地域のICT教育をけん引するリーディングDXスクールを舞台に実証実験を開始
2025-03-12

豊かな自然と古い町並みを活かした都市づくりなど、魅力にあふれた環境が揃っている島根県。神話の国とも呼ばれ、悠久の時を感じさせてくれる土地でもあり、多くの日本人が思いを寄せている地域でもある。一方で、現代のICT教育においては進捗が良くないという一面もあり、早期の解決が望まれている現状もある。そんな中、島根県のICT教育をけん引するリーディングDXスクールに認定されたのが松江市立義務教育学校玉湯学園だ。同校を舞台に、株式会社 日本HP、さつき株式会社は協働で実証実験のためのデバイスを貸与、最先端のICTデバイスが同校のICT教育の中でどのように活かされていくのかテストをおこなっている。今回は中間報告という形で取材に応じていただいたので、その内容をお伝えしようと思う。

左から、株式会社 日本HP ハイブリッドワークソリューション・ベリフェラル事業本部 パートナー営業本部 角田 昌彦氏、松江市教育委員会 学校教育課ICT教育推進係 教育指導講師 若槻 徹氏、松江市立義務教育学校玉湯学園 3年担任 石飛 彰太氏、同校 2年担任 板垣 恵美氏、同校 教務主任 瀬崎 邦博氏、株式会社 日本HP パートナー営業統括 プリント営業本部 プリント営業部 部長 若園 仁宏氏
島根県のICT教育をけん引する玉湯学園
松江市立義務教育学校玉湯学園(以降、玉湯学園)は、松江市の南西に位置する玉湯町にある義務教育学校だ。令和3年に玉湯中学校、玉湯小学校、大谷小学校が統合され、新設校として開校。小学生と中学生が同じ校舎で学び、9年間の修業年限と教育課程の中で育ってゆく。
冒頭でも述べたとおり、玉湯学園はリーディングDXスクール事業の指定校となっている。GIGA端末を備え、汎用的なソフトウェアとクラウド環境を活用し、効果的なICT教育の実践や創出、モデル化を実現している学校として、地域のICT教育をけん引する役目を担っている。「GIGA端末はもちろん、今回実証実験で使わせていただいている電子黒板、ビデオバー、プリンターなどの機器類を教育の中で活用し、義務教育学校として取り組んでいます」と語るのは玉湯学園 教務主任の瀬崎氏だ。

「リーディングDXスクールということで、地域の他校の先生方に向けて公開授業を都度実施されています。ICT教育の先導者として、様々なチャレンジを続けている学校だと思います」と言葉を続けるのは松江市教育委員会 学校教育課ICT教育推進係 教育指導講師の若槻氏だ。

取材日も若槻氏のいう公開授業と同日におこなわれ、取材陣もその一部を拝見することができた。玉湯学園が採用している義務教育学校という制度の良さを感じたのは「お掃除ロボットを動かそう!」という瀬崎氏が主導する授業で、8年生と3年生が合同でおこなうスタイルを採用したものだった。掃除ロボットにプログラムを与えることで、目的の行動をさせるという内容だが、3年生にプログラムのやり方を教えるのは8年生の役目だ。つまり、3年生がプログラマー、8年生はメンターという役割分担を与えられた中、限られた時間でミッションをこなしていくのだ。
3年生は意欲的に質問し、8年生はそれにやさしく答えていく。時間が経つごとにチームワークが生まれ、最終的にはプロジェクトチームとしてミッションをクリアする姿は非常に頼もしかった。

このような公開授業は決められた時間に30以上用意されており、来場者はそれぞれ興味のあるカリキュラムを見に行くというスタイルだ。その公開授業の中、実証実験のデバイスが配置されていたのが、板垣氏が担当する2年2組と、石飛氏が担当する3年2組だった。
ミライタッチ×Polyビデオバー×HPプリンターを提供
教室に備えられているのは、さつき株式会社(以降、さつき)が提供する、Chrome OSを内蔵し、タッチパネルで操作できる最新の電子黒板ソリューション「ミライタッチChromeOS Flex 搭載モデル(以降、ミライタッチ)」と、電子黒板にセットできる大容量インクタンク搭載プリンター「HP Smart Tank 7305」、学校でのリモート授業の品質を大きく向上させるUSBビデオバーの「HP Poly Studio USB ビデオバー(以降、Poly Studio)」の組み合わせだ。



「例えば、今回のミライタッチ以外の電子黒板を導入し始めた当時は、若槻氏をはじめとする市教育委員会のみなさまに支えられながら環境を改善していきました。新設校ということもあって、最新の設備を導入しやすかったということもあり、クラウド活用も進んでいきました。当初はWindowsとMicrosoft 365をベースにしていましたが、教育の分野ではGoogleを採用するところが増えていることもあり、調査してみたところ、確かにGoogleベースでも十分な効果が出ることが分かり、シフトしていったという経緯もあります。そういった変遷を経ている中で、リーディングDXスクールにも指定していただいたこともあり、さらにICT教育への拍車がかかり、さつき様やHP様にも最新機器をお貸出しいただけるようになったのだと考えています」と瀬崎氏は語る。
「2年生はシンプルなプラットフォームを使いますが、2学期からChromebook上のGoogleを使ってみることにしました。以前はメニューがシンプルだった分、戸惑うことも多かったのですが、今ではすっかり使いこなしています」と板垣氏。

「ICT活用をするには、やはりスムーズに使えることが大切だと思います。以前のプラットフォームはややGIGA端末への負担が大きい傾向がありましたが、ChromeベースでGoogleのプラットフォームを使う方が快適に使えます。いつでもストレスなく使えるのは非常によいところだと思います」と石飛氏は語る。

