【実証実験・京都市左京区】山間部と市街地を持つ自治体の災害時情報共有の改善に株式会社 日本HPとさつき株式会社が貢献
HP Poly実証実験(PoC)レポート
2026-02-09
京都市左京区は山間部が迫る京都市の北東部に位置する自治体だ。南北約35km、東西約12kmと広大な面積を持ち、南部は市街地、中部は農村部、北部は農山村という日本によくみられる景色のほとんどが揃っている豊かな環境が魅力となっている。下鴨神社、銀閣寺、南禅寺、平安神宮などの歴史的建造物も多く、大文字送り火に代表される伝統行事を受け継いでいるのもこの地域の特徴だ。
取材:中山 一弘
京都市左京区
目的と手段
- 災害時における市街地と山間部との情報伝達格差を無くし、迅速な情報共有を実現する
- OS搭載型電子黒板およびWebコミュニケーション用ビデオバー、大容量タンクプリンターによる統合ソリューションの利用検証
導入効果と運用
- 複数拠点間で大画面ディスプレイを用いたリアルタイムコミュニケーションを実現、迅速な情報共有が可能に
- 大画面ディスプレイと高品質カメラ、マイクにより、平常時の会議の品質向上と、遠隔地を結んだイベント開催など、多様な使い方の実現に成功
- 利用者が使いこなすうちに、新たなアイデアも生まれ、災害時だけでなく平常時から様々な部署で活用する横展開にも可能性を見出す
山間部との情報伝達をスムーズに
京都市左京区役所 地域力推進室 地域防災係長 中出 浩司氏
京都市左京区役所 花脊出張所長 河野 充男氏
京都市左京区は広大であり、北部の山間部から南部の市街地まで、さまざまな環境に住民が暮らしている自治体だ。この地域において行政サービスを提供するために、左京区では市街地にある区役所に加えて各出張所での業務も重要性が高まっている。
「左京区は広大な区域において、各出張所が地域住民の暮らしを支える身近な行政サービスを提供するだけでなく、災害対応の役目も持っています。特に北部山間地域においては市街地から距離もあるため、その役割はとても大きいのです」と説明するのは、左京区で地域防災係長を務める中出氏。
「その北部山間地域においては花脊出張所、大原出張所、久多出張所といった拠点がその役割を担います。各種証明書などの発行はもちろんですが、災害時の情報提供をおこなう拠点としての機能は特に重要です」と語るのは、花脊出張所を統括する出張所長の河野氏だ。
たとえば左京区内で何かしらの災害があった際には防災無線や電話・FAX回線を用いて区役所と各出張所が連携をとることになるが、ケースによってはリアルタイム性に課題があったのだという。「現場で知りたい情報に対して、送られてくる情報が一義的なものなので、どうしても全体の状況が見えづらいということがありました」と河野氏は当時を振り返る。
そんな課題を抱えている中、ある自治体関連イベントを視察中に株式会社 日本HP (以降、HP)ブースでひとつのソリューションを見かけたのだという。「そこでは電子黒板とマイク・スピーカー・Webカメラが一体となった製品を展示していました。それを見て災害対策に活用できないか相談したところ、まさに最適なソリューションだということがわかりました」と語る河野氏。
このイベントでの出会いがきっかけとなり、HPおよび同社とともに電子黒板などのソリューションを提供しているさつき株式会社(以降、さつき)は左京区の課題解決へ向けて協力して臨むことになった。
地勢的な課題に対し協力体制を構築
左京区、HP、さつきはお互いに協議を重ねた結果、2025年3月25日に「左京区北部山間地域における災害時等のデジタル化推進に関する協定」を締結するに至った。これは、左京区がHP、さつきから提供されるデジタル機器を災害時および平常時の業務の中で使うという実証実験に協力することを前提に交わされた協定となる。
この協定に関して提供されたのはさつきの電子黒板「MIRAI TOUCH Biz」、HP Polyのオープンスペース用USB接続ビデオバー「Poly Studio USB」、HPの大容量インクタンクプリンター「HP Smart Tank 7305」で構成する大画面Webコミュニケーションソリューションと、専用スタンド、ポータブル電源からつくられている。
「MIRAI TOUCH Bizは最大75型の大画面でChromeOSを扱うことができる電子黒板です。Googleが提供する様々なWebサービスや各種Webコミュニケーションツールをインストールすることが可能で、平常時や災害時の情報共有をスムーズにおこなうことができます。また、ディスプレイ下部には下向きのカメラが搭載でき、現地の地図などを写して大画面ディスプレイに投影する機能を提供します」と解説するさつきの柳氏。
