2023.08.04
マイクロソフトは Windows を自然言語で操るAIアシスタントとして、Windows Copilot※1 と呼ばれる構想を展開しています。同社が5月に開催した開発者向けイベント「Microsoft Build※2」で発表した大規模言語モデルを利用したAIアシスタントです。
※1 出典・引用:AI のパワーを Windows 11 にもたらす – Windows Copilot と Dev Home でお客様と開発者の生産性の新時代へ(Japan windows Blog) / Microsoft
https://blogs.windows.com/japan/2023/05/26/bringing-the-power-of-ai-to-windows-11-unlocking-a-new-era-of-productivity-for-customers-and-developers-with-windows-copilot-and-dev-home/
※2 出典・引用:Microsoft Build で開発者向け AI ツールを発表(Japan News Center) / Microsoft
https://news.microsoft.com/ja-jp/2023/05/24/230524-microsoft-build-brings-ai-tools-to-the-forefront-for-developers/
具体的には、Windows Insider Program の開発者向けチャンネル(Dev ビルド23493以降)※3での配布開始からパワーユーザーやIT専門家向けに展開され、標準ブラウザの Microsoft Edge(バージョン115.0.1901.150)以降との組み合わせにより、誰でも体験ができるようになりました。
※3 出典・引用:Announcing Windows 11 Insider Preview Build 23493(Windows Blog) / Microsoft
https://blogs.windows.com/windows-insider/2023/06/29/announcing-windows-11-insider-preview-build-23493/
生成AI対応については、一般向けにも、すでに、2023年3月の大型アップデートの配信で、チャットによる検索機能が Windows 11 に統合されています。こちらについては、以前のコンテンツ※4でご紹介しました。
※4 出典・引用:新しいBingを統合した2023年春のWindows 11大型アップデート(HP Tech & Device TV) / 日本HP
https://jp.ext.hp.com/techdevice/windows11/windows_sc40_06/
ブームともいえるAIチャットですが、Windows向けには、最初、検索サイトBingがWindows標準のブラウザ Edge での利用でAIチャットに対応し、その後、Windows 11にチャット検索のための入り口が統合されています。タスクバー上のボタンや検索ボックスとして提供することで、最小限の操作でAIとの対話を開始し、チャットによって求めている回答を得ることができるようになりました。
今回の Windows Copilot は、少し先の Windows で提供される機能として、プレビュー提供されるものです。Copilotは、副操縦士を意味します。OSである Windows とわれわれ人間の間に介在し、やりたいことを伝えれば、それを解釈して Windows に伝えてくれるというものです。
一連のAI戦略は、ChatGPTで知られるOpenAI社とのパートナーシップ※5によるもので、マイクロソフトは同社と長期的な協業のために数十億ドルの投資をし、AIの進化を加速、その利点が世界で広く共有されるよう取り組むと発表しています。
※5 出典・引用:マイクロソフトと OpenAI がパートナーシップを拡大(Japan News Center) / Microsoft
https://news.microsoft.com/ja-jp/2023/01/25/230125-microsoftandopenaiextendpartnership/
過去において、われわれ人間とパソコンとの対話は、さまざまな方法が模索されてきました。ユーザーインターフェース(UI)、ユーザーエクスペリエンス(UX)として、最終的に、Windows はグラフィカルな対象を、マウスやタッチなどの直接的な操作でポイントし、やりたいことを伝えるグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)の追求を続け、数十年の歴史の中で洗練されたものになってきました。
GUI以前は、いわゆるコマンドインタプリターと呼ばれる通訳アプリが、特別な命令語だけを解釈してOSに実行させるキャラクター・ユーザー・インターフェース環境を提供していました。人間は呪文のような命令語を覚え、プロンプトに対して、命令とオプション等を引数として与えることで、望みの結果を得ていました。
今でこそ、フォルダのアイコンをダブルクリックするという直感的な操作で、その中に、どんなファイルが入っているのかを知ることができますが、コマンドインタプリター全盛期のOSだったMS-DOSでは、dir という命令を知らなければ、ファイルの一覧を得ることさえできなかったのです。
