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2020.10.29

「サイボウズ式」チームビルディングを支える仕組み

コロナ禍でもチャレンジを続けるために「心理的安全性」を重視

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サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部 サイボウズ式編集長 藤村能光氏

 コロナ禍を経てテレワークが急速な広まりをみせたことで、「入社以来、ほとんどオフィスに出社していない」という新入社員も珍しくない。転職や異動によって新たな環境に身を置くことになったビジネスパーソンにも同様のことがいえるのではないだろうか。そうした中で課題となっているのが、チーム内のコミュニケーションだ。

 Web会議やチャットなど、オンライン上でのコミュニケーションを前提としてチーム作りを進める上では、オフィスで行う対面のコミュニケーションとは異なる配慮が必要になる。適切なチームマネジメントを行い、チームを十分に機能させるためにはどのような視点が求められるのだろうか。今回、『《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方』(扶桑社)の著者であり、サイボウズ式編集長を務める藤村能光氏に話を聞いた。

チームで成果を出すために「一旦理想を下げてみる」

藤村 能光『《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方』(扶桑社)

―― テレワークが広まってからというもの、多くの企業がコミュニケーションに関する課題を抱えています。チームの機能不全を防ぐために、どのような心構えが必要になってくるのでしょうか。

藤村 能光 氏(以下、藤村氏) まず、今までのようにすぐに成果が出ることは、一旦諦めることが必要だと思います。これまでの働き方は、皆がオフィスに出社して、顔と顔を合わせて、膝を突き合わせてコミュニケーションをする、ということを前提にしていました。しかし、在宅勤務が中心になると、働き方がこれまでと180度変わってしまいます。つまり、今までに誰もが体験したことのない働き方をしながら、自分だけでなく、メンバー全員で試行錯誤しながら新しい働き方を模索することになるんです。そうした中でこれまで通りの成果を出すということは、かなり難しいと思うんですよね。

 そこで一旦理想を下げてみる。理想を高くしすぎたり、成果を求めすぎたりせず、ゼロベースで自分たちの働き方を考え直しながら、少しずつ成果に紐づけていく考え方が大切なのではないでしょうか。

―― 前提を変えて考えてみる、ということでしょうか。

藤村氏 そうですね。社長の青野も、2020年4月の緊急事態宣言が出た段階で社内のグループウェアで社員全員にメッセージを出していました。「これまでと同じ働き方ができないのだから、普段どおりのパフォーマンスが出なくて当たり前」「時には諦めも必要」、という趣旨のメッセージです。私はそれで救われましたし、他の社員にもポジティブな影響があったはずです。

 「うまくいかなくて当たり前」ということを受け入れたうえで、新しくチャレンジをしていく。初めはそういった考え方をチームに浸透させていくことが大切だと思います。僕自身もメンバーをマネジメントする立場なので、トップメッセージがあったことで自信を持ってサイボウズ式編集チームのみんなに「今は成果が落ちても仕方ないし、むしろ出なくても当たり前」と伝えることができました。

――トップのメッセージが皆さんの考え方を大きく変えたわけですね。

藤村氏 「変化に対応しよう」と口で言うことは簡単ですが、やはり体験したことがない変化を遂げる中ではしんどいタイミングもあります。そこでトップから安心させられるメッセージを出してもらえることで、現場のメンバーも勇気づけられるはずです。

―― 働き方が大きく変わる中で、日々のコミュニケーションに変化はありましたか。

藤村氏 コロナ禍で始めた新たなコミュニケーションの取り組みには「朝会」があります。平日の10時5分から10時30分までの25分間、チームメンバー7名で集まり、文字通り朝みんなで集まって話しています。具体的には「昨日の仕事でやったこと」「今日これからの仕事でやること」、そして「今、その仕事を進めるうえで不安に思っていること」という3つのテーマについて共有します。Zoom経由にはなってしまいますが、この朝会でみんなの顔合わせの時間をとっていることになりますね。

 コミュニケーションの中心がオンラインに移ると、実際にメンバーの顔を見て「今日、調子どう?」「ちょっと体調悪そうやん」といった声がけができなくなってしまいます。そうした中ではそれぞれが抱える不安、昨日と今日との違いといったことを察知するのは難しいものです。だからこそ、少しのことでもいいので不安に思っていることがあればこの時間に解決しよう、という場を毎日設けています。

チームビルディングの要は「心理的安全性」

―― コミュニケーションに関する様々な取り組みを行う背景には、何か共通の指針のようなものがあるのでしょうか。

藤村氏 私の中では「心理的安全性」という、チームビルディングの考え方を重視しています。心理的安全性は、Googleが行った「チームの生産性を生み出すためにどういう要素が必要か」という調査結果から明らかになったもので、チームの生産性を高めるための基礎になるものです。

