EIZOとHPが描く医用画像診断の未来 ~14年の“協業”が生んだ世界に誇るモニター ~
2026-02-25
※本記事はRadFan2026年2月号にて掲載されたものです。
積み重ねた検証が、揺るぎない信頼を生む
医療現場における画像診断は、患者の生命に直結するため、表示機器の品質と信頼性は極めて重要となる。この要求に応えるため、高性能ワークステーションを提供している日本HP(以下、HP)と、医用モニターで高い評価を得るEIZOは、2011年以来、14年間にわたって製品互換性検証を続けている。本稿では、両社の協業のきっかけと検証の内容、そしてその取り組みが医療関係者と患者さんにもたらす多大なメリットについて、両社担当者へのインタビューをもとに紹介する。
EIZO株式会社
〒924-8566 石川県白山市下柏野町153番地
TEL:076-275-4121 WEB:https://www.eizo.co.jp/
設立:1968年3月6日
EIZO株式会社は、表示技術を中核に高品質な映像環境を提供するモニターメーカーである。「私たちはテクノロジーの可能性を追求し、映像を通じて豊かな未来社会を実現します」という理念のもと、医療分野では高精細・多階調表示と厳格な品質管理を追求した医用モニターを展開。画像診断や読影環境の質向上を支え、医療現場の信頼性と効率化に貢献している。
プロフェッショナルなものづくりと医療分野参入
EIZOはモニターの製造販売を主軸とする企業である。1968年に石川県七尾市で創業、1980年代に自社ブランドを確立し、製品・サポートに対する顧客の高い信頼を勝ち得てきた。
同社がヘルスケア業界、特に医療機関で使われるモニター分野に参入するきっかけとなったのは、2000年代初頭の医療業界におけるデジタル化の浸透だという。それまでは、X線、CT、MRIなどの画像はフィルムなどを用いて撮影し、現像したフィルムを光源(シャーカステン)につけて診断していた。しかし、2000年代に入ると、DR(デジタルラジオグラフィ)など大規模なデジタル化の大変革があり、保険点数もついたことから一気にフィルムレス化が進展、モニターによる診断へと移行した。
EIZOは、以前から高品質なモニター製造技術を持っていたため、その技術をもって医療分野にも貢献したいという思いから、2002年に医用モニター「RadiForceシリーズ」の販売を開始、医療分野に本格的に参入した。
品質を支える両社のサポート体制と迅速な問題解決
EIZOは、製品の品質に加え、サポート体制を重視している点でも好評価を得ている。国内9か所のフィールドサポート拠点に加え、本社内にコールセンターと修理サービス拠点を配置し、万全の受け皿を整えている。市場から寄せられる製品への問い合わせや修理解析の情報は、同じく本社にある品質保証、開発、製造などの関連部門に迅速に共有されるため、的確な対応の立案・実施につながっている。このように、開発から生産、販売、サポートまでを自社で一貫して行う体制が、高品質な製品に加え、スピーディで信頼性の高いサポートの提供を可能にしている。
医用モニターについては経年変化に対するサポートも提供している。モニターは発光素子を含む工業製品であるため、時間の経過に伴う画質の変化は避けられない。そのため、モニター品質管理ガイドラインに基づいて定期的にモニターの測定を行い、正しく表示ができているかどうかを検証する「不変性試験」の実施を推奨している。試験の結果を医療機関にレポートとして提供するサービスも有償で用意しているという。
サポート体制の充実という点では、HPの充実度もEIZOにひけをとらない。HPのワークステーションは、標準保守サービスとして、土日・祝日を含む365日を通して、翌日オンサイト修理(現地修理)が3年間付帯している(最長5年まで延長可能)。
東京本社に在籍する専門のエンジニアがコールを直接受け、その場で解決するという体制をとっている。両社とも「“分かる”担当者が直接、迅速にサポートする」という点で共通している。
また、医療機器メーカー向けにプライオリティアカウントサービスという専用コール窓口で迅速な問題解決を実現するサービスも提供しており、あらかじめ収集したお客様のハードウェア構成情報、障害履歴などを活用して、スムーズな障害対応を実現している。病棟・外来・救急を含め、休むことなく稼働する医療機関にとって、休祝日にも対応できる体制は心強い。
医療業界の「困った」を解決した14年の検証協業
HPが15~16年前に日本で医療市場に本格的に参入する際、高品質で評判の高いモニターを製造販売しているEIZOとのコラボレーションを模索したことが、今日まで続く両社協業のきっかけとなった。当時の医療現場では、モニターとワークステーション、そしてグラフィックスボードのドライバー、ファームウェア、BIOSといった複数の要素が絡み合い、現場で「うまく映らない」といった問題が多発していた。どのデバイスに問題があるのか、誰が責任を取るのかが不明確という深刻な課題があり、医療機関やシステムベンダー(SIer)を悩ませていた。
この問題を解決するため、EIZOとHPは、ワークステーションとモニターを接続した際の動作検証を実施し、「この組み合わせなら正常に動作する」というリストを明示する「検証マトリックス」を作成・公開することを決めた(図1)。EIZOの主要なモニターとHPの医療用ワークステーションを組み合わせて検証するため、HPからEIZOに機材を送り、EIZOの品質基準を満たした表示が可能かを、ドライバーやOS、GPU、BIOSなどの異なるバージョンを含めて確認したうえで検証結果をまとめた。2011年に両社が合意して検証を開始し、同年9月には両社のWebサイトで最初のマトリックスを公開している。
▼日本HP
https://jp.ext.hp.com/prod/workstations/solutions/healthcare/
▼EIZO
https://www.eizo.co.jp/solutions/healthcare/diagnostics.html
この協業はすでに約14年間継続している。新製品が出るたびに両社間で連絡をとり、検証を続けているという。こうした長期間の連携により、過去に発生した相性によるトラブルを前もって回避している。
