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自治体クラウドのあるべき姿を見据えてデスクトップ仮想化に踏み切った川口市埼玉県川口市

埼玉県の川口市では、業務用クライアントPC約200台のリプレースを検討。地元企業のSierである彩ネット株式会社との協業で、HPのシンクライアント端末「HP t5630w Thin Client」を導入するとともに、仮想デスクトップ環境を構築した。それは、ただ単にクライアントPCを置き換えたというだけにとどまらない、壮大なビジョンを具現化するプロローグともいえる取り組みだった。それがいかに先進的なものなのか、担当スタッフらの話を聞こう。

ITを活用した業務最適化を積極的に進める川口市役所

埼玉県の南東部に位置する川口市は、人口約50万人以上を擁し、県庁所在地であるさいたま市に次ぐ埼玉県第二の都市である。平成23年10月11日には隣接する鳩ヶ谷市を合併することが決定している。

この川口市で市役所業務のIT化を推進しているのが、川口市役所 企画財政部 情報政策課システム開発係だ。それまで各セクションに個別に在籍していた電算処理担当者らを集約し、縦割りだった情報調達を全所横断で行えるよう、平成19年の組織改正で新設された係だ。情報政策課は電算処理業務に限らず、ITを活用した業務最適化を図り、業務分析なども積極的に実施し、電子自治体の構築に積極的に取り組んでいる。

さらに、そこで得られた知見を元に、総務省が進める地域情報プラットフォームの仕様策定や、(財)地域情報化推進協会の標準仕様書の策定にも深く関与しているという。

川口市 企画財政部
情報政策課 課長補佐兼システム開発係長
大山 水帆氏

川口市 企画財政部
情報政策課 課長
本山 政志氏

「地域情報プラットフォームはあくまで容れ物。我々が検討しているのはその中身のあり方です。どの業務にどのような情報が必要で、それにはどのような連携をすればいいのか、その分析をもとに市役所業務のIT化を進めています。」(本山氏)

川口市では基幹業務にメインフレームを主軸としたレガシーなシステムを稼働させているが、そのホストコンピュータの稼働限界を平成25年に控え、オープンシステムへの移行を進めている。今回のクライアントPCリプレースはその一環として検討され、実施されたプロジェクトである。

「メインフレームは安定しているものの、メンテナンス性に難があり、法改正などへの柔軟な対応が難しく、加えて、団塊の世代の定年退職者が集中する2007年問題を経て、メインフレームのメンテナンスできる人員が少なくなっています。これもオープンシステムへの移行を急ぐ理由です」(大山氏)

住民情報を取扱う業務系システムは用の端末は、全体で約700台のクライアントPCがあり、そのうちレガシーシステム、であるメインフレームのホストコンピュータに、アクセスする端末は約500台が稼働している。まずは、ホストコンピュータにアクセスしない約200台のシンクライアント化を進めることになった。

Web化された業務アプリケーションの課題解決にシンクライアントを検討

川口市 企画財政部
情報政策課 システム開発係
初見 卓也氏

情報政策課ではシステムのオープン化にあたり、システム構築に際してのアプリケーション調達は、Webアプリケーションを前提とする方針をとってきた。だが、それによる新たな課題に直面した。

「WebアプリケーションはOSやInternet Explorer(以下、IE)のバージョンに依存するため、ハードウェアとソフトウェアのライフサイクルの“ズレ”が問題になってきたのです」(大山氏)

具体的には、数年前に調達したアプリケーションはIE6が要件になっているものが多いのに対し、新しく調達したものはIE8が要件になっており、その都度、端末を入れ替えたりするような不都合が発生していたという。

「福祉系業務のアプリケーションはIE6が要件ですが、新しく調達した介護保険業務のアプリケーションはIE8でしか動作検証をしていない。このようなケースが今後も予想されます。福祉と介護は財源が異なるだけで、実質的なサービス内容はほぼ同一です。福祉の担当課職員が介護保険の情報が見られないというのは業務に支障が出てしまう。また、Microsoft Officeのバージョン互換についても課題が想定されます。」(初見氏)

Windows XPのサポート終了が公式にアナウンスされていることもあり、人員が増えた時にWindows XPが稼働する端末の調達が難しくなるという危機感もあったという。さらに、セキュリティ上の問題もあった。

「メインフレームからオープン系システムに移行すると、誰にでもデータが扱えるというメリットと裏腹に、誰にでも容易にデータを持ち出されてしまうというデメリットがあることは承知していました。市民の皆様の個人情報を扱う以上、そこはおろそかにはできない。そこでシンクライアントシステムを検討しはじめたのです」(初見氏)

大山氏ら、情報政策課システム開発係のスタッフがシンクライアント端末導入の検討を始めたのは、仮想化技術がサーバーに適用されはじめた頃だったという。

「当時から仮想PC方式のシンクライアントシステムはありましたが、まだ業務に使うのは難しいだろうと考えていたところ、急速にこの分野の技術が進展しました。スタッフらが積極的に研修等を利用して勉強し、これなら我々の課題解決に使えるだろうと判断したのです」(本山氏)

