教育とICTセミナーにHPが参加!パネルディスカッション&ワークステーションセミナーも!その1

2025年8月1日、2日の両日、大阪教育大学 みらい教育共創館にて、大阪教育大学と日経BPが主催する「教育とICTセミナー」が開催された。ICT教育の最新情報を届けるセミナーやブース展示も実施。会場には教育関係者をはじめ幅広い業界から来場者が訪れていた。HPはセミナーへの登壇とブース展示で参加しイベントを盛り上げていた。今回は来場者の満足度が高かったセミナーの模様を2回に分けて紹介する。本稿では、特別パネルディスカッション「教育におけるローカルLLMの現在地と展望」をお届けしたい。

イベント風景
イベント風景
イベント風景
イベント風景
当日、セミナー会場奥に用意されたHPブース。話題のAI PCやHPワークステーションが来場者を出迎えていた
当日、セミナー会場奥に用意されたHPブース。話題のAI PCやHPワークステーションが来場者を出迎えていた
当日、セミナー会場奥に用意されたHPブース。話題のAI PCやHPワークステーションが来場者を出迎えていた

取材:中山 一弘

このセッションでは、青山学院大学・青山学院中等部 講師 スタディサプリ情報Ⅰ講師 安藤 昇氏、株式会社 WEEL 執行役員 生成AI事業部統括部長 田村 洋樹氏、株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 AI/データサイエンス市場開発担当部長 勝谷 裕史氏、モデレーターに大阪教育大学 理数情報教育系 数理・知能情報部門 特任教授 中野 淳氏を迎えてパネルディスカッションを開催した。生成AIのローカル活用に注目が集まる中、どのようなクロストークが飛び出したのか、ダイジェストでお伝えしたいと思う。

右から、大阪教育大学 理数情報教育系 数理・知能情報部門 特任教授 中野 淳氏、株式会社WEEL 執行役員 生成AI事業部統括部長 田村 洋樹氏、株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 AI/データサイエンス市場開発担当部長 勝谷 裕史氏、青山学院大学・青山学院中等部 講師 スタディサプリ情報Ⅰ講師 安藤 昇氏
右から、大阪教育大学 理数情報教育系 数理・知能情報部門 特任教授 中野 淳氏、株式会社WEEL 執行役員 生成AI事業部統括部長 田村 洋樹氏、株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 AI/データサイエンス市場開発担当部長 勝谷 裕史氏、青山学院大学・青山学院中等部 講師 スタディサプリ情報Ⅰ講師 安藤 昇氏
右から、大阪教育大学 理数情報教育系 数理・知能情報部門 特任教授 中野 淳氏、株式会社WEEL 執行役員 生成AI事業部統括部長 田村 洋樹氏、株式会社 日本HP エンタープライズ営業統括 ソリューション営業本部 ワークステーション営業部 AI/データサイエンス市場開発担当部長 勝谷 裕史氏、青山学院大学・青山学院中等部 講師 スタディサプリ情報Ⅰ講師 安藤 昇氏
中野

教育現場における生成AIの活用に関して、自治体や学校では蓄積してきた情報やノウハウ、さらには学びのなかで学習指導要領やさまざまな教科もどんどんAIに覚え込ませて、自分たちだけの特別なAIを作り上げて学びや校務に活用しようという動きが 生まれています。それを ランニングコストやセキュリティの面でメリットが多いローカルLLMを使っていくという動きがあるように思います。その点を踏まえて、3名のプロフェッショナルにそれぞれのお立場からお話していただければと思います。ここからは田村さんに進行をお任せいたします。

田村

私の場合、普段は各企業さまのシステム開発やコンサルティングなどの業務をしていますが、教育分野では国が主導するプロジェクトなどにも関わらせていただいております。そのあたりの文脈で、今日はこちらの専門家のお二人と深掘りさせていただければと思います。

まず安藤さんに伺いたいのですが、子どもたちの学びというところでは、実際に(生成AIを)ど のように活用されているのでしょうか。

安藤

ChatGPTが登場したのが2022年の11月くらいだと思いますが、それから青山学院中等部では保護者の方にも通達などをお出しして、導入について進めてきました。翌年度の2023年4月に導入を初めて、それから利用しているということになります。

学校でAIプログラミングとAIの基礎を学習していくと、これは非常に子どもにとっていい環境になります。

例えば生徒がレポートなどを作成していく場合に、GitHubというソフトウェアを使ってバージョン管理を行っています。AIを使ってレポート作成などをすると、実際に生徒が書いたのかAIが書いたのか、判別できないことがあります。そこでGitHubを使ってバージョン管理をすることで、「どこをどう手直ししたのか」や「このバージョンがこうなった」というような履歴まできちんと辿ることができるようになります。
生徒が実際にレポートを作成していく流れのなかで、GitHubを使ってクラウドにアップして先生に提出するので、その子どもがどういう過程で完成させたのかが分かりやすくなります。

