2021.10.20

学生たちの熱意と行動力を支えるHPワークステーションとリモートテクノロジー

東京電機大学

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日本の工業力の高さを語るうえで、優れた技術者の存在は欠かせない。時代を牽引できるプロフェッショナルをより多く輩出していくには次世代を担う学生たちの育成は必要不可欠だ。

優れた人材を輩出し続けてきた東京電機大学では、学生達が自発的に開発・設計・組み立てまでを行う取り組みをサポートしている。学生達の活躍を支えるためのコンピューターとして、HPワークステーションだ。どのような活動をしているのか話を伺ってきたので紹介しよう。

学生の自発的活動を支援

東京電機大学は1970年の創立以来、高度な専門性を持った研究者・技術者を輩出してきた学校法人だ。国内でいち早くラジオ、テレビの公開実験を成功させ、日本初の夜間大学院を開設するなど、優れた設備と人材力で現在も日本の“学び”をリードする存在となっている。

今回紹介する「東京電機大学フォーミュラSAEプロジェクト」は、そんな同学の理工学部がある鳩山キャンパスで活動している有志による団体だ。「大会に参加して優勝したい。なんとか面倒を見て欲しい」と、発足当時の学生たちが同学工学博士 小平和仙(以降、小平)氏を訪ねてきたのが2001年。「自分で考え、判断し、行動する。人の心を理解し、社会に貢献できる確かな眼力を持った研究者・技術者を育成します」という、現代学長射場本忠彦氏の言葉にあるとおり、小平氏は学生たちの想いを受け取り、以降、20年に渡って活動を見守り続けている。

東京電機大学 理工学部 機械工学系 講師 博士(工学)小平和仙氏

「このような活動は、クラブ活動や研究といった目的で行うことがほとんどだと思います。しかし、当学では自発的にやってみたいという学生達が集まり、有志の活動として続けています。大学がお膳立てしたプログラムではなく、すべての大学生が自ら責任のもとにやっている点が大きな違いだと思います」と自動車メーカーの開発者としての前歴を持つ小平氏は語る。

そんな小平氏の研究室では、他にも有志による活動として、燃費競技のエコランカーやスペースプロジェクトの一翼となる惑星探査機の製作などの活動も行っているが、もっとも規模が大きいものがフォーミュラSAEプロジェクトなのだという。「このプロジェクトでは世界中の大学生がマシンをゼロから設計し、パーツを作り、テスト走行をして、最後にはレースで競い合います。そして設計や解析に必須なのが、ワークステーションの存在です」と小平氏は語る。

取材に参加していただいたフォーミュラSAEプロジェクトメンバー。
左から小平氏、柿沼陽氏、新井智也氏、阿部拓人氏、須藤龍之介氏

約2倍の効率アップを体感

現在、小平氏の研究室ではインテルXeon Wプロセッサーを搭載するHP Z2mini G5を活用している。大学4年生でチームリーダーを務める柿沼氏はHP Z2mini G5を活用している。大学4年生でチームリーダーを務める柿沼氏は「3DCADによる設計にはダッソー・システムズ社のCATIA V5を使うのでデータがとても重いのです。以前のコンピューターではカクツキが激しく、プレビューするのが大変でしたが、Z2miniはスムーズに動いてくれるのでとても助かっています。体感で1.5~2倍は処理効率が向上していると思います。」と、導入の手応えを語る。

以前使っていたワークステーションもHP製品であったが、当時のスペックであるためCATIA V5の要件としてはボトムエンドに近い仕様だった。今回導入したZ2miniはインテル® Xeon® プロセッサー W-127OPを搭載し、グラフィックスにもNVIDIA Quadro RTX3000を採用するなど、最新のスペックを擁している。

Z2miniのエアフロ―構造に興味津々のメンバー

HP ZBook FIREFLY G8ではCATIA V5の動作確認も進んでいる

「軽快な動作も役に立ちますが、なによりも解析の速度が大きく向上したのがとても助かっています。ここの効率がよくなると、トライアンドエラーを繰り返す頻度が上がりますし、ある程度の方向性をコンピューター上で予想できます。スペックの向上はそれが一番のメリットですね」と小平氏。

