対話から、すべてがはじまる。
中本本店「インサツビト」× HP Indigo 7K
—クリエイターと共に創る、紙の新しい物語
株式会社 中本本店
「インサツビト」は、2021年5月に株式会社中本本店(本社/広島県広島市、中本俊之社長)が立ち上げた印刷のプロとデザイナーが対話を基軸として印刷の新たな価値と魅力を創造していくクリエイター支援サービスだ。コロナパンデミックの影響により緊急事態宣言下での船出となったインサツビトであるが、その厳しい状況でも歩みをとめることなく現在も活動を継続している。そのクリエイティブな価値創造を支えているのが2021年に導入した「HP Indigo 7K デジタル印刷機(以下、Indigo 7K)」だ。今回、発足から約5年が経過したインサツビトのこれまでの足跡や現在の状況、そして今後の取り組みなどについて聞いた。
- 株式会社 中本本店
- https://www.nakamotohonten.co.jp/
- 本社:広島県広島市中区
- 創業:1919年12月
創業100年以上の歴史を誇る株式会社中本本店は、長年にわたり培ってきた印刷技術を基盤に、常に時代の変化を取り入れた価値創造に挑戦し続けている。
同社はクリエイティブ力をコアとして、HP Indigoデジタル印刷の可能性を最大限に活用。印刷のプロとクリエイターが密に対話することで最適解を導き出す独自サービス「インサツビト」を展開している。
インサツビトの使命はクリエイターが印刷に求めることの実現
インサツビトとは、印刷に関する様々な悩みを解決すべく、クリエイターが直接、印刷のプロやデザイナーと相談・対話をしながらモノづくりができる新たな印刷サービスだ。発足時のメンバーであるデザイナー兼ディレクターの竹内直人氏、生産部プロダクト課の木本晃司氏、生産部プリプレス課 係長の村上天康氏、営業担当の河村実佳氏の4氏が現在も活動している。竹内氏にインサツビトが立ち上がった背景について聞いた。
「新たなデジタル印刷機を設置するにあたり、100年以上にわたり印刷会社として存在し続けた当社が、その原点である『印刷』の新たな枠組みを構築していくことを目的に現在のメンバーで発足されたのがインサツビトである」
インサツビトの活動は、その主軸となる新たなデジタル印刷機の選定から始まる。機種選定は、複数社のデジタル印刷機を対象とし、印刷テストも自社のデータと用紙を持ち込んで、その印刷品質を確認するなど徹底して行われた。
木本氏は「各メーカーの印刷サンプルを弊社のクリエイティブ部門であるLIGHTS LAB(ライツ・ラボ)内でアンケート調査した結果、選ばれたのがIndigo 7Kであった」と説明する。
これまで竹内氏は、デザイナーやクリエイターと交流していくなかで「求めていた発色と違う」や「使いたかった用紙で印刷できなかった」など、思い描いていた仕上がりとは異なる表現で印刷されていることに不満を抱える人たちが多く存在することがわかった。そのため印刷のプロとデザイナーが対話をしながら印刷を創り上げていくことでクリエイティブの輪が広がり、印刷ビジネスの活性化につながっていくはず。そこでインサツビトでは、デザイナーをターゲットとした新たな印刷の枠組みを構築していくこととした。
独自企画でコロナ禍での活動を加速
そしてコロナ禍の2021年、インサツビトは活動を開始。しかし、直接対面での活動などはできず不安だらけのスタートとなった。オンラインやSNSを駆使した情報発信をするも、やはり画面を通してでは、インサツビトが訴求したいクリエイティブは伝わりにくい。試行錯誤を重ねながら、悶々とした状況が永く続いた。
しかし2022年、ある転機が訪れる。竹内氏は、より多くのユーザーを掴むには、著名なアートディレクターがインサツビトを利用することで多くの注目が集まるはずと考え、アートディレクターの原田祐馬氏とメールでのコンタクトを試みる。返信ない時間が約1ヵ月続いたが、ついに原田氏からの返信が届いた。原田氏からは、「早速、Indigo 7Kを試したい」との連絡だった。竹内氏は早速、様々な印刷サンプルを送るとともにオンラインミーティングなどで企画の内容を説明。その後、原田氏は同社を訪れ、Indigo 7Kを見学した。実際の印刷物を目の当たりにした原田氏は、デジタルオフセットの印刷品質に驚愕し、インサツビトとのセッションを快諾する。
竹内氏は、今回のセッションの企画としてトークイベントなどを考えていたが、原田氏からは一過性の企画ではなく、自身の知人クリエイター数名にも協力を要請し、それぞれが創作した作品をIndigo 7Kでカタチにしてみてはどうかとの逆提案を受け、その提案を受けることとなった。そして多くのクリエイターたちと、その場で用紙を替え、データを補正するなど、インサツビトが掲げてきた対話によるクリエイターズセッションが実際に展開された。この企画は、一般ユーザーだけでなくクリエイターからも支持を集め、以後、インサツビトとのセッションによるモノづくりが活気を帯びていく。
発足から5年〜目指すのは広島から全国展開
そして外出制限などの規制が解けた頃、さらなる飛躍に向けたネクストステージに移行する。それは「出張オープハウス」という新たな活動だ。
これまでもインサツビトのラボを拠点にオープンハウスは行っていた。しかし地理的な問題から訪れるのは、近隣ユーザーに限定される。そこで広島県外に活動拠点を広げていくために、竹内氏をはじめメンバー数名が印刷サンプルなどを持参してインサツビトの魅力を発信する「出張オープンハウス」の活動を開始。この活動は現在も継続しており、その訪問数は、21県に達している。
