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2024.07.30

バーチャルツイン×生成AIでコンテンツ制作やデザインレビューの在り方が変わる

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製造業における生成AIの活用は発展途上だ。そんな中、バーチャルツインと生成AIを融合させたソリューションが製品プロモーション向けコンテンツ制作やデザインレビューの在り方を大きく変えようとしている。「3DEXPERIENCE Conference Japan 2024」のパネルトークセッションでその詳細が語られた。

※本記事はMONOistにて掲載されたものです。

世界的なブームになっている生成AIだが、製造業のイノベーションにつながる事例はまだ少ない。そうした中、大きな可能性を示唆する取り組みが進んでいる。

「3DEXPERIENCE Conference Japan 2024」(会期:2024年6月21日/主催:ダッソー・システムズ)のパネルトークセッション「COMMERCIAL VIRTUAL TWIN×OMNIVERSE 生成AIによるストーリーテリング」で、ダッソー・システムズのコマーシャルイノベーション支援ソリューション「3DEXCITE」、NVIDIAの産業用デジタルツイン開発基盤「NVIDIA Omniverse」および生成AI技術、日本HPの最新ワークステーションの連携によって実現するバーチャルツインと生成AIを活用したビジュアライゼーションの新たな方向性が示された。

このソリューションは、ダッソー・システムズの3D CAD「CATIA」で設計された精緻な3Dモデルをバーチャルツイン環境で正確にビジュアライズする3DEXCITEとNVIDIAの「Omniverse」をクラウド用のAPI(Omniverse Cloud API)でつなげ、生成AIによる背景/環境の自動生成、質感や光の反射などを正確に再現した3Dモデルのリアルタイムレンダリングを可能にするものだ。3DEXCITEのバーチャルツイン上に再現された自動車の3Dモデルは実車さながらに高精細なレンダリングが施される。その背景として「スイスの美しい広大な自然」とテキスト入力すると、生成AIが背景を生成してバーチャルツイン上に反映する。

同ソリューションの詳しい内容について、日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長の大橋秀樹氏(モデレーター兼パネリスト)、エヌビディア エンタープライズ事業本部 シニア・ビジネスデベロップメント・マネージャー(RTX/Omniverse)の中嶋雅浩氏(パネリスト)、ダッソー・システムズ 3DEXCITE事業部 ディレクターの竹内健氏(パネリスト)によるセッションの模様を一部再構成してお届けする。

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パネルトークセッションの様子。画像左からダッソー・システムズの竹内氏、エヌビディアの中嶋氏、日本HPの大橋氏

現実世界を高精度に再現したバーチャルツインに生成AIを融合

日本HP 大橋氏:今回のソリューションの技術的なポイントと革新性について教えてください。

NVIDIA 中嶋氏:本ソリューションは、NVIDIAの年次ユーザーイベント「GTC 2024」で発表された「Omniverse Cloud API」に関連するものです。Omniverse Cloud APIによって、クラウド経由で生成AIを含むOmniverseのコア技術と既存のアプリケーションなどを直接統合できます。大手ソフトウェアベンダーと連携して新たな取り組みをスタートしており、その一つが今回紹介するダッソー・システムズの3DEXCITEを中心としたソリューションです。

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図1 「3DEXCITE」と「Omniverse」の連携により、バーチャルツインと生成AIを活用したビジュアライゼーションが可能になる 提供:ダッソー・システムズ

ダッソー・システムズ 竹内氏:3DEXCITEには100%正確な製品データが色味や質感とコンフィギュレーション情報とともに取り込まれます。今回のソリューションは、その大規模なデータに対するリアルタイムレンダリングが可能です。自動車であれば、外装色を切り替えたりホイールを交換したりといったモデルの変更も即座にバーチャルツインに反映できます。生成AIによって背景/環境を自在に変えることも可能です。CATIAで設計を変更した場合も、すぐに3DEXCITEのバーチャルツインに反映されます。

NVIDIA 中嶋氏:NVIDIAは、企業やソフトウェア制作者、サービスプロバイダーなどが映像コンテンツの制作用の生成AIモデルを開発し、それを実装するための「NVIDIA Picasso」というAIファウンドリーを提供しています。背景/環境の生成に用いているのはその中の「Edify 360」というAIモデルです。テキスト入力したプロンプトに基づいて4K/HDRI(High Dynamic Range Imaging)品質の画像や動画を生成し、Omniverse Cloud APIを介して3DEXCITEに反映します。

日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長の大橋秀樹氏

日本HP 大橋氏:大規模な製品設計のバーチャルツインをストレスなく扱うには、やはりハードウェアの性能も非常に重要です。日本HPは「NVIDIA RTX 6000 Ada 世代」のグラフィックスカードを最大4枚搭載可能なハイエンドワークステーション「HP Z8 Fury G5 Workstation」を提供しています。NVIDIA RTX 6000 Ada 世代は前世代の「NVIDIA RTX A6000」よりも性能が約2倍向上し、4GPU構成のZ8 Fury G5 Workstationであれば2~3年前の8GPU構成のサーバノードと同等かそれ以上の性能を発揮します。

