【山形 巧哉 編】第2回:「まちづくり」を阻む壁を取り除くデジタルテクノロジー
元自治体キーマンが描く、ICT活用の過去・現在・未来シリーズ
2026-01-15
日本のICT活用の進化を決定づけるのは地方自治体だ。国家レベルの施策を実際に運用し、国民へのサービスとして昇華させるのは各自治体の役目でもある。そんな自治体において、ICT活用の進化が著しいケースがいくつかある。そしてその共通項として必ず浮上するのが、特筆すべき人材、いわゆる「キーマン」の存在だ。ここでは各自治体においてキーマンとして活躍し、大事業を達成させてきた人物にそれぞれが思い描くICT活用について語ってもらっている。彼らの考えや軌跡をみることによって、同じ自治体はもちろん、企業、組織にも大きなヒントが得られるはずなので、ぜひ熟読していただきたい。
取材:中山 一弘
山形巧哉デザイン事務所 代表社員
一般社団法人コード・フォー・ジャパン
北海道森町 政策参与
- 北海道森町出身。自治体職員として、行政や教育現場でのデジタル技術活用や構築に関する実務経験を重ねながら、その経験をもとに、地域社会においてデジタルをどのように結びつけると良いかという実験・実証を行う。
独立後は社会ニーズや技術進化により変わりゆく「公共空間」に関し、研究調査・計画・設計・実証・実装といった多角的な支援を行っている。座右の銘は「まあすわりなよ」
合同会社山形巧哉デザイン事務所・Code for Japan・国際大学GLOCOM客員研究員・公立はこだて未来大学アソシエイト・デジタル庁オープンデータ伝道師
まちづくりを考えるのは一握りの人間だけ?
山形さんの活動を大きな視野でみると「まちづくり」になると思います。そこで問題になってくることや、解決策などについてもお聞かせいただきたいと思います。
現在では森町に限らず、いろいろな地域を廻らせていただきながら仕事をしています。そのなかで感じることがあるのですが、まちづくり的な活動をしていると、参加してくれるメンバーが決まった人たちに偏るといった現象が起こりがちです。
特に地方ではその傾向が強いのかもしれませんが、いわゆる「固定メンバー」といえるような感じになってしまって、場合によっては外部からは排他的と見られかねないこともあるかと思います。
最近では、「地域おこし協力隊」のような組織を起ち上げて、人と人との交流であるとか、そういった交わりを作っていきましょうという動きも増えてきました。ただ、そうはいっても移住者は移住者だけのグループがなんとなくできてしまったり、元々の住民の方の子どもたちだけのグループで活動していたり、というようなことも実際にあります。そういった「距離感」のようなものがなんとなくコミュニティに存在していて、このあたりをどう解決していくのかということが課題だと感じています。
移住者の方と元々の住民の方で、軋轢が生まれてしまうという話はよく聞きますよね。
地域おこし協力隊などの場合、それぞれの地域で活動内容は異なるとは思いますが、多くの場合は移住定住者を増やして地域に長く根付いてもらうことなども目的にしていると思います。
面白い取り組みとして、滋賀県長浜市の移住者8人で起ち上げた「サバイブユートピア」というサイトがあります。これは移住してきた女性8人での活動なのですが、「他地域から嫁に来た女性は昔も今もその地域に溶け込んでいる。移住者だって同じはずなのに、そうならないこともあるのはなぜだろう」という考え方を紹介するなど、確かにそうだと思わせる視点がありました。
(参考 サバイブユートピア:https://survive-utopia.com/)
地域のなかに入っていくモチベーションなどにもよりますが、こういったことを考えるのも大切だと思います。まだ私のなかでは、どうすればいいのかという解決策はないのですが、地域の排他性や他地域からの移住者との距離感など、複雑な要因が根本にあると思っています。
例えば、現在の24歳くらいまでの若者たちは、IPアドレスやセグメントなどの概念を小さい頃から学んできた世代です。ネットワークの基礎知識なども含めて、デジタルというものが日常生活に溶け込んでいる世代だと思います。
一方でもっと上の世代が考える移住定住対策や、人とのコミュニケーションには「デジタルを排除したやり方」に固執した部分があるのかもしれないと感じています。しかし私たちからすれば、もちろん対面でコミュニケーションを取ることの良さもありますが、デジタルテクノロジーを活用するのは当たり前の話だと考えています。
しかし、こういった話をするとその地域の重鎮のような方が出てきて、「やっぱりみんなで酒でも飲んで語り合わないと」みたいなことになったりもします。もちろんそれもいいでしょうが、ただその価値観だけを押しつけながら地域おこしをしようといっても、馴染めない人が出てくるのは当然です。だったらデジタルも含めて、当たり前のコミュニケーションとしていろいろなやり方をしていけばよいのではないかと思うのです。
デジタルがある付き合い方
私が最近取材したなかで、山間部にお住まいのお年寄りが市役所の方々に「孫たちと毎日話したいから、スマートフォンを使ったビデオ通話のやり方を教えてくれ」と相談した話を聞きました。年齢に関係なく、「こういうコミュニケーションに使えますよ」といったように、必要性に応じてデジタルツールなどを使ってもらうことができれば、地域にも新しい動きが生まれるのかもしれません。
