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2023.03.31
“日本企業ならでは”のハイブリッドワークとは?
各界のキーパーソンと考える
「これからのワークスタイル」
Vol.1
感染症分類の見直しを含め、アフターコロナへと大きく舵を切った日本の社会。災害時対応施策として広がったテレワークも、今や働き方の重要な選択肢の1つになっている。オフィス勤務とテレワークを組み合わせる「ハイブリッドワーク」の価値と、その実現に向けた方法とは。日本企業の現状と課題、そしてこれから取るべき戦略について、日経BP総合研究所 大和田 尚孝が提言する。
※本記事は日経ビジネスに掲載されたコンテンツを転載したものです
日経BP総合研究所
イノベーションICTラボ 所長
大和田 尚孝
――3年以上続くコロナ禍で、企業のワークスタイルは大きな変化を迫られてきました。まずは日本企業の現状について、どう見ていますか。
大和田:首都圏では2022年秋ごろから人の動きが戻ってきた印象です。オフィスへ通勤する人や、旅行などのレジャーに出かける人が増えてきました。ただ、働き方が完全にコロナ前へ戻るかというとそうではないと思います。オフィス勤務とテレワークを使い分ける「ハイブリッドワーク」が、一定の割合で定着していくことは間違いありません。
日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボが行った調査※1でも、これを裏付ける結果が出ています。新型コロナウイルスの感染拡大以降、企業・組織におけるテレワークの実施割合を半年ごとにウォッチしていますが、最も高い割合だったのは、最初の緊急事態宣言のころで約64%。その後、環境の変化に合わせて数字は上下し、直近の2022年10月の調査では約37%でした。このあとは、時間が経つほど振れ幅が小さくなり、やがて3人に1人程度の割合でハイブリッドワークが定着すると見ています。
――コロナ禍以前は大半の人がオフィスで働いていました。3人に1人まで増えたのは、確かに大きな変化です。
大和田:当初は緊急時対応の側面が強かったテレワークも、3年かけて少しずつ浸透しながらメリット/デメリットが理解されてきました。そうした中、オフィス勤務とテレワークの“いいとこ取り”をする働き方も可能になった。対面のコミュニケーションが必要ならオフィスへ、集中して作業したいならテレワークでといったように、社員が柔軟に働き方を選択できるようになっているのは良い傾向だと思います。
日本HPが実施した調査※2によると、「直近1カ月間に、あなたは職場以外でテレワークをしましたか。またはしていますか」との質問に、21%の人が「週1~2日」、20%が「週3~4日」したと回答。また、「2022年12月~2023年1月のあなたの主な執務場所を教えてください(複数回答)」との質問には80.1%が「自宅」、71.5%が「オフィス」と回答している。この結果からも、日本企業にハイブリッドワークが浸透してきていることが分かるだろう。
※1「働き方改革に関する動向・意識調査」/日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ
※2「ハイブリッドワークに関する調査」/日本HP、2023年1月
――ただ、ハイブリッドワークを進める人が増えた今も、依然として日本企業の労働生産性はあまり高くないようです。
大和田:もちろん、テレワークをすること自体が目的ではないので、生産性向上を図るためのオフィス回帰は進めるべきです。ただ、日本企業の場合、「上司が出社しているから」「同僚がみんなオフィスで仕事しているから」といった理由でオフィスワークに切り替える人も多いようです。こうした無意識の同調圧力の存在は、日本特有の問題といえるかもしれません。
――テレワークになじめない、あるいは心理的なプレッシャーを感じて仕方なくオフィスで仕事している人たちを含めて、全社のハイブリッドワークを推進するために、企業経営者はどのようなことを考えるべきでしょうか。
大和田:「メインはオフィスワーク、サブがテレワーク」という主従関係をなくすことが重要です。オフィスワークとテレワークはフラットな関係のものであり、業務上の必要性に応じて社員が選択するもの。このような考え方を、組織に根付かせることが大切だと思います。
同時に、オフィスワーク、テレワークに関係なく、社員の働きをきちんと評価できる制度や仕組みも整備すべきです。社員が持つ漠然とした不安や疑心暗鬼を解消し、ハイブリッドワークを適正に機能させるための環境づくりが、経営者に強く求められています。
――ITツールで社員の業務状況を可視化したり、1on1やコミュニケーションの機会を増やしたりすることは、そのための方法の1つといえそうです。
大和田:その通りです。加えて、本気でハイブリッドワークを全社に浸透させたいと思うなら、マネジメント層が自らロールモデルにならなければいけません。例えば、IT業界には「経営者は地方に住んでいて、月1回だけ上京する」という企業も登場しています。ここまでは難しくても、マネジメント層が率先して在宅勤務するだけで、社員がテレワークを選択する際のハードルはぐっと下がると思います。
また、ハイブリッドワーク導入が成功している会社には、「週何日テレワークするか」の申請を撤廃したところが多くあります。考えてみれば、テレワーク申請は「メインはオフィスワーク」という主従関係に基づく手続きといえます。これをなくし、オフィスワークとテレワークをフラットな関係性のものとして、自由に選べるようにしているのです。
――各社がそれぞれ工夫をしながら、自社なりのハイブリッドワークを模索しているのですね。
大和田:そう思います。なお、IT業界は比較的テレワークとの親和性が高い業種といわれますが、それ以外でもうまく進めている業界・業種はあります。一例が保険業界です。その背景にあるのが業務プロセスの「分解」と「電子化」だと考えています。
保険業界では、契約業務のプロセスや契約そのものが大きく定型化、電子化されています。このような下地があるから、オフィスでも自宅でも同じように業務が遂行できるのです。
つまり、昔からの慣習や属人的なノウハウに基づいて業務を進めるのではなく、プロセスを細かく分解して、見える化することが肝心です。その上で、「リアルでなければできない仕事」「テレワークのほうが効率的な仕事」を仕分けて電子化する。例えば製造業なら、加工や組立は工場でなければできませんが、企画・設計業務は自宅でできるかもしれません。飲食業なら対面の接客サービスはお店で、在庫管理や予約管理の業務は自宅でといった仕分けが可能だと思います。このように、一つひとつの業務に分解して見ていくと、テレワークでできる仕事は意外にたくさんあることに気付くはずです。
――最後に読者にメッセージをお願いします。
大和田:ハイブリッドワークが浸透した組織は、働き手にとって魅力的な会社に映るでしょう。「働きたい」と思われる会社を目指すことは、人口減少社会に突入した日本の企業経営者にとって大きなミッションの1つです。個々の社員のWell-being(心身ともに充実した状態)の実現、そして組織のさらなる成長を目指すために、ぜひハイブリッドワークを推進してもらえればと思います。
ハイブリッドワークに最適な「HP Elite Dragonfly G3」
HP Elite Dragonfly G3「HP Elite Dragonfly G3」は、ハイブリッドワークの生産性向上に欠かせない機能を網羅的に備えた高性能ノートPCだ。パフォーマンスや通信性能はもちろん、テレワークに不可欠なWebカメラやマイク、スピーカーの品質も追求。さらに最長19.5時間駆動を実現する長寿命バッテリー、1kgを切る軽さと堅牢性を両立したボディが多忙なビジネスパーソンの業務を支える。4G LTE/5Gモジュール搭載モデルを選択すればさらに時と場所に縛られないワークスタイルを実現することができるだろう。