなる代わりに他の部分が悪くなる、ということがわかります。私がそこで心掛けるようになったのは、IT部門が他部署を巻き込むのではなくて、「まず巻き込まれてから巻き込む」という方法です。

 これまでの働き方改革の取り組みで信頼を重ねてきたことで、ITがなくては仕事が回らないようになってきています。すると、IT部門は現場に巻き込まれていく形になります。「これ、IT業務部も呼んでおこうよ」「IT業務部にちょっと相談しよう」という具合です。

 鍵になるのは、その状況下で逆に「主導権を握って巻き込んでいく」というアプローチ。もちろん、大切のことは前段にある「いかにIT部門を信頼してもらえるか」というところです。これまで色々と細かなところで苦労を重ねてきましたが、当社の社員は皆、「これだ」と思ったら使ってくれますし、改善心旺盛な人たちばかり。だからこそ、この取り組みがうまく機能しているのだと思います。

―― なるほど、現場に巻き込まれてから巻き込んでいく。まさに、目的ドリブンでのIT化なのですね。最後に、今後DXをどう捉えて進めていくのか、宍倉さんのお考えを教えてください。

宍倉氏 DXはIT部門だけでは成しえません。「住宅産業におけるDX」のファーストステップである業務改善は、IT部門が中心になって進めることができます。しかし、次のステップに進み、ITの最新技術を融合させる段階になって新たな要件が出てくると、我々だけの力ではできないことが増えてきます。実はこのステップでフラストレーションが溜まっていたこともありました。その疑問に答えてくれたのが、コロナ禍で直面した変化です。

 何が起こったかというと、突然の緊急事態宣言で営業担当がお客様のところへ出向けなくなったわけです。あるいは、お客様が展示場に足を運んで頂くことができなくなった。そこで現場サイドから「Web上でお客様と繋がりたい」「オンラインで打ち合わせを進めたい」と、様々なアイデアが出てくるようになりました。ここで気がついたのは、アイデアは現場にあるということです。そして、我々IT部門はそのアイデアやITを駆使し、スピーディーに実現すべきなのだと考えるようになりました。

 今では、展示場WEB見学会の実施や、「おうちで住まいづくり」といった、コンテンツが生まれています。そこでは、お客様への土地情報からお打合せ、ご契約、設計図を見ながらのプランなど、家づくりの全てに至ることがWEB上でできます。また、アフターメンテンナスもWEBでお受けできるようになり、オーナー様へのアフターサービスの充実も図っています。

現場発のアイデアで生まれた「ご近所外壁検索」

 当社の強みは、IT部門が現場や経営陣に近いことに加え、データを一元化した仕組みがあること、ユビキタスなデバイスを持ち、デジタルなマインドを獲得した従業員たちがいることです。今はこれらの強みを生かして、現場のアイデアをIT施策で実現したり、イノベーションを起こしたりする俎上ができた段階にあります。

 当社がお客様に提供する普遍的な価値を意識しながら、いま求められていること見極めること。現行のITシステムの構成や全体像を意識した上で、最新のITテクノロジーや技術トレンドを取り込み、ストーリーを構築すること。そして、実際にIT施策を打っていくこと。この繰り返しこそがDXと言えるのではないか、そう考えています。

※本記事は JBpress に掲載されたコンテンツを転載したものです

海洋プラスティックを使用したノートPC

HP Elite Dragonfly G2

重量989グラム、薄さ16.1mm、CNC削り出しのマグネシウムボディの軽量ビジネスPC。多彩なセキュリティ機能に加え、覗き見を防止する内臓型プライバシースクリーン、物理シャッターを備えたカメラ、コラボレーションを促進する全方位をカバーするマイクなど、ビジネスに必要なすべてをエレガントなボディーに備えました。

※ 最軽量時の質量です。構成により異なります。

  • Windows 10 Pro
  • 第11世代 インテル® Core™ i5 / i7 CPU
  • オンボード8GB / 16GB LPDDR4X
  • 256GB / 512 GB SSD ストレージ

HP Elite Dragonfly G2の詳細を見る

リンクをクリップボードにコピーしました