私自身も長年勤めた役所を辞めてから感じたことがあります。それは自分自身で起業してみると「あれ?時間ってこんなにも足りないのか」と実感したことです。逆に働けば働くほど収益も上がるし、公務員と民間企業でもこんなにも感覚が違うのかということも感じました。
そうなってくると、いままでやっていた町内会の活動や地域の活動などに割いていた時間を、捻出するのも難しくなってきた時期がありました。といっても、町内会の活動などをやめたいわけではなく、参加したいけれども時間がないというジレンマに陥った形です。
そんなときに、町内会の仕事でやってもらいたいといわれたのが会計の仕事でした。ただ、役場をやめてしまった後なので、いままでのように対面や電話でいつでも連絡できるということではなくなりました。そこで「連絡ならチャットでお願いします」ということにしたのですが、「そんなことやったことないよ」という古参のメンバーなどもいたわけです。そうはいっても連絡はどうしても必要なので、「おまえがそういうならチャットっていうのを使ってみるか」ということに落ち着きました。
そこで感じたのが、やはりデジタルテクノロジーが苦手だという人の場合、食わず嫌いということもあるでしょうし、必要がないから使わないだけだということもあるのだということです。言い換えれば機運醸成というか、先ほどの「孫の顔が見たい」でもいいですし、動機さえあればすぐ使い出せるのかもしれません。
いまの50代~60代くらいであれば、そういったデジタルテクノロジーにはそこまでの抵抗感はないでしょう。多くの人がSNSなどでもコミュニケーションを取っていますし、手段としても日常化していますから、あったとしても世代間で人気のツールが違うといったことぐらいで、現在のような拒絶といった現象は起こらないと思います。
また、デジタルツールでつながることのメリットは、「始めるのも、辞めるのも簡単」というところにもあると思います。いままでは「デジタルでこんなに簡単にコミュニケーションが取れる」ということばかりが吹聴されてきましたが、実は「辞めやすさ」にもメリットがあると感じています。例えば「会議のあとには集まったみんなで飲み会ね」といった場合でもWeb会議ツールを導入していれば、現地に集まれない人でも前半のコアな部分は共有できます。
さらに、「フェードアウトしやすい」という特徴もあると思っています。デジタルツールで会議に参加していれば、実際はもう自分の役割が終わっているとわかっていれば、カメラもマイクもオフにしておき、傍観者になればよいのです。もちろん、しばらく参加していなくても、必要であればまた参加することもすぐできます。
これからはデジタルならではの付き合い方というものも生まれてくると思います。こういう途中参加や離脱が許容される、ゆるい構造が持続性のかぎになってくるかもしれません。メンバーや境界を固定するのではなく、うまくゆるい構造に設計していくことが、これから大事なコミュニティの作り方になってくるかもしれません。
続けられる仕組みを作っていくこと
ゆるいコミュニティを作っていくために、デジタルツールが重要であることがよくわかりました。デジタルツールからまちづくりが発展していくというのも面白い視点だと思いますが、これからはそういう世代の子どもたちも増えてくるので、ますますいろいろなやり方が出てきそうですね。
また地域おこし協力隊の話になってしまいますが、特に北海道の場合には、どの街でもカフェをやってみたり、オーガニック栽培などに取り組んだりということがよくあります。ただ地元の住民からすると、「普通に馴染んでくれればいいのに」などと思われることもよくあります。
そんな中、お店で電子マネーが使えずに現金オンリーですなどということがありますが、理由を聞くと「地域でまだ電子マネーが進んでいないから」とか、「手数料を取られるから」などという答えもよくあります。
私は最近、海外でのフィールドワークもしていますが、オーストラリアのメルボルンで、たまたまサンデーマーケットに出かけて買い物などをしていると、近所の人がちょっとしたものを売りに来ているようなお店でも、すべて現金ではなくカード決済が可能になっていました。Wi-Fiなどでネットにつながった電子決済用の専用端末を使って、カード払いが基本になっています。田舎町であろうと農場であろうと、そんなやり方で買い物が楽しめる状況になっているのです。
その地域の若年層たちの目線で考えると、デジタルネイティブな世代にとっては電子マネーでピッと支払ってみたいし、そういうことだけでモチベーションがアップすることもあるでしょう。地域おこし協力隊であれば、地域に新しい価値観や動きをもたらすことも大切だと思います。
「可変的なまちづくり」ともいえると思いますが、ゆるい構造を持ちながらデジタルツールを活用していくことが大切になってくると思います。
行政の考え方も変えていく必要があると思いますが、デジタルツールの運用では防犯カメラやセンシングなども含めて、きちんと情報公開しながら運用していくことも重要です。人口減少が続いているなかで、デジタルツールを使って住民の要求に応えていくためにも、柔軟かつ慎重な行動をしていくことが求められていると思います。そうしたことの積み重ねにより、まちづくりに活かせるノウハウも増えていくと思います。民間からの動きを待つのではなく、行政主導で働きかけていくことも必要になってくると思います。
まだまだお話しは尽きませんが、いったんこの辺で終了しましょう。本日はお疲れさまでした。
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