本山氏らが描いた青写真は、仮想PCのアクセスデバイスとしてシンクライアント端末を使用するプライベートクラウドのシステムだ。個人情報を含む業務データはサーバー上の仮想PCにとどめたまま、アプリケーション画面のみをシンクライアントに転送する。クライアントには一切データは残らないため、セキュアなシステムが構築できる。

さらに、Webアプリケーションのプラットフォーム互換の課題解決のために、アプリケーション仮想化にも取り組むことになった。

システム詳細設計と構築・導入に地場Sier「彩ネット」の提案を採用

彩ネット株式会社
代表取締役
井上 太郎氏

シンクライアントを活用したデスクトップ仮想化というシステムのアウトラインは決定した。次のステップは、具体的なシステムの詳細設計と機器の構築・導入に協力してもらうベンダーの選定だった。

「平成21年の10月頃に公募という形での一般競争により、広く一般から提案を募集し、提案内容と5年間のライフサイクルコストによる総合評価によって導入事業者を決定することとしました。その結果全部で5社にプランをプレゼンしていただき、その中に彩ネットさんも参加していただきました」(初見氏)

彩ネット株式会社は1995年のインターネット黎明期に、いち早く川口市で埼玉県初のISP事業をスタートさせたベンチャー企業だ。現在はISPだけでなく、ホスティング、ハウジングからシステムインテグレーションまで幅広い領域でIT関連サービスを提供している。

もともと川口市では地場産業育成の見地から、地元企業の積極的な登用を考えていたが、メインフレーム時代はなかなかその機会もなかった。だが、垂直統合型のメインフレームシステムとは違い、オープンシステムでは仮想化のような要素技術の点で、様々なSIerが、純粋に技術力で勝負できる。技術さえあれば企業規模に関係なく、大手とも同じ土俵で競争できる、そんな環境を作りたかったと本山氏らは考えていたという。

彩ネットは以前より仮想化技術に関するノウハウを積み重ねてきていた。初見氏はそのことを知っており、彩ネットにも声をかけたとのことだ。

彩ネットを率いる井上社長は「おもしろい試みだと思いました。自治体として新しいカタチに挑戦されるという驚きもありました。弊社としてもチャンスだと思い、仮想化にとどまらず、これまでに培った技術を総動員して、最適なものをご提案させていただきました」と語る。

そして、彩ネットが選定したシンクライアント端末がHP t5630w Thin Client(以下、t5630w)だった。その理由を井上社長は次のように話す。

「弊社はマルチベンダー。メーカーに関係なく、ミッションに最適なハードウェアを選定します。今回は、デスクトップ仮想化ソフトウェアとして採用したCitrix XenDesktopや仮想サーバー環境との親和性を中心に、安定性、堅牢性、コンパクトな筐体サイズを考慮し、t5630wを選びました」

t5630wはリーズナブルなプライスタグをつけながら、柔軟な利用方法を可能にする「Windows® Embedded Standard 正規版」を搭載するオールラウンドモデルだ。

CPUにVIA Eden 1GHzを採用し、低電力消費と優れたパフォーマンスを両立させている。またハードディスクドライブやクーリングファンなどの駆動部を持たないため、ホコリなどにも強く、故障率も低い。XenDesktopに正式対応したCitrix Ready端末で、川口市のオーダーを満たしている。

「この端末以外にも、HPさんにはシステム設計の過程でいろいろなご相談をさせていただきました。デスクトップ仮想化についての実績も豊富で、いろいろな情報をご提供いただき、これなら安心してご提案できるということで、採用させていただいた次第です」(井上社長)

t5630wを中心とする彩ネットの提案は、仮想化に関する技術面はもちろん、イニシャル、ランニングを含めたトータルコストの面でも高い評価を得、川口市に正式に採用されるに至ったのだった。

「心情的には地元企業を応援したいのは当然ですが、そこはやはり公正に競争していただきました。結果的に彩ネットさんにご提案いただいた内容が、現在の本市には適切だったということです」(大山氏)

シンクライアントによるデスクトップ仮想化により業務効率の向上と
トータルコスト削減を達成

ここで、川口市のデスクトップ仮想化環境を整理してみよう。

物理サーバー1台に対し、仮想サーバーを経て仮想PCが25台程度起動する。このユニットが9セットあり、うち1セットはバックアップ用というサイジングだ。共有ストレージ上のOSイメージがプロビジョニングサーバーを経由して各仮想PCに配信され、画面情報のみがシンクライアント端末に送られる。1つのOSイメージから複数の仮想PCをネットブートで起動しているので仮想マシンの台数分のOS管理は不要となり、クライアントの運用管理は大幅に効率化されることになった。