医用画像特有の厳格な検証基準
医用モニターでは、一般のビジネス用途とは異なる厳格な基準を満たすことが求められる。医用画像はデジタル化される以前、銀塩フィルムベースだったため、モノクロ画像が基本となる。そのため、特に重視されるのは、正確な階調と輝度を表示することである。
階調特性は、一般的なモニターの基準として用いられる「ガンマ2.2」ではなく、医療業界特有の「DICOM PS3.14GSDF(Grayscale Standard Display Function、以降「GSDF」)」という特性に合っていることが必要となる。ドライバーをアップデートした際、この階調特性が崩れることがあるため、モニターの試験では、GSDFに準拠しているか、階調が潰れていないか、といった点が詳細に検証される。
また、ドライバーやBIOSのバージョンに関しては、互換性検証し、安定した動作を担保できるバージョンを明示して、医療現場などクリティカルな状況でも安心して使えるような情報を提供している。
さらに、EIZOが提供する品質管理ソフトウェアをインストールして、キャリブレーションや不変性試験などが正常に動作するかどうかも検証されている。これは、医師が「同じ環境で同じようにチェックできる」環境を保証するために不可欠な要素となる。
検証マトリックスの利点はもう1つある。トラブル発生時、特にモニターとワークステーションの組み合わせにおいて、故障の原因を迅速に切り分けられることだ。検証済みの組み合わせであれば、それらの機器自体ではなく、ビューアーソフトや病院の情報システムのポリシー(ドライバーを入れられないなど)といった他の要因に焦点を絞ることができる。
この検証プログラムは、両社だけでなく、医療システムベンダー(SIer)にも大きなメリットをもたらしている。医療ベンダーは医療機関への納品の際、独自に検証を行う必要があるが、EIZOとHPが事前に検証結果を公開しているため、一部の検証工程を省略できる。これにより、テスト工数や納期の短縮が可能となる。「ベンダー側から早く検証マトリックスを提供してほしいという声があがることがあります」(新井氏)。
医療機関の信頼に応え、AIを含むさらなる進化に取り組む
協業は顧客満足度を高めるうえで、両社にとっても大きな力になっている。
HPにとっては、高機能医用モニターで強い存在感を持つEIZOとの互換性結果を公開することで、HP製品自体の信頼性を高めることができた。HPのワークステーションは医療分野で広く使われている。医療系の展示会に行けば、多くの企業の展示にHPワークステーションが用いられている。医療分野以外にもHP製品の信頼性が高いという認識を与える波及効果をもたらしているようだ。
EIZOにとっても、お客様からワークステーションとモニターの組み合わせについて問い合わせがあった際に、「検証済みで問題ない」と自信を持って言える点が大きなメリットである。また、HP社から最新型のモデルが提供されることで、新しい情報をタイムリーに発信できるという利点もある。
医療用のワークステーションとモニターの今後の展望としては、AI技術の進化と活用が挙げられる。生成AIが様々な機器やソフトに組み込まれつつあるほか、様々な診断支援にAI活用が進んでいる。
ただし、医用モニターは入力信号を忠実に表示することが重要であるため、EIZOでは表示画像そのものをAIで加工することは現時点では行っていない。これは、診断に必要な表示特性が最優先されるためだ。一方、EIZOでは、AIを製品の品質維持に活用している。モニターの表示は、外部温度の上昇や輝度の変化によって微妙に変動するが、EIZOではAI技術を用いて開発した補正技術を最新製品に搭載している。
HP社も、システムベンダーやソリューションベンダーがAIテクノロジーを使った製品を出すことが増える中、GPUを必要とするAIソリューションへの対応を強化していく。HPは、最新のGPUを搭載し、ハイエンドの製品を安定して使えるよう、ワークステーションの進化を進めていく方針だ。
両社は、今後も継続的に互換性検証を行い、医療現場の信頼性の基盤となる取り組みを続けていくことを確認した。
医用モニターを製造するEIZO本社工場を視察
EIZOの医用モニターは、石川県白山市の本社工場で製造される。工程は手作業とロボットによる自動作業の混合ラインとなっている。
組み立てから調整までを行うフロアは、清浄度を保ちながら、電子部品に損傷を与える静電気の発生を徹底的に抑えるため、静電気を発生しにくい作業服や靴を装着し、作業者の足にはアースリード(接地線)を取り付けている。さらに、定期的にスチームを噴霧し、一定以上の湿度を保つようにしている。
Point1
製造する1台ごとにRFIDチップを封入したカードが添付される。これを読み取ることで機種判別し、自動調整・検査を行ったり、生産工程履歴・品質データの自動取得を可能にする。
Point2
作業者の目の前のモニターには、材料品番、作業手順、注意ポイント、電動ドライバーのトルク設定などの生産条件と作業指示内容が表示されており、指示の確認のためにラインを離れる必要がない。
Point3
手作業で組み立てられた基板ユニットやネジ締結状態などはロボットに装着された2台のカメラによる内観検査が行われる。多数の検査ポイントを一定の判断基準でブレなく、効率よく検査することができる。
Point4
工程が進み、通電できる状態になると、自動で多段式ボックスに入庫され、エージングが行われる。またカメラで画面を捉え、パターンを切り替えながら補正値を割り出して調整するなど、医用モニターに欠かせない画面全体にわたる均一性(ユニフォミティ)を確保する。
Point5
最終検査工程では、サンプルの医用画像を表示し、認定を受けた作業者が目視で確認することで、同社の厳格な品質基準に基づく最終品質を担保している。モノクロ医用モニターは、2台1セットのペアリング仕様で提供することが多く、この最終検査工程で色調を揃えた2台を選定している。
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