「MIRAI TOUCH Bizの上部に設置されているのがPoly Studio USBです。USB接続するだけで、高性能なマイク、スピーカー、Webカメラが提供できるので、高品質なWebコミュニケーションを実現します。高精度のノイズキャンセリングは周囲の雑音や生活音が激しい環境でも明瞭に音声を届けてくれますし、Webカメラは話者をトレースしたり、会議室全体を写したりといった画面制御をAIが自動的におこないます。また、HP Smart Tank プリンターはインクタンク式なので大量印刷に向いており、拠点に届いた情報をすぐさま印刷して配布するといったケースに最適です」とHP是枝氏は説明する。
左京区ではこのソリューションを、左京区役所、花脊出張所、久多出張所の3拠点に設置、日常での利用を通じ、災害対策を想定した訓練などを対象に実証実験を続けている。
「日常業務の中で各出張所との会議は多いのですが、こちらのソリューションが使えるようになってからはWebコミュニケーションツールでつないで参加してもらっています。これまでは区役所まで来てもらうケースも多かったのですが、その時間が大幅に削減できています」と中出氏。
「区役所側からは大人数で参加されますが、こちらは数名といったことも多いです。しかし、Polyのビデオバーのおかげかと思いますが、ひとり一人の顔が見やすく、だれが会話しているのかよくわかります。逆に、区役所の方では大画面に私どもが大きく映っているので存在感があるという話もいただいています」と河野氏は笑顔で語る。
株式会社 日本HP エンタープライズ統括 第二営業統括 第三営業本部 ハイブリッドワークソリューション営業部 是枝 日登志氏
さつき株式会社 ITソリューション事業部 事業推進部 マネージャー 柳 颯人氏
このソリューションはなるべく多くの職員に使ってもらうようにしています。その中でいろいろな使い方のアイデアが生まれ、いまでは区役所の中でも注目のソリューションとなっています。
地域防災係長 中出 浩司氏
左京区では導入された2025年は大きな災害は記録されていない。しかし、災害訓練ではソリューションの使用も前提に進めているのだという。「拠点間の情報共有はもちろんですが、災害現場へ出向いた職員がスマートフォンで状況を撮影し、それをリアルタイムで転送するといったテストもやってみました。MIRAI TOUCH Bizの画面上に電子マップを表示し、詳細な場所を特定、印刷するといったこともできることがわかっています」と中出氏は説明する。特に詳細な場所が特定できることで、状況把握が迅速におこなえ、対策を打つ準備が格段に早くなることが期待できるのだという。
「それに加えて出張所では大画面であることを活かして画面を4分割して、天気図と河川に設置された固定カメラの映像、各種警報、災害現場の様子、区役所本部との会議など、リアルタイム性が重要な多様な情報を流すということもやっています」と河野氏も言葉を続ける。
横展開も視野に好結果を残す実証実験
協定締結後の実証実験が順調に進む中、ソリューションも各職員が使いこなし始めているのだという。「たとえば、出張所に集まった方々を対象に料理教室を開催したことがあります。最高齢で75歳ぐらいの年配の方も参加する中、区役所の管理栄養士の方が先生として画面を通じて指導する様子を見ながら、自分たちも調理を楽しむといった内容です。最後には料理教室の要点をまとめて、それをプリントアウトしてご家庭まで持ち帰ってもらうこともできます。高精細な大画面ディスプレイとAI制御によるカメラワークもあってリアリティのあるコミュニケーションが得られることでとても好評でした。第二弾の開催も決定しています」とうれしそうに開催時の様子を語る河野氏。
また、料理教室の反応をうけ、体操教室やパソコン教室の開催もアイデアとして出てきているのだという。「地域の方々は年齢に限らずデジタルテクノロジーを使いこなしたいと考えているようです。実際に、山間部に住むみなさまも動画投稿サイトなどはよく見ていますし、都会に住む子供や孫たちとリアルタイムでつながれたらと思っておられるのだと考えます。これを実現するためにあるのがICTですから、私たちもできるだけお手伝いしたいですね」と河野氏。
「このソリューションは災害時の活用も前提としているので普段からシステムに慣れてもらうために、なるべく多くの職員に使ってもらうようにしています。すると様々な部署からいろいろな使い方のアイデアが生まれ、いまでは区役所の中でも注目のソリューションとなっています。」と語る中出氏。
「リアルタイムに遠隔地とコミュニケーションが取れることで解決できる課題も多いと思います。私が管轄する山間部でも数々の問題はありますが、このようなデジタルデバイスを活用することで、解決のための選択肢を増やすことはできると思うので、今後もこのようなテクノロジーを使いながらDXを広げていきたいと思っています」と、最後に河野氏は語ってくれた。HPとさつきは今後も左京区のサポートを続けていく。
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