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Googleのリサーチチームは、成功するチームの構築に「心理的安全性」が最も重要と発表している(PHOTOGRAPH BY APaweł Czerwiński / UNSPLASH)

 例えば、チーム内で自分の不安や失敗を共有した時、メンバーに叱責されたり馬鹿にされたりしたら、もう不安や失敗を共有したいと思わなくなりますよね。これは心理的安全性が担保されていない状態といえます。

 新しい変化を生み出すには、失敗やちょっとした試行錯誤は避けられません。だからこそ、失敗を糧にするために「何か次の経験に生かせないか」とチーム内で考えたり、健全に話し合いしたりすることが必要です。このように不安や失敗を共有して、新しい挑戦を何度も重ねていくことが「心理的安全性がある状態」ということです。

 私自身、編集部をそういったチームにしたいですし、そういったチームになればもっと仕事が楽しくなると思うんです。だからこそ、不安や失敗を共有しながら次のアクションを決めて、チームでコミュニケーションを続ける。そしてまた、次のアクションを生み出す、といったサイクルを回していきたいですね。

―― 直近の困り事を解決するだけではなく、好循環を回していくための取り組み、ということでしょうか。

藤村氏 そうですね。まさに、不安や失敗の共有をチームづくり、チームビルディングへと繋げることは、自分自身も強く意識をしているところです。

―― 心理的安全性を担保するためには、信頼関係を築くことも大切になりそうですね。最近は「テレワークハラスメント」といった問題も散見されます。在宅勤務中には「常にカメラをオンにして」と言われている職場もあるとか。

藤村氏 ITツールやテクノロジーを使う場合、そこには色々なニーズや事情があると思います。Web会議への参加の仕方も百人百通りでよいのではないでしょうか。カメラをオフにしている人がいてもいいし、背景を変えていてもいい。

 例えば在宅勤務をしているときに、家族やお子さんが映像に入ってしまうこともあるでしょう。そこで一律に「カメラをオンにして」と指示するのではなく、「カメラをオンにしたくない理由があるんだろうな」と相手の状況を想像することが大切だと思います。

 私自身もカメラをオフにして会議に参加することはあります。そこで気付いたことは、聴覚だけで情報を受け取ると、メッセージの伝わり方や浸透の仕方が変わるということですね。これまでの常識が通用しない場面だからこそ、そこから「何か新しいことを発見できるのではないか」とプラスに考えたほうが、チームでの仕事も楽しくなると思います。

「当たり前」が崩れる状況はチャンスでもある

―― Web会議一つとっても、これまでのやり方ありきで考えない方がうまくいくのかもしれませんね。

藤村氏 そうなんですよね。今はあらゆる既存の価値観、常識が問い直されるタイミングだと思います。在宅勤務を経験したことで、オフィスに出社しなくても意外と仕事が回ることに気付いた、という方も少なくないはずです。

 サイボウズ式でも『「当たり前」が揺らぐ状況は、自分らしい人生を踏み出すチャンスでもあるんです』といった記事を公開しています。先行きが見えないからこそ、今までのやり方を維持するのではなく、新しい何かに挑戦するチャンスと捉えてもよいのではないか、という内容です。

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変化と不安の時期に、自分らしい人生を歩むためのポイントを提案している

 もちろん、うまくいっている仕事のプロセスを無理に変える必要はありません。でも、「もっとチームの仕事を良くしたい」「いいチームを作りたい」という思いがあって、理想と現実の差があるなら、そのギャップは埋めていきたいですよね。

 自分たちのチームの理想と現実のギャップを埋めるためには、変化を少しずつ重ねることが重要になってきます。そういった意味でも、このタイミングでこれまでのやり方を一度見直すことは、どのチームにとってもいいきっかけになるはずです。

「ザツダン」「分報」でコミュニケーションの敷居を下げる

―― 既存のメンバーと新たなきかっけを生み出す一方で、新しいメンバーとのコミュニケーションに関して何か取り組まれていることはありますか。

藤村氏 サイボウズのキャリア採用では、直近も多くの方が入社されていますし、私が所属するビジネスマーケティング本部でも1カ月あたり2~3名の方が入られたときもありました。皆さん基本的にオフィスに出社はしていないので、テレワークで仕事を始められていることになります。ここで活発に活用されているのが「ザツダン」を入れることと「分報(ふんほう)」の活用です。

