クリエイティブの最先端が集結するAdobe MAX Japan 2025にHPが参加

2025年2月13日、東京ビッグサイトで開催されたイベント「Adobe MAX Japan 2025」。時代を切り拓き続けるクリエイターやエキスパートが集まり、Adobeのソフトウェアパワーを最大限に活かすテクニックやノウハウを披露した。このイベントにHPも参加、当日はブース展示のほかセミナーもおこなった。それでは早速当日の模様を紹介していこう。

取材:中山 一弘

Adobe MAX

HPブースにはデザイン事務所必携のHPワークステーションが勢ぞろい

Adobe MAX Japan 2025は、多数のセッションを中心に、クリエイティブを支える最新テクノロジーの展示など、多彩な内容で来場者に有益な情報をもたらすイベントだ。今年は、グラフィックデザイン、写真、Web制作、UI/UXデザイン、映像制作、3D制作、SNS制作、Adobeツールのトピックスや今話題の生成AI機能などについて、最新情報が学べるということもあり、当日は大勢の来場者で会場は賑わっていた。

来場者が絶えなかったHPブース
来場者が絶えなかったHPブース

この会場内にある展示ブースにHPも出展。クリエイターが憧れる、HPワークステーションシリーズを一挙にディスプレイしていた。そんな中、来場者の注目を集めていたのが、円錐形の筐体を持つ「HP Z Captis」だ。

「参考出展になりますが、こちらはHP Z Captisというデジタル3Dスキャナーになります。円錐の底辺にスキャニング用のテーブルがあり、その上に素材を乗せて取り込みをはじめます。最大32TOPSのAI性能を持つNVIDIA Jetson AGX Xavierモジュールを内蔵し、内部の天井に搭載された8Kカメラで撮影した素材を解析します。内壁には8つのライトも取り付けられており、素材に合わせた陰影を際立たせることで、表面の微妙な凹凸もデータとして再現しています」と語るのは当日ブースを案内してくれた、中島 章氏だ。

デジタル3DスキャナーのHP Z Captis
デジタル3DスキャナーのHP Z Captis

取り込んだデータはAdobe Substance 3Dへ送られるので、すぐに3Dデザインを実行することができる。これまで再現が難しかった立体感のある素材も、HP Z Captisなら簡単にデジタルデータに変換できるというわけだ。「これならたくさんのマテリアルを次々と取り込み、データチェックできるということになります。これまでは一つひとつの素材をモデリングしていたのですから、それと比較して大幅なコストダウンや開発期間の圧縮も期待できます」と中島氏はそのメリットを語る。

高精度3Dスキャナーの導入で3Dデザインが加速する
高精度3Dスキャナーの導入で3Dデザインが加速する

このHP Z Captisに接続されていたのはHP Z8 Fury G5 Workstationだ。HPワークステーションの中でもフラッグシップとなるマシンで、ハイエンドGPU NVIDIA RTX™ 6000 Adaを最大4基搭載可能だ。これらのハイエンドスペックを安定して稼働させる電源ユニットは最大で2基連結でき、最大出力は2250Wとなっている。そのほか、メインメモリは最大2TB、ストレージは最大112TBとなるなど、まさにサーバクラスに匹敵、いや、ケースによっては凌駕するほどのパフォーマンスを発揮するモデルだ。

株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長 中島 章氏
株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 市場開発担当部長 中島 章氏

「HP Z Captisでデータを取り込み、Adobe Substance 3Dでサクサクと大容量データを加工する場合、どうしてもハイエンドGPUが必須となります。もちろん、どのような作業をするのかにもよりますが、HP Z8 Fury G5 Workstationクラスでの運用も視野に入ってくると思います」と中島氏は語る。

当日はこのほかにもZ1 Tower G9、Z2 Tower G9、Z6 G5 A Workstationと、エントリーモデルからハイエンドモデルまで、幅広いラインナップを展示していた。

「AdobeのソフトウェアでもAI機能が充実してきていますが、その他多くの新しい機能をスムーズに使うのであれば、GPUパワーを活用するのがとても有効になってきています。これらのミニタワー筐体なら、必要に応じたグラフィックスカードがインストールできるので、デザイン業界などでも使いやすい構成が実現できます。先ほどご紹介した3Dデジタルデータの世界だけでなく、2Dの世界でもワークステーションが必要とされるケースが増えているのが、昨今の市場トレンドだと思います」と中島氏は説明してくれた。

