【中窪 悟 編】第2回:オンプレミスからクラウドへの変革はなぜ必要だったのか?
元自治体キーマンが描く、ICT活用の過去・現在・未来シリーズ
2026-01-15
日本のICT活用の進化を決定づけるのは地方自治体だ。国家レベルの施策を実際に運用し、国民へのサービスとして昇華させるのは各自治体の役目でもある。そんな自治体において、ICT活用の進化が著しいケースがいくつかある。そしてその共通項として必ず浮上するのが、特筆すべき人材、いわゆる「キーマン」の存在だ。ここでは各自治体においてキーマンとして活躍し、大事業を達成させてきた人物にそれぞれが思い描くICT活用について語ってもらっている。彼らの考えや軌跡をみることによって、同じ自治体はもちろん、企業、組織にも大きなヒントが得られるはずなので、ぜひ熟読していただきたい。
取材:中山 一弘
中窪商店(ITコンサル) 店主
一般社団法人コード・フォー・ジャパン Govtech チーム
総務省 地域情報化アドバイザー
総務省 地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業アドバイザー
- 自治体職員として30年間勤務。うち15年をいわゆる情シス担当として自治体の情報通信インフラからネットワーク及びシステム全般の構築・運用に従事する。
Googleのソリューションを全面的に導入し、自治体で初めてフルクラウドによるゼロトラストな環境を構築。2025年4月より現職。
過去の自治体にありがちだった課題
第1回では中窪さんが鹿児島県の肝付町役場で、情報システム担当として情報インフラなどに関する業務でさまざまなご苦労をされてきたことを伺いました。それを受けて今回は、最初はオンプレミスだったものがクラウドへと環境が変わっていくきっかけや、それぞれで感じた課題などについてお話しいただきたいと思います。
私が情報システム担当になった頃、企業系などで使われるのはちょうど「Windows 2000 Server」がメインの時代だったかと思います。当時はディレクトリサービスを使ったシステム構築のサービスなどは、地方では一般的にはなっていませんでした。
クライアントPCに関しても、Windows 95 や Windows 98 などが中心で使われているような環境だったので、OSとしてもまだ熟成されていないという感じだったと思います。そうした状況でしたが、インターネットやパソコンなどが自治体の業務現場にもどんどん導入されてきて、いまにつながる流れができてきた頃かとは思います。ただ、全員が理解しているというわけではなく、コンピューターが好きな人だけが分かっている、といった感じも自治体のなかにはありました。
いまも当時と変わらないかもしれないと思うのは、そういった新しい技術やデバイスが登場したときの、それぞれの人の年齢というのも大事なのかもしれないということです。私は当時まだ若手でコンピューターなどにも興味がありましたので、積極的に取り組むことができました。
ところが最近のAIなどの急激な発展などをみていると、ついていけなくなっていきている部分もあるように感じています。このあたりは、自分が年齢を重ねていることと関係あるのかもしれません。これは同時に、体力的な面もあるとは思っています。
特に役場で使うようなシステム構築をしていく場合には、あまりPCなどが得意ではない人も当時は多くいました。そういう方々のために、どうやればユーザーのリテラシーが向上していくのか、ということも真剣に考えていました。
「機が熟す」タイミングを見誤らないように
自治体で情報インフラを構築していくなかで、どうしても使う側にITなどが得意ではないという方がいるのは仕方ないことかと思います。そういった人たちも含めて、多くの人にシステムに慣れて使っていってもらうための、リテラシーを深めるにはどのようにしていったのでしょうか。
一般職員のみなさんにリテラシーをいきなり身につけてもらうのは難しいので、そこはシステムなどが普及していく過程で一緒に育っていくものだと思っています。
例えばいまでは誰もが使っているスマートフォンにしても、登場した頃にそれを使いこなす人は少なかったと思います。しかし、いまでは誰でも使えるサービスが登場したり、どういうことができるのか知っている人が増えたりしたことで、自然と全体的なリテラシーが向上している状況だと思います。つまり「時期を見る」ということも非常に重要だったのではないかということです。
そういう意味では、そもそも機が熟しているのかどうか、サービスが熟成されてきているのか、などもシステムを提供する側として気にかけていました。
最初に情報システムを構築してから、基本的にはオンプレミスの環境でやってきたわけですが、全体的なリテラシーもついてくるようになって、パソコンなどを業務で使うことはごく当たり前の環境になりました。
しばらくこの状況が続く中で、コロナ禍はやはり大きなターニングポイントになったと思います。これによって強制的にリモートワークを誰もがやらなければいけなくなったり、そのための機材を揃えたりする必要に迫られたりすることになったからです。
また、ちょうどGIGAスクール構想の第1期も始まるタイミングに重なっていたこともあって、役場だけではなく学校でもその環境がすぐにでも必要になったということもあります。
もちろんコロナ禍の前から、クラウドの利用は進めていました。例えばマイクロソフトの OneDrive や Azure などのサービスは少しずつ広がってきていて、我々も利用したりはしていました。しかし、一般ユーザーレベルではどうかといえば、それほど馴染んでいるとはいえない状況だったと思います。
さらにオンプレミスの環境なので、機器更新のタイミングというものもあります。役場などの場合、機器更新についても計画的に進めていく必要があるので、すぐにすべてを更新することは容易ではありません。限られた予算のなかでやっていくので、それらも関係してガラッと環境を変えるわけにはいかないというところもあります。
あるいはセキュリティポリシーのガイドライン更新のタイミングも関係してくるので、なかなかクラウド利用へ切り換えるには至っていなかったのです。
これまでのオンプレミス環境の限界というのは、かなり早い段階から感じていらっしゃったのでしょうか。
もちろんそれは前から認識していました。端末の共有であるとか、ネットワークを境界防御にしてしまうことによって、利便性が落ちてくるという特性は早期から理解していて、これからの時代にはこれでは合わなくなってくるのだろうな、という予測もしていました。
例えばスマートフォンの普及によって、AndroidスマホであればGoogleアカウントに各人の設定やデータなどが紐付いていることになります。これによって、スマホを買い替えた場合でも、簡単な手順で前と同じような環境にすることができます。一般ユーザーがこういうことをやっているうちに、クラウド利用の便利さを身をもって体験していくことになり、リテラシーも深まっている状況になってきていました。
オンプレミスの環境からクラウドの利用へという流れは、こうした世の中全体のリテラシーの深まりもあって機が熟してきていたところだったのだと思います。こうした状況は、コロナ禍発生の前くらいの時期にあたると思います。
私たちは自分たちでネットワーク構築などから一歩ずつ行ってきましたので、その進歩に合わせた環境の変化というものを肌で感じるような状況でした。最初のシンプルだったものから、仮想化基盤などの環境まで作ってきた経験と、仮想的なクラウドの技術の経験も重ねてきました。これらの技術を自治体の機能性や機動性、さらにセキュリティ性を上げるためにどう活かしていくかということを考えました。
ユーザーを取り残さないシステム
運用側と違って、利用してもらう一般ユーザーの側にはあまり得意ではない人も多くいるはずです。我々としては、そういったユーザーも取り残さないで使ってもらえるようにしていく必要がありました。
そんな中、Google から登場した Chromebook は簡単にいえば大きなスマホのようなもので、Windows で問題になっていたような難しさがかなり解消されているところがありました。システム担当の我々としても、これならみんなに手軽に使ってもらえるのではないか、という期待がありました。
実際に一般ユーザーに渡す際にも、「何か間違っても壊れたりしないから大丈夫」というような伝え方ができたので、楽になった部分はあります。基本的に Chromebook の場合にはデータはクラウド上にあるので、何か操作によっておかしくなったとしても、すぐに復活できるという安心感もあります。
またOSのアップデートにしても自動的に行われるので、管理者の負担が減るというメリットもあります。ハードウェアの管理や更新も簡単になってくるので、ネットワークのメンテナンスも含めてさらにメリットが大きかったと思います。
生成AIの登場による変化の加速
Windows から ChromeOS へ、そういった時代を創っていった中窪さんですが、直近だとやはり生成AIが最もホットな話題だと思います。各所で導入が進んでいる状況ですが、どのように捉えていますか?
もちろん、年を追うごとにAI自体もどんどん進化していて、それをうまく使っていこうというユーザーも増えています。これは不可逆的なものであって、一度使ってしまえば元に戻ることはできなくなると思います。AI活用の幅がさらに広がっていくことは間違いありません。
ただ、ここには心理的なハードルもあって、「生成AIをどんどん使っていいですよ」と管理者が責任を持っていえる環境かというと、自治体などではまだ追いついていない面もあると思います。
そこでキーワードとして登場するのが、ゼロトラストやIDベースの認証の仕方、さらにアクセスコントロールなどということになるでしょう。あくまでも安全に生成AIを使える環境を実現するために、管理者が整備していく必要があると思います。このあたりがきちんとしていないと、職員の側でも安心して使うことができません。
そのあたりは国としても現在仕組みづくりを進めているところで、三層分離をやめてゼロトラスト環境にしていこうというような流れになっています。その目標時期が2030年になっているので、この5年間でまた大きな変化が現れるのだと予測しています。
その変化は非常に楽しみですね。本日はこの辺までにしておきましょう。ありがとうございました。
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