2023.11.17
Wi-Fiの存在を気にせず、スマートフォンライクにPCが運用できる「SIM/eSIM」モデルが人気だ。場所を選ばず仕事をするハイブリッドワーカーはもちろん、携帯電話が使っているモバイル通信網を利用することで、セキュアな環境でデータ通信をおこなえるという理由もあるため、セキュリティ対策として採用する企業も増えている。そんな「SIM/eSIM」搭載モデルの課題に、一定の課金が発生するというものがあったが、今回HPはその課題を解決するサービスを用意しているという。どのようなサービスなのか、担当者に直接説明していただく機会を得たので紹介しよう。
「HP eSIM Connect」についてお話いただいた、株式会社 日本HP パーソナルシステムズ事業本部 クライアントビジネス本部 CMIT製品部長 岡 宣明氏
それではさっそく本サービスの概要と特長を紹介する前に、ビジネスノートPCにSIMモデルが増えてきている背景からおさらいしよう。スマートフォンは携帯電話回線事業者が提供しているモバイル通信網を利用していることは誰でも当然のように知っている。ここから派生し、タブレットPCがこれに対応しはじめ、ノートPCにもその波が押し寄せたというのが大きな流れだ。
つまり、それまで街中に点在するWi-Fiスポットエリアや、ポケットWi-Fiなどに頼らざるを得なかったノートPCが、SIMを採用することでスマートフォンと同様に、いつでもどこでもPCを開いた瞬間からインターネットに接続されている環境が手に入れられるようになったのだ。
さらに、SIMを内蔵する「eSIM」も登場したことでモバイル通信網の活用は加速するかに思えた。しかし、実際にはこれまでどおり、Wi-Fi中心のアクセス環境からなかなか前に進むことが無かったのが現状だ。
誌面の都合があるので、かなり駆け足に説明したが、こうした現状を作る原因となったのは、「回線使用料」というのが大きな課題だったといえる。つまり、ほぼ全国をカバーするモバイル通信網はビジネスにも最適な回線であることは分かりつつも、いわゆる「コスト」が壁となって普及がなかなか進んでいなかったのだ。
HPが今回発表した「HP eSIM Connect」は、まさにこの壁を打ち破り、企業はもちろん、現場でノートPCを扱う、ビジネスマンやIT管理者が大いにモバイル通信網の恩恵に預かれるというサービスなのだ。
HP eSIM Connectは、PCの購入代金にすでにeSIMによるデータ通信の権利がバンドルされたサービスになる。「つまり、HP eSIM Connectの対象モデルであるHP Dragonfly G4およびHP ProBook 445 G10のSIM/eSIMモデルを購入いただくと、5年間の無制限データ通信がご利用いただけるというサービスです」と説明するのは、HPのビジネスPC製品担当の岡氏だ。
同氏が言ったように、このサービスは法人限定で対象モデルのノートPCを購入すると、5年間使い放題のデータ通信が付いてくるという、これまでに無かった画期的な内容となる。つまり、HP eSIM Connectを使えば以降5年間は追加料金なしで、LTE(4G)はもちろん、機種によっては5G回線も使い放題になるというわけだ。
筆者が調べたところ、SIMによるデータ通信の定額無制限サービスを利用すると、概ね7,000円/月の使用料が必要となる(※ライター調べ)。これを5年間使い続けると42万円になる計算だ。
一方のHP Dragonfly G4のSIM/eSIMモデルの実勢価格は249,800円(※記事執筆時点でのHP社のECサイト「HP Directpuls」での価格、ライター調べ)。何十万円かでノートPCを購入し、SIMサービスを契約して5年間使えば、軽く60万円近くかかるのに対し、HP eSIM Connectを使えば、先の値段でPCと使い放題のデータ通信が付いてくるという、信じられないサービスなのだ。
もうひとつの対象モデルであるHP ProBook 445 G10の実勢価格が124,800円で、そちらでもスペックが十分となれば、そのコスト差は圧倒的といってよいだろう。単純なコスト比較ではあるが、誰が見てもコストメリットが明らかであることは確かだ。
