2022.09.16

HPのモバイルワークステーションZBookをCGスタジオコロッサスの澤田が徹底検証してみた

HP ZBook Fury 15.6inch G8 Mobile Workstation

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仕事で使用するアプリケーションを使ったベンチマーク

ここからは実際に仕事で使用する様々なアプリを使ったベンチマークを弊社使用ノートPCと比較してみたい。検証に使用するアプリケーションは以下の通りだ。

  • ・Maya 2023
  • ・Blender 3.2
  • ・Omniverse
  • ・RealityCapture
  • ・CaptureOne
  • ・DaVinchiResolve

Maya 2023

CPUを一番酷使する作業はレンダリングだと思いがちだが、実はエフェクトシミュレーション計算もかなりCPUを酷使する。実際弊社使用ノートPCでこれを行ったところ、CPUのオーバークロックを許可するパフォーマンスモードでは何度もPC本体ごと落ちてしまった。なので以下の検証は全てバランスタイプのエンターテイメントモードで行っている。それ以降本体ごと落ちることはなくなった。

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Maya 2023 Bifrostを使った爆発シミュレーション

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シミュレーションの計算時間は両者のCPUパフォーマンスが順当に現れた結果だと言えるだろう。Bifrostによって生成されたシミュレーションキャッシュデータは32.8GBにもなった。このシミュレーションはまだ比較的計算時間の短い方なので、ハードなシミュレーションワークでは長時間安定したパフォーマンスを引き出す必要がある。そのため最大パフォーマンスモードは瞬間的にはより良いベンチマークを出せるかもしれないが、落ちてしまっては元も子もないのでノートPCの場合はやはりバランスモードが最適である。

Blender 3.2

続いてCPUとGPUのパフォーマンスを見るためにBlenderのCYCLESでBMWとBarBerShopのシーンを使ってレンダリングベンチマークを取ってみた。

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こちらも両者のパフォーマンスの違いが順当に表れたと言えるだろう。CPUは同じ8コア16スレッドで最大動作周波数も同じくらいなのだが、第9世代と第11世代では明らかな差がついたと言えるだろう。GPUの比較としては、BMW程度の負荷状況ではあまり差がつかなかったが、BarberShopでは1.2倍の差がついている。もう少し長い計算時間であればさらに差がついたと思われる。レンダリングの場合、CPU、GPU、もしくはCPUとGPUの同時使用が選択できるが、CPUとGPUの両方で計算した場合、GPU単体と比べて必ずしも速くなるわけではない。

OmniverseCrate

OmniverseではApartmentのシーンを使ってRTXリアルタイムレンダリングを行い、バッテリーがどれだけ持つかという耐久テストを行ってみた。

ベンチマーク条件としては、

  • ・電源は高パフォーマンス
  • ・ディスプレイは50%
  • ・バッテリー節約機能は20%以下で自動ON

という設定にしている。

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GPUをフルロードするテストだが、出張先などでリアルタイム再生をしなければいけない場合を想定してみた。ZBookであれば1時間は持たせることができるのでいざという場面でも心強いが、弊社使用ノートPCは3年前の製造なのでバッテリーも少し劣化しているため平等なテストとは言えないかもしれないことを付け加えておきたい。両者のバッテリー充電可能残量(FULL CHARGE CAPACITY)をシステムから調べてみたところこのような結果であった。バッテリーは充電を繰り返すと必ず劣化していくが、中途半端な充放電を繰り返さず適切な充電を心掛けるようにしたいと思わされた。

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ちなみに、Youtubeをループ再生するようなシチュエーションでは、
ZBook 5時間40分17秒
弊社使用ノート  1時間54分10秒
であった。

RealityCapture

次に写真やレーザースキャンデータから3Dモデルを生成するRealtyCaptureを使ってみた。

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このRealityCaptureのテストは複数枚の写真から3Dデータを生成するのだが、CPUだけではなくGPUのCUDAエンジンも多用する。しかし、なぜかZBookの方がパフォーマンスが悪い結果になってしまった。これについては何度もベンチマークをやり直したが、ほぼこのような結果になったのでこれが実際の結果だと言える。他のベンチマークではZBookの方がパフォーマンスが高いのだが、RealityCaptureだけは逆転することとなってしまった。なぜそうなったかについては、両者のGPUを動かしているドライバーがRTX Aシリーズ用とGeForce用で異なるためではないかと考えている。RTX AシリーズドライバがRealityCaptureのアライメント計算に最適化されていなかったのではないだろうか。