発足から5年が経過した現在、竹内氏は「まだまだ発展途上の段階だが、依頼された案件については誠心誠意に対応していくだけでなく、受発注者双方が楽しんで取り組めることを心がけている。もちろんビジネスではあるが、遊び心も忘れずに活動できればと考えている」と振り返る。
木本氏は「立ち上げ当初は、インサツビトでやりたいこと想い描いていたがコロナ禍など、すべてが手探りの状態で始まった。その間、多くの失敗も経験してきたが、ここ最近になってやっと心に余裕ができた」と苦い経験が着実に成果につながっていることを実感している。
これまで実践してきた活動によりインサツビトは、広島を中心に中国地方では、認知度を高めることができた。今後は、関東や関西などの大都市圏への進出も視野に入れ、さらなる魅力発信を積極的に行なっていく。
「伝える力」で紙のポテンシャルを最大限に発揮
中本本店は、1919年創業の100年以上の歴史を有する老舗の印刷会社だ。広島県中心部に本社を構え、企画からデザイン、印刷までの制作すべてを手掛けている。長年オフセット枚葉機をメインに使い、カタログやDM、チラシなどの商業印刷物を中心に請け負ってきた。2012年10月には、HP Indigo 5600を導入し、本格的なデジタル印刷サービスを開始している。
その同社・中本社長がインサツビトに求めたのは「紙へのこだわり」だという。
「印刷には、伝える力があると断言できる。だからこそインサツビトには、その伝える力をどのように具現化するかを追求してもらいたい。デザイナーやクリエイターの要望に対し、できないではなく、ここまでやってみよう、といった姿勢で挑戦していくことで、これまでにない新たな紙の魅力を発見できるはず」
また、その活動の柱となるIndigo 7Kの導入を決断した理由については、「以前、Indigo 5600を導入し、新たなことへの挑戦を試みた。結果として、そのポテンシャルを引き出すことができなかったが当時からHP Indigoへの期待は大きかった。だからこそ印刷の新たな可能性を見つけ出すには、HP Indigoの力が必要だった」と説明する。
同社も所属する全日本印刷工業組合連合会では、「価格競争から価値協創へ」を掲げ、不毛な価格競争から、様々なプレーヤーが協力し、価値を創り出す価値協創への転換を目指している。インサツビト+Indigo 7Kの取り組みは、まさに価値協創そのものといえる。
一方で中本達久専務は「インサツビトは、Indigo 7Kを駆使した新たな印刷物の創出がテーマであるが、Indigo 7Kは、あくまでも手段である。多様な要望をカタチにするためには、オフセットにはない多様な印刷表現が可能なIndigo 7Kの機能が必要となるが、案件によってはオフセット印刷を推奨することもある。一番重要なのは、あくまでも顧客の要望に寄り添い実現させていくことであり、それこそがインサツビトの使命である」と顧客の要望を最適な方法で実現することこそが重要であると説明する。
顧客が求めるものを対話によって導き出し、あらゆる可能性を試しながらカタチにしていく。繰り返し対話をすることがインサツビトの最大の魅力だ。もちろん、ときには失敗もある。しかし、その失敗は成功へのヒントとなる。
ビジネス発展で重要なのは「縁づくり」
中本専務は、県外や他の印刷会社を訪れた際に「インサツビトの会社ですよね」と声をかけられることが増えてきたという。
「まだまだ発展段階ではあるが、実績を積み重ねていくことで、インサツビトは収益性を兼ね備えた事業として確立するはず」
インサツビトを展開していくにあたり、中本社長は「一番大切なのは、縁づくり」と語る。
「出張オープンハウスで出会った方など、将来の顧客なる可能性のある方たちが明日のビジネスにつながっていく。だからこそ多くの方と出会い、対話を重ねていくことで縁をつくり、真の成長につなげてほしい」
インサツビトは、多くのクリエイターや出張オープンハウスで、中本社長が求める「縁づくり」を成長・発展していくために自然なかたちで自発的に実践してきたといえる。
現在、SNSを活用したキャンペーンや出張オープンハウスを通じて着実に縁は広がっている。地道であるが、この活動を継続していくことで新たな出会いが生まれ、事業としての成功にもつながっていくはずだ。さらにSNSによる情報発信や各種イベントの開催などは、中本本店の広告塔としての役割も担っている。
各種諸資材の高騰や世界情勢不安などの多くの課題が山積する市場において、業界自体が元気にならなければ新しいことにチャレンジすることもできない。そのためにも従来の印刷から視野を広げ、紙の新たな魅力を創りだし、発信していくことが重要だ。中本社長は、インサツビトの活動は、その1つだと考えている。
「私は、当社のビジネスは印刷業ではなく情報伝達業であると考えている。顧客をはじめ社会が伝えたい情報を最適な手段で伝えていくことが当社の役目である。その中でインサツビトは、クリエイターなど中心に情報伝達を支援できるはず。そしてインサツビトが実践している対話は、企業をはじめ一般ユーザーに対しても、その効果を発揮できる」
一般企業でも対話を重ねることで、その顧客が何を求めているのかを掘り起こし、印刷などのビジネスにつなげていくことができる。インサツビトの活動が進化していくことで新たな印刷ビジネス確立に期待がもたれる。