また生徒の年齢によって、AIもChatGPTやGeminiなどを使い分けています。青山学院中等部ではWindowsベースなので、VSCodeという昔からあるエディターを使っています。プログラミングでは、これを使ってさまざまな編集作業などを行っています。
現在のプログラミングはAIを活用することで、昔のような勉強をしなくても音声や動画なども入れながらゲームなどを簡単に作ることができるようになっています。

ただ、こうしてゲームなどを作っていくと、そのうち子どもたちはそのなかに個人情報や写真なども入れ込んで、友達と遊ぶ感覚で利用するようになってきます。そこでローカルLLMを活用することも大切になってくるのですが、初心者でもすぐにプログラミングできるような環境になっているということを、まず認識しておく必要があると思います。

WEELの田村氏
WEELの田村氏
WEELの田村氏
田村

「AIを使うことで人間が考えなくなってしまう」というようなことを言う人もいるかと思いますが、安藤先生が日頃生徒さんと接するなかで、これについてはどのように考えておられるのでしょうか。

安藤

ここまで2年半にわたってAIを使い倒してみて、従来の「考える」という定義そのものを変えなければいけないような気がしています。どちらかというと、いままで「考える」と言われていたのは、受験用のインプットをいかに瞬時にアウトプットとして出すかとか、そういうことが「考える」だと言っていたように思います。

しかしAI時代の「考える」というのは、「想像力と創造性」なのではないかと思うようになりました。言い換えれば「考える」のバージョンアップが起きているような気もします。私のところの授業を多くの方が見学に来られるのですが、生徒たちは集中していると1時間でも2時間でも周りを気にすることなくプログラミング作業などを行っています。コードがよくわからない初心者だとしても、最初から集中できるような環境であるといえます。これはまさしく「考える」ことに集中していると言えるでしょう。これまでとはちょっと違ったひとつ上のフェーズになるのではないか、と思います。

青山学院の安藤氏
青山学院の安藤氏
青山学院の安藤氏
田村

先ほどローカルLLMを活用することも大切とおっしゃっていましたが、クラウドサービスにはどんな課題があるとお考えでしょうか。

安藤

生徒がChatGPTなどの無料版を使っている場合、そこに入力した情報はAIによって学習されてしまいます。それがどういうきっかけで出力される可能性があるのか、こちらではわからないのでその点での不安は非常にあります。青山学院の場合は基本的に有料版を使用しているので、そういう心配は少ないかと思いますが、これは大きな課題だと感じています。

田村

勝谷さんはここまでのお話を聞いていて、ローカルLLMならではのメリットについてどのようにお考えでしょうか。

勝谷

ローカルLLMのメリットは何時間使ってもよいという点があると思います。自分の時間と電気代さえあれば、いくらでも使い続けることができるのです。クラウドサービスでは課金ということがあるので、24時間使い続けるようなことは難しくなります。この自由度がローカルLLMの最大のメリットだと思います。

また、生徒さんに自由に使ってもらう と予想外の動作をさせるようなこともありえます。もしそれをクラウドでやった場合、高額な料金が発生する可能性がありますが、ローカルLLMではあくまでもそこだけの問題なので被害を最小限にとどめることができます。

安藤

青山学院の場合はAIの基礎からやっているのですが、元のAIを自分用にカスタマイズするファインチューニングということもしています。そうすると自分好みのキャラクターにAIがなってくるのですが、例えばAIに喋らせるような場合にも自由にすることができます。
このファインチューニングやエンベッディングに関しては、クラウド上のAIにも実装されているものはありますが、追加料金が必要になる場合が多いと思います。その点、ローカルLLMであれば気にすることなく試せるので、生徒たちも一生懸命作業しています。異常なくらいのスピード感だと思うこともありますが、教育のあり方というものも急速に変わっていくような気がしています。

田村

安藤先生のところでは、校務のAI活用は、どのようになっていますか?

安藤

私のところの場合は有料版のAPIを利用しているので、成績なども読み込ませながらAIに採点させたりしています。
ルーブリック(学習の達成度を表により測定する評価方法)などは非常に正確にやってくれるので、かなり助かっています。例えば一斉講義で250人を相手にすると、必然的にレポートが250個集まることになります。いままであれば1週間くらいかけて採点していたのですが、AIを使えば5分くらいで収集・採点することができます。

このとき、例えば生徒がWordでレポートを書いてきた場合には、あらかじめファイルを開くところからAIに指示してあり、さらに自分の採点基準なども詳しくAIに教えています。

田村

採点以外の校務に関してはいかがですか?

