2021.06.10
株式会社アラヤ
生産ラインを持つ工場にとって、最も神経を使う作業に外観検査がある。目視によって行われることが多かった検査方法は、いまやAIによる自動化が進んでいる。しかし、コストやルール設定の難しさから、導入に慎重になっている企業も多い。そんなAIによる外観検査をより導入しやすいパッケージとして提供しているのが今回紹介する株式会社アラヤだ。どのようなソリューションなのか伺ってきたので紹介しよう。
2013年12月に設立された株式会社アラヤ(以降、アラヤ)は、AI市場が始まったばかりの頃から第一線でAI開発を進めてきた企業だ。
「人類の未来を圧倒的に面白く!」というスローガンを掲げ、今日まで業界のトップランナーとして活躍してきた。「代表の金井(金井良太氏)は英国サセックス大学で認知神経科学の准教授を務めていた経歴があります。その知識を活かし、AIとニューロテックを掛け合わせ、より確かなソリューションを開発、提供したいと考えています」と語る出本氏。
株式会社アラヤ 事業戦略統括
出本 哲氏
アラヤは、画像AI、エッジAI、自律AIなどの分野における製品開発だけでなく、産業応用の壁を越えた技術開発を可能にする汎用AIなど、幅広いジャンルでAI活用を進めている。「私たちの製品はよくあるAIとは違い、技術オリエンテッドな側面を重視しています。今回ご紹介する『 InspectAI 』も、一般的な検査用AIのアルゴリズムを使うのではなく、独自のノウハウにより、お客様がより高い精度のAIを手間なく導入できることに注力して開発しました」と出本氏。
産業界の中でも生産ラインを持つ業種のすべてにおいて、納品前におこなう外観検査は絶対に必要な業務となる。これまでは人間の目視に頼るか、自動化するにしてもルールベースのソリューションを採用したものが多かったが、ここにアラヤオリジナルのAIを取り入れることで、人間の介入なしでも精度の高い外観検査を可能としたのが「 InspectAI 」になる。
「多くの外観検査用ソフトは、異常品の画像データを学習させて異常を検出する製品がほとんどです。一方、 InspectAI は正常品データと少量の異常データのみで学習できるのも大きな特徴です。従来のAIに比べ少量のデータで高精度の検出が可能です。」と語る金田氏。
営業・マーケティング部 シニアスタッフ
金田 浩太郎氏
一般的なAIの場合、異常品のサンプルデータが百単位で必要になるケースが多いが、日本の生産ラインは異常品がそもそも少ないため、サンプルの入手が最初の難関になることもあるのだという。それが理由でAIの導入にストップがかかっていた企業にとって、相当数の異常データを必要としない InspectAI はまさに救世主でもある。
実際に食品の異物混入を例にしたデモでは、乾燥させた魚介の切り身とよく似た色のプラスチック片でも問題なく検出していたうえに、目視では確認できないような頭髪の混入まで見事にチェックしていた。「検査対象物が同じであれば、容器や内容物が変わっても同様に検査することができます。異常を検出するAIなので、容器などが変わっても検出精度に違いはありません」と、その精度の高さを語る藤田氏。
高い精度を持つ InspectAI の外観検査
ディープラーニングチーム シニアAIエンジニア
藤田 裕文氏
これほど高精度なAIがパッケージで提供されるメリットは計り知れない。「外観検査を実現するAIは、一般的にはスクラッチ開発をすることが多いですが、アラヤではこれをパッケージとして提供します。そこには検査用のカメラや照明といった機器類のご提案なども含まれます。そしてもっとも大切なコンピュータープラットフォームとしてHPのワークステーションを推奨しています。InspectAI は、ソフトウェア面ではもちろん、ハードウェアから運用に至るまでのカスタマイズまで、トータルでお届けする製品です」と説明する金田氏。
「ゼロから開発するよりも低コストで済む点や短納期が期待できるなど多くの導入メリットがあります。検査をいつもより厳しくしたいケースがあれば顧客自らがパラメーターの再設定も可能で、ひとつのラインで複数の製品を稼働させることになった場合でも定義したモデルを簡単に変更することも可能です」と藤田氏も言葉を繋げる。InspectAI は多くの企業がまさに待ち望んでいた製品といえるだろう。
