3Dデータを設計の先へ
ビジュアライゼーションの“今”を支える最新環境
2025-01-31
![NVLogo](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/img/logo/images/nvidia_logo.png)
製造業で重要性が高まるビジュアライゼーション。3D CADで設計した3Dデータを製品のみならず、製造やマーケティングといった領域にまで広げ、ビジュアライゼーションがもたらす価値を最大化するにはソフトウェアだけでなく、ハードウェアも重要となる。ビジュアライゼーションの“今”を支える最新環境を紹介する。
今、製造業でビジュアライゼーションの重要性が高まっている。その起点となる3Dデータの活用に目を向けてみると、従来の設計領域にとどまらず、製造、販売/マーケティング、サービスといったバリューチェーン全体にまで広がっており、3Dデータの活用/共有は企業の競争力強化、イノベーション創出に欠かせないものとなりつつある。
そうした中でビジュアライゼーションは各プロセス間、さらには複数の部門やサプライヤー、顧客などを含めた関係者間での円滑なコミュニケーションを促進し、意思決定の迅速化や問題点の見える化などに役立てられている。同時に、高度なビジュアライゼーションはシミュレーション環境としても効果を発揮し、物理的な実験や試作回数の削減につなげることができる。
しかし、効果的なビジュアライゼーションを実践するにはクリアすべき課題もある。一般的にビジュアライゼーションを行うには、3D CADで設計した3Dデータを起点に、ビジュアライゼーション用ツール向けにデータの軽量化/変換を行う必要がある。こうした作業の手間やデータのやりとりに加え、課題となっているのがデータ変換に伴う断絶(サイロ化)だ。
例えば、ビジュアライゼーションを用いたデザインレビューの結果、問題点が見つかり3D CADで設計変更を施した場合には、再度3Dデータを変換しなければならない。これが1回で済めばよいが、デザインレビューのように何度も更新を繰り返し行うようなケースでは派生データが大量に生まれ、データのバージョン管理も煩雑になってしまう。
こうした課題を払拭(ふっしょく)するには、SVOT(Single Version Of Truth:信頼できる唯一のバージョン)となる単一のデータを基に、各プロセスやツールをシームレスに連携できるビジュアライゼーション環境が不可欠だ。
高度なビジュアライゼーションを実現する理想の環境
そのような理想的なビジュアライゼーション環境を提供するのがダッソー・システムズだ。同社はビジュアライゼーション環境として「3DEXPERIENCEプラットフォーム」と「3DEXCITE DELTAGEN」(以下、DELTAGEN)を展開している。
![ダッソー・システムズ 3DEXCITE テクニカルコンサルタントの志田洋樹氏](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/technology/ws_itm_3d/images/01.jpg)
3DEXPERIENCEプラットフォームは、製品ライフサイクル全体をカバーするビジネスイノベーション基盤だ。その特長について、ダッソー・システムズ 3DEXCITE テクニカルコンサルタントの 志田洋樹氏は「3D CADの『CATIA』で作られた3DデータをSVOTに基づく単一データとして、設計のみならずシミュレーション、ビジュアライゼーション、製造計画、さらにはマーケティングやサービスといった幅広いバリューチェーンに展開できます。また、ゲームエンジンに相当するアプリケーションも統合されており、設計データから直接リアルかつインタラクティブなビジュアライゼーションコンテンツを作成することも可能です。最新バージョンでは、リアルタイムレイトレーシングにも対応しました」と説明する。
一方のDELTAGENは、設計データのビジュアライゼーションおよびビジュアライゼーションデータのオーサリングを担うソフトウェアだ。「主要なCADや中間ファイルなどの多様なフォーマットに対応し、形状品質を維持したままデータを軽量化できます。また、メッシュを精細化したり、軽量化したりなど、自在にテッセレーションを変更することも可能です。DELTAGENを用いれば、ダッソー・システムズのCATIAや3DEXPERIENCEプラットフォームのCADを導入していない企業でも、より高度なビジュアライゼーション環境を手に入れることができます」(志田氏)
3DEXPERIENCEプラットフォームとDELTAGENは共通して、物理ベースのレンダラー「STELLAR」を搭載する。STELLARはマルチGPU環境や分散処理をサポートし、リアルタイムレイトレーシングから高精度グローバルイルミネーションまで対応可能で、インタラクティブなビジュアライゼーションや重量級データの高精度なレンダリングなど幅広い用途で活用できる。
ビジュアライゼーションで真価を発揮する高性能ワークステーション
