いまさら聞けないグラフィックスカードの常識! 多様なラインアップを持つNVIDIAのグラフィックスカード製品群を完全マスター

進化したNVIDIA RTXシリーズのグラフィックスカード

集合写真

2D、3Dデータをビジュアライゼーションするというだけでなく、GPUを用いた演算により、生成AIをはじめ、さまざまなソフトウェアの機能を強化する役割も担っているのが「グラフィックスカード」だ。グラフィックスカードには幾つかの種類や、パフォーマンスの違いによるバリエーションがあり、製品ラインアップも非常に多岐にわたっている。

今回はそんなグラフィックスカードを再度整理しようということで、グラフィックスカードベンダーのNVIDIAと、それを搭載するワークステーションの開発・販売を行っている日本HPにその特徴や用途について伺った。これを機会にグラフィックスカードについて、知識をアップデートしていただきたい。それでは早速紹介していこう。

※CAD Japan.comより転載

大塚商会 藤田
今回は建設業界、製造業界向けに必須といえるグラフィックスカードについて、あらためてその役割や正しい選び方などを知りたいと思い、皆様に集まっていただきました。早速ですが、現在のグラフィックスカードのラインアップから教えていただけますでしょうか?

NVIDIA 高橋
分かりました。2D / 3D CAD、BIM、点群データの解析など、こちらの業界で広く使われているのは「NVIDIA RTX デスクトップファミリー」になります。最新のラインアップはフラッグシップのRTX 6000 Adaから、エントリーモデルのRTX A400までの8種類がラインアップされています。

NVIDIA RTX デスクトップ ファミリー 仕様比較

まず外見的な特徴として、通常のグラフィックスカードサイズのものと、HP様のワークステーションでいうところのスモールファクトデザインの「SFF」などに搭載可能なハーフサイズの「ロープロファイルデザイン」を採用したものがあります。

性能として注目していただきたいのは、CADでも使われる並列計算が得意な「CUDAコア」、AIやディープラーニングの処理に特化した「Tensorコア」、レイトレーシング処理を担当する「RTコア」の部分です。それぞれのコア数によってパフォーマンスに差が出てくることになります。

エヌビディア合同会社 エンタープライズ事業本部 プロフェッショナル ビジュアライゼーション ビジネスデベロップメントマネージャー 高橋想氏
エヌビディア合同会社 エンタープライズ事業本部
プロフェッショナル ビジュアライゼーション ビジネスデベロップメントマネージャー 高橋想氏

また、業界的に見逃せないのはGPUメモリーを表している「メモリーサイズ」という部分です。GPUを使った計算をさせるうえで、大きなデータを使う場合はもちろんですが、ソフトウェアによっては推奨メモリー量を満たしていないと、そもそもその機能が使えないということもあります。

例えば、生成AIのように高いパフォーマンスを求める場合、最上位モデルのRTX 6000 Adaが持っている48GBでも足りないということも十分ありえます。その場合は、RTX 6000 Adaを複数枚搭載し、同時に動かすといったことも実際にやられている方も多いと思います。

逆にRTX A400、RTX A1000は新たにRTXシリーズに加わった製品で、これまではT400、T1000と呼ばれていたモデルの進化版にあたります。TシリーズのときにはTensorコア、RTコアを持っていませんでしたが、今回から両方のコアが乗っています。AIの処理や、レイトレーシングにも対応しますので、このクラスでもやりたいことができてしまうという業種もあるでしょう。

世代間のパフォーマンスの差も大きい。最新情報をキャッチし、最新モデルを入手するようにすると、より業務効率化や生産性向上が期待できる
世代間のパフォーマンスの差も大きい。最新情報をキャッチし、最新モデルを入手するようにすると、より業務効率化や生産性向上が期待できる

大塚商会 藤田
ありがとうございます。グラフィックスカードの主要な機能やメモリーによる見分け方は分かりましたが、業務を行う側から見た場合の選択基準などはありますか?

