2021.04.15

VRの導入で建築の意思決定がスピーディーに!
デザイン性の高い施設の建築にHPMobileWorkstationが貢献

学校法人塚本学院 / 大成建設株式会社

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建築においてBIMの導入が加速している。発注者と設計者と施工業者の意思統一に不可欠となり、多くの施設建築でその有用性は証明されている。同時にBIMによる3次元データの投影先として注目されるのがVRだ。施工前の段階でもVRなら施設を体感できるため、様々な場面でBIMのメリットが強調される。HPワークステーションとこのソリューションの融合により、新たな価値を持つ施設が誕生しようとしている。話を伺ってきたので紹介しよう。

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新棟の完成が待ち遠しい大阪芸術大学(写真右が山浦氏、左が井寄氏)

学生に創造力を与える施設であってほしい

学校法人塚本学院(以降、塚本学院)は、昭和20年に創立し、当初は幼稚園の運営から始まり、その後幼稚園の先生を養成するための短期大学保育学科を設立。現在では大阪芸術大学をはじめ、美術、デザイン、音楽などを中心に各方面に優れた人材を輩出するための数々の教育機関を運営している。

「今、建設中の新棟を使うのは大阪芸術大学のキャラクター造形学科になります。漫画やアニメ、ゲーム、フィギアのコースがあり、現在約800人が学んでいます」と語るのは、塚本学院財務部長の井寄大吾氏だ(以降、井寄氏)。優れた施設を数多く持つ大阪芸術大学だが、建築家妹島知世氏が手掛けたアートサイエンス学科棟などは実に象徴的だ。「例えば受験生が棟を見たときに、ここで学んでみたいと思ってもらいたいですし、入学してからそこで学ぶ学生には発想力やインスピレーションを与えられる施設になってほしい。学院に建てられる棟には、そんな想いが込められています」と井寄氏は語る。

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新棟のイメージパース

そんな学院の想いをカタチにするのが大成建設株式会社(以降、大成建設)だ。日本のみならず、世界各国の国家的プロジェクト建設にも数多く携わっていることでも知られる、建設業界のリーディングカンパニーだ。先に例に出たアートサイエンス学科棟の施工を担当したのも同社であり、今回の新棟について塚本学院理事長から「西洋のお城のようなワクワクする校舎を建ててほしい」と設計・施工のすべてを一任されるなど高い信頼関係を結んでいる。

「塚本学院様の象徴的な建物となるわけですから、関係者一同、気を引き締めて取り掛かっています」と語るのは新棟工事所長の山浦恵介氏(以降、山浦氏)。「今回の建物で一番象徴的なのは4層吹き抜けのエントランスホールです。棟の色合いや、吹き抜け空間の仕上がり具合などを、なるべく早くお客様にみてもらいたいと思い、VRと組み合わせることを決めました」と同氏は言葉を続ける。

移動が容易で高品質なVRシステム

キャラクター造形学科棟のVRシステムに採用されたのは「HP ZBook17 G6 Mobile Workstation」および「HP Reverb G2 VR Headset」だ。「大成建設本社のデジタルプロダクトセンターで今回BIM用のマシンとして使用したのがHPのワークステーションです。塚本学院様の新棟でVR活用の話が出てきたのと同じタイミングで、HPから最新型のヘッドセットReverb G2が販売されるということでしたので候補にしました」と語るのは大成建設デジタルプロダクトセンターBIM計画室課長の長沼大輔氏(以降、長沼氏)。

当然、これまでもVRをあらゆる現場に応じて採用してきた大成建設だが、以前採用していたヘッドセットはセンサーポールを利用するタイプだったので機材の量も多く、セットアップも大変だった。「HPのReverb G2ならワークステーションにつなぐだけで単体動作が可能な点や、高解像であることなど、コストパフォーマンスが高い点も決め手でした」とBIM計画室の榊友幸氏(以降、榊氏)。