もっとも、ソフトウェアのみで高度なビジュアライゼーションを実現できるわけではない。優れたパフォーマンスを発揮するハードウェアとの組み合わせが不可欠だ。そこで、3DEXPERIENCEプラットフォームやDELTAGENをフル活用したいと考える現場にお薦めしたいのが、日本HPの高性能ワークステーション「HP Z8 Fury G5 Workstation」である。
![日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長の川口剛史氏](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/technology/ws_itm_3d/images/02.jpg)
日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長の川口剛史氏は「HP Z8 Fury G5 Workstationの最大の特長は、NVIDIAの最新GPU『NVIDIA RTX 6000 Ada』(以下、RTX 6000 Ada)を最大4枚搭載可能な点です。マルチGPUや分散処理に対応したSTELLARの能力を最大限引き出し、高度化/多様化するビジュアライゼーションのあらゆるニーズに応えます」と強調する。
GPU以外にも、CPUに最新世代の「インテル Xeon W-3500 プロセッサー」を採用する他、最大2TBまで搭載可能なDDR5メモリ、最大112TBまで増設できるストレージなど拡張性にも優れ、近年大規模化している設計データも余裕で扱える。
また、HP Z8 Fury G5 Workstationは、独自のクーリング技術「3Dベイパーチャンバーアーキテクチャー」を採用した「HPプレミアムクーラー」を搭載しており、冷却効率を高め、ビジュアライゼーションのようにコンピュータリソースをフル活用した高負荷な連続処理でも安定して動作する。
「HP Z8 Fury G5 Workstationは筐体内部を複数の冷却ゾーンに分け、それぞれのゾーンに独立したファンを配置することで効率的な排熱を行います。具体的には、ゾーンごとに分けられた20個以上のセンサーでリアルタイムに温度を監視する『アダプティブ・ファン・コントロール』という仕組みにより、作業量に応じてファンの回転数を調整し、信頼性と静粛性を維持します」(川口氏)
ダッソー・システムズは以上のような特長を備えるHP Z8 Fury G5 Workstationを高く評価し、実業務で「HP Z8 Fury G5 Workstation フルカスタマイズモデル」を導入するに至った。なお、導入したHP Z8 Fury G5 Workstationは、複数台でクラスタ接続されたネットワーク環境でも運用されており、レンダリングの分散処理にも対応している。
![図1 ダッソー・システムズが導入した「HP Z8 Fury G5 Workstation フルカスタマイズモデル」の主なスペック](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/technology/ws_itm_3d/images/03.jpg)
![図1 ダッソー・システムズが導入した「HP Z8 Fury G5 Workstation フルカスタマイズモデル」の主なスペック](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/technology/ws_itm_3d/images/03.jpg)
4つのユースケースで処理パフォーマンスを徹底検証
ダッソー・システムズは今回導入したHP Z8 Fury G5 Workstationについて、その実力を把握するために4つのユースケースで検証を行った。
![ダッソー・システムズ 3DEXCITE サービスソフトウェアコンサルタントの雷震漢氏](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/technology/ws_itm_3d/images/04.jpg)
1つ目はDELTAGENを用いた「同条件下でのGPUごとのレンダリング時間」の計測だ。具体的には、NVIDIAの「Quadro M6000」「Quadro P6000」「RTX A6000」「RTX 5000 Ada」といった歴代GPUと、HP Z8 Fury G5 Workstationに搭載されているRTX 6000 Adaの処理時間を比較した。
ダッソー・システムズ 3DEXCITE サービスソフトウェアコンサルタントの雷震漢氏は「旧世代のGPUに対し、最新のRTX 6000 Adaであれば圧倒的な処理時間の短縮を図ることができます。さらに注目すべきは、GPUの搭載数に比例してパフォーマンスが向上している点です。1枚から2枚、4枚と増やすにつれて処理時間がほぼリニアに短縮しています」と語る。
![図2 DELTAGENを用いた「同条件下でのGPUごとのレンダリング時間」の計測結果 提供:ダッソー・システムズ](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/technology/ws_itm_3d/images/05.jpg)