IEやMicrosoft OfficeなどのアプリケーションもXenAppにより仮想化され、イメージのみが仮想PCのデスクトップを経由してシンクライアントに表示される。1台の端末上で複数バージョンのアプリケーションが稼働できる環境が構築されたわけだ。

この効果を大山氏は次のように紹介する。

「業務効率化と運用管理の効率化が達成できました。通常のPCは1台ずつの設定が不可欠なのに対し、仮想PCはひとつのモデルを複数の端末に展開できます。先日の国勢調査の時に、一時的にクライアントを増設する必要があったのですが、その時も仮想PCとシンクライアント端末を20台ずつ用意し、簡単な設定をするだけで同一の環境を作ることができ、また不要後は削除しました」

また、コストパフォーマンスの観点から見ても、初見氏は次のように評価する。

「シンクライアント端末単体で見れば通常のPCより格安。サーバーや構築費用などのトータルコストで見てやや割高といったところです。しかし、今回のシステムで実現できたセキュリティレベルや端末の運用管理、アプリケーションの仮想化などを通常のPCで達成しようとすれば、1台あたりのコストはかなり上がるはずです」

さらなる効率性を追求しセキュアなモバイル環境も構築

本山氏らは市役所内のデスクトップ仮想化だけにとどまらず、さらに業務効率化につながる施策も実施している。それはモバイル接続環境の整備だ。

「もともと端末を市役所外で操作するニーズはあったのです。本市には訪問事業もいくつかあり、その際に訪問先で情報を参照したり登録したりということができれば利便性は高まり、業務効率も上がります。しかし安全性を最重視し、市役所外に業務用PCを持ち出すことを禁止していました」(大山氏)

だが、ネットワーク事業者である彩ネットとの協業はそこに風穴を明けた。

IP-VPNによる閉域環境とSSL暗号化技術を組み合わせ、インターネットを経由しないセキュアなモバイルネットワーク環境が構築できたのだ。しかも、業務系ネットワークへの接続はDMZ上の仮想PCを経由して行われるため、モバイルシンクライアント端末には画面情報が転送されるだけと、情報漏洩対策も万全な環境となっている。

「ネットワーク構築に豊富な実績をお持ちの彩ネットさんならではのノウハウをうまく活用していただけたと思います」(初見氏)

より市民にやさしい自治体を目指してITの活用を進めていく

本山氏は今後の見通しやシステムの行方について、次のように述べている。

「オープンシステムへの移行が完了した後には、次のステップとしては総合窓口を検討していきたい。ひとつの窓口でさまざまな手続きにワンストップで対応し、しかも他に必要な手続きがあれば教えてあげられるような、プッシュ型サービスが提供できる窓口。そういうものも視野に入ってきます。そのためには自治体内の最適化とデータ共有が必要です。そして、それは自治体間連携や自治体クラウドにもつながっていくのです」

本山氏らの考え方は、福祉なら福祉サービス分野の総合窓口、税なら税の総合窓口というように、ステップバイステップで最適化と集約化が進み、やがてそれらがひとつの自治体の総合窓口、さらには複数の自治体の総合窓口に変わっていくというイメージだ。

続いて大山氏も「自治体間連携には総務省が進める自治体クラウドや地域情報プラットフォームなど、さまざまな切り口がありますが、最終目標が、全国の自治体がお互いのシステムなり設備なりを相互利用できればいいというところだとすれば、我々のゴールと同じです。本市の取り組みをいろいろな自治体に見ていただいて、クラウド技術を活用したシステムやアプリケーション共有をしていければと思っています」と話す。

たとえば川口市と、遠く離れた長崎市などとのシステム連携が実現すれば、川口市から長崎市に転入するという時に、住民票や戸籍の移動などの面倒な手続きが簡素化され、利便性は劇的に上がるだろう。

さらに本山氏は、今は夢物語かもしれないと前置きした上で、その先のビジョンも示してくれた。

「今、いろいろな自治体がコンビニ公布、コンビニで住民票などが取れるサービスを提供している。これは確かに便利です。しかし自治体間連携が実現すれば、そもそも住民票や印鑑証明を取ること自体が不要になることも考えられる。それには、法律など制度面での見直しが必要であると考えられるが、そのほうが国民のみなさんに喜んでいただけるのではないかと。特に、IT戦略本部で進めている社会保障・税に関わる共通番号(国民ID)と経済産業省が進めている文字情報基盤の構築については、自治体間連携を実現するための重要な要素であると考えており、今後の動向を注目しているところです。」

直近の目標として、他の業務ユニットのシステム仮想化を順次進め、平成25年3月を目処に、オープンシステムへの完全移行を果たしたいと意欲を見せる本山氏ら。

川口市の取り組みが全国に波及し、本山氏らのビジョンが実現すれば、人の移動のハードルが下がり、我々のワークスタイルやライフスタイルも変わっていく可能性すら考えられる。本山氏らの大志がどのように具体化していくのか、期待したいところだ。

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