さて、このHP eSIM Connectはコストパフォーマンスだけでなく、eSIM特有の回線手続きの簡便さも魅力となっている。「まず、ご購入いただいた企業の中で代表となる方、例えばIT管理者の方は、会社の登記簿謄本などの法人証明書類と、担当者様がお持ちの免許証などの本人確認書類、そして会社に在籍している証明として名刺や社員証などをご用意していただきます。それを持って申し込みサイトにアクセスいただき、利用開始手続きをしていただければ、数日後にはサービスが開始されます」と岡氏は語る。
つまり、契約時に紙の書類のやり取りは発生せず、すべての手続きがオンラインで完了できるので、回線申込手続きは非常に簡単だ。アクティベーションにかかる日数は、サービスの申込件数にもよるが、現状では3日程度を見込んでいるという。ただし、これはあくまでも見込みの日数なので、実際にサービスを利用する際には事前に確認しておいたほうが安心だ。
eSIMをサービスの中核に置いたメリットは他にもある。「例えばSIMモデルの場合、SIMカードをすべてのユーザーに送付して自分で取り付けてもらうか、IT管理者が一台ずつPCにセットする必要があります。数十台レベルなら大した負担ではないでしょうが、大きな数になるとかなり大変です。また、SIMカードは紛失しやすく、発見が難しい面もあります。利用環境によっては都度の抜き差しが発生することもありますから、抜き忘れ、逆挿しといったトラブルも起こり得るのが実際です」と岡氏は注意を促す。eSIMによってこれらの負担やトラブルを回避できることもメリットになるということだ。
「また、HP eSIM Connect対象モデルにはSIMスロットも搭載されています。ですから、国内では本サービスを使い、空いているSIMスロットを使って海外ローミングが可能なサービスを使うといった利用方法も可能になっています」と岡氏。海外出張が多いビジネスマンは、常に現地での通信に悩んでいたと思うが、HP eSIM Connectを採用することで、グローバル対応を含めた柔軟な通信環境の構築も視野に入れられるというわけだ。
それではより深く、HP eSIM Connectの利用メリットについて、今度はユーザー目線で考えていこう。
対象モデルである、HP Dragonfly G4は、現時点でハイブリッドワーカーに最適なパフォーマンスを提供してくれる最新鋭のモバイルノートPCだ。第13世代インテル® Core™ プロセッサーによるパワフルでストレスのない作業環境や、消費電力の高効率化によるロングライフバッテリーなどはもちろん、本体のWebカメラに加えて、外付けWebカメラも同時にコントロールできるマルチカメラ対応や、背面のユーザーの声を拾うこともできる360度マイク、Bang & Olufsenクアッドスピーカーによる明瞭な音質など、Web会議全盛の現在に最適な仕様も魅力だ。
もうひとつの対象モデルHP ProBook 445 G10は、AMD Ryzen™ 7000シリーズを採用することで、抜群のコストパフォーマンスを実現しているモデルである。AIベースのノイズキャンセリング機能を搭載するなど、Web会議にも向いた仕様となっており、コスト優先で選んでもスペックや機能が充実しているので満足感の高いモデルに仕上がっている。
両モデルにも言えることだが、Web会議はハイブリッドワーカーにとってはその品質が重要となるが、HP eSIM Connectと組み合わせることで、最上級の環境が構築できる。「どんな場所でも安定した通信が可能なうえに、優れたWebコラボレーション機能がそれをサポートする形になるので、これまでワークスペースとして不向きだったWi-Fiの無い遠隔地や工場内、あるいは工事現場など、あらゆる場所でこれまでにない通信環境が約束されます」と岡氏。この特長は大きなビジネスチャンスの獲得にもつながるはずだ。