![図2 DELTAGENを用いた「同条件下でのGPUごとのレンダリング時間」の計測結果 提供:ダッソー・システムズ](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/technology/ws_itm_3d/images/05.jpg)
提供:ダッソー・システムズ
2つ目もDELTAGENを用いた内容で、「レンダリングのシミュレーションへの応用」を検証した。「自動運転車に搭載されるHMI(ヒューマンマシンインタフェース)の輝度/照度比較の他、ヘッドライトやテールライトの環境ごとの見え方を確認したところ、高精度なレンダリング結果を理想的なリードタイムで得られたことから、シミュレーションへの応用も十分可能だと判断しました」と雷氏は評価する。
3つ目は3DEXPERIENCEプラットフォームを用いた「設計データの外観品質確認」で、設計データへマテリアル(質感情報)を適用し、レンダリングを行った。「昨今の自動車の設計データは電動化に伴いデータサイズが増大していますが、STELLARはマルチGPU環境の分散処理にも対応していることから、実用的なレスポンスでレンダリングできることが確認できました」(雷氏)。実際、HP Z8 Fury G5 Workstationをクラスタ接続した場合では、RTX 6000 Adaの優れた性能を最大限に引き出すことで、1台構成時と比べて4台構成時には処理時間が約4分の1に短縮している。
![図3 3DEXPERIENCEプラットフォームを用いた「設計データの外観品質確認」の検証におけるGPU構成ごとのパフォーマンス比較 提供:ダッソー・システムズ](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/technology/ws_itm_3d/images/06.jpg)
![図3 3DEXPERIENCEプラットフォームを用いた「設計データの外観品質確認」の検証におけるGPU構成ごとのパフォーマンス比較 提供:ダッソー・システムズ](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/technology/ws_itm_3d/images/06.jpg)
提供:ダッソー・システムズ
そして、4つ目が「開発データの体験化の確認」の検証だ。「3DEXPERIENCEプラットフォームにはゲームエンジン相当のアプリケーションも用意されており、設計データからシームレスに、インタラクティブで動的なビジュアライゼーションコンテンツを素早く作れることが分かりました。3DEXPERIENCEプラットフォームであればデータ変換に伴う断絶の問題から解放され、開発段階の設計変更の結果も体験化されたビジュアライゼーションに瞬時に反映されます」(雷氏)
![雷氏によるデモンストレーションの様子。画像右側に置かれているのが「HP Z8 Fury G5 Workstation」だ](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/technology/ws_itm_3d/images/07.jpg)
以上の検証結果を受け、志田氏は「RTX 6000 Adaを最大4枚搭載できるHP Z8 Fury G5 Workstationであれば、3DEXPERIENCEプラットフォームやDELTAGENの機能をストレスなく存分に活用できることが分かりました。複雑な設計データをダイレクトに、素早く、高精度にビジュアライゼーションできる時代が訪れたことをうれしく思います」と評価する。
これに対し、川口氏は「日本HPは高負荷なワークロードも安心して実行できる作業環境を提供し続けます。より高度なビジュアライゼーションを実践し、その効果を最大限に発揮していくためにも、HP Z8 Fury G5 Workstationをぜひ選択肢に加えていただければと思います」と述べ、製造業の革新を後押しする日本HPの使命をあらためて強調した。
![左から日本HPの川口氏、ダッソー・システムズの雷氏、志田氏](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/technology/ws_itm_3d/images/08.jpg)
※コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。
![HP Z8 Fury G5 Workstation](/content/dam/jp-ext-hp-com/jp/ja/techdevice/product/images/z8furyg5.png)
HP Z8 Fury G5 Workstation
高性能デスクトップワークステーションの全く新しいハイエンドモデル。複雑なワークロードも軽々とこなすことができ、ハイエンドワークステーションに求められる機能を余すところなく凝縮しました。