2024.10.11

ラベル・パッケージ印刷最前線:次世代包装市場の成長を支えるHP Indigoデジタル印刷機

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株式会社 日本HP
デジタルプレス事業本部
インダストリアルセールス本部
ラベル・パッケージ営業部 部長
永島 孝也

市場を取り巻く環境が大きく変化する中、ラベル・パッケージ業界は新たな印刷技術によって進化を続けている。デジタル印刷技術の進歩により、短納期で多品種小ロット生産が可能になり、パーソナライズなど多様化する需要にも対応できるようになった。印刷会社やコンバーターは、品質と効率性の向上や、付加価値の高いソリューションの提供という要望に絶えずさらされており、競争力を高めるためには最新技術の導入が欠かせない。本記事では、各分野における注目のデジタル印刷機の最新技術や導入メリットについて、また、印刷から加工・製袋までをトータルに考えるデジタル環境の最適化について日本HPの永島氏に話を聞いた。

ラベル市場動向

ラベル印刷は、食品・飲料、医薬品、パーソナルケアなどを中心に、幅広い業界で活用されている。ラベル印刷の世界市場は2023年に一時的な減速が見られたものの、同年後半には回復し、近年は年平均成長率4%前後と堅調に推移。特にSKUの増加、小規模ブランドの台頭、パーソナライズドラベルや真贋判定の為のセキュリティー印刷、持続可能なラベル需要の高まりは、デジタル印刷市場の成長を後押しする要因だ。そんな中、HP Indigoデジタル印刷機を採用するラベル・パッケージコンバーターは、市場の成長と比較して約3.5倍のスピードで成長し、新しいビジネス機会を創出している。今や、HP Indigoデジタル印刷機は、デジタル印刷されたラベル全体の過半数を支える存在だ。

ラベル生産現場では、小ロット、高品質、低価格、短納期、多様な素材といったさまざまな要望に対応するための技術革新とプロセスの効率化が優先課題となっているが、HPはこうした課題に対応するソリューションを提供している。

超高速印刷を実現するHP Indigo V12デジタル印刷機のLPEx
テクノロジー

2024年に一般販売が開始されたHP Indigo V12デジタル印刷機は、ラベル・パッケージ向けに開発された第6世代プラットフォームのデジタル印刷機で、最大色数12色に対応した市場で最速の狭幅ロールラベル印刷機だ。

本印刷機の最大の特徴は、6色印刷時のスピードが最大毎分120メートルという常識を覆すような速さと生産性。そのスピードは、現行の狭幅機であるHP Indigo 6Kデジタル印刷機の4倍に匹敵する。1日あたり最大13万メートルを印刷できる圧倒的なスピードは、従来のアナログ印刷機からジョブを代替し、わずか1台で複数台のフレキソ印刷機に匹敵する収益を生み出すことも可能だとされている。

HP Indigo V12デジタル印刷機は、革新的なLEPxテクノロジーを採用した第一号モデルだ。LEPxとは、現在の湿式電子写真方式(LEP)の進化版として、次世代の”x”の意味合いを持たせた言葉である。

永島氏はLEPxテクノロジーを次のように解説する。「LEPxを搭載するHP Indigo V12デジタル印刷機には、6つのイメージングエンジンが横1列に配置されています。それぞれに、デジタルプレート、1600dpiの高解像度LEDライティングヘッド、2つのインクソースがあります。第5世代までの印刷機は、ブラン胴を1回転で1色ずつインキを載せていくので、6色印刷だと6回転していましたが、V12は5.7メートルもの長いブランケットを採用し、たった1回転で6色を印刷できるようになりました。」

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さらに、紙の巻き取りには、ABグラフィック社のノンストップワインディングソリューションを使用することで、連続運転を実現。ノンストップでの印刷が可能になれば、人手による作業を削減し、運用の効率化、人員配置の最適化が図れる。

また、「従来のイメージングプレートは、銅に薄いアルミのプレートを巻き付けて交換していたが、LEPxアーキテクチャーではイメージングプレートがスリーブタイプになっており、版胴ごと交換ができる」と永島氏は説明する。そのため、交換作業が迅速にできるようになり、交換の頻度も約1か月と長くなった。メンテナンス性の高さと大幅な交換頻度の減少は生産効率化の大きなメリットだ。