Windows Copilot は、パソコンに、もっと自然な言葉で対話する環境を提供します。言葉による対話という意味ではGUI以前の環境に戻ったように感じるかもしれません。でも、かつてのように命令語としての呪文を暗記する必要はありません。自分が、自分の言葉でパソコンに頼めば、パソコン側が最大限の努力をしてその依頼を解釈し、望みの仕事をしてくれます。それが Windows Copilot 構想です。
本格的に Windows に導入され、一般に公開されるのはまだ先のことになります。現時点でできることは、ほんのわずかですが、今回のプレビューでは、その片鱗を体験し、未来のパーソナルコンピューティングを予感することができます。
ただし、Insider PreviewプログラムのDevビルドをいったん導入すると、元の状態に戻すには、Windows を再インストールするしかなくなります。くれぐれも、現役で業務に使っているパソコンに入れるようなことがないようご注意ください。仮想マシンを作るなり、専用に別のパソコンを用意するなりして試すことを強くお勧めします。
実際に、Windows Copilot が提供する環境を試してみましょう。タスクバーには新しいボタンが表示されています。このボタンをクリックするか、Windows キーを押しながらCキーを押すと、Windows Copilot が起動し、デスクトップの右端にパネルを表示します。ここで、Copilotと対話することができるようになっています。
デスクトップ下部に横たわるタスクバー。Windows ボタンの右に検索ボックス、その右側に Windows Copilot を呼び出すボタンが表示されています。ボタンをクリックすると、デスクトップ右側にプロンプトのパネルが表示されます。
デスクトップに、アプリのウィンドウが開いている場合も、このパネルを避けるようにウィンドウサイズが変更され、対話のためのパネルが後ろに隠れてしまうことはありません。
ここでCopilotとの対話を始めます。2023年7月時点でのプレビューでできることは限られています。公式ブログで例として挙げられているのは、
“Change to dark mode.”
“Turn on do not disturb. “
“Take a screenshot”
“Summarize this website” (Active tab in Microsoft Edge)
“Write a story about a dog who lives on the moon.”
“Make me a picture of a serene koi fishpond with lily pads.”
といった問いかけです。事例は英語ですが、日本語で試してもうまくいきました。
「ダークモードに変更して」
「集中モードをオンにして」
「スクリーンショットを撮って」
「この Web サイトの概要を教えて」 (Microsoft Edge のアクティブなタブ)
「月に住む犬についての話を書いて」
「スイレンの葉がある静かな鯉の池の写真を撮って」
調子にのって、いろいろ試しましたが、できることは限定されているようです。Windowsの機能を呼び出して、それを実行することを期待しても、なかなかうまくいきません。たとえば自動的にシャットダウンしようとしても無理でした。でも、AIに Windows の操作を頼むというムードは体験できるのではないでしょうか。
マイクロソフトは、Windows Copilot に続き、AIを活用した業務用チャットとしてBing Chat Enterprise も発表、Microsoft 365アプリとの統合も視野に入った戦略を展開しようとしています。すでに価格等も発表されています。法人向け Microsoft 365 Copilot https://news.microsoft.com/reinventing-productivity/ は、Microsoft 365 E3、E5、Business Standard、およびBusiness Premiumを利用している顧客を対象に、広範な利用が可能になった時点で、1ユーザーあたり月額30ドルで提供されるということで、現在は、特定顧客のための有償早期アクセスプログラムが各社に提供されているそうです。
たった1年足らずの短期間に、本当に多くのことが起こっています。コロナ禍は世の中のDXを数ヶ月で数年分どころか、10年分は加速したと言われていますが、このAIの浸透はどうでしょう。おそらくは、将来のコンピューターとの付き合い方を変えてしまいそうな勢いです。今、同様に、クルマの世界では自動運転化が進んでいます。かつて自動車はマニュアルミッションからオートマティックミッションへの移行を遂げています。卑近な例でいえば、今の、AIによる自動化への移行は、そのときに似ているかもしれません。当初のオートマティックミッションは、熟練ドライバーのマニュアルミッション操作には及ばなかったかもしれませんが、多くの一般的なドライバーをミッション操作から解放し、さらに、力やテクニックが必要だった大型バスやトラック、トレーラーなどの運転のハードルを一気に下げることができました。同様のことが今、コンピューターの世界でも起ころうとしているのです。この先、パソコンのフォームファクタにも影響を与える可能性もあります。パソコンの使い方にも変化が訪れるでしょう。その歴史的な瞬間に立ち会うことができることの興奮は、決して半端なものではありません。十二分に楽しみながら経緯を見守りましょう。
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