 「ザツダン」はその名の通り、色々な人同士で1on1のミーティングを行い、自分の日頃の出来事を話すこと。仕事のことを話してもいいし、仕事には関係のないことを話してもいい自由な時間を指します。積極的にザツダンをする文化があるので、新しく入社された方でもやりたい人はどんどん色々な人とザツダンしていますね。入社して1カ月で数十人とザツダンした人もいます。

 入社後に多くの人が不安を感じることが「自分自身が業務内容にフィットするのか」という仕事の問題と、「どんな人がいるんだろう」という人の問題です。そうしたときに、仕事のことも含め、仕事以外のことも色々な人と話ができることは重要だと思います。

 もう一つの「分報」は、社内版のTwitterのようなものです。弊社のグループウェア「kintone」でスペースやスレッド、掲示板を作り、社員一人ひとりが思い思いのつぶやきを発しています。例えば「藤村のつぶやき」というスレッドを見れば、「今、こういうことをやっているんだ」「こんな気持ちなんだ」ということがわかります。

―― 「週」や「日」ではなく、「分」という単位なんですね。

藤村氏 これは朝会の話を似ていて、不安なことは1週間寝かせて共有するよりも、今このタイミングで解決したほうがよい、という考え方ですね。仕事で困っていることについても、一日の終わりのタイミングで日報に書いて相談するよりも、「いま、こんなことで困っている」「こんなことがわかりません」と書いた方が誰かが助けに来てくれる可能性が上がりますよね。

―― 気軽に何か発信できる仕組みを整えているわけですね。皆さんに積極的に使うように 声掛けされたりしているのでしょうか。

藤村氏 いえ、やるも自由、やらないも自由です。そこまで書き込まない人もいますし、分報のスレッドを作っていない人すらいます。ただ、情報発信の原理として、情報は発信する人の元に集まってくる、ということがよく言われています。Twitterでも同様ですが、有益な情報を共有するとリツイートや「いいね!」がついて、そこに新しい人や情報が集まってきます。分報でも同じように、自分のつぶやきに誰かからレスがあったり、「いいね!」という反応があったりすると、それだけで「分報って悪くないかも」と感じると思うんです。このあたりの捉え方も含めて、皆さんの自由に使ってもらっている、という状況です。

強制するのではなく、共感を得ることが大切

―― テレワークが社会に浸透することで、「ザツダン」や「分報」といった、より気軽なコミュニケーションの仕掛けが他社にも広まるかもしれません。

藤村氏 その可能性はあると思いますね。ただ、そこはやはり強制できるものではありません。自分たちが1回チャレンジしてみて、「面白いね」「有益だから続けよう」とみんなに思ってもらうことが重要だと思います。

 社長の青野は、サイボウズの経営手法を「キャンプファイヤー経営」と呼んでいます。企業の理念をキャンプファイヤーで真ん中に用意された薪(たきぎ)に例え、そこに火をともすとみんなが集まってくる。これが今、サイボウズの社員がサイボウズの会社の理想に共感して集まってきて、一緒に仕事をしているイメージです。キャンプファイヤーをイメージしていただくとわかりやすいと思いますが、焚き火の近くで踊っている人もいれば、それを周りで見ている人もいて、参加していない人もいる。そんな感じで各人のキャンプファイヤーに対する関わり方って自由なんです。

 サイボウズの経営でも「チームワークあふれる社会を創る」という理想には共感していても、みんなが「その理想に向かって100%やったるで!」っていうわけではなく、個々人によって理想への向き合い方やコミットの仕方は異なります。でも、それすら個性ですよね、と考えています。

 働き方一つとっても、何かを強制するのではなく、チームや組織の理想を目指すための共感を得ることが大切。そのうえでコミュニケーションをよくすることで、徐々に理想への共感度合いを高めていく、というイメージでしょうか。

―― ありがとうございます。最後にチーム作りに課題を感じている方々に向けて、メッセージをお願いします。

藤村氏 昨今のコロナ禍は多くの人にとって、自分の生き方や働き方を考え直す機会になっているはずです。そうした状況だからこそ、チームのメンバーみんなの個性を尊重しながら、その個性を生かしてより楽しく仕事をすることが求められると思います。

 指示や命令によってチームを動かしたり、価値観を押し付けたりするのではなく、多様な個性を生かしながらチームの理想像に近づいていく。そんなチーム作りができれば、より仕事の成果も出やすくなります。

 チームにとっての理想をしっかりつくること、理想をかなえる過程で個性を生かすこと。この二軸と向き合い続けることが、より良いチーム作りにつながるのではないでしょうか。

*本記事は 2020年10月9日 JBpress に掲載されたコンテンツを転載したものです

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