大手放送局の大量導入も決定。ブラックマジックデザインとHPワークステーションが切り拓く未来像を語る

映像制作には優れた編集ソフトウェアとそれを動かすためのコンピューターが必要だ。投資を重ねるほど、強力な環境が構築できるが、それだけでは後進の育成には限界がある。編集ソフトウェア「DaVinci Resolve」の開発元として知られるブラックマジックデザインと、エントリーモデルからハイエンドモデルまで、あらゆるニーズに応えられるワークステーションラインアップを持つHPは、協業を続けてきたことで大手放送局への大型導入案件の成立や認定PCの設定などを実現してきた。どのような狙いの中でパートナーシップが磨かれてきたのか紹介しよう。

  • 目的
    映像会社が求める編集プラットフォームの提供
  • アプローチ
    編集ソフトウェア「DaVinci Resolve」とHPワークステーションをプラットフォーム化
  • システムの効果
    使い慣れたUIの提供
    スペックに合わせた適切なパフォーマンス
    創造力を損なわないシンプルかつ十分な機能
  • ビジネスの効果
    コストやニーズに合わせて柔軟な組み合わせが選択可能
    スタートアップ企業の成長に合わせてスケールアップが可能

取材:中山 一弘

大手放送局への大型導入を実現

ブラックマジックデザイン 代表取締役 社長 岡野 太郎氏
ブラックマジックデザイン 代表取締役 社長 岡野 太郎氏

ブラックマジックデザインは、シネマカメラの「Blackmagic PYXISシリーズ」やライブプロダクションスイッチャーの「ATEMシリーズ」に代表される映像関連機器の開発、販売をはじめ、無料版から始められる世界標準の映像編集ソフトウェア「DaVinci Resolve」などを取り扱う企業だ。近年ではコストパフォーマンスを重視した製品群の発表が相次ぎ、さらに多くの支持者を集めている。

「当社の基本的な考え方として、安価で高品質な製品を提供して、自由な活動に役立てていただきたいというものがあります。それによって、才能のあるクリエイターが新しいものを生み出すための手助けになればいいとも考えています。そのためにSDKの公開や、使いやすいツールキットをご提供するなどの方針でこれまでも活動してきました」と語るのはブラックマジックデザインの日本法人代表取締役社長の岡野氏だ。

日本の企業にもブラックマジックデザインのテクノロジーが非常に多く導入されており、映像業界においてはなくてはならない存在となっている。HPワークステーションシリーズとも深い関わりを持ち、お互いの性能をフルに発揮できるよう、両社間での技術交流も行われている。

そんな両社の良好な関係もあり、今回大手放送局にブラックマジックデザインの「DaVinci Resolve」をプリインストールした「HP Z4 G5 Workstation」の大型導入が決まった。HP Z4 G5はプロセッサーにインテル® Xeon® を採用し、グラフィックスにはNVIDIA RTX™ 4000 Ada を搭載している。クオリティと耐久性のバランスを重視した仕様で、特に高解像度の映像編集にストレスがないスペックとなっている。

「ブラックマジックデザイン様と販売パートナー様、ワークステーション専任営業が緊密なやり取りを重ねることで採用いただけたと考えております。例えばグラフィックボードの選定ではパフォーマンスのみならず、安定性も含めたご提案を心掛けております。ブラックマジックデザイン様はソフトウェアだけではなくハードウェアについても自社開発されておられます。提供されているそれらについても、なるべくお客さまが自由に活用できるようなサポートまでされているということはなかなか昨今のメーカーには見られないことです。そのような自由度の高いメーカー様にハードウェアの信頼性、サポートの充実度でHP Workstationを選んでいただけた事は大変光栄です。」とHP 小俣氏は採用された背景を語る。

株式会社日本HP ワークステーション営業本部 市場開発 小俣 裕二氏
株式会社日本HP ワークステーション営業本部 市場開発 小俣 裕二氏

映像制作をより快適にするDaVinci Resolve

DaVinci Resolveは、CPUやGPUを効率よくフル活用できる点でも評価が高いソフトウェアだ。例えば自作PCで運用するケースでも、CPUを高速なものに交換したり、GPUをアップグレードしたりすることで確実なスピードアップが体感できる。つまり、マシンのパワーアップに比例してDaVinci Resolveがより快適に動作するということをユーザーは実感できることになる。

「確かに私たちの製品がそのような評価をいただいていることは知っています。当社の開発チームに尋ねてみると、それを実現するのはかなり難易度が高いという話でした。進化を続けるプロセッサーにあわせて改良を重ね、最適化を図る努力がその陰にはあるのだということです」と岡野氏は語る。

一般的に映像制作のワークフローというものは、世界的に共通となっている。映像素材を撮影し、それをデータ化、ソフトウェアに読み込ませた後は、粗編集から始まり、タイトルやテロップ処理からカラー編集・音声編集などいろいろな段階がある。これには当然、充実したシステム環境が必要となるうえ、予算的にも大きなものが要求される。

「大都市にある規模の大きな放送局であれば、すでにそういった環境は整っていて、エディターも自由に使いこなしていくことができます。しかし、地方局などの場合には、そういったシステム環境が整っていないところも多いのが現状です。オフライン編集・オンライン編集の区別もなく、そこにあるソフトだけですべての編集作業をしなければならないところも多々あるのです」と映像制作の実情を語る岡野氏。