安藤

データを収集する必要があることなどは、ほとんどAIを使って作業しています。また、思いついたことはAIにやらせてみようと思っているので、毎日なにかしらのアプリを作っているような状態です。

私はVTuberをしていたこともあって、ドローン関係の動画なども作っていたことがあります。そういう音声系のデータの扱いも得意なのですが、学校でもドローンに関する授業を受け持っています。そこで昔作った動画なども使いながら、キャラクターについてはAIに喋らせたりしています。そのため、例えば途中で英語に切り替えたいと思えば、即座に英語で喋らせることもできます。こういった教材作りに関しても、AIは非常に助けになるものです。

ほかにも電話での問い合わせに対してAIで応答するようなものがあります。最初はAIが受付を担当して、そのあと実際に人間の担当者に概略なども含めてデータを連係し、対応していくためのツールとなっています。私の場合には、現在はこういった音声系のデータを扱う校務支援を中心に行っています。

校務に関しても、成績などの個人情報が多いため、クラウドにあげるのをためらうようなデータはたくさんあります。そういうときにローカルLLMを利用することの安心感もあります。

勝谷

学校でローカルLLMをお使いいただく場合、使用するPCのスペックというものも重要になってきます。ゲーミングPCなどを使っている事例もあるようですが、ゲームの場合は画面表示が優先事項であるため、AIを24時間走らせるような用途には向かない場合があります。

これには、PCを動かす際の熱をどう処理するかといった課題も入ってきます。ワークステーションの場合には、最初から効率的な熱処理対策が施されていて、サーバー的に使い続けることもできるようになっています。ただし、学校現場の場合には、設置場所の環境に問題がある場合もあります。サーバー室にエアコンがない、といった設備的な問題が代表的なものです。

HPの勝谷氏
HPの勝谷氏
HPの勝谷氏
中野

教育現場にローカルLLMを入れたいと思ってもコストがかかるので、ひとりの力では進められないこともあるかもしれません。例えば、学校のなかだけではなく教育委員会なども巻き込みながら進めていくことも考えられますが、周りを巻き込んで説得していくにはどうすればよいと思われますか?

安藤

どうしても個人プレイではうまくいかないことが多いので、学校のトップや教育委員会にまず納得してもらえるようにすることが大切だと思います。これに関しては、下から草の根的にやってもなかなかうまくいかないと思います。私の場合は環境や上層部に恵まれているということなのだと思いますが、周囲の説得より上層部の理解を得ることが大事だと実感しています。

田村

私も安藤先生に近い考え方で、トップダウンがこの場合は大切だと思います。日常的にいろいろな企業さんとのお付き合いがありますが、経営幹部の方などにAIを体験していただき、そこで理解を深めてトップダウンで進めてもらうとうまくいくことが多いと思います。イベントなどに同行してもらうのでもいいですし、上層部を巻き込むというのが有効です。

中野

みなさま、本日はありがとうございました。

イベント風景
イベント風景

それぞれがプロフェッショナルという立場で語ったパネルディスカッションはこうして終了となった。AI、とくにローカルLLMと教育を結び付けた場合のヒントが随所にあったように思うセッションだった。誌面の都合上、ここではすべてをお伝えすることはできないが、安藤氏、田村氏、勝谷氏らと出会えるイベントはこれからもたくさんあると思う。みなさまの近くでそのような機会があれば、ぜひ会場へ訪れて彼らと話してみるとよいだろう。

HPは、ビジネスに Windows 11 Pro をお勧めします。

Windows 11 は、AIを活用するための理想的なプラットフォームを提供し、作業の迅速化や創造性の向上をサポートします。ユーザーは、 Windows 11 のCopilotや様々な機能を活用することで、アプリケーションやドキュメントを横断してワークフローを効率化し、生産性を高めることができます。

組織において Windows 11 を導入することで、セキュリティが強化され、生産性とコラボレーションが向上し、より直感的でパーソナライズされた体験が可能になります。セキュリティインシデントの削減、ワークフローとコラボレーションの加速、セキュリティチームとITチームの生産性向上などが期待できる Windows 11 へのアップグレードは、長期的に経済的な選択です。旧 Windows OSをご利用の場合は、AIの力を活用しビジネスをさらに前進させるために、Windows 11 の導入をご検討ください。

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