NVIDIA 高橋
もちろんあります。ビジュアライゼーションをメインにする業務から科学技術計算であるいわゆるHPCの分野まで、それぞれに合ったグラフィックスカードが存在しています。私たちが説明の際によく使うのは、こちらの表ですが、一般的にいわれる重たい処理ほど、ハイエンドモデルのスペックに頼るようになるのが通常です。

適切なワークステーション GPU 製品を選ぶ

大塚商会 藤田
これは非常に分かりやすいですね。上位モデルになるほどあらゆる業種に使えることは分かりますが、その分コストがかかります。それが原因とは言いませんが、お客様の中にはコンシューマーモデルのNVIDIA GeForce RTXシリーズを選択される方もいます。

株式会社大塚商会 マーケティング本部 CADプロモーション部 戦略推進課 藤田昌弘
株式会社大塚商会 マーケティング本部 CADプロモーション部 戦略推進課 藤田昌弘

NVIDIA 高橋
NVIDIA GeForce RTXシリーズは、確かにNVIDIA RTXシリーズと比較してコストは抑えられます。しかし、それには明確な理由があるのです。簡単にいうとNVIDIA RTXシリーズはプロフェッショナルユーザー向けに設計されていて、最大のパフォーマンスが得られるようチューニングされており、保証もサポートも充実しています。NVIDIA GeForce RTXシリーズは基本的にゲーム用途に開発されており、対象はコンシューマーで、チューニングもゲーミング向けになされています。

また、最大の違いともいえますが、ドライバーの性能とアプリケーション認証、つまりISV認証があるのもNVIDIA RTXシリーズになりますので、運用時の安心感や安定感も大きく違ってきます。

NVIDIA ドライバー比較

HP 大橋
私たちのワークステーションも全てNVIDIA RTXシリーズに関しては全て認証済みとなっていますが、NVIDIA GeForce RTXシリーズに関しては一部モデルだけにとどめています。

その最大の理由は、ワークステーションの保証が標準で3年間、延長保証を付けていただいて5年あります。NVIDIA RTXシリーズでしたら、5年後でも製品としてNVIDIA様から保守パーツとして提供されるので交換対象とすることができますが、NVIDIA GeForce RTXシリーズはコンシューマー向けということもあって、モデルチェンジが激しく、5年後に在庫があるとは限りません。ワークステーション用として、NVIDIA GeForce RTXシリーズが採用しづらいのはそういった理由もあります。

大塚商会 藤田
確かにワークステーションは長く使うのが前提ですから、保守パーツの確保も必要ですよね。やはり、こうして比較してみるとNVIDIA GeForce RTXシリーズと、NVIDIA RTXシリーズの違いは明白ですね。プロ用途として使うなら、NVIDIA RTXシリーズが有利なことは確かだと思います。もう一つの比較として、最近増加傾向にあるモバイルワークステーション向けのグラフィックスカードというとどのようなものなのでしょう?

NVIDIA 高橋
こちらも現在、全てのラインアップがAda世代へとバージョンアップしており、ハイエンドからエントリークラスまでお選びいただける状態になっています。用途に関してはデスクトップ版を参照いただければと思いますが、こちらはモバイル環境で使うことを前提に、ポータブル性なども重視しています。

例えば、メモリーサイズに関してはモビリティとパフォーマンスの兼ね合いを考えた設定となっていますので、その辺はPCベンダー様の方でもご配慮いただいていますし、お客様の状況に応じて選んでいただければと思っています。

モバイル向けNVIDIA RTXシリーズのラインアップも充実
モバイル向けNVIDIA RTXシリーズのラインアップも充実

大塚商会 藤田
NVIDIA 高橋様にグラフィックスカードを詳しく説明していただきましたが、ここからは実際にワークステーションと組み合わせることを考えていきたいと思います。HP 大橋様、具体的な例を挙げてワークステーションとグラフィックスの組み合わせについて教えてください。

