2020.02.20
Adobeフォントはクリエイターが必要とする多くのフォントを網羅しています。単体で購入する手間もコストもかかりません。AdobeのCC会員またはIDを持っていることで使用できます。商用利用も可能なため、デザインの可能性を大きく広げることが可能です。目的や自分のイメージに合ったフォントを選んで、デザインのクオリティをさらに上げていきましょう。
クリエイターが使用可能なフォントにAdobeフォントがあります。Adobeフォントとは、Adobe社が提供するフォントライブラリーサービスのことです。Adobe CCへの加入など条件を満たしていれば無料で使用でき、フォント数の利用制限もありません。この記事では、Adobeフォントの基本的な仕組みや使ううえで押さえておきたい注意点などについて説明していきます。
Adobeフォントとは、Adobe社によって提供されているフォントライブラリーサービスのことです。Adobeフォントは、Adobe Typekitと呼ばれていたサービスのことで、名称の変更とともにサービス内容もわかりやすく一新されています。しかも、使用可能なフォント数は2019年10月時点で1万5000点以上と豊富で、そのなかにはモリサワをはじめとした有名フォントが多数含まれているのです。モリサワフォントは駅構内などの公共施設の案内表示や冊子などに用いられることが多く、クリエイターなら知らない人はいないと言っていいでしょう。
通常は1書体単位での購入かモリサワのサポート会員が利用できるモリサワフォントが含まれているのも、Adobeフォントの大きな特徴です。もちろん欧文フォントも充実しており、そのうえ今後も増えることが期待できます。しかも、利用できるフォント数には制限が設けられていません。これだけの内容が、Adobe CC会員になるだけで追加料金不要で利用できるのです。商用としての利用条件もクリアでき、会社案内や広告などの紙媒体からWebページのデザインまで幅広く活用できます。Adobeには無料のAdobeアカウントもありますが、その場合でも約200種類のフォントを使うことが可能です。
Adobeフォントを利用する条件は、Adobeが提供しているCreative Cloudを購入するだけです。AdobeのCreative Cloudとは、これまでAdobeが提供してきたIllustratorやPhotoshop、In Designなどの製品をクラウド上で利用できるようにしたもので、使用権を購入するという形になります。以前は製品版を単体で購入して使用するのが通常でしたが、サポートの終了にともない、すべての製品がCreative Cloudに変わっています。Creative Cloudを購入することでAdobe CC会員となり、サブスクリプションとして提供されているAdobeフォントが利用できるということです。
しかし、ここで心配されるのがライセンスの問題ではないでしょうか。クリエイターにとってフォントのライセンスがどうなっているかは重要な問題です。デザインをクライアントに渡す際にライセンスの問題がクリアになっていないと、仕事として成立しません。Adobeフォントにはすべて同じライセンスが付与されているため、追加料金を払うことなく利用が可能です。Creative Cloudには、目的に応じてさまざまなプランが用意されています。
プランのほかに、法人や教育機関などユーザーによって月額料金は異なりますが、個人利用なら単体プランで税抜きの月額料金は2480円で利用できます。単体とは、IllustratorやPhotoshopなどを単体で利用するプランのことです。IllustratorやPhotoshopに加えて、Adobe XDやモバイルアプリなども使えるコンプリートプランの場合でも、税抜きの月額料金は5680円で利用できます。
Adobeフォントの基本的な使い方には3つのステップがあります。まず、使いたいフォントをWebブラウザまたはアプリから探しましょう。1万5000点という豊富なフォントの中には、毛筆体からポップ系、欧文フォントまで目的に応じたさまざまなフォントがそろっています。作業に使うことが多いフォントや自分のイメージするフォントを自由に選んだら、使いたいフォントの状態をアクティベートにしておきます。
このとき、グループごとでアクティベートできるものもありますが、単体でしかアクティベートできないものもあるので注意しましょう。また、使用しないフォントについてはアクティベートする必要はありません。アクティベートしたフォントだけが使用できるようになります。ここまで準備をしておけば、Creative Cloudにログインするだけでフォントが使えるようになります。フォントメニューにはアクティブフォントしか表示されません。もしも使いたいフォントが表示されていないようなら、オフになっていないか確認してみましょう。
Adobeフォントにはクリエイターにとって必要なフォントが数多くそろっています。できる限り有効に活用するために、基本的な使い方を把握しておきましょう。ここではAdobeフォントの基本的な使い方の手順について紹介していきます。
クリエイターにとってフォントを利用することが多いのはグラフィックツールです。Adobeフォントは、従来と同じようにIllustratorやPhotoshop上でそのまま自由に使うことができます。グラフィックツールでAdobeフォントを利用するときも、まずフォント一覧から使いたいフォントをアクティベートしておきましょう。こうしておけば、あとは通常通りIllustratorやPhotoshopを立ち上げるだけでフォント一覧に表示されます。もちろん、アクティベートしたフォントしか表示されませんから、使わないフォントまで表示されて動作が重くなる心配はありません。
一度アクティベートしておけば、Adobe製品以外のツール上でも使うことは可能です。たとえば、WordやExcelなどでも利用は可能なので、Office製品が使えるパソコンの場合は確認してみるといいかもしれません。アクティベートした筈なのに表示されない場合は、Creative Cloudのデスクトップアプリを起動させてみましょう。起動によって同期されるため、これで利用できるようになります。また、グラフィックツールで表示されないときは、グラフィックをツールの再起動で解決できる場合があります。