あらゆるニーズに対応するHPワークステーションシリーズ
あらゆるニーズに対応するHPワークステーションシリーズ

HPではエントリーモデルからハイエンドモデルまで、ニーズや手に入れたいパフォーマンスに合わせた製品が必ず見つかるのが強みだ。さらにAdobeソフトウェア群を含め、デザイン業界で扱われるプロフェッショナル向けソフトウェアの多くが動作認証済みとなっている点も大きなアドバンテージとなる。「ソフトウェアのAI機能をフル活用するようなケースのほか、デザイン業界だけでなく、あらゆる企業が導入を目指しているローカルSLM/LLMなどの利用に際してもワークステーションは安定したパフォーマンスを提供します。スタートアップから大企業まで、あらゆるニーズに応えられるHPのワークステーションをぜひご指名いただきたいと思います」と最後に中島氏は語ってくれた。

クリエイターPCにデスクトップが最適な理由

会場にはいくつものセミナーブースが用意され、それぞれでクリエイターや有識者がセッションを繰り広げている。HPもゲストスピーカーに株式会社マリモレコーズの専務取締役で映像クリエイターとして著名な江夏 由洋氏を迎えて「デスクトップでPremiere Pro! HPのZシリーズとNVIDIAを選ぶ理由」というテーマでセミナーを開催した。

左から株式会社マリモレコーズ 専務取締役 映像作家の江夏 由洋氏、右が株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長 大橋 秀樹氏
左から株式会社マリモレコーズ 専務取締役 映像作家の江夏 由洋氏、
右が株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 本部長 大橋 秀樹氏

「お集まりのみなさんは、最初にクリエイティブをやろうと思ったときにパソコンが必要であることは分かっていたと思いますが、ノートPCを選んだ方もいらっしゃるのではないかと思います」と冒頭で問いかける江夏氏。会場へ向かって挙手を募った際にも結果は、ノートPCを所有していると答えた来場者がやや多かった。

そんな会場へ向かって江夏氏は「わたしは動画編集をする際、ノートPCは一切使いません」と断言。もちろん、クライアントに成果物を見せる時などにはノートPCを使うことはあっても、本格的な編集作業の際にはデスクトップオンリーなのだという。「HPのZ2 Miniシリーズのような超小型デスクトップ以外、基本的には持ち運ぶことが難しいというデメリットはありますが、それ以外にたくさんのメリットがデスクトップ型筐体にはあるのです」と話を進める江夏氏。その最大の理由がデスクトップならではの拡張性にあるのだという。

イベント風景

壇上には、横蓋が開けられた状態のHP Z2 Tower G9 Workstationが用意されており、それを示しながら江夏氏はマザーボード上にあるPCIスロットに様々な拡張カードがセットできることを説明する。「動画編集にはグラフィックカードが必要ですが、デスクトップなら付け替えるのも簡単です。USBポートが足りなければ追加できますし、ネットワークを高速化したいと思えば、ここに10Gbpsのネットワークカードを差せばすぐに使えます。つまりカスタマイズが無限なのです」と江夏氏。

ノートPCの場合、USBポートを使った拡張ユニットは存在するが、それほど自由度が高いというわけでない。デスクトップの場合は、PCIスロットに空きがあれば、拡張機能は本体内に格納でき、見た目もスマートだ。

「もうひとつクリエイターにとって有利なのがディスプレイを好きに選べるという点です。ノートPC単体では、最大でも16インチ、18インチといったところまでですが、デスクトップはあらゆるサイズのディスプレイと組み合わせることができます」と江夏氏は説明する。

マリモレコーズではすべてのスタッフが4K対応の27インチディスプレイを使用しているのだという。「一度この環境になれてしまうともう元には戻れません」といって、会場にPremiere Proのコンソールを表示させる江夏氏。画面には各ウインドウが余裕を持った位置関係で表示されている。「このように一覧性の高い編集画面のレイアウトができるので、作業をガンガン加速させることができます」と、自らの編集作業で知りえたベネフィットを語る江夏氏。

