【導入事例・島根県教育委員会】DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)によるICT活用の強化をビデオバー「Poly Studio X52」で実現

島根県教育委員会

2025-10-23

島根県教育委員会
島根県教育委員会

中山間地域・離島の高校では、生徒が少ないため配置される教員数が限られ、生徒の学習ニーズに合った多様な科目が開講されなかったり、生徒の進度に合わせた習熟度別の授業ができなかったりするなどの課題がある。そのような課題を解決するため、島根県教育委員会では専門教員による遠隔授業の取組を今年度からスタートさせており、 県内の高校のいくつかにデバイスを設置。授業の配信を始めている。このリモート授業を実現しているのがPolyのビデオバーシリーズだ。この施策の中でどのように製品が活かされているのか、話を伺ってきたので紹介しよう。

取材:中山 一弘

目的

  • 中山間地域・離島の高校では、生徒が少ないため配置される教員数が限られ、生徒の学習ニーズに合った多様な科目が開講されなかったり、生徒の進度に合わせた習熟度別の授業ができなかったりするなどの課題への対応

アプローチ

  • 配信システムを一体化することで、運用を簡易にできるビデオバーソリューション「Poly Studio X52」の導入

システムの効果

  • Zoom Roomsのアプリケーションがプリインストール済みで製品単体による配信が可能
  • カメラの自動フレーミング機能(Poly DirectorAI )やノイズキャンセル機能(Poly NoiseBlockAI)など、テクノロジーによる品質向上を実現
  • 高解像度映像とクリアな音声で授業への没入感を高め深い学びを提供

ビジネスの効果

  • 配信機材や配信用パソコンが不要となり、資産管理と運用管理をシンプル化
  • リモート授業の採用により、受信校の担当教員の負担を軽減
  • 児童生徒の学びにより多くの選択肢を与え、教育のICT活用を支援
対談風景
対談風景

「ICTを効果的に活用した授業づくりの推進」を学力育成プランの目標に掲げている島根県。ICTを単なるツールとしてではなく、子どもたちの学びを進化させるための教育手法として位置づけ、教員がその力を最大限に引き出すよう授業を構築することを目指している。

「生徒が与えられたデジタル端末を日常的に活用し、様々なアプリやコミュニケーションツールなどを駆使しながら、学習する力を高めることを目指しています。その実現のためにはICTを効果的に使った授業づくりを推進する必要があると考えています。また、島根県には中山間地域・離島の高校が多く、生徒が少ないため配置される教員数が限られ、生徒の学習ニーズに合った多様な科目が開講されなかったり、生徒の進度に合わせた習熟度別の授業ができなかったりするなどの課題がありました。こうした中で、Web会議システムを使ったリモート授業の配信テストを実施してみることにしたのです」と語るのは島根県教育委員会 教育連携推進課 教育DX推進室 指導主事 堤 裕亮氏(以降、堤氏)だ。

令和5年から施行されている「COREハイスクール・ネットワーク構想」に島根県が参加したことを契機に、同教育委員会はリモート授業の取り組みを強化することを決定。さらに「DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)」の取り組みを始める学校が増えてきたことから、各校へ向けて以前から準備していた配信機材を使った授業の配信というスタイルの試行を始めたのだという。

「授業を配信しようとする度に、カメラやモニター、マイク、スピーカーなどをスイッチャーやオーディオインターフェイスに繋げる作業や接続確認などが必要となり、これが関係者にとっては大きな負担になることが分かりました」と語る堤氏。同時に配信中もカメラの向きやズーム、マイク調整といった微調整に教員が気を取られ、授業や生徒へのインタラクションに集中できないという状況もあったのだという。

「また、汎用的な機器の組み合わせということもあり、画質や音質が安定せずに途切れたり、乱れたりすることもありました。特に板書が不鮮明になるケースや先生の声が途切れるようなケースでは、授業を受けている生徒の集中力が切れてしまうことも多かったです。学習に直接影響するため、改善が求められました」と当時の課題について振り返る堤氏。専門的な知識を持たない教員にとって、これらの問題を自力で解決することは難しく、抜本的なシステムの見直しが必要となったのだ。

そのような課題がある中、堤氏は教育関連のイベントに訪れた際、HPブースで見たPolyブランドのビデオバーを思い出したのだという。「リモート授業の配信を始めて以来、様々な課題が浮き彫りとなりました。課題解決を考えたときに思い出したのが、マイク、カメラ、スピーカーそしてZoomのアプリケーションまでもが一体になったPolyのビデオバーだったのです」(堤氏)。