日常的にChrome OSを利用していることもあり、授業ではミライタッチをよく使うという板垣氏と石飛氏。「どの教科においてもミライタッチがあるおかげで授業がスムーズに進むようになりました。極端な話、手元に端末がなくても、ミライタッチだけで授業ができるほどです」と板垣氏。公開授業では事前にFigJam上に教材を準備しておき、黒板には授業の流れを書き出し、課題はGIGA端末上で解決するという手法を取り入れていた。主な説明はミライタッチ上でおこなうなど、新旧教育素材の上手な使い分けが印象的だった。

「私も授業では自分のIDとパスワードを使ってミライタッチにログインして、資料などを見せながら授業を進めています。板垣先生と同様に非常にスムーズになったと思います」と石飛氏も声を揃える。また、プリンターに関して当日の公開授業で積極的に活用していたのは石飛氏だ。「授業の流れを印刷して黒板に掲載しました。分かりやすいのですが、A4サイズの用紙だと後席の生徒は見えにくいかもしれません」と課題を語る石飛氏。3年2組では「玉湯のすてきなところを見つけよう!」という内容のプレゼン資料を作るという題材を授業としていたので、最終成果物をイメージさせやすい紙資料は非常に効果的となる。

「A4用紙でも、2枚あるいは4枚でひとつの印刷物にする方法はあると思うので、実証実験中にそのやり方を見つけたいですし、HP様とさつき様にはぜひご案内いただけるとうれしいです」と石飛氏は積極的に取り組む姿勢を見せる。「「電子黒板」と「プリンター」の互換確認が必要となりますが、実現に向けて取り組んで参ります」とHPの若園氏も協力体制で臨んでいく。こうした課題に対するキャッチボールができるのはまさに実証実験の良さだといえるだろう。
新たな視点に立ったビデオソリューションの活用も
学校でいえば遠隔授業などに用いられることが多いビデオバー。Polyの製品もWebコミュニケーションをサポートする、豊富な機能でこれを後押ししている。機器を設置している教室が低学年ということもあり、遠隔授業の機会はそれほど多くはないということだが、2年2組ではひとつユニークな使い方を実践していた。「国語の授業の最初に文章の朗読を順番に披露するというのをやっているのですが、発表する様子をビデオに撮影しています。いままではタブレットPCのカメラを教室の後ろに立てかけて録画していたので、音声もよく拾えないし、プレビューが確認しづらかったので画角の調整にも時間がかかっていました。しかし、ビデオバーが来てからこれを教室の後ろに設置してUSBケーブルで接続すると非常にきれいに録画でき、音声もとても明瞭に録音できるようになりました」と語る板垣氏。

ビデオバーのICT活用のひとつとして遠隔授業だけでなく、ビデオカメラとしても利用していたのだ。直近で発表した生徒の朗読風景を確認させてもらったが、言葉の抑揚はもちろん、細かい表情まできれいに読み取れる品質で録画されていた。これなら授業としての振り返りはもちろん、メモリアルとしても活用できる品質だ。

「撮ったものをすぐにみんなで確認し、フィードバックすることで子どもたちも積極的な話し合いもできています。遠隔授業とは別の意味で普段使いができるのでとても便利です」と板垣氏。「NoiseBlockAIという機能で、騒がしい状態でもノイズが入っていませんし、カメラも発言者に自動でフォーカスされているので、Poly Studioの機能も十分に活かされています。ほかにも使っていただきたい機能はたくさんあるので、わからないことがあればいつでもご質問してください」とHP 角田氏もアドバイスを送る。
また、Webコミュニケーションという部分においては、子ども達だけでなく教員にとっても必須のテクノロジーとなる。「すべての人が使えるように、ミライタッチとPolyビデオバーを会議室にも設置してあります。島根県は東西に非常に長くて、教員間のコミュニケーションをとるにも非常に苦労していましたが、Web会議が浸透してからはだいぶん改善されました。そこにこのテクノロジーを使うと、多人数のWeb会議が非常にスムーズになります。同じ島根県で教鞭をとる仲間たちとの意見交換にも最適なツールだと感じました」と瀬崎氏は語る。
子ども達と共にデジタルデバイスを使いこなしてゆく
「当初、実証実験には高学年が良いと思っていましたが、中学校の授業になると、科目ごとに担当の先生がいますし、教室の移動も多くなります。低学年ならひとつの教室と担任の先生が決まっているので、その分実証実験には向いていると思いました。こうやって改めて話を聞いていると手足のようにICTデバイスを使いこなし始めているので、よい決断だったと思います」と瀬崎氏は振り返る。
「こうして実証実験で最先端のデバイスに子ども達が触れ合っているのを見ていると、教室の中に様々なものがあるということが彼らにとっては、それだけですごく魅力的なのでしょう。まだテスト期間が短いので驚きばかりでしょうが、そのうち自分たちの成果物を印刷させてほしい、あるいはカメラを使って録画したいなど、子ども達のほうからデジタルデバイスを積極的に使うようになるはずです。最先端のICT機器の使い方に関しては先生たちだけでなく、子どものアイデアにも耳を傾けてあげたいですね」と若槻氏は最後に語ってくれた。
玉湯学園を舞台としたミライタッチ×Polyビデオバー×HPプリンターの実証実験はまだ始まったばかりだ。数々の機能をそれぞれの立場で理解し、使いこなしていけばいままでにない授業や学業の進度にも良い影響が生まれるはずだ。HPとさつきはこれからも玉湯学園のサポートを続けてゆく。

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