また、デスクトップのメリットとして江夏氏は長寿命である点も挙げる。「ノートPCは良くて5年ぐらいと言われますよね。ぼくはデスクトップを10年ぐらい使っています」と江夏氏。その理由として、グラフィックスカードが陳腐化すれば、新型と差し替えたり、メインメモリの容量が不足気味なら、メモリを追加したりするなど、必要に応じて各種パーツをアップデートしながら使えるからなのだという。「長期間使っていける点もデスクトップの良いところだと考えています」と江夏氏は語る。

動画編集を快適にするノウハウを惜しみなく披露

次にHPワークステーション環境で、8KのRawデータをフル解像度で編集する様子をデモする江夏氏。「編集個所をハイスピードで移動させてもスムーズに再生されますし、スクロールも速い。このサイズの動画がこれほど軽快に動くのがデスクトップです。これにはNVIDIAのグラフィックスカードを搭載することでこの軽快な動作を可能にしています」と江夏氏。

イベント風景

デモを行ったHP Z2 TowerにはNVIDIA RTX™ 2000 Ada が搭載されている。Adobe Premiere ProにはNVIDIA CUDAに最適化されたプレビューエンジンが搭載されているため、3D処理は無くてもGPUが必須となっている。「プレビューでリアルタイムのレスポンスを得るにはNVIDIAのグラフィックスカードを搭載していなければなりません。逆にCUDAコアを活用した処理ができれば、Premiere Proはびっくりするぐらいのスピードで、レンダリングも再生もとにかく快適になるのです」と江夏氏。

NVIDIAのグラフィックスカードがインストールされているマシンでのみCUDAコアでの演算処理を指定できる
NVIDIAのグラフィックスカードがインストールされているマシンでのみCUDAコアでの演算処理を指定できる

さらに動画編集をするのに必要なのは「ディスクデザイン」なのだという江夏氏。「OSやアプリケーションを格納するCドライブ、そして動画を生成しているときに必要となるキャッシュ用のドライブ、さらに素材や完成した動画ファイルを入れるデータフィールド、最後にデータフィールドからバックアップを取るための外部ディスクの4つを用意することです」と江夏氏は解説する。

イベント風景

ここで特に大切になるのがキャッシュ用のドライブだ。デフォルトではキャッシュドライブはCドライブに割り振られるのでディスク容量も必要となるうえに、読み出しと書き出しを一度にすることになるため動作は遅くなる。キャッシュを物理的に別のドライブに割り振るだけで、Premiere Proの動きは軽快になるのだ。

ヘビーユーザーの江夏氏からみたHPワークステーション

2010年から、HPワークステーションを使い続けているという江夏氏。マリモレコーズには歴代のHPワークステーションがところせましと並んでいるほどだ。「HPワークステーションで一番気に入っているのは電源です。パソコンは電源が命ですが、HPワークステーションはまったく不安を感じさせない安定感があります」と江夏氏。さらにデスクトップで内部レイアウトにも余裕があることからSSDユニットなどが追加しやすい点を挙げ、「ディスクデザインがしやすく、始めての人でもやりやすいと思います」と江夏氏は感想を語る。

イベント風景

「また、エアフロ―がよく考えられていて、グラフィクスカードもドライブユニットもよく冷やしてくれます。長時間の編集やレンダリングなど、連続稼働中は筐体内がとにかく高温になるので、エアフロ―が高効率なのは安定感にもつながっています」と江夏氏。

さらに江夏氏はHPワークステーションが採用している、ドライバーなどの工具が不要でカスタマイズできるスクリューレスデザインについても触れるなど、パソコン愛に溢れた話題も展開。来場者を大いに楽しませていた。江夏氏の話はまだまだ尽きないようだったが、ここで時間切れ。惜しまれつつもセミナーは終了した。

当日のセッション動画はこちら

会場にあるセミナールームやブースには常に人だかりがあったAdobe MAX Japan 2025は大盛況のうちに閉幕となった。クリエイティブな作業に欠かせないコンピューターの中でも、プロフェッショナルがこぞって指名するHPワークステーションは人気の中心となっていた。また、AI機能が大きくクローズアップされる中、コンパクトでサーバクラスに匹敵するパフォーマンスを得ることができるだけに、デザイン事務所のICTシステムの中核を担うコンピューターとしても注目は高まっている印象がある。HPワークステーションに興味を持った方はぜひお気軽に相談してほしい。

イベント風景

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HP Z8 Fury G5 Workstation

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