「AI活用の現在地と未来——コンテキストが切り拓く、新たなクリエイティビティ」ハヤカワ五味 × おざけん 対談

2026-03-10

「AI活用の現在地と未来——コンテキストが切り拓く、新たなクリエイティビティ」ハヤカワ五味 × おざけん 対談
「AI活用の現在地と未来——コンテキストが切り拓く、新たなクリエイティビティ」ハヤカワ五味 × おざけん 対談

ライター:小澤健祐

2025年、生成AIは私たちの日常やビジネスに深く浸透し、その活用方法は新たなフェーズへと移行しました。単に優れたプロンプトを記述する技術から、いかにしてAIに良質な「コンテキスト(文脈)」を与え、協業するかが問われる時代になったのです。

上場企業で生成AIの活用促進を筆頭で率いるだけでなく、個人としてもユニークな生成AI活用を発信する先駆者 ハヤカワ五味さんと、「人間とAIが共存する社会をつくる」をビジョンに掲げ、AIに関する発信をする専門家、おざけん氏。この大きな変化の最前線で活躍する二人の実践者が、AI活用の現在地と未来を語り合いました。

AIとの向き合い方、ツールの使い分け、そしてオンデバイスAIを搭載した最新PCがもたらすクリエイティビティの変革まで、示唆に富んだ対話の模様をお届けします。

小澤
2025年を振り返ると、AIの活用法も大きく変わりましたね。五味さんがメインで使うツールは、この一年で変化がありましたか?
ハヤカワ

今年は ChatGPT と Gemini を行ったり来たりしていました。毎年「AIと自分の相関図」を更新しているのですが、2024年末は、大量の情報を扱える Gemini 派で「コンテキストは多ければ多いほどいい」と考えていたんです。

でも、ChatGPT のメモリ機能やディープリサーチ機能が強化されてからは、「やっぱり ChatGPT だな」と。そして、最近 Gemini 3 が登場して、また Gemini に戻ってくるという。この振り子のような動きは、これからも続くんだろうなと感じています。

小澤
よく分かります。モデルの性能が拮抗し、まさにツールをどう使いこなすかが問われるようになりました。特に、AIへの指示の出し方という点で、何か変化は感じますか?
ハヤカワ

AIの「追従性」が格段に上がったと感じます。去年まではプロンプトの精度をかなり意識しないと、AIが意図を汲んでくれませんでした。

でも、特に2025年の下半期は、かなり雑に指示しても「よしなにやってくれる」感覚が強くなりましたね。例えば、以前はコードの修正を頼むと、直すどころかコードを消してしまうようなトンチンカンなこともありましたが、そういうストレスは劇的に減りました。

小澤
まさに「プロンプトをいかに書くか」という技術論から、「いかに自分の業務フローに組み込むか」という実践論にシフトした一年でしたね。
ハヤカワ
本当にそう思います。結局は「コンテキスト」がすべてだという結論に至って、最近は社内外で「コンテキスト警察」として活動しているくらいです(笑)。新しいメンバー、それが人間であれAIであれ、その人が業務を理解できるレベルまで情報を言語化し、ドキュメントとして渡せるか。そのコンテキストの受け渡しが、これからの時代は極めて重要になると考えています。
小澤

「コンテキスト警察」、面白いですね(笑)。僕も最近、ChatGPT に自分の嗜好を理解させるために「100の質問」を作らせて、「ホテルの予約を頼むならユニットバスはOKか、NGか」といった細かい設定を覚えさせています。

五味さんは、具体的にどんなコンテキストの整理をされているんですか?

ハヤカワ

会社レベルで言えば、企画の目的、経緯、関係者、進捗状況、関連資料などを一枚のドキュメントにまとめることを徹底しています。当たり前のようで、意外とできていない組織は多いのではないでしょうか。これが整備されているだけで、新しい人やAIがスムーズに業務に入れます。

個人的なレベルでは、ChatGPT のメモリ機能を活用して、出力に対するフィードバックを「このアウトプットはすごく良かったよ」といった形でこまめに返すようにしています。そうすることで、AIが私の好みや判断基準を学習してくれる。

他にも、健康に関するデータや、美味しかったレストランの記録など、自分のパーソナルな情報をとにかく記録として残しておく。「どこかに記録さえしておけば、後からAIが活用してくれる」という考え方です。