もちろん、エンドユーザーだけでなく、IT管理者にも大きなメリットがある。「例えば、常時接続されているという特長を活かせば、社外にあるPCに対してもOSのアップデートをオートマティックに指示することが可能です。これまでそれをやろうと思えば、Microsoftやインテルの最新ソリューションを組み合わせる必要がありましたが、HP eSIM Connectなら営業時間外でもPCさえ起動しておいてもらえれば常にIT管理者はPCにアクセス可能な環境が作れます。これはメンテナンスという点だけでなく、資産管理的な側面でも管理者の負担軽減に役立ってくれると思います」(岡氏)。
また、先にも述べたように多大なるコストメリットは経営層にとっても大きなアドバンテージといえる。「コスト面ではもちろんですが、先ほど説明した通り、従業員にとっても幅広く生産性や業務効率性を向上してくれるので、広くビジネスの成長を支えるサービスだと考えています」と岡氏は自信をのぞかせる。
良いこと尽くめのHP eSIM Connectだが、いくつか注意点もあるという。「HP eSIM Connectは、KDDI様との協業プログラムによって実現しました。素晴らしいサービスが提供できると自負していますが、一方で提供できる通信サービスはauネットワーク回線に限定されるので、その点はご了承ください」と説明する岡氏。NTT docomo、SoftBankのサービスを利用している企業およびauへの乗り換えが困難という企業はこの点は注意しておいたほうがよいだろう。
「また、HP eSIM Connectは、eSIMによる法人利用に限定されています。理由としては4K動画配信サービスで超高精細映画を楽しむといった個人利用は通信帯域が膨大になりがちであるのに対し、法人はOfficeツールやWeb会議といった比較的帯域を占有しないサービス利用がメインであるからです。また、同じ理由でHP eSIM Connectによるテザリングも禁止しています。eSIMに特化しているのも、物理SIMを作る、管理するといったコストを削減できるという理由があります。ですから、個人でのお申し込みはできませんのでこの点にもご注意ください」と岡氏。HP eSIM Connectは法人限定のサービスであり、逸脱した使い方は推奨されないので契約以外の使い方をしないよう十分な注意が必要だ。
いくつかの注意点はあるものの、企業にとっては理想通りの使い方ができ、なおかつコストメリットが多大な「HP eSIM Connect」。ここですべてを説明しきることは難しいのだが、サービス内容やそのメリットについてはご理解いただけたかと思う。「これまでHPが伺ってきたお客様のご要望にすべてお応えできるサービスが実現できたと思います。使い方次第で、企業様のビジネスを大きく変革できる可能性を秘めたサービスですので、ぜひHP eSIM Connectをご利用いただき、御社のビジネスの発展に役立てていただければ幸いです」と岡氏はにこやかに語ってくれた。
HP eSIM Connectは2023年11月16日に正式発表し、同日に発売も開始した。HPの販売部門の担当者によると、リリース直後から売れ行きは絶好調で、大企業の大型案件もすぐに決まったという。筆者の個人的な感想になるが、HP eSIM Connectは使わない理由がないほど素晴らしいソリューションだと感じている。興味を持っていただいた企業のみなさまは、早めに相談していただいたほうがよいだろう。
※このコンテンツには日本HPの公式見解を示さないものが一部含まれます。また、日本HPのサポート範囲に含まれない内容や、日本HPが推奨する使い方ではないケースが含まれている可能性があります。また、コンテンツ中の固有名詞は、一般に各社の商標または登録商標ですが、必ずしも「™」や「®」といった商標表示が付記されていません。
ハイブリッドなワークプレイス向けに設計された Windows 11 Pro は、さらに効率的、シームレス、安全に働くために必要なビジネス機能と管理機能があります。HPのビジネスPCに搭載しているHP独自機能は Windows 11 で強化された機能を補完し、利便性と生産性を高めます。