HP 大橋
分かりました。グラフィックスカードの搭載可能な種類が多いのは、HPの中でも一番の売れ筋となる「HP Z2 G9 Workstationシリーズ」になります。筐体(きょうたい)として、mini筐体と、先ほど高橋様も触れていました省スペース筐体のSFF、そしてフルサイズのグラフィックスが搭載可能なTowerと3種類用意されています。

電源ユニットもTowerモデルでは700Wまで搭載できますので、ハイエンドクラスのRTX 5000 Adaまで搭載可能です。ですから、HPCに近いような使い方をされるのでなければ、ほとんどの業務をカバーできるだけのパフォーマンスは提供できます。例えば、企業の中にさまざまな部署があり、必要なパフォーマンスに合わせて最適なグラフィックスを配置していきたいというIT管理者の方にとっては、スペックの構成を合わせやすいモデルだと思います。

本体メモリー+16GB増設/32GB増設までご対応、縦置き横置き自在な小型モデル
本体メモリー+16GB増設/32GB増設までご対応、縦置き横置き自在な小型モデル
OS Windows 11 Pro
プロセッサー Intel Core i7-14700 プロセッサー(2.1GHz / 20コア / 33MB / 5600MHz)
メモリー 16GB DDR5 SDRAM(4400MHz / ECC / Unbuffered /16GBx1)
グラフィックス NVIDIA T1000 8GB
サイズ W 384×D 308×H 100mm
重量 標準構成時:約5.4kg
価格 448,200円(税別)

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パワフルなエントリーワークステーション、設計/デザイン&エントリーVRに最適
パワフルなエントリーワークステーション、設計/デザイン&エントリーVRに最適
OS Windows 11 Pro
プロセッサー Intel Core i7-14700 プロセッサー(2.1GHz / 20コア / 33MB / 5600MHz)
メモリー 32GB DDR5 SDRAM(4400MHz / ECC / Unbuffered /16GBx2)
グラフィックス NVIDIA RTX 2000 Ada 16GB
サイズ W 169×D 385×H 356mm
重量 標準構成時:約7kg
価格 654,500円(税別)

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処理スピードが爆速かつNVIDIA RTX A2000を搭載
処理スピードが爆速かつNVIDIA RTX A2000を搭載
OS Windows 11 Pro
プロセッサー Intel Core i9-14900 プロセッサー(2.0GHz / 24コア / 36MB / 5600MHz)
メモリー 32GB DDR5 SDRAM(4400MHz / ECC / Unbuffered / 16GBx2)
グラフィックス NVIDIA RTX 2000 Ada 16GB
サイズ W 169×D 385×H 356mm
重量 標準構成時:約7kg
価格 718,500円(税別)

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HP 大橋
一方のモバイルワークステーションですが、建設業界における立ち位置ということでは、BIM系とCG系で用途が分かれていることが多いですね。BIM系であれば、社内においてもフリーアドレスで自由に席を変えて仕事をしたり、出張先で使ったりという、まさにハイブリッドワーク的な利用方法が多くなっています。

CG系はまだまだデスクトップの導入例が多い用途ですが、ハイエンドグラフィックスを搭載したモバイルワークステーションの採用例も徐々に増えています。例えば、住民説明会や自治体向けのプレゼンテーションなどの際にモバイルワークステーションを持ち込み、VRで内覧会をやるようなケースも実際に増えています。モバイルワークステーションとハイエンドグラフィックスの組み合わせは、今後ますます用途が広がっていくと考えています。

また、BIMのソフトウェアでもリアルタイムグラフィックに対応したウォークスルーのツールを同時に使う用途が増えてきています。モバイルワークステーションとグラフィックスカードの性能が上がり、ソフトウェアのプラグインもかなり使いやすくなったことから、CGやリアルタイムグラフィックも1台のマシンで対応できるようになってきています。モバイルワークステーションのメリットとやれることの幅が広がったことで、ワークスタイルにも変化が起こり始めているのだと思います。