そこで堤氏はすぐにHPへ連絡を入れて相談し担当者から「Poly Studio X52」の提案を受けた。「Poly Studio X52は、オールインワンのビデオ会議ソリューションで、4Kカメラ、ステレオスピーカー、Polyのノイズフィルタリングテクノロジー機能を搭載した専用マイク、そしてコントローラーとしてタッチパネルで操作できるPoly TC10がセットになった製品です。ZoomやMicrosoft Teamsがインストールされているので、PCが不要となり、本体のみでリモート授業の配信ができます。操作は直感的にできるので、ICTデバイスへの専門知識が無い方でも簡単なレクチャーですぐにコントロール可能です」と説明するのはHPの高木氏だ。

島根県教育委員会は複数の候補からPoly Studio X52と、HP製品と相性の良い電子黒板、さつき株式会社の「ミライタッチChromeOS Flex 搭載モデル」をセットにしたシステムを入札により選定し、テスト運用に参加する各校に配布することを決定した。

「なんといっても本体とタッチパネルのみで運用できる簡便性の高さが導入のポイントになりました。直感的に操作できることにより、現場の教員の心理的なハードルを下げることができると考えました。また、教室全体をクリアに映し出すカメラや、教室後方の生徒の声も拾ってくれる高性能マイクも学習効果を高めてくれるポイントです」と堤氏は評価する。テスト運用をした際にトラブルはなく、安定したパフォーマンスを維持していた点でも評価が高かったのだという。

「現在、情報Ⅱ、数学Ⅲ、生物といった授業を各校のニーズに合わせた時間割で配信しています。今年度の参加高校での実施状況を踏まえ、来年度の運用へ向けて様々な改善をしているところです」と堤氏は語る。

従来の環境にあった課題は完全に払しょくされ、リモート授業の配信は安定した運用環境にあるのだという。「受信されている各校の状況については後ほどご紹介するとして、配信側としても事前の準備や授業内容に合わせたカメラワークなども、先生方が自在にできるようになった点で高い評価をいただいています。以前は板書が見えない、あるいは生徒の表情が見えない、声が聞こえないといった状況だったものが、今ではクリアにコミュニケーションできているのは大きな前進だと思います」と堤氏は導入の手応えを語る。

一方で、Polyのテクノロジーによって得られた環境により、新たな課題も出来ていたのだという同氏。「環境は全く問題ないほど改善されましたが、カメラの向こうにいる生徒の反応を掴み、飽きさせない授業を展開するスキルや、オンラインでのグループワークを効果的にファシリテートするスキルなど、配信する教員のリモート授業に対する指導技術の向上が課題になってくると思います」(堤氏)。

また、そうした課題だけでなく、今後の普及へ向け、デジタル教材やコンテンツの作成・活用に関するノウハウの蓄積も必要になるなど、品質向上へ向けた取り組みも重要になってくると堤氏は分析する。「生徒の要望に応じられる配信を用意し、彼らにより良い選択肢を与えてあげられることが理想だと考えます。また、もうひとつの可能性として、不登校の生徒への対応にも活用していけるはずなので、その研究も始めています。すべてをすぐに取り入れるということではありませんが、各学校とも連携しながら無理なくリモート授業の活用範囲を広げていきたいと考えています」と最後に堤氏は語ってくれた。

まさに「個別最適化」、「誰一人取り残さない」という日本が目指している教育方針に則った取り組みを、デジタルテクノロジーで実現しようとしている姿勢が伝わってくる事例といえる。HPは島根県教育委員会と堤氏、施策に参加している各高校の活動を今後も支え続けていく。

「Poly Studio X52」とさつき株式会社の電子黒板「ミライタッチ」を中心にWebカメラや「Poly Studio E60」によるスポット撮影も可能にする配信システム。専用機器による配信と比較して、圧倒的にシンプルな運用が可能となる
「Poly Studio X52」とさつき株式会社の電子黒板「ミライタッチ」を中心にWebカメラや「Poly Studio E60」によるスポット撮影も可能にする配信システム。専用機器による配信と比較して、圧倒的にシンプルな運用が可能となる
「Poly Studio X52」とさつき株式会社の電子黒板「ミライタッチ」を中心にWebカメラや「Poly Studio E60」によるスポット撮影も可能にする配信システム。専用機器による配信と比較して、圧倒的にシンプルな運用が可能となる
島根大学の名誉教授平川正人氏によるリモート授業の模様。遠隔地にいる生徒一人ひとりと向き合う心の通った学びを与えている
島根大学の名誉教授平川正人氏によるリモート授業の模様。遠隔地にいる生徒一人ひとりと向き合う心の通った学びを与えている
島根大学の名誉教授平川正人氏によるリモート授業の模様。遠隔地にいる生徒一人ひとりと向き合う心の通った学びを与えている
対談風景
対談風景

