GIGA第2期に対応した端末を開発、リモート教育でも学校現場に貢献

日本HPはGIGAスクール構想第2期に対応した新たな端末を開発し、学校現場の課題解決を支援。また、不登校児童生徒が、まるでその場にいるかのような遠隔授業を受けられるソリューションも提供している。教育分野における取組みについて、岡戸伸樹社長に話を聞いた。

※本掲載内容は「月刊先端教育」に掲載した内容を転載したものです。

岡戸 伸樹 OKADO Nobuki 株式会社 日本HP 代表取締役 社長執行役員
岡戸 伸樹 OKADO Nobuki
株式会社 日本HP 代表取締役 社長執行役員

2003年に日本HP(当時、日本ヒューレット・パッカード株式会社)に入社し、エンタープライズ事業を経て、PCやプリンティングを扱う事業部へ異動。その後、Eコマース、個人向けPC、デジタル印刷事業などの戦略分野に従事し、2021年11月より現職。

教育への貢献は、HPにとって重要な使命

――日本HPは教育分野でも製品・ソリューションを提供されています。教育に貢献することの重要性について、どのように考えていますか。

教育への貢献は、HPにとって重要な社会的使命であると考えています。持続可能な社会の実現に向けて、HPは「気候変動対策」「人権」「デジタルエクイティ」を重点領域に掲げています。エクイティとは「公平性」を意味し、従来は機会を与えられなかった人たちが公平に機会を享受できるように促進し、デジタル社会に参加して豊かに暮らせるよう取り組んでいます。

コロナ禍の時期、世界中の多くの子どもたちがオンライン学習を利用できず、深刻な教育格差を引き起こしました。デジタルエクイティは人権を支える重要なテーマであり、私たちは教育分野を含めてデジタルエクイティを支援する取組みに力を注いでいます。

GIGA第2期のために新たな端末をゼロから開発

――日本では現在、文部科学省によりGIGAスクール構想第2期が推進されています。日本HPはGIGA第2期において、どのような取組みを進められますか。

HPはGIGA第1期にも端末を提供し、学校現場に導入されてきました。2023年11月、米HPの社長兼CEOであるエンリケ・ロレスが当時の文部科学大臣にお会いし、GIGA第2期も日本の学校現場にしっかりと貢献していくことをお約束しました。そして全国各地の教育委員会様の声を反映し、GIGA第2期に最適な端末を開発、市場に投入しました。

HPの新たなGIGA端末は、数多くの特徴を備えています。第1期の端末と比べて、さらに堅牢性を強化しました。学校現場では厳しい環境下における運用が必須で、堅牢性は特に重要な要素です。様々な状況を想定した試験を実施し、設計や素材を採用しました。

また、軽量化もこだわっています。コロナ禍以降、児童生徒が自宅に端末を持ち帰り学習する機会も増え、多くの教育委員会様、学校現場、そして保護者の皆様からも軽量化のご要望を頂戴しました。そのご要望に応え、コンバーチブルタイプとしては、業界最軽量の端末の開発に成功しました。

高耐久性バッテリにもこだわりました。第1期で導入されたHPの端末が、今でも現役で稼働しているのが誇りです。HPは第1期から約1000回の充放電を設計寿命とした高耐久性バッテリを搭載、バッテリの劣化(交換)を気にせずに次回の更新まで利用できるのが強みです。

さらに、文部科学省の最低スペックに「ペン」が加わりましたので、ペンを標準で搭載しました。紙のような書き心地を実現したほか、キーボード上部に充電可能な格納トレイを設けることで、紛失リスクを低減し、15秒の充電で最長45分利用できますので、充電切れの心配もありません。

また、今後、ペンを活用していくうえで絶対に欠かせないのが「パームリジェクション(手のひらをついてもペン先だけ感知する)機能」です。画面に書くだけなら指や市販の安価なペンでも書けますが、パームリジェクション機能には対応していません。今後のCBT(コンピューターを利用した試験)やデジタル教材の活用を進めていくうえで、この機能は必須だと考えています。

また、応用パッケージとして、eSIMによるデータ通信5年間無制限利用権付のLTE接続モデルも用意しました。文部科学省の調査によると、学校のネットワーク環境について、推奨帯域をクリアできているのは全国3万2000校のうちのわずか2割程度だそうです※1。少子化による学校の統廃合でWi-Fi増強工事に踏み込めない教育委員会様も多数いる中で、HPでは「LTE使い放題」という選択肢を提供したいと考えました。2025年度から始まるCBTのバックアップ回線としても有効だと思います。

その他にも、離島などWi-Fiのバックボーンが届いていない地域、パンデミックや自然災害時の学ぶ環境の継続性を強く意識しました。すでに沖縄県の伊平屋島で実証実験を開始しています。

沖縄県 伊平屋村立 伊平屋中学校での実証実験風景
沖縄県 伊平屋村立 伊平屋中学校での実証実験風景

加えて、第1期に導入した端末処分にお困りの教育委員会様が多いと聞き、HPのGIGA端末を導入した教育委員会様向けに、現在利用している端末を無料で引き取るリユースプログラムを提供します。HPが無料で回収してデータ消去を行い、再生したうえで最適なリユース先を選定し、再生できない端末については適切にリサイクルします。こうした取組みにより、CO2の削減やデジタルエクイティへの貢献など、これからも持続可能な社会の実現に貢献していきます。

不登校児童生徒を支援、学習者中心の学びを実現へ

――近年、全国で不登校児童生徒の増加が大きな課題となっています。

HPはGIGA端末だけでなく、教室用プリンターや遠隔授業用のビデオバーなど様々な機器も提供しています。HPのビデオ会議ソリューション「Poly」は、学校現場でも利用されています。Polyを活用することで、子どもたちはまるで同じ教室にいるかのように、遠隔で授業を受けることができます。

鹿児島市立玉江小学校では実証実験として、Polyのビデオバーを活用し、不登校児童のリモート授業を行いました。この実証実験の結果、鹿児島市内の小中学校の特別教室で117台のPolyビデオバーが導入されました。

現在、九州北部、四国、関西など西日本中心にPoly導入の検討が広がりつつあります。さらに電子黒板業界最大手のさつき社との協業も推進し、Polyのビデオバーや教室用プリンターを含めたパッケージでの提案を強化しています。HPは幅広い製品やソリューションにより多様な学びの選択肢を提供し、誰一人取り残さない教育を実現していきます。

今後、教育DXの進展により、従来の一斉授業から、子どもたち一人一人の興味関心や習熟度に合わせた「学習者中心の学び」が実現していくでしょう。また、受動的な学びではなく、子どもたちが自ら学ぶ意欲を高めるツールとしてもICTは可能性を秘めています。HPはこれからの時代に向けて、学習者が主体となる学びの環境の構築に尽力していきます。

  1. 学校のネットワークの改善について:文部科学省

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