このダウンサイジングの効果は絶大です。ワークステーションならば個人のデスクに配置できるし、ラックに搭載してサーバルームで管理するような運用も不要です。全社的なIT投資計画に縛られることなく、部門の独自予算で導入することも可能です。ハイパフォーマンスで拡張性に優れたHP Z8 Fury G5 Workstationは、設計現場をはじめとする製造業のお客さまにとって非常に大きなメリットをもたらすと確信しています。

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図2 サーバからのダウンサイジングが図れるハイエンドワークステーション「HP Z8 Fury G5 Workstation」 提供:日本HP

バーチャルツイン×生成AIがビジネスにもたらすインパクト

日本HP 大橋氏:バーチャルツインと生成AIを組み合わせたビジュアライゼーションの革新は、ビジネスにどのようなインパクトをもたらすのでしょうか。

エヌビディア エンタープライズ事業本部 シニア・ビジネスデベロップメント・マネージャー(RTX/Omniverse)の中嶋雅浩氏

NVIDIA 中嶋氏:まず、製品プロモーションにおけるコンテンツ制作の在り方を大きく変える可能性があります。コンシュマー向けの新製品を市場に展開するに当たり、広告を通じて認知向上を図るのが一般的ですが、当然ながら製品を単体で見せても価値や魅力は伝わりません。ターゲット層が自分の嗜好(しこう)やニーズ、ライフスタイルに合わせてその製品を利用している姿をイメージできるような訴求が必要です。その“絵づくり”のために、これまで多大なコストと時間をかけてきました。

今回のソリューションであれば、制作コストと時間を大幅に削減できます。外部の制作会社などに頼らなくても、製品の企画段階で定義されるコンセプトを生成AIに入力し、ある程度試行錯誤を繰り返せばプロのクリエイターにも負けないレベルのコンテンツを作り出せます。

ダッソー・システムズ 竹内氏:製品の設計開発プロセス全体にも大きな革新をもたらすと考えています。製品のデザインレビューの際は、社内の多くの関係者を巻き込んで見栄えの検討や議論を繰り返します。そこにわれわれのソリューションを活用すれば、コストと時間をかけて試作品をその都度用意しなくても、バーチャルツイン上でリアルな視覚化や見栄え評価を素早く行うことができます。

製品開発の段階ではデータを外に出すのはなかなか難しいため、この一連のプロセスをつながった1つの環境の中だけで実行できるという点も非常に画期的だと言えます。デザインレビューだけでなく、製品の企画や販促コンセプトの検討時にも活用できると思います。

生成AIによるストーリーテリングは多様なユースケースへの展開が可能

日本HP 大橋氏:バーチャルツインと生成AIを融合させた今回のソリューションの発展とそのための役割について教えてください。

ダッソー・システムズ 3DEXCITE事業部 ディレクターの竹内健氏

ダッソー・システムズ 竹内氏:バーチャルツインと生成AIの融合の先には、無限の可能性があります。今回はバーチャルツインと生成AIで自動生成した背景の合成という比較的シンプルな活用例ですが、生成AIによるストーリーテリングは多様な展開が可能です。販促用ストーリー/動画の生成、人物(ユーザー)を含めた背景の合成、製品アシスタント/ユーザー音声ガイドの生成、画像ブラッシュアップ/エフェクトの追加など、ユーザーエクスペリエンスの向上に寄与するユースケースはどんどん広がっていくと考えられます。ダッソー・システムズとしては、設計データに対する正確性をしっかり担保しながら、バーチャルツインのさらなる活用の広がりを追求したいと考えています。

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図3 ビジュアライゼーション領域における生成AI活用の可能性について 提供:ダッソー・システムズ

NVIDIA 中嶋氏:生成AIへの期待は今後も高まっていくことでしょう。しかし、それを一から自分で開発できるかというと難しい面があります。NVIDIAはコア技術としてGPUの開発に取り組んでいますが、それ以上にソフトウェア開発にも大きく投資しています。とりわけ生成AIに関してはプラットフォームを提供する他、APIを通じてさまざまな本番環境へ効率的にAIモデルをデプロイできる「NVIDIA NIM」など、開発者向けの各種ソフトウェアテクノロジーをパートナーやユーザーの皆さまに提供しています。そして、あらゆる局面で当社の価値を実感していただけるよう、今後もエコシステムの拡大に注力していきます。

日本HP 大橋氏:生成AIの在り方は今後ますますバラエティーに富んだ形に発展すると考えています。そうした中、製品開発の現場では企画コンセプトや設計情報、意匠デザインなど、クラウドでは扱うのが難しい“門外不出”のデータが数多く存在しており、AIモデルを独自に作り込んでプライベート環境で運用したいという企業も徐々に増えています。

日本HPはこのような動向もしっかりと見据えて、より快適かつ安全に業務を遂行できるワークステーションを製造業の現場にタイムリーに提供したいと考えています。3社それぞれの強みを生かしたソリューションのさらなる発展にどうかご期待ください。

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「3DEXPERIENCE Conference Japan 2024」の日本HPブースでは、「HP Z8 Fury G5 Workstation」による「3DEXCITE」の実機デモを披露していた

※このコンテンツには日本HPの公式見解を示さないものが一部含まれます。また、日本HPのサポート範囲に含まれない内容や、日本HPが推奨する使い方ではないケースが含まれている可能性があります。また、コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。

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