2023.08.25
Windows 10 のサポート切れが目前に迫っている。あらゆる企業が次期OSであるWindows 11への移行を決断する中、そのプラットフォームとなるクライアントPCの刷新も課題となっている。様々な製品がある中、ビジネスPCにおいてはインテル優勢の時代が続いていたが、ここ数年AMDの躍進が目立っている。この記事ではビジネスシーンでAMDが選ばれる理由と、HPの新製品について解説する。
日本AMD株式会社
コマーシャル営業本部 部長
楊 博光
株式会社 日本HP
パーソナルシステムズ事業本部 製品部
岡 宣明
パーソナルシステムズ事業本部 バリュービジネス部
大橋 秀樹
「10年前と今のAMDの躍進の仕方がずいぶん違うという意見を多くいただいています。確かにこの4年間で売上が4倍、10年前と比べると10倍の売上になっています」と語る楊氏。そうした中でもAMDは技術への投資を今なお続けており、3年間で2倍に増えた従業員の約8割がエンジニアという状況だという。
「AMDはPC向けのRyzenはもちろん、サーバーのEPYCプロセッサーなどのほか、PS5、XBOXといったコンシューマゲーム機にも弊社のプロセッサーとグラフィックスが搭載されています。この他、Teams、Zoomといったネットワークサービスにも弊社の技術が使われています」と楊氏。こうした身近で幅広い市場開拓と、それぞれのニーズを十分に満たす高い技術力と生産力がAMD躍進の背景にあるといえるだろう。
成長を支えた理由のひとつについてCEOのLisa Su氏の名前を挙げた楊氏。「ゲームチェンジャーとして2014年に社長に就任しましたが、その当時はCPUプロセッサーと言えばインテル様の一強でした。そこで彼女とエンジニアリング部門はゼロからプロセッサーを設計し、そこで誕生したのがZENアーキテクチャーでした。彼女のリーダーシップのもと、エンジニアチームも限られた予算の中で、どうしたら省電力でありながらハイパフォーマンスを実現できるかに全力を尽くしました。そして、今回リリースされた最新のRyzen搭載製品の中にも最新のZENアーキテクチャーがより良く息づいています。」(楊氏)
ZENアーキテクチャーはハイパフォーマンスと低消費電力を実現したことで一気にシェアを広げたことは記憶に新しい。2017年に発表されてから、現在に至るまで進化を続け、最新はZEN4がリリースされている。「ZEN4ではプロセスルールがより微細化し、ダイのうえに多くのコアとその中に多くのトランジスタを置くことができるようになりました。これにより、高性能になるだけでなく、処理速度が速く、電力効率も良くなっています。」と楊氏。AMDがこれだけの高い技術力を持っている理由に製造を他社に任せている点もあるのだという。「TSMC様に製造を請け負っていただいて、同社が持つ最新のテクノロジーとAMDの開発・設計技術によるコラボレーションを実現しています。これにより、みなさまには最先端のテクノロジーがお届けできるのです」と楊氏は説明する。
AMDはいわゆる「AMD64命令セット」という、簡単にいえばWindowsなどの主要なOSが動く命令セットを開発したメーカーでもある。「実は、現在のインテル様ともクロスライセンス契約によって、弊社のAMD64命令セットが業界標準として使われています。みなさまは知らず知らずにインテル様のプロセッサーをお使いだと思いますが、その環境で動作するアプリケーションの命令セットはAMD64命令セットが入っておりますので、インテル・プロセッサー搭載PCで動くアプリであれば、AMDプロセッサー搭載PCで動かないということはないのです。」と楊氏は解説。ベースとなる命令セットが共通していることへの安心感を強調した。さらに「最新のZEN4を採用したAMD Ryzen™ PRO 7040シリーズプロセッサーでは、最新の4nmプロセスルールを適用し、更なるパフォーマンスの高さと低消費電力を実現しています」と楊氏。
こうしたプロセッサーの特性は実際にハイブリッドワーク時のバッテリー稼働時にも体験できるという。「私たちは、実運用下でのマルチタスクの環境でTeamsを動作させながらバッテリー駆動時間をモニターしました。その結果、他社製のプロセッサーが4時間前後だったものが、AMD Ryzen™ PRO 7840Uでは6時間48分という結果でした。」と楊氏は説明する。