HP Indigo V12デジタル印刷機をいち早く導入したオランダのEshuis社は、主に感圧ラベルやシュリンクスリーブ、軟包装等のパッケージを生産する企業だ。同社のCEOであるPeter Overbeeek氏は、「HP Indigo V12デジタル印刷機の導入に迷いはありませんでした。HP Indigo V12デジタル印刷機は、効率的な生産や在庫管理、可変印刷、そして高い持続可能性といったデジタルの価値を、小ロットから大ロットまで幅広いジョブにもたらします」と話す。HP Indigo V12デジタル印刷機は、印刷を停止せずに複数のジョブを連続して実行できるため、同社は85%という高い稼働時間を実現しているという。

軟包装市場動向

軟包装印刷の市場は、2023年に米国で年平均成長率4.2%*1、世界では4%*2の成長を遂げており、業界全体が堅調に拡大。特に軟包装のデジタル印刷市場は、2019年以降急速に成長しており、毎年倍増する勢いで注目を集めている。コンバーターにとって、軟包装への事業拡大は、これまで培った技術やスキルを活用しつつ、ポートフォリオを広げ、収益や利益率の向上を図り、競争力を高める絶好の機会となっている。(*1 The Future of Package Printing to 2027, Smithers Pira/*2 state of the U.S flexible packaging industry report, 2023 by FPA)

軟包装市場を牽引する
B2サイズ HP Indigo 200Kデジタル印刷機

急成長する軟包装のデジタル印刷を支えている大きな柱が、HP Indigo 200Kデジタル印刷機だ。従来機であるHP Indigo 25Kデジタル印刷機に比べて30%の高速化と45%の生産性向上を実現した最新機である。デジタル印刷市場への参入を目指すパッケージコンバーターに最適な一台だといえる。

HP Indigo 200Kデジタル印刷機は、軟包装印刷を想定したロールタイプデジタル印刷機で、B2サイズ、最大760mm幅のメディアに対応。LEPテクノロジーと、インキを原反に一度で転写するワンショットカラーテクノロジーによって、グラビア印刷に匹敵するカラー品質を実現する。最大毎分56m(EPMモード=CMYでフルカラーを再現するモード)の印刷が可能で、小ロットのサステナブルなデジタル軟包装の生産性を大幅に高め、納期を数週間から数日に短縮することが可能だ。

HPは、印刷だけではなく、製袋までの生産を一気通貫で考え、デジタル印刷のメリットを最大化させるため、「デジタルパウチファクトリー」構想を提唱している。これは、短いリードタイムで小ロットのパッケージ生産を実現するためのコンセプトで、永島氏は「HP Indigoデジタル印刷機だけではなく、HPデジタル印刷に最適化されたラミネーター、スリッター、製袋機など、軟包装を生産するのに必要な設備をトータルに提案し、生産工程全体をデジタル印刷に最適化することを目指している」と話す。

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永島氏は、「例えばヨーロッパで評価の高いKarlville社と連携すると、データ入稿後、HP Indigo 200Kデジタル印刷機で印刷を実施し、Karlville社のCombi Pack Readyラミネーターで、EVAと呼ばれる特殊なフィルムでエイジングが不要な特殊なラミネーション加工を実施します。その後、同社のスリッターでスリットし、Karlville Swiss社の製袋機でパウチの最終製品に仕上げます」と説明。Karlville Swiss社の製袋機はジョブごとの設定が半自動化になり、オートメーションが進んでいるという。小ロットで即納が必要なオーダーでも、即時生産・出荷まで対応できるトータルソリューションとなっている。

このように、印刷から製袋までの最適化ができれば、短いリードタイムで小ロット生産が可能になり、顧客のニーズに迅速に応えることができる。先進的なデジタル技術の採用によって、新しいサービスや製品の提供が実現し、新たなビジネスチャンスも生まれるかもしれない。

紙器市場動向

昨今、経済の不確実性、気候変動、AIの台頭、人材不足など、さまざまな環境変化が表面化し、企業は多くの課題に直面している。消費者は環境に配慮した商品やパッケージを重視するようになり、持続可能性や倫理的な選択が購買決定に影響を与えている。