おすすめのモバイルワークステーションはHPのラインアップでBIM標準機として最も導入例の多いモデル「HP ZBook Power 16inch G11 Mobile Workstation」に注目していただきたいですね。モバイル版のRTX 3000 Adaまで搭載できますので、BIMからCGまで幅広い用途に対応できます。プロフェッショナル用途とモビリティのバランスが非常によいモデルといえます。

AIで強化されたプロレベルのパフォーマンスにアップグレード
AIで強化されたプロレベルのパフォーマンスにアップグレード
OS Windows 11 Pro 日本語版
プロセッサー Intel Core Ultra 7 プロセッサー 155H
(最大周波数 4.8GHz、コア数 16個)
メモリー 32GB(32GBx1)DDR5
グラフィックス Intel Arc グラフィックス(CPU内蔵)およびNVIDIA RTX 2000 Ada Generation Laptop GPU(8GB GDDR6)
サイズ W 359.4×D 251×H 22.9mm
重量 標準構成時:約2.1kg
価格 512,000円(税別)

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大塚商会 藤田
大橋様、具体的なご説明ありがとうございます。ところで、最近ではあらゆる業種で生成AIの活用が始まっています。そもそも、このムーブメントはNVIDIA様のグラフィックスカードから始まったと言っても過言ではないですよね。今後の見通しとして、生成AI活用はどのような形で進んでいくのですか?

NVIDIA 高橋
これまではデータセンターのサーバークラスでの運用がメインでしたが、これからビジネス活用が進むうえでは、ワークステーション上で動作する生成AIの利用が増えると考えています。ですから、私たちとしてもAIワークステーションを推奨していくことが予定されています。

例えば、RAG(Retrieval-Augmented Generation)もその一つだと思っています。自社が持っているデータをAIに学習させて回答させるローカルLLMがはやっていますが、新たに学習させたいデータを用意して、それをベクタデータベースに格納して推論や回答に利用するところまで、最新のワークステーションなら1台で再現することが可能になっています。

ローカルLLMに再学習させることなく、そのほかのデータを取り入れることができれば、推論や回答できる幅は大きく広がります。ビジネスの可能性を大きく広げてくれるような生成AI活用を私たちはこれからも推奨していきたいと考えています。

株式会社日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長 大橋秀樹氏
株式会社日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部
本部長 大橋秀樹氏

HP 大橋
ワークステーションもサーバークラスに匹敵するスペックの搭載が実現できるようになり、スタンドアロン状態でローカルLLMを走らせることも簡単にできるようになっています。例えば、HPワークステーションのフラッグシップモデル「HP Z8 Fury G5 Workstation」では、最大で4基のNVIDIA RTX 6000 Adaが搭載可能です。さらに電源ユニットを2系統搭載することで、100V電源2個で動作させることができます。サーバールームだけでなく、オフィスや研究室の傍らに自分たち専用のワークステーションを設置することもできる時代になっています。

今まではクラウドサービスとして生成AIを使うだけでしたが、近年では企業がローカルLLMとして所有できるようになりました。現在ではさらに進んで一つの部門ごと、あるいは部署ごとにでも、自分たちの業務専用の生成AIが持てるようになったのです。NVIDIA様が言うように、ビジネスを新たなステージに押し上げてくれるような生成AI活用をHPのワークステーションとNVIDIA RTXシリーズで実現していただければと思います。

大塚商会 藤田
素晴らしい世界が待っていそうですね。そのためには業務に最適なグラフィックスカードを選択して、生産性を上げなければなりません。私たちもお客様に適切なご提案ができるようにしたいと思います。本日はありがとうございました。

※このコンテンツには日本HPの公式見解を示さないものが一部含まれます。また、日本HPのサポート範囲に含まれない内容や、日本HPが推奨する使い方ではないケースが含まれている可能性があります。また、コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。

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