様々な点で導入メリットが高い InspectAI の推奨コンピューターとして採用されているのはHP Z4 G4 Workstationだ。その理由として「InspectAI が要求するスペックに対するコストメリットや、カメラ接続用のスロットが増設できる拡張性、24時間稼働し続ける検査システムにおいて必要な信頼性など、あらゆる面で現場に最適なワークステーションだと判断させていただきました」と金子氏は語る。
ディープラーニングチーム シニアAIエンジニア
金子 陽介氏
Z4 G4はインテル ®Xeon® プロセッサー、NVIDIA Quadro RTX シリーズなど最先端のハードウェアが搭載可能なプラットフォームとなる。「基本的な推奨スペックは私たちでご提案しますが、お客様の検査対象による特長を加味したカスタマイズについてもご案内します」と金子氏。例えば、検査対象物のサイズが大きければそれだけ取り込む画像データも増えるため、処理にかかる負担も大きくなる。それに見合った最適なスペックを提案してくれるので安心だ。
「Z4 G4のスペック構成がカスタマイズ可能な点も推奨コンピューターにしている理由です。AIだけでなく画像処理にもパワーが必要なので、CPU、GPUともにバランスが取れなくてはなりません。その点、HPのワークステーションは柔軟にスペック変更ができるので安心してお客様に提案できます」と金子氏は語る。
そのほか、外観検査では連続稼働が前提となるだけに可用性はとても重要だ。「InspectAI が求める要件でもっとも重要なのは可用性です。運用時は一定の負荷がかかり続けることになりますから、そこに対する可用性の高さも必要です」と金子氏。Z4 G4をはじめとしたHPワークステーションは、ケース内の排熱処理が優れているなどの理由から、可用性についても高い評価を得ていることも選択された理由となっているのだ。
InspectAI のシステム構成。
カメラはZ4 G4と有線接続、外部機器とTCPなどのプロトコルを利用した接続が可能
また、ハードウェア面だけでなくHPが提供するサポート力についても大きな期待があるという。「万一ハードウエアが故障した場合でも、365日のオンサイトサポートが受けられます。システムを止められないお客様が多いので、このサポート力は大きな魅力です」と同氏は語る。また、HPのワークステーションは長期間にわたってパーツなどが供給される。安定した調達性もユーザーの安定的な長期稼働に最適だという。
InspectAI の運用を実現するHP Z4 G4 Workstation
InspectAI はアラヤが長期間培ってきたノウハウを注ぎ込んで開発されたパッケージ製品だ。「弊社は外観検査向けのAIに関して数多くの導入実績があります。そこから得られた知見を集合させて InspectAI は生まれました」と出本氏。食品産業や自動車産業などを中心に多くの顧客を持つアラヤの外観検査向けAIはすでに実運用され、高い評価を得ていることからも InspectAI の完成度の高さが分かる。
「産業界においても人手不足は深刻さを増しています。コロナ禍を経て分かったことですが、今後は外国人労働者に頼ることが難しくなる可能性があるのではないかという不安材料もあります。これからの産業界では目視検査はAIに任せ、貴重な人材はさらに価値の高い業務に集中することが求められるでしょう。InspectAI は様々な業種に対応できますし、規模も問いません。これまで外観検査の自動化についてなかなか踏み出せなかったすべての企業様はぜひお気軽にご相談いただければと思います」と出本氏は最後に語ってくれた。HPはこれからもアラヤの取り組みをサポートし続けていく。
HP Z4 G4 Workstation
充実のパフォーマンスで
あらゆる業務に適したスタンダードモデル
最新のインテル® Xeon® プロセッサー、NVIDIA® およびAMDの高性能グラフィックス、HP Z Turboドライブを搭載可能。さらに、HP Z4 G4 Workstation には8本のメモリスロット、SATAポートを6ポート内蔵するなど、拡張性も抜群です。ハイエンドワー クステーションに求められるパフォーマンスを余すことなく凝縮しました。3D CAD、高解像度映像の 編集、ゲーム開発、医療など、あらゆる分野で活躍します。