こうした省電力性はサステナビリティにも貢献できるという楊氏は、プロセッサーの違いによる電力効率の優位性にも表れている。「他社製プロセッサーと比較し、省電力性が非常に高いので、電気代の削減、CO2排出量、カーボンフットプリントの削減が実現できます。」と語った。また同氏は企業の将来を見据えてWindows 11 Pro環境下でのベネフィットにも触れ、「Microsoft様と技術を共有させていただき、検証を続けています。互換性、セキュリティ、ユーザーエクスペリエンスのすべての面で最新の技術が体験できます」と語った。独自のセキュリティ機能の実装などによる高い信頼性は企業ユースにまさに最適といえるだろう。
AMDのプロセッサーを搭載するビジネスノートPCについて紹介するのは日本HP 岡氏だ。まずは従来モデルである「HP ProBook 635 Aero G8」について説明する同氏。「軽さが特長の製品で、ロングセラーモデルであることからもバランスの良さが際立っています。バッテリー駆動時間も長いので毎日自宅とオフィスの往復をするような方に向いていると思います」(岡氏)。
次に紹介するのは新製品である「HP ProBook 445 G10/455 G10」だ。「最新のRYZEN 7000シリーズを搭載するモデルで優れたパフォーマンスが魅力です。ミッドレンジの製品ですが、セキュリティやコラボレーション性能が高く、エンタープライズの方々のニーズにあった製品です」(岡氏)。このモデルではAIノイズキャンセルや映像の明るさ自動判別などのコラボレーション機能が強化されている。
最後は「HP 245/255 G10」となる。「エントリーモデルなのでもちろん価格競争力のある製品です。米軍調達基準のMILスペックを取得しているので、安心してお使いいただくことが可能です。低コストであることを念頭に、メモリの増設などをして、ユーザビリティを高めることもできるので、ユーザー満足度を高めやすいモデルといえます」(岡氏)。
もうひとつ、HPのAMD搭載モデルの中でも特に期待が大きいのはワークステーションだ。「HPとしてははじめてAMDプロセッサーを搭載したモバイルワークステーションを発表しました。『HP Zbook Firefly 14 G10』では、AMD Ryzen™ 7040HSシリーズを搭載し、APUとしてAMD Radeon グラフィックス が採用されています。ディスクリートグラフィックスを持たないながらもISV認証を受けており、高いパフォーマンスと安定した運用が期待できます」(大橋氏)。
もうひとつのモデルとして、「HP ZBook Power 15.6 G10A」を紹介する大橋氏。「同じAMD Ryzen™ 7040HSシリーズを搭載していますが、こちらはディスクリートグラフィックスにNVIDIA RTX A1000/RTX 2000Adaグラフィックスが搭載されます。3DCADあるいは3DCGなどのプロフェッショナルツールの運用をしている方にはこちらが最適です」(大橋)。
これらのAMD搭載モデルについて楊氏は「コストパフォーマンスが高いので、コストメリットを活かして通常であれば、32ギガメモリを搭載しているところを64GBにするなど、スケールアップした分、満足度を高めることができると思います。メリットの多いAMD搭載モデルをどうぞよろしくお願いします」と語った。
これまでプロセッサーはインテル一強だったが、AMDの競争力が高まることで、企業にとっては選択肢が増えることになる。より最適な製品選びに際し、AMD製品の動向に注目だ。
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ハイブリッドなワークプレイス向けに設計された Windows 11 Pro は、さらに効率的、シームレス、安全に働くために必要なビジネス機能と管理機能があります。HPのビジネスPCに搭載しているHP独自機能はWindows 11で強化された機能を補完し、利便性と生産性を高めます。