ローカルSLM/LLMの可能性を大きく広げるHPワークステーションを最先端の研究で実証
上智大学
2025-11-12
進化を続けるAIの領域において、現在注目されているのがローカルSLM (Small Language Model) /LLM (Large Language Model) だ。扱いたい情報を外部に出さずに活用するため、閉じたネットワーク内で完結できるAI活用として盛んに研究が進んでいる。上智大学大学院の深澤佑介准教授もこの領域で積極的に研究を行う研究者の一人だ。彼の研究室では今後の発展が期待されるこの分野でHPワークステーションがどのようなポジションを獲得していくのかPoCを実施している。今回はその中間報告として話を伺った。
取材:中山 一弘
ローカル環境における生成AI活用の可能性
上智大学大学院にて、応用データサイエンス学位プログラムの准教授として活躍されている深澤 佑介氏(以降、深澤氏)。機械学習応用、情報推薦、時空間データ解析、ヘルスデータ解析などの研究を続けており、その取り組みは着実に形になってきている。
「トップの国際会議での発表を聞いていると、潤沢な計算環境を持つ企業が高度なコンピューターを活用し、大きな成果を上げているケースが見られます。しかし、サーバに匹敵するパフォーマンスを持つHPワークステーションを使うことで、小さな研究室でもより大きな可能性を見出すこともできると考えています」と深澤氏は語る。
同氏が自身の研究にPoCを兼ねて使用しているのは「HP Z6 G5 A Workstation」と「HP ZBook Ultra G1a 14inch Mobile Workstation」だ。
「HP Z6 G5 A は、物理コア数が多いAMD Ryzen™ Threadripper™ PROプロセッサや、ハイエンドグラフィックスNVIDIA™ RTX 6000 Adaを搭載するリッチなスペックのコンピューターです。HP ZBook Ultra G1aは14インチディスプレイを採用したモバイルサイズのワークステーションで、AMD Ryzen™ AI Max+ PRO プロセッサを採用した高性能な『AI PC』、『Copilot+ PC』として使える最新モデルになります」と解説するのはHPの勝谷氏だ。
深澤氏は、LLMと比較して計算コストを抑えながらデプロイが容易というメリットのあるSLMに注目し、LLMで課題となる「説明可能性」の向上を実現する「XSLM(eXplainable SLM)」に取り組んでいることでも知られている。そんな同氏は研究を続ける中で、先に紹介したHPワークステーションを使った具体的な研究内容を紹介してくれた。
ローカルSLM/LLMの可能性
最近発表したばかりの研究は『計画から予防へ:登山前の情報を用いた山岳事故リスクの予測』というタイトル[1]で、登山の計画段階の情報から、滑落や転倒、疲労、道迷いといったリスクに分類して遭難が起こるリスクを算出します」と深澤氏。登山計画ができた段階でこの予測モデルを使うと、それぞれに分類されるリスクをパーセンテージで予測。例えば、現在の登山計画にどのようなリスクがあり、それがどの程度なのかを可視化でき、自分の登山レベルに応じて計画を見直すことが可能になる。
実際に自分でも登山中にハンガーノックになってしまい、体がまったく動かなくなったことがありました。単純な体調不良でも山では大きな事故に繋がりかねないので、事前に可能性を知ることはとても大切です」と深澤氏は自身の体験談を交えて登山予測に関するAI活用の有効性について語る。
この研究はBERTを用いており、比較的GPUリソースの限られた環境で実現されたものですが、現在はその発展として、HPワークステーションによるSLMを用いた研究に取り組んでいるという。SLMを活用することで「なぜそのリスクが予測されたのか」という根拠や理由を説明可能にするアプローチや、生成AI特有の課題であるハルシネーションをいかに抑制するかといった研究にも挑んでいる。
また別の研究成果として「『時間、環境、人口統計的特徴を用いてクマとの遭遇を予測する』という論文[2]も発表しました。2025年もクマが人間を襲う被害報告が相次ぎましたが、様々なデータから出没予測を立てるという研究報告をさせていただきました」と語る深澤氏。
これまで、クマによる被害が出そうな地域や過去に出現例のある地域において看板や口伝による注意喚起や広報はされてきた。しかし、ここ数年はこれまで目撃情報すらなかった地域にも出没するようになっており、社会課題解決に役に立つことを願って深澤氏が取り組んでいる研究分野だ。
上智大学記事
この研究は、機械学習を用いており、比較的限られた計算機環境の中で成し遂げられた。現在はSLMを活用することで、クマとの遭遇リスクが高まる理由や根拠を示せる分析を目指しており、そのためにSLMが稼働するHPのワークステーションに期待している。
[1] Taeko Sato, Yusuke Fukazawa: From Planning to Prevention: Predicting Mountain Accident Risks Using Pre-Climb Information, International Journal of Data Science and Analytics, Springer, 2025
[2]Shin Nakamoto, Yusuke Fukazawa: Bear Warning: Predicting Encounters Using Temporal, Environmental, and Demographic Features, International Journal of Data Science and Analytics, Springer, 2025
AIモデル、ハードウェア、両者の進化が今後のカギ
深澤氏の研究の中でHP Z6 G5 Aが次々と結果を出していることは分かったが、モバイルワークステーションのHP ZBook Ultra G1aはどのように活用されているのだろう。「研究室でも講演資料の作成などを含めた日常的な作業をメインに使っていますが、とてもパワフルなノートPCだと思います。Webミーティングも多いのですが、Webカメラに物理的なシャッターが付いているので安心ですし、ポート類も多いので出張や講演が多い私にはなくてはならない存在になっています」と感想を語る深澤氏。
同氏は続けて「いままでもノートPCは日常的に使っていましたが、このモデルはNPUを搭載しているので、AIモデルをそのままインストールして活用できるのが魅力です。まだ研究としては使っていませんが、OpenAI社の『gpt-oss-120B』が動くという話も伺ったので今後は生成AIシステムをモバイルする可能性も探ってみたいと考えています」と期待を語る。
現状でも多くの成果を残し、HPワークステーションの研究への貢献について高い評価をしている深澤氏。同氏はさらなる期待を次のように語る。「先ほどご紹介したような研究にはやはり生成AIをスムーズに動かせるパワーが必要になってきます。ワークステーションにおいてもよりパフォーマンスの高いものが求められてきます。AMDのプロセッサにはとても満足していますが、グラフィックスはNVIDIAの次世代モデル『Blackwell』にかなり期待しています。HPさんから情報をいただいていますが、4枚構成にした場合、30B(約300億パラメータ)まで実用的になると聞き、ますます期待が高まっています」(深澤氏)。
様々な場所で講義や講演をする機会が多い深澤氏は、度々クラウドサービス型の生成AIとの比較について聞かれるのだという。「クラウド型の生成AIももちろん良いものがたくさんあります。しかし、HPワークステーションを使ってみると、手元にあるコンピューターで課題が解決できるシーンが増えており、実際に研究環境もより効率的になったと実感しています。SLMに関しては十分HPワークステーションで快適に動かせていますし、クラウド型のサービスのようにバージョンアップによって精度が変わるようなこともありません。今後もHPワークステーションをより使いこなしながら、研究を進めていきたいと思います」と深澤氏は最後に語ってくれた。HPは今後も上智大学と深澤氏をサポートしていく。
HPワークステーションで課題が解決できるシーンが増えており、実際に研究環境もより効率的になったと実感しています。
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