そのような場合にDaVinci Resolveはかなり強みを発揮することができる。コストパフォーマンスの高いシステムでありながら、必要とされる機能はすべて用意されている。無料版であっても、PCにインストールした瞬間から、映像編集ができる環境が構築できるのだ。「限定された機能を搭載し、『これだけしかできない』というソフトウェアではありません。限りなくたくさんの機能やツールが用意されていて、使う人は用途に応じて自分にあったワークフローを見つけることができます。その点でも高評価をいただいたということも伺っています」と岡野氏。

先ほども岡野氏が触れたとおり、ブラックマジックデザインの製品はユーザーの自由度を高めることを第一に考えられている。「放送局の若い担当者の方などが、やりたいと思ったことを大きな追加投資なしで実現できるということも、これからを見据えれば大切なことだと考えています。またDaVinci Resolveにおいては、世界中に多くのユーザーがいるため、なにか分からないことがあった場合は検索すればすぐ情報を得ることができます。事例なども豊富にあるため、それについて調べて自分の環境に応用していくことも可能です。こういったことも含めて、特に若手のクリエイターやエディターの方々からも支持されているのだと思います」と岡野氏は語る。

今回の大型導入の決め手となったポイントは発表されていないが、若手からベテランまで、使い慣れた編集ソフトウェアのDaVinci Resolveと信頼性が高く、実際の故障もすくない、HPワークステーションの組み合わせは、プロの現場での過酷な作業を支え続けるのにふさわしいプラットフォームといえる。その事実が多くのプロフェッショナルに支持され、今回の大型案件を実現させた理由なのではないだろうか。

DaVinci Resolveの認定PCにHPのワークステーションが次々登場

HP CWC(Customer Welcome Center Tokyo)では、HPワークステーションとブラックマジックデザインの製品によるコラボレーションの実力を体感できる
HP CWC(Customer Welcome Center Tokyo)では、HPワークステーションとブラックマジックデザインの製品によるコラボレーションの実力を体感できる

ブラックマジックデザインとHPのパートナーシップの事例はこれだけにとどまらない。例えば、DaVinci Resolveが快適に動作することを約束する「認定PC」の検証は、これまでも継続しておこなっている。

「従来からブラックマジックデザインの活動として「DaVinci Resolve認定トレーナー」という形で、一定の基準をクリアした方に対して「DaVinci Resolveについてのトレーニングをする資格があります」というような称号を付与するというものがありました。この活動を拡げていくなかで、PCに関しても同じようなことができないかという話しが出てきました」と認定PCの設定がはじまった経緯を語る岡野氏。

現在は「HP Z1 Tower G9 Workstation」「HP Z4 G5 Workstation」「HP Z6 G5 A Workstation」「HP Z8 Fury G5 Workstation」が認定モデルに設定されている。

映像業界の未来を語る両者
映像業界の未来を語る両者

「一般論として、Windows PCであれば、性能のよいグラフィックボードを搭載した高性能なマシンほど快適に使うことができます。とはいえ、そのようなマシンは高価でもあるので、DaVinci Resolveを無償版にしたケースでも大量のワークステーション導入は予算を圧迫します。お客様のニーズにも、コストメリットの高いPCのおすすめを教えてほしいという声が多かったので、軽い処理が問題なく動作する『エントリーレベル』と高性能グラフィックスを搭載する『アドバンストレベル』の2種類の認定PCを用意し、ご希望のシチュエーションに最適なワークステーションをお選びいただけるようにしています」と岡野氏は語る。

「例えば大学の研究室でDaVinci Resolveを使うためのコンピューターが欲しいといった場合、研究室の限られた予算内で最大のコストメリットが得られる製品を選ぶ必要があります。そのようなシーンでは認定PCのスタンダードモデルをお選びいただき、豊富な予算や業務効率化、生産性向上を最優先とするデザイン事務所のような場合はアドバンスからお選びいただくといったように、売り手としてもご提案しやすい指標となっています。加えてHPワークステーションの場合、統合セキュリティソリューションの『HP Wolf Security』がプリインストールされているので、安全安心面から選択いただくケースもあります。認定PCについては順次検証しながら追加していただいている状況ですので、今後も情報提供等を密にしながらブラックマジックデザイン様と協力していければと思っています」と小俣氏は語る。

「HP様のワークステーションについては、実績と信頼という点では間違いないと思っています。一方で今回の入札がまさにそうでしたが、企業の方々に数百台単位で導入していただく場合には、例えそれがワークステーションだとしてもコストパフォーマンスが求められてきます。やはり購入しやすい価格帯というのがありますので、その価格帯で性能のよいモデルをさらに増やしていただければと思います」と、最後にHPへの要望を語る岡野氏。進化を続けるDaVinci ResolveもAIによる機能の拡充が続いており、ムーブメントとなっているAI活用という視点からも充実したコンピューターが必要とされる傾向がある。HPのワークステーションは今後も最先端のテクノロジーを追求し、そのニーズに応えていく。HPとブラックマジックデザインは、これからも映像業界の新たな未来を切り開いていくための活動を続ける。

集合写真

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