なんといっても本体とタッチパネルのみで運用できる簡便性の高さが導入のポイントになりました。直感的に操作できることにより、現場の教員の心理的なハードルを下げることができました。

島根県教育委員会 教育連携推進課 教育DX推進室 指導主事 堤 裕亮氏

ここからは、島根県教育委員会によるリモート授業の試験配信を受信している各校の意見を紹介していきたいと思う。

島根県立島根中央高等学校
https://shimanechuo.jp/

取材協力:左から、水上 直美先生、小松原 研先生、和田 千遼先生
取材協力:左から、水上 直美先生、小松原 研先生、和田 千遼先生

リモート授業に興味を持つ生徒は多数いますが、今回は習熟度が高い2名に絞り、彼らのニーズに合わせた授業を選択しました。最初は戸惑いもあったようですが、今ではすっかり慣れて授業に没頭できているようです。彼らは、対面授業のとリモート授業のそれぞれの良さがあると感じているようです。

私たち教員にとっても、一部の授業をリモート授業で担当してもらえることで時間が確保できる場合があります。また、今回のように習熟度別の授業を組みたい場合には有効な手段になり得ると考えています。ただし、生徒の評価する場合に、もう一度配信されている先生とコミュニケーションを取る必要があり、その点は手間となることもあります。

今後もリモート授業に関しては取り入れていく予定ですが、生徒の進路に合わせた授業を行う際の選択肢の一つとして用意していきたいと考えています。今年度のテスト配信をしっかり評価し、今後に活かしていきたいと思います。

取材協力:左から、水上 直美先生、小松原 研先生、和田 千遼先生
※誌面の都合で3名の先生のご意見をひとつにまとめさせていただきました。

島根県立矢上高等学校
島根県立矢上高等学校

島根県立矢上高等学校
https://www.yakami.ed.jp/

佐々葉 祐久先生
佐々葉 祐久先生

私たちの学校では「情報」を選択している生徒20名へ向けて、「情報II」をリモート授業で受けてもらっています。すでに20時間ぐらい授業を受けていますが、不満などの声は出ていません。画面もよく見えますし、配信先の先生とコミュニケーションも取れているようなので、問題なくリモート授業を受け入れているようです。

「情報I・II」はそもそも情報の教員が少ないこともあり、その一部を受け持っていただけるので実際に私たちの負担は大きく減っています。個人的には助かっている反面、リモート授業を広げようと思った際に、校内のコンセンサスを取るのが難しいのではないかという懸念もあります。どの教科をリモートにするのか、その選定をするのには多くの議論が必要になると思います。

例えば、正規の授業だけでなく、他校や大学から先生を招いての特別授業などは受け入れやすいように考えます。私たちの学校はICTが苦手だと当初はおっしゃっていたベテランの先生方も積極的に使っていこうとチャレンジをしておられます。学校DXへの理解も深く、良い雰囲気なのでリモート授業に関してもうまく活用していければよいと思っています。

取材協力:佐々葉 祐久先生

対談風景
対談風景

島根県立隠岐島前高等学校
https://www.dozen.ed.jp/

取材協力:森田 悟史先生
取材協力:森田 悟史先生

離島にある学校ですが、光回線が通っているのでリモート授業を取り入れる環境は整っていました。今回は選択授業として「情報II」を採用しましたが、授業を選ぶ生徒は習熟度別に大きく2種類に分けることができたので、それぞれを対面授業とリモート授業に振り分けることを考えていました。ところが、リモート授業が始まると島根大学の平川名誉教授が教鞭をとってくださっており、想定以上に生徒の学びが深まりました。そのため、結局全員でリモート授業を受けていくことにしました。

リモート授業はとても品質が良く、想像していたよりも音声も映像もクリアでまったく問題ないように感じます。ただし、リモート授業独特の「間」のようなものはありますが、お互いの慣れによって解消するような気がしています。

平川名誉教授の授業は私から見ても面白く、情報IIはリモート授業と親和性が高いという面もあり、生徒の積極的な学びに繋がっています。今後、リモート授業を広げていこうとした場合は、初期に考えていた習熟度別というのもありますが、生徒が感じるリモート授業がやりやすい、やりにくいという形態別で分けるという考え方もあると思います。いずれにしても今のうちにベストな方法を見つけて取り入れていきたいですね。

取材協力:森田 悟史先生

森田 悟史先生
森田 悟史先生

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