小澤
めちゃくちゃ共感します。僕も食べたものをすべて Gemini に送っています。一年後に何か面白い提案をしてくれるかもしれない、と期待して。こうした日々のログが、未来のAIの精度を高めるんですよね。
ハヤカワ
そうなんです。さらに一歩進んで、私は自分の思考や判断のOS(基本ソフト)を言語化して「AI五味ちゃん」というAIエージェントを作っています。公開されているブログ記事などから私の思想や価値観を抽出して、約6000字のプロンプトに落とし込んでもらいました。この「AI五味ちゃん」をワークフローに組み込むと、他の汎用エージェントより良い働きをするんですよ。いつか「AIエージェント派遣業」をやりたいくらいです(笑)。
小澤
「AIおざけん」も作っています(笑)。自分の著書を読み込ませると、かなりそれっぽくなる。まさに、これからはプロンプトの技術だけでなく、自分という人間のコンテキストをいかにAIに与え、パーソナライズされたエージェントを育てるかが、AI活用の鍵になりますね。
ハヤカワ
自動化という点では、ワークフローツールもかなり活用しました。例えば、秘書業務の一部を自動化して、メールの一次応答や案件管理を任せています。他にも、請求書のデータを会計システム用のフォーマットに変換するといった作業は Google Apps Script(GAS)で自動化していますね。自分の業務を細分化して、ツールを使い分けながら自動化の仕組みを構築していくことが重要だと感じています。
小澤

AIとの連携を深める上で、作業環境も重要になります。五味さんは最近、Windows のPCに乗り換えられたそうですね。特にHPの「Copilot+ PC」を使われているとのことですが、率直な感想はいかがですか?
(編集部注:ハヤカワ五味さんは、HP EliteBook X G1i 14 AI PC の HP eSIM Connect対応モデルを使用しています)

ハヤカワ五味さんのXの投稿より(2025年8月6日)
ハヤカワ五味さんのXの投稿より(2025年8月6日)
ハヤカワ五味さんのXの投稿より(2025年8月6日)
ハヤカワ

正直、オンデバイスAIの機能はまだ使いこなせていないのですが、まずPCとして「軽くて、常にネットに繋がっている」というだけで最高です。テザリングだと通信が不安定になることが多くて…。

でも、このPCはeSIM内蔵でau回線に常時接続できるので、講演で作業したり、移動中にコーディングしたりと、場所を選ばずに仕事ができるようになりました。打鍵感が自分好みだったのも嬉しいポイントです。

小澤
その常時接続の快適さは、クラウドベースの生成AIを使う上でも大きなメリットですよね。そして、この Copilot+ PC には「リコール」という、まさに「第二の脳」と呼べる機能が搭載されています。これは、PC上の操作をすべてスクリーンショットで記録し続け、後から「あの会議で見たグラフ」といった自然言語で検索できるというものです。
ハヤカワ
すごい!誰しも一度は「自分のPC操作を全部録画して、後からAIにフィードバックさせたい」と考えたことがあると思うんですが、それが標準機能として搭載されているんですね。これは画期的です。過去の自分の作業そのものが、AIへのコンテキストになるわけですね。
小澤
その通りです。この機能はすべてオンデバイスで完結するので、セキュリティ面でも安心です。例えば、1ヶ月前のオンライン会議で表示された資料の内容を「オンプレミスという単語が書いてあった資料」といった曖昧な記憶から瞬時に探し出せる。これまで探しものに費やしていた時間を、もっと創造的な活動に使えるようになります。
ハヤカワ
飛行機の中など、オフライン環境で作業することも多いので、オンデバイスでAIが動くのは本当に助かります。以前、機内でネットが繋がらなくて、10時間以上何もできなかった苦い経験があるので(笑)。ローカルで動くAIがあれば、そうした移動時間も有効活用できますね。
小澤

まさに。このPCは32GBのメモリを積んでいるので、20B(200億パラメータ)クラスのオープンソースLLMもローカルで動かせます。プリインストールされている「HP AI Companion」を使えば、ネットに繋がっていなくてもAIとの対話が可能です。

これからは、自分の記憶や作業ログといった膨大なコンテキストをPC自体が記録・整理し、それを基にオンデバイスAIが最適なサポートを提供する時代がやってきます。思考を外部化し、人間はよりクリエイティブな領域に集中できるようになる。その可能性を、このPCは感じさせてくれますね。

今回の対談を通じて見えてきたのは、AIとの関係性が新たなステージに進んだ現在、私たち人間には「良質なコンテキストをAIに与え、いかに協業するか」という視点が求められている、ということでした。

ハヤカワさんが実践する「コンテキスト警察」としての活動や、自身の思考を反映した「AI五味ちゃん」の育成は、AIの能力を最大限に引き出すための能動的なアプローチです。

それは、AIを単なるツールとして使うのではなく、対話とフィードバックを通じて「育てる」という新しい関係性を示唆しています。

一方で、小澤さんが期待を寄せるオンデバイスAIと「リコール」は、私たちの記憶や思考を半自動的に外部化し、創造的な活動への集中を促す、まさに「第二の脳」と言えるでしょう。eSIMによる常時接続性や、軽量な筐体といったハードウェアの進化が、その土台を支えています。

AIという強力なパートナーを得た私たちは、これからどんな未来を創造していくのでしょうか。ハヤカワ五味さんと小澤健祐さんのように、変化を楽しみ、テクノロジーを軽やかに使いこなす姿勢こそが、AIと共存する未来を切り拓く鍵となるのかもしれません。最高の「相棒」と共に、あなた自身のクリエイティビティを解放してみてはいかがでしょうか。

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