また、紙器パッケージ市場では、高付加価値のパッケージに対するニーズが高く、特に化粧品や医薬品など、高精細かつ高品質な印刷が求められている。それに加えて、マルチSKUの小ロット生産やパーソナライゼーションの需要が高まり、迅速かつ柔軟なサプライチェーンの構築や、オンデマンド生産、在庫の削減などが重要なトレンドとして顕在化。これに対してHPは、紙器印刷市場のニーズに応える強力なソリューションを提唱している。

進化するHP Indigo 35K HDデジタル印刷機

HP Indigo 35K HDデジタル印刷機は、小ロットに対応する紙器向けシートタイプデジタル印刷機の新機種だ。本機は、HD(High Definition:高解像度)として、紙器パッケージに特化した生産機が1600dpiの高解像度になって登場したもの。

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HP Indigo 35Kデジタル印刷機は、生産性と汎用性の向上に注力し、以下の4つの主要分野で進化を遂げている。 まず1点目は生産効率だ。各種効率化ツールや自動化機能の活用により、より多くのジョブを実行できるように進化している。小ロットに最適なB2フォーマットで短納期に対応し、ドロワーやパレット型給紙ユニット、印刷中のプルーフィング機能はジョブ間の容易な切り替えができる。また、TRESU社のiCoat IIコーターをインラインで統合でき、スリーブ方式による迅速なジョブセットによって、効率的な小ロットジョブの生産が可能だ。1人のオペレーターで多数のジョブに対応できるため、人材を効率的に活用できる。

2つ目は色の自動化だ。パラレルカラーキャリブレーションステーションは、生産を中断することなく、印刷と並行して色を一致させ、一貫性を維持する。また、特色の色合わせが簡単にできる 「Spot Master」は、特許取得済のアルゴリズムを採用し、高速で自動的に正確なカラーマッチングを実現。従来30分程度かかっていた特色の色合せがわずか5分程度で可能になった。パッケージは、情報伝達と共にブランド認知も重要な役割だが、Spot Masterは、印刷フレーム全体でカラーの一貫性と均一性を確保し、どこで印刷しても常に同じ色のラベルやパッケージを生産できるため、ブランドオーナーから強い信頼を築いている。

3つ目は7色のインクステーションだ。CMYK、OVG、スポットカラーを使用し、印刷機上で最大97%のパントーン色域を実現。プレミアムホワイト、インビジブルイエローなどをサポートする、交換可能な7つのインクステーションを持つ。湿式電子写真方式(LEP)テクノロジーを搭載した「デジタルオフセット印刷」ならではの高品質を実現し、HDイメージングシステムで、よりスムーズな諧調表現を可能にした。

最後は、多様なアプリケーションへの対応である。ほぼ全ての紙器用基材に印刷ができ、変化する市場ニーズに迅速に対応が可能。画像の下地としてホワイトを印刷することで、リサイクルされたクラフト素材から、蒸着紙、合成紙、高級なカラー素材まで様々な素材に鮮やかな色で印刷できる。また、最小150ミクロンの軽量素材対応で、デジタルパッケージの用途を拡大する。

アメリカに5つの生産拠点を持つNosco社は1906年創業の老舗パッケージコンバーターで、主に医薬品、ナチュラルヘルス、パーソナルケアを中心とした製品のパッケージを提供する。同社はHP Indigo 35Kデジタル印刷機を導入し、2161色のパントーンカラーの94%に対応。精度の高いカラーマッチングや色の一貫性を維持できるため、顧客から厚い信頼を受けている。社長のR. Craig Curran氏 は「HP Indigo 35Kデジタル印刷機のおかげで、2週間連続で稼働率80%を達成しました。裏面印刷や 600ミクロンの厚紙でも印刷できて大変満足しています」と評価した。

HP Indigoデジタル印刷機は、ラベル・パッケージ業界に新たな基準を打ち立てている。その優れた印刷品質と柔軟な対応力により、コンバーターはブランドオーナーの多様なニーズに応じたソリューションを提供できる。HPの技術は、鮮やかな色再現性や環境への配慮といった多様なニーズに対応し、今後さらに広がりを見せるだろう。未来を見据えたデジタル技術の導入は、競争力の強化と新たな価値創出の要となる。次世代のラベル・パッケージ 市場を支えるHP Indigoデジタル印刷機の今後にますます注目したい。

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