CaptureOne

写真現像ソフトはいくつもあるが、このようなベンチマークではAdobe LightRoomClassicが使われていることが多い。しかしLightRoomClassicは設計も古いため、より先進的な現像ソフトが多数登場してきている。今回はその中でもプロユースが多いCaptureOneを使用して現像処理によるベンチマークを取ってみた。

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全313枚ものRAWデータに対して全バリアントオート調整を行いJPEGにエクスポートした処理速度を測ってみた。どちらのPCもUSB Type-Cに接続したSSDから処理を行っている。

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現像処理の場合、多数のRAWデータを読み込んで処理をしては書き出しを行うことを繰り返すため、インターフェースやストレージの速度なども併せて結果として現れるため、CPUやGPUだけのテストよりさらに差がつく結果となったと言える。ZBookは筐体デザインもイケているため、出張先で撮影を行ってカフェで現像するような場合でも無理なく使用できるだろう。

ちなみにカフェなどで現像を行う場合に、電源を取れる席が見つからずバッテリーだけで作業せざるを得なくなったとき、パフォーマンスは落ちてしまうことを付け加えておきたい。どちらもバッテリー節電モードでエクスポート処理処理を行うとこのような結果となった。

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DaVinchiResolve

最後は動画編集ソフトとして最近利用者が増えているDaVinchiResolve18を使って3Dコンポジットのデリバリー処理でベンチマークを取ってみた。3Dを使ったコンポジットは一般的な2Dコンポジットより高い付加が掛かる。ストレージから大容量のデータを読み込み、CPUだけでなくGPUも使って処理をするため、PCのパフォーマンスを見るには最適だ。

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これも両者のパフォーマンスを順当に表した結果だと言えるだろう。3DCG制作業務はアニメーション動画を編集、出力することも日常的に行っているので、コンポジット処理の速さはダウンタイムを減らすことに直結する。

実際に使用してみた結論

一般的に3DCG制作に携わるデザイナーはデスクトップPCで作業をすることが大半だし、そこから離れるたこともない人が多いことは事実なのだが、コロナ過を境にテレワークが進みリモートやクラウドをベースとしたノマドワークも浸透して生きている。今後AIによるデザインワークへの浸食が進むにつれてコンピュータを使った働き方が大いに変わっていくことが予想される。10年前ではなく5年前がひと昔と言われる時代が来るのかもしれない。ハードウエアの進歩もパフォーマンスだけでなくワットパフォーマンスも最先端プロセス技術が大きく関わってくるため、今後著しい発展をしていくことになるだろう。

パフォーマンスは必要だがノートタイプのPCからそれを選択しようとすると、多くはまずゲーミングPCを考えがちだが、メモリー容量やデザインなどを妥協せざるを得なかった。スッキリしたデザインを採用したデザイナー向けノートPCも増えてきてはいるが、残念ながらこちらもメモリー容量に制限がある。それらよりも一歩上のパフォーマンスを安定して運用しようとすると俄然モバイルワークステーションに注目が集まってくる。HP ZBook Fury 15.6inch G8はその中でもパフォーマンスだけでなく、スタイルも良く、インターフェースの装備も万全で場所を選ばずクリエイティブワークが可能になる。願わくばもう少し価格がこなれてくればという思いがあるが、筆者が次期ノートPCを選ぶときには必ず選択肢に入れておきたいと思う。

TEXT_PHOTO__澤田友明 / Tomoaki Sawada(コロッサス

STAR WARSシリーズをはじめ様々なエンターテイメント映像制作に関わり、主にレンダリング関連の造詣を深め、最近ではCGWORLDの記事執筆やアドバイザリーボードの一員としてCG業界に情報発信している。

HP ZBook Fury 15.6 inch G8 Mobile Workstation



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