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また、モバイルワークステーションを選択した理由について尋ねると、「作業所に設置するだけでなく、それ以外の場所で学生達が見るかもしれないというリクエストも頂戴していました。そうなってくるとモバイルワークステーションのほうが移動は楽です。パフォーマンスについて若干の不安はありましたが、テストを繰り返しても問題なく動作していたので、ZBook 17 G6に決めました」と榊氏は語る。BIM制作用にAutodesk Revit 2020、VRデータ変換用にFuzor 2021を使い、ZBook 17 G6で動作させ、Reverb G2へ出力する。この一連のVRシステムにより、新棟の仮想空間での事前内覧が可能となったのだ。

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VRで建物内を歩くこともできる(左側)、HP ZBook17 G6 Mobile WorkstationとHP Reverb G2 VR Headset(右側)

早期の意思決定を可能にしたVRシステム

「吹抜空間の2パターンの色について、どちらの色にするか悩んでいましたが、このVRのおかげで事前に確認ができました。自分の目で確かめて色を選定することができ、意思決定がスムーズにできましたね」と語る井寄氏。

「ある程度施工が進んでから実際の色をみて変更するとなると、手戻りの規模が大きくなってしまいますし、色の決定が遅れれば付随する他の製作物にまで遅れが波及します。今回はVRシステムのおかげでスピーディーに意思決定をしていただきました。現場も設計者も次のステップに移る事ができ安心しました」とシステムへの手応えを語る山浦氏。

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臨場感のあるVR空間で施設内のベースカラーを確認

「実は想定外のメリットもあったんです。詳細データで作り込んだ部分は吹き抜け空間だけなのですが、そのほかの場所もBIMデータが存在していたので外観や上階からの眺め等、建物全体をVRで体感する事ができました」と山浦氏。「実はそれを知って塔の先端まで行ってみました。スリリングでしたが面白い経験でした」と井寄氏は笑顔で感想を語る。

VRが依頼主と施工業者の架け橋に

「私自身も今回のVRシステムで新棟を見てみましたが、品質がとても高く空間のビジュアルを事前に見ることができることのすごさを改めて実感しました。図面は毎回見ていますが、空間の中に入ってそれを実感することは施工担当者にとっても意味深いものになります。以前のシステムに比べ、コンパクトになりましたし、操作もすぐに慣れるようになりました。全般的にVRシステムの進化が感じられましたね」と山浦氏は語る。

「今回のVRシステムでは稼働中に落ちたり、ZBook 17 G6の排熱温度が高くなりすぎたりといったことは起こらず、挙動は安定していました。ノートPCとはいえ、さすがワークステーションだなという感想を持ちました」と長沼氏も言葉を続ける。キャラクター造形学科棟の建築にあたり、VRシステムは両者がイメージを共有するための大切な架け橋になれたようだ。

「アートサイエンス学科では、既にVRを用いた授業が行われていますが、VR等最先端の技術は学生達にインスピレーションを与えるツールとして、これからますます活躍の場が増えると思います」と井寄氏。

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VRと大画面液晶モニターとの連携も計画している

「BIMデータを使って施工管理をするうえで、VRを取り入れることで、施工の時間短縮にもつなげられると思います。VRで干渉や不具合を事前に発見し、現場では完成した3次元データを確認しながら施工に集中する。これなら、スムーズで安全な建築が実現できますね」と山浦氏。

「今後はAR、MRについても取り入れていきたいと考えています。今回の事例でいえば、VRで完成イメージを共有したあと、ある程度施工が進んだ状態でARやMRを活用して実物とモデルを重ね合わせ再確認するとさらにイメージの共有が進むはずです。そして最終目標は、デジタルツインの実現です。」と長沼氏。

「今回の事例でVRシステムの構築に運用する場合は、サポートや調達面が重要であることが分かりました。ほかの現場でもVRが有効活用できそうなケースは多いので、今回のシステムを参考にセット台数を増やし、普及できればと思います」と榊氏。

これから社会で活躍する学生を育むために新設されるキャラクター造形学科棟。よりよい施設を作りあげるため、塚本学院と大成建設の努力はこれからも続いていくだろう。HPも両者を支えるため最大限のサポートを提供していく。

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