Adobeフォントは紙媒体などの印刷用だけでなくWebフォントとしても利用できます。ただし、Webで使用する場合は利用の手順が違うので、あらかじめ準備をしておきましょう。まずフォント一覧から自分が使いたいフォントを決め、アイコンをクリックします。「Webプロジェクトにフォントを追加」というウィンドウが表示されたら「新しいプロジェクト名を入力」の横にプロジェクト名を入れて作成ボタンを押します。
ここまでできたら、次に表示されるのはコードです。「1個のフォントがWebフォントテストに追加されました」の文言とともに表示された は必要ありません。また、CSSの場合ならfont-family:のコードを記述しましょう。気をつけておきたい点としては、Adobeを解約した場合にはAdobeフォントが使えなくなることです。その場合はWebフォントとしても表示されることはなく、他のフォントに置き換えられてしまうので注意しましょう。
前述したように、Adobeフォントはフォント数の豊富さだけでなく、クリエイターに人気が高いさまざまなフォントを使えることが魅力です。Adobe Originals以外に、モリサワやFontworks、JIYUKOBOといった有名フォントメーカーがそろっています。通常、これらのフォントを使うにはメーカーと契約をしたり、単体で購入したりしなければなりません。モリサワは最も高価なフォントで、1書体当たり購入するのに数万円はかかります。複数の書体が入ったお得なセットやオンラインでの会員プランなども出ていますが、それでも安価とは言えません。
Adobeフォントは、Adobe CCアカウントを持っているだけでこれらのフォントが自由に使えます。コストの面で考えても節約につながりますし、1万5000書体という膨大な量があればデザインの幅が広がります。クリエイティブな仕事をしていると、他社で作成したデータをもとに新たなデザインを起こすことも少なくありません。また、クライアントから使用フォントを指定されることもあります。そのような場合でも柔軟な対応が可能です。ただし、Adobe CCを解約したときにはこれらのフォントメーカーのフォントは使えなくなるので注意しておきましょう。
Adobeフォントを使用する際、どのような点に気をつけるべきか注意点について説明します。
フォントをデザインに組み込む際に確認しておきたいのがライセンスの問題です。ライセンスがどうなっているのか明確になっていないと、後でトラブルに発展することも珍しくありません。Adobeフォントで提供されているフォントなら、ロゴとして使用することもできます。商標登録や著作権保護なども可能なので、安心してデザインに使えます。ロゴとして使う場合、フォントをアウトライン化して一部作り変えることもありますが、その場合も特に問題はありません。雑誌やポスター、広告や書籍などに使うことも可能です。
Adobeフォントを使って作成したドキュメントや製品、パッケージなどにフォントに関わるクレジット表記を入れることも不要とされています。ただし、1文字のみを使ったジュエリーやステッカー、ステンシルなどを作成して販売することはできません。これは、Adobeフォントそのもので利益を得ることが禁じられているためです。あくまでデザインの一部として使うものであり、製品に付属するものとして利用できると考えておけばいいでしょう。また、使用に迷った場合には勝手な判断はせず、Adobeのサポートに確認することが大切です。
Webフォントとして利用する場合は、前述した通り使うフォントをプロジェクトに追加しておきます。このとき、言語サポートの文字セットについても、あとから選択が必要なので注意しましょう。どの文字セットがどこまでサポート対象になるのか説明します。まず「デフォルト文字セット」の場合は英語をはじめ英フランス語にドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、そしてスペイン語がサポートされます。「すべての文字セット」でサポートされるのはフォントファミリーの言語と字形になります。
「ダイナミックサブセット」は、Webサイト上で使っている文字だけを対象にしたカスタムサブセットのことです。「ダイナミックサブセット」は東アジアのWebフォントを提供する役割を持っています。最後の「言語サブセット」ですが、これは、Webサイトで特定の言語をカスタムサブセットとして作成する際に必要になるものです。また、言語フィルターを用いてフォントを参照すると、サポートされている言語の確認ができます。
Open Type機能は、必ず使ったほうがいいということではありませんが、文字の適切な配列など見栄えを整えてくれる役割を持っています。そのため、Webフォントを使う場合には必要な機能と言えます。Open Type機能を使うには、チェックボックスをオンにしましょう。こうすることでプロジェクトに追加され、機能が有効になります。Open Type機能がオンになっていると、合字や代替文字、スモールキャップスといったWebフォントファミリーで使用可能な機能がリストとして表示されます。
スタイルや太さなどが表示されますが、これは共通で使用できる機能のことです。特定のフォントだけに付いている機能は表示されません。また、使用しているブラウザが「font-variant」 と「font-feature-settings」 をサポートしていなければOpen Type機能は正しく動作しないので注意しましょう。サポートしているブラウザかどうかは事前に確認しておく必要があります。ブラウザだけなく、バージョンやOSによっても異なるということも意識しておいたほうがいいでしょう。
Adobeフォントは「Adobe Typekit」から変更した際に機能についても大幅に改善されています。従来の「Adobe Typekit」では、フォントの利用に関する制限が複雑でさまざまな説明がされていました。しかし、Adobeフォントに変わってからは複雑な規約がなくなり、そのぶんシンプルでわかりやすい利用体系になっています。何より大きな改善点は、同期可能なフォント数が無制限になったことです。1万5000書体以上という膨大な種類のフォントがWeb上でもデスクトップでも使用できます。
個人での使用はもちろんのこと商用としても利用できるため、Adobeフォントはクリエイティブな仕事をするうえで心強いと言えます。しかも、Webフォントとして使用する際も、ドメインからページビューに至るまでの制限が撤廃されたことは大きな変化です。Creative Cloudを購入すれば多くのフォントが柔軟に利用できます。ただし、Adobe IDを持っているだけでもAdobeフォントの基本コレクションが無料で使用できるのは、大きな魅力と言えるでしょう。