この研究室には必要な設備が一通り揃っているので、材料と設計図があればレーシングカーのフレームやパーツをすぐに組み立てることができる。しかし、やり直しが多く発生すれば、それだけ全体の進行にも影響が出てしまうのだ。

「フレームの製作でも設計で1~2か月、製作に2か月、テストに2か月と約半年ぐらいかかります」という柿沼氏。開発期間は同じでも試行回数は多くなり、コンピューター上で解析できる部分も増えているため、レーシングマシンのクオリティは確実に向上しているのだという。また、Z2miniが小型の筐体を採用している点にも注目しているという。「ご覧のとおり、研究室には機械がたくさん置いてあります。ですから開発や研究にさけるスペースは限られているので、コンパクトな筐体は本当に助かっています。それだけでなく、この大きさならスーツケースにも入りますから、海外遠征の際に持っていくことだってできます。様々な点で可能性を感じさせてくれる良いコンピューターだと思います」と小平氏は語る。

コストイベントで2位を獲得した2019年オーストラリア大会での記念写真。
チームの詳細は下記から参照とのこと
http://tdu-card.jp/

リモート環境で作業の継続性も向上

2020年から始まったコロナ禍は彼らの活動にも暗い影を落とした。「キャンパスへの登学や研究室への入室にも制限が設けられました。現在、20名ぐらいの部員がいますが、交代で出てきている状況です」と小平氏。そんな中、活動の継続性を維持するのに役立ったのが、HP ZCentral Remote Boostだ。

無償で入手できるこのツールは、外部からワークステーションのスムーズな遠隔操作を実現するソリューションとして、すでに多くのユーザーに活用されている。「CATIA V5の動作がスムーズなのはもちろん、過去の動画データを見て分析することもあるのですが、とてもきれいに描写できるのがすごいと思いました」と語るのは大学3年生の新井氏だ。

コロナ禍において他のリモートルールを使う機会もあったというが、動画再生ではコマ落ちなども発生し、あまり良い環境とはいえなかったのだという。「“HP Velocity”機能を使うことで、遅延やパケットロスを減らすことができます。これによってさらに動画を滑らかにすることができました」と新井氏は納得の表情を浮かべる。

「もちろん、リモート操作をしなくても良いような環境が一番良いのですが、これからの時代はそうも言っていられないでしょう。学生が自発的に参加している取り組みだからこそ、制限はなるべきなくしてあげたい。やりたいことがあればどこまでも追及すべきだと考えていますから、HP ZCentral Remote Boostのような利便性の高いツールは大いに活躍していきたいですね」と小平氏は語る。

将来的にはVRの導入も視野に

フォーミュラSAEプロジェクトでは、VRの採用を検討し始めているという。「例えば開発中のマシンのコックピットに座って、各パーツがどの位置に来るのかチェックする、といった用途には最適だと思います。3Dで設計しているとはいえ、実際の立体感とは見え方が違いますから、必ず小さな差異は生まれます。そこを埋める手段としてVRには大きな可能性を感じていますね」と小平氏。現在は様々な環境下でテストを繰り返している段階だが、学生たちもVRには大きく期待しているという。

HP Reverb G2 HMD、HP ZBookシリーズのPoCにも取り組んでいる(画像はHP ZBook Create G7)

「工業系の大学では専門性を追求していくものですが、それは本来の学業で十分やっています。この場においてはそういった形式知ではなく、それだけでは身につけることが難しい暗黙知について学んでほしいのです。将来はこの活動に加わった全員が社会で広く活躍できるゼネラリストになってもらいたいので、幅広い領域へスキルを伸ばしてくれるとうれしですね」と最後に小平氏は語ってくれた。

この活動を通じて、F1やMotoGP、WRCといった世界最高峰のレースに関わっている卒業生も排出しているという小平氏率いるフォーミュラSAEプロジェクト。世界を相手に真剣に勝負を挑み、多くを学ぶ彼らの目は見事なまでに輝いていた。HPはそんな彼らの活動